この記事に辿り着いたあなたなら「ロジカルシンキングとは何か?」あるいは「ロジカルシンキングの手法やフレームワークを知りたい」と考えていることだろう。
このブログ「Mission Driven Brand」は、外資系コンサルティングと広告代理店のキャリアを持つ筆者が、ビジネスの「できない、わからない」を解決するブログだ。
ロジカルシンキングとは、物事を体系的に整理し、筋道たてて矛盾なく考える思考法のことを指す。
今やビジネスにおいて「マスト」とされるロジカルシンキングだが、巷にある多くの書籍は、ロジカルシンキングを厳密に説明しようとするがあまり、難解な解説になりがちだ。
よって、この記事では「ロジカルシンキングとは何か?」をわかりやすく解説する。合わせて「実務での活用の仕方」も解説しよう。その内容は以下の通りだ。
- ロジカルシンキングとは何か?
- ロジカルシンキングがもたらす5つのメリットとは?
- ロジカルシンキングの「頭の使い方」とは?|2つの論理展開手法
- ロジカルシンキングの「整理の仕方」とは?|2つのフレームワークと活用法
- ビジネスシーンにおけるロジカルシンキングの鍛え方とは?
- ロジカルシンキングの5つの限界と逆手に取る方法とは?
情報や知識は「目に見えるもの」だ。そして短時間で簡単に手に入る。しかし短時間で得られる競争力は、短時間で真似される競争力でしかない。
一方でロジカルシンキングなどの「思考力」は、いったん身につければ、簡単には真似できない長期的な競争力になる。ぜひ今回の解説を、あなたの「持続可能な競争力」に結び付けて欲しい。
また、この記事の最後には、記事内で紹介した図版のスライド資料を用意しているので、ぜひ活用頂きたい。
- ロジカルキングを身につけたい方に。このブログから書籍化した「推論の技術」
- ロジカルシンキングとは何か?
- ロジカルシンキング頭の使い方|2つの論理展開手法
- ロジカルシンキングの整理の仕方|2つのフレームワークと活用法
- ロジカルシンキングの鍛え方
- ロジカルシンキングの5つの限界
- ロジカルシンキングの限界と逆手に取る方法
- ロジカルシンキングの本|おすすめ書籍2冊
- このブログから書籍化した本4冊
- その他の解説記事とおすすめ書籍
- 終わりに
- ロジカルシンキングとは|メリットとフレームワーク活用法|スライド資料
ロジカルキングを身につけたい方に。このブログから書籍化した「推論の技術」
本論に入る前に、僭越ながら拙著「推論の技術」を紹介させていただこう。
あらゆるビジネスは「仮説」こそが成否を握る。
なぜなら、仮説を生み出せなければ次の一手を見出しようがなく、検証のしようもなくなるからだ。つまり、ビジネスの成長は止まってしまうことになる。
しかし仮説思考の書籍の多くは、仮説思考の重要性は説くものの、肝心の「仮説思考の身につけ方」になると、
- 「センスが必要」
- 「経験の積み重ねが物を言う」
など「それを言ったらお終いよ」という結論で終わらせている書籍が多い。
しかし本書は、外資系コンサルティングファームと広告代理店を経験した筆者が「仮説思考に必要な頭の使い方の手順」を、豊富な事例とともに徹底解説している。よって、その手順通りに頭を使えば「センス」や「長年の経験」に頼ることなく、誰でも優れた仮説を導き出せるようになる。
おかげさまで本書は6版を重ね「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」にノミネートいただいた。NewsPicksやNIKKEI STYLE、lifehackerなど多くのメディアで取り上げていただき、中国や台湾、香港でも出版が決定している。
さらにAmazonレビューでも、
- 「ここ数年の仮説思考系の書籍で久々のヒット」
- 「自分オリジナルの武器にしていけそうな良書」
- 「一生もののスキルになるのは間違いない」
など有難い言葉を頂戴している。
もしあなたがシャープな仮説を導き出せるようになりたいなら、ぜひ本書を手にとってみて欲しい。
ロジカルシンキングとは何か?
ロジカルシンキングとは
まずは「ロジカルシンキングとは何か?」について理解を深めよう。
ロジカルシンキングの「ロジカル」とは「論理が整っているさま」を表す。いわば「物事が体系的に整理されており、話の筋道に矛盾がないこと」だ。一方で「シンキング」とは「頭の使い方」だ。
このことから、ロジカルシンキングとは「物事を体系的に整理し、筋道立てて矛盾なく考える思考法」と定義できる。その和訳が「論理的思考」だ。
ロジカルシンキングとクリティカルシンキングとの違い
ここで、ロジカルシンキングと混同されやすいクリティカルシンキングについても触れておこう。
ロジカルシンキングが「物事を体系的に整理し、筋道たてて矛盾なく考える思考法」であることは、すでに解説した。
しかしロジカルシンキングは上の図のように「論理の筋道の立て方」は教えてくれても「前提の置き方」を教えてくれるわけではない。
例えば「AだからB」→「BだからC」→「ゆえにAはCである」という論理は典型的なロジカルシンキングだが「そもそも、なぜ前提にAを置いたのか?」はロジカルシンキングの範疇には入らない。
また、ロジカルシンキングは「考える切り口」を教えてくれるわけではない。例えば「売上高」は、
- 購入客数を増やせば→売上高は上がる
- 客単価を上げれば→売上高は上がる
- 購入頻度を増やせば→売上高は上がる
という切り口で論理的に分解できるが「売上高」を、
- 市場規模を拡げれば→売上高は上がる
- 市場シェアを増やせば→売上高は上がる
という切り口で分解することも可能だ。
このように、ロジカルシンキングは「論理の筋道」は教えてくれても「考える切り口」を教えてくれるわけではない。
一方で、クリティカルシンキングは「物事を鵜呑みにせずに吟味し、適切に疑う思考態度」のことを指す。
クリティカルシンキングをマスターすれば、
- 建設的に前提を疑う
- 建設的に切り口を疑う
ことを通して、これまでの「当たり前」を覆し、これまでにない新たな切り口を見出すことが可能になる。
ここまでお読みになればお分かりの通り、ロジカルシンキングは論理的な筋道を考える「思考法」であるのに対し、クリティカルシンキングはロジカルシンキングの「前提」や「切り口」を適切に疑うことで、新たな価値を生み出そうとする「思考態度」であることだ。
ロジカルシンキングの5つのメリット
ロジカルシンキングを鍛えることができれば、あなたに多くのメリットをもたらす。具体的には次の5つのメリットだ。
- 分析力が向上する
- 問題解決能力が向上する
- 提案力が向上する
- コミュニケーション能力が向上
- 仕事の生産性が向上する
以下、一つずつ解説していこう。
分析力が向上する
ロジカルシンキングのメリットの1つ目は、分析力が向上することだ。
世の中に現れる現象の多くは、様々な要素が複雑に絡み合っており、ただ漠然と「全体」を捉えただけでは有益な示唆は得られにくい。
世の中の現象を正しく分析するには、それらを全体として捉えるだけでは不十分であり「個々の要素を吟味し」さらに「それぞれの関係がどうなっているのか?」まで深掘りしていく必要がある。
もしあなたがロジカルシンキングを鍛えることができれば、様々な現象や問題に対して、
- 適切に要素を分解し
- 要素間の関係を見極め
- 適切な判断や対応策を導き出す
ことが可能になる。
問題解決力が向上する
ロジカルシンキングのメリットの2つ目は、問題解決力が向上することだ。
「問題」は、発生場所を特定できなければ焦点が絞れず、無数の解決策すべてを試さなくてはいけなくなる。このような「絨毯爆撃」ではいつ成果が出るかがわからず、時間も労力も大きく浪費してしまう。
また「問題」には、かならずそれを生じさせている原因が存在する。その原因に対して解決策を講じない限り、すべての施策は対処療法止まりになってしまう。
これらを踏まえれば「問題解決」には、
- 問題の発生場所の特定(全体と部分の包含関係)
- 問題の根本原因の特定(全体と部分の因果関係)
の2つを捉える能力が必要不可欠であることはご理解いただけるはずだ。
もし、あなたがロジカルシンキングを鍛えることができれば「ロジックツリー」などの論理的思考のフレームワークを用いて、ロジカルに問題の発生場所を特定し、根本原因を突き止めることができるようになるはずだ。
提案力が向上する
ロジカルシンキングの効果の3つ目は、提案力が向上することだ。
ビジネスの世界では、あなたが思っている以上に企業や部門、立場によって人の考え方は大きく異なる。
このような状況の中であなたの提案を通すためには、それぞれの人たちの立場や考え方に左右されない「ロジック」を駆使して、提案内容を筋道立てて説明することが必要不可欠となる。
あなたの提案を「好き嫌いの世界」ではなく「良し悪しの世界」に持ち込みたいなら、ロジカルシンキングを鍛えるメリットは大きい。
コミュニケーション能力が向上する
ロジカルシンキングのメリットの4つ目は、コミュニケーション能力が向上することだ。
コミュニケーション能力は「相手の主張を正確に理解する能力」と「あなたの主張を正確に伝える能力」の2つで成り立っている。もしあなたがロジカルシンキングを鍛えることができれば、
- 全体の中で、相手はどの部分のことを伝えようとしているのか?
- 何を根拠に、どのような主張をしているのか?
を正確に見抜けるようになる。そのため、相手の主張を理解する際に「論点のズレ」や「事実と意見の混同」が起きにくくなる。また、あなたの主張を伝える際にも、
- 全体の中で、今はどの部分を伝えるべきか?
- 自分の意見を、どのような筋道で伝えるべきか?
などの論点やロジックを考えられるようになり、コミュニケーション能力が飛躍的に向上するはずだ。
仕事の生産性が向上する
ロジカルシンキングのメリットの5つ目は、仕事の生産性が向上することだ。
間違った問題設定は、間違った仮説を生む。そして、もし業務がかなり進んだ段階で間違いに気づけば、問題設定にまで遡って再検討する必要が生じてしまう。いわゆる「手戻り」といわれる現象だ。
ロジカルシンキングには「イシューツリー」という思考のフレームワークがあるが、もしあなたがロジカルシンキングを鍛えることができれば、仮説を立てる前にイシューツリーを使い「そもそも本質的な問題は何か?」を見極めることができる。
そうすれば、その後の仮説立案や仮説検証に無駄がなくなり、仕事の生産性は大きく向上するはずだ。
ロジカルシンキング頭の使い方|2つの論理展開手法
ロジカルシンキングには、大きくわけて2つの論理展開手法が存在する。これは一般に「帰納法」「演繹法」と呼ばれる。
帰納法とは何か?
まずは「帰納法」について解説していこう。
帰納法の「帰納」とは「物事が落ち着いて(帰)、法則に納まる(納)状態」という意味を指す。
この意味合いの通り、帰納法とは複数の実例を挙げ、それらの共通点を導き出して結論を導き出す論理展開手法のことだ。
帰納法の論理展開手法
例えば、以下が「帰納法」の頭の使い方の例だ。
上記の図の例のように、
- 複数の実例を挙げ
- 実例をもとに共通点を見出し
- 共通点を根拠に結論づける
という頭の使い方をするのが「帰納法」の特徴だ。
帰納法のロジックがしっかり成立しているかどうかは「なぜならば」という接続詞を使って論理展開を逆算してみることで簡単にチェックできる。例えば以下の要領だ。
気を付けてもらいたいのは、帰納法は複数の実例から共通点を見出して、それを根拠に結論づける論理展開手法である以上、
- 複数の実例自体に間違いがある場合
- 複数の実例から共通点を見出す際にロジックの飛躍がある場合
- 共通点から結論に至る筋道にロジックの飛躍がある場合
には破綻する。よって「帰納法」を使った論理展開をする場合には、必ず「なぜならば」という接続詞を使ったロジックチェックを怠らないようにしよう。
帰納法の活用例
ビジネスにおいて帰納法を活用する局面は「複数の周辺環境から」「方針を導き出す」局面だ。
つまり「ビジョンを策定する」「コンセプトを決める」「ターゲットを決める」「ポジショニングを決める」など「周辺環境(=複数の実例)を分析して方針を決める」際には帰納法の頭の使い方がフィットすることを頭に入れておこう。
演繹法とは何か?
演繹法とは「すでにあるルールに当てはめて結論を出す」論理展開手法のことを指す。
演繹法の「演」には「押し広める・説く」という意味があり「繹」には「糸口を引き出す」という意味がある。つまり「演繹」とは「広く説かれている法則(演)から、糸口を引き出す(繹)」ことだ。
演繹法の論理展開手法
例えば、以下が「演繹法」の頭の使い方の例だ。
この例のように、
- すでにルールが存在し
- そのルールに物事を当てはめてみて
- ルールに合致しているかどうかで結論を出す
という頭の使い方をするのが「演繹法」の特徴だ。
演繹法の活用例
ビジネスにおいて演繹法を使う局面は「決められた方針のもとに」「その方針に沿ったアクションプランを導き出したい時」だ。
例えば、先ほどの例のように「女性らしさを表現できる敏感肌用美容液に参入する」という方針が示された場合、演繹法の頭の使い方に沿ったアクションプランは以下の通りとなる。
①演繹法×商品開発
- 決められた方針(ルール):
女性らしさを表現できる敏感肌用美容液に参入する。 - 方針(ルール)に当てはめる事実:
女性の9割が、この試作品に「女性らしさを感じる」と答えた。 - 結論(アクションプラン):
よってこのコンセプトの試作品を商品化すべきだ。
②演繹法×価格設定
- 決められた方針(ルール):
女性らしさを表現できる敏感肌用美容液に参入する。 - 方針(ルール)に当てはめる事実:
敏感肌に悩む女性の7割が、+20%までの価格設定を許容した。 - 結論(アクションプラン):
よって店頭小売価格は、一般の敏感肌用美容液の+20%以内に設定すべきだ。
③演繹法×チャネル
- 決められた方針(ルール):
女性らしさを表現できる敏感肌用美容液に参入する。 - 方針(ルール)に当てはめる事実:
敏感肌に悩む女性は、現在ドラッグストアで美容液を購入している。 - 結論(アクションプラン):
よってメインの販売チャネルをドラッグストアに据えるべきだ。
③演繹法×プロモーション
- 決められた方針(ルール):
女性らしさを表現できる敏感肌用美容液に参入する。 - 方針(ルール)に当てはめる事実:
敏感肌に悩む女性は、ファッション誌の閲読率が高い。 - 結論(アクションプラン):
よってメインのプロモーションメディアをファッション誌に据えるべきだ。
ビジネスにおける演繹法の活用法は「方針(ルール)にプランを当てはめ、右か左か、あるいはGoかNo Goかの結論を出す」局面だ。
しかしここまでお読みになればお気づきの通り、演繹法は「すでに方針が存在し、かつその方針が正しいこと」を前提にしている。逆を言えば「方針」自体が間違っていれば、方針に当てはめて導き出す結論も間違ってしまうことになる。
ロジックは常に「前提→推論→結論」という筋道を辿るが、ビジネスにおいて演繹法を活用する場合、演繹法の「前提」である「方針(ルール)の正しさ」に強く依存することを認識しておこう。
ロジカルシンキングの整理の仕方|2つのフレームワークと活用法
続いてここからは「ロジカルシンキングのフレームワーク活用法」について解説しよう。
料理に例えれば「帰納法」や「演繹法」などの論理展開が「料理の手順」だとしたら、フレームワークは「料理の道具」に当たるものだ。
ピラミッドストラクチャーの活用法
ことビジネスにおいては、なんらかの結論を述べる際には、その根拠を示さなくてはならない。ピラミッドストラクチャーとは「結論」と「根拠」をピラミッド状に表現したフレームワークを指す。
通常は「結論」を頂点に、複数の根拠が下層に配置されピラミッド型の構造になるため「ピラミッドストラクチャー」と呼ばれる。
ピラミッドストラクチャーは「複数の事実」を通して「一つの結論」に導くことから、主に「帰納法」でロジックを構成する際に役立つフレームワークだ。
もしあなたが、なんらかの「結論」や「方針」を主張したい時には「ピラミッドストラクチャー」のフレームワークに当てはめて説明しよう。
そうすれば「なぜその結論や方針に至ったのか?」という質問に対して、根拠を含めた説得力のある説明ができるようになるはずだ。
ロジックツリーの活用法
ロジックツリーとは、決められたテーマをツリー状に分解することで選択肢を広げ「問題の発生個所」や「問題を引き起こしている原因」あるいは「問題解決の方法」を洗い出すのに適したフレームワークだ。
今回は、3つのロジックツリーを紹介しよう。
要素分解ツリー
要素分解ツリーとは「全体」を「部分」に分解していくロジックツリーを指す。よって、要素分解ツリーは「全体と部分」の包含関係を表すことになる。
問題解決では「問題の発生個所を特定する」という用途に使われることが多い。また、戦略立案においては「ターゲット設定を検討・分析する」という用途に使われる。
原因究明ツリー
原因究明ツリーとは、何らかの問題が生じた際に、その問題を生じさせている原因を究明することを目的としたロジックツリーだ。
原因究明ツリーは、先ほど解説した要素分解ツリーのように「全体と部分の包含関係」だけでなく「原因と結果の因果関係」にも着目するのが特徴だ。
例えば「結婚式場の売上が下がっている問題」を原因究明していくと以下の通りとなる。
イシューツリー
イシューツリーとは、何らかの目的に対して「何を検討すべきか?」という「考えるべきこと」を洗い出すためのロジックツリーだ。
イシューツリーも原因究明ツリーと同様に「全体と部分の包含関係」だけでなく「原因と結果の因果関係」にも着目するのが特徴だ。
例えば「WEBサイトのPVを上げるには?」という目的に対して「検討すべき内容」をイシューツリーで表現すると以下の通りとなる。
ロジックツリーは「一つの論点(全体)」を分解して「複数の結論(部分)」に導くことができるフレームワークであることから「演繹法」の頭の使い方が有益なフレームワークだ。
ピラミッドストラクチャーとロジックツリーの組み合わせ
これらを「ビジネスに活用する局面」で整理すると、以下のようなフレームワークになる。
もしあなたが「ロジカルシンキングの使い方」に悩んでいるのなら、次のように覚えておこう。
- 目的や方針を導きたい上流段階:
帰納法的な頭の使い方×ピラミッドストラクチャー - 目的や方針に基づいてアクションプランを導きたい下流段階:
演繹法的な頭の使い方×ロジックツリー
ロジカルシンキングの鍛え方
ロジカルシンキングは、誰でも身につけることができる「思考技術」だ。
そしてロジカルシンキングが才能や資質の話ではなく「技術」である以上、そこには再現性が存在する。つまり「方法と手順」を身につければ「誰でも」「例外なく」ロジカルシンキングをマスターすることが可能だ。
もしあなたが「ロジカルシンキングを仕事に活用できない」と悩んでいるなら、日々の業務の中で習慣にしやすいトレーニング方法を紹介しよう。
メールを使って「帰納法」を鍛える
まずおすすめしたいのは「日々のメール」を活用した帰納法のトレーニングだ。
例えばプロジェクトメンバーと会議をセットしたい場合、あなたはただ漫然と以下のようなメールを送ってはいないだろうか?
●●会議室にお集りください」
確かに簡潔に用件は伝わるが、もしあなたがロジカルシンキングを鍛えたいなら「用件だけ」のメールを打つ前に「帰納法的な頭の使い方」を実践する習慣をつけよう。例えば以下のような要領だ。
もしあなたがビジネスパーソンなら、毎日のように社内外の人たちに向けてメール発信をしていることだろう。多い日なら、相当な量のメールを送る日もあるはずだ。
だとすれば、日々のメールを「ロジカルシンキングのトレーニング」に活用できれば、頻度が多く習慣化しやすいため、ロジカルシンキングをマスターする早道となる。
報告書を使って「演繹法」を鍛える
続いておすすめしたいのは「日々の口頭報告」や「報告書」を活用した演繹法のトレーニングだ。
あなたがビジネスパーソンなら、必ず「上司」がいるはずだ。そして節目節目のタイミングで「上司に報告する機会」が存在していることだろう。
しかしあなたは日々の上司への報告の中で「報告がうまくいくかどうかの基準」を考えているだろうか?もし考えていなかったら、これを機会に「報告がうまくいく基準」を念頭に置きながら上司に報告する習慣をつけよう。例えば以下の通りだ。
技術を身につけるには、ひとつの基本技が身につくまでひたすら繰り返すことが重要だ。
ぜひ「日々のメール」や「上司への報告の機会」をうまく味方につけて、ロジカルシンキングをトレーニングする習慣を身につけて欲しい。
ロジカルシンキングの5つの限界
ロジカルシンキングは、これまで解説した数多くのメリットがある一方で、限界も存在する。
しかし、もしあなたが「ロジカルシンキングの限界」を十分に理解した上で味方につけることができれば、ロジカルシンキングでは辿り着けない新たな世界に踏み出すことができる。
「前提」の置き方次第で正解が変わる
論理は「前提」「推論」「結論」の3つのプロセスで成り立っている。そして「ロジカルシンキング」といえば、ややもすると「推論の妥当性」や「結論の良し悪し」に着目しがちだが、真に重要なのは「前提の置き方」だ。
「前提」を間違えば「推論」や「結論」はすべて間違うことになる。逆を言えば「前提の置き方」次第で、ロジカルシンキングの「正解」はいくらでも変わる。
そしてロジカルシンキングは、帰納法や演繹法など「推論の仕方」は教えてくれるが「前提の置き方」は教えてくれない。
裏付けとなる事実は無数に存在する
ロジカルシンキングは、事実の裏付けが伴って初めて説得力を持つ。しかし、ある主張に関する事実は無数に存在する。そして無数に存在する事実全てを収集し、検証することは物理的に不可能だ。
だとすれば、あなたの主張に対する「根拠」は、無数の事実の中から特定の事実だけを選ぶことになり、その選び方にあなたの恣意性が入ることになる。
よく「ロジカルシンキングは客観的である」といわれるが、それは幻想にすぎない。だとすれば「ロジカルシンキング」を絶対の存在と盲信するのではなく、主張に合理性を持たせるためのツールとして捉えることが重要だ。
論理を展開する「視点」は無数に存在する
ロジカルシンキングによく登場する手法が「要素分解」だ。そして要素分解をするには、必ず「視点」が必要となる。
例えば「売上を増やすには?」という問いに対して「要素分解の視点」を考えてみよう。ざっと挙げると、以下の通りだ。
- 地区別に要素分解(=視点)して、売上が低い地区の売上を増やす。
- 顧客の年代別に要素分解(=視点)して、売上が低い年代の売上を増やす。
- 商品別に要素分解(=視点)して、売上が低い商品の売上を増やす。
- 客数と客単価で要素分解(=視点)して、どちらかを増やす。
- 新規顧客と既存顧客で要素分解(=視点)して、どちらかの売上を増やす。
- …
ここまでお読みになればわかる通り「売上を増やす」という目的に対する「要素分解の切り口」は無数に存在する。そしてどのような「切り口」を想定するかは、結論を出すあなたが想定している「仮説」に依存する。
ロジカルシンキングは「要素分解が必要だ」とは教えてくれるが「要素分解の切り口」までは教えてくれない。「要素分解の視点」は、ロジカルシンキングとは別の能力だ。
因果関係が未来にも成立するとは限らない
ある問題が存在しているとき、問題を生じさせている原因を特定することができれば、その原因を取り除いたり、変化させたりすることによって問題を解決することができる。これがロジカルシンキングにおける「因果関係」の一般的な使われ方だ。
しかし変化が大きい現在においては、過去に成立した因果関係が将来も成立する保証はどこにもない。
今後は、過去の延長線上の未来を「想定」するよりも、過去とは異なる未来を「創り出す」ケースが増えてくる。そのようなケースでは、ロジカルシンキングはほとんど意味を持たない。必要なのは、未来を見通す洞察力だ。
ロジカルシンキングは意思決定には使えない
ロジカルシンキングの最大の誤解は、それが意思決定の方法であると考えられていることだ。
ロジカルシンキングは意思決定のための「材料」を提供してくれるが、それだけで意思決定はできない。もし論理だけで決められることがあるとすれば、それは人でなくてもできる意思決定だ。
解くべき問題を可能な限りロジカルに考え抜き、考え得る選択肢を並べたところで、前提条件が少しずれただけで結果は大きく変わってしまう。
複雑な現実を単純化・抽象化し、意思決定をしやすくするためにロジカルシンキングは必要不可欠だ。しかし最後の最後、その結果を元に適切な判断を行うためには、意思決定者の高い見識が求められることを肝に銘じておこう。
ロジカルシンキングの限界と逆手に取る方法
ロジカルシンキングの限界を整理すると、下記の通りになる。
- 「前提」の置き方次第で「正解」が変わってしまう。
- 「事実」が無数に存在し、裏付けとなる事実の選び方に恣意性が入ってしまう。
- 論理を展開する「切り口」が無数に存在し「仮説」に依存してしまう。
- 因果関係が未来にも成立するとは限らない。
- ロジカルシンキングと意思決定は別物。
ここまでお読みになって、あなたは「ロジカルシンキング=使えない」と感じてはいないだろうか?しかしそう考えるのは早計だ。ロジカルシンキングの限界トを理解するということは、別の見方をすれば、その限界を逆手に取る視点を手に入れたということでもある。
- 前提は疑ってみるべき
- 事実を疑い「例外」に着目してみるべき
- 人とは違う切り口で物事を捉えてみるべき
- 因果関係を疑ってみるべき
- 「価値観」や「信念」に基づいた意思決定も検討すべき
ロジカルシンキングを「ロジカルに」検証すると、様々な限界が見えてくる。
しかし、その限界を逆手に取る視点が持てれば「ロジカルシンキングを越えた」思考スキルを手に入れるチャンスとなる。
それはつまり、当たり前を当たり前に考えない「イノベーティブ発想」であり「価値創造力」だ。
ロジカルシンキングの本|おすすめ書籍2冊
締めくくりに、あなたにおすすめできる「ロジカルシンキングの本」を紹介しよう。選定した基準は下記の通りだ。以下のどれかに当てはまるものをピックアップした。
- k_birdが実際に読み、単純に「素晴らしかった」と思えるロジカルシンキング本。
- 実際に戦略立案実務や事例共有に役立っているロジカルシンキング関連書籍。
- 長年に渡って読み継がれており、時代を越えても変わらない「本質」や「原理」が見出せるロジカルシンキング関連本。
もちろん、すべて「なぜ読むべきなのか?」という解説付きだ。
ロジカルシンキング本おすすめ書籍-1:ロジカルシンキング
本書は、ロジカルシンキングを学ぼうと思ったら誰もが通るベストセラーであり「ロジカルシンキングの名著」だ。
著者である照屋氏はマッキンゼーのエディターとして活動した経験を持っており、マッキンゼーを一躍有名にした書籍としても知られる。
本書は「ピラミッドストラクチャー」や「MECE」「So What?/Why So?」など、今では当たり前のように使われるビジネスパーソンの「基本作法」を、日本に普及させた名著と言ってよい。
この書籍は多くのビジネスパーソンにとって「ロジカルシンキングの登竜門」的位置づけと言って良いだろう。もし、あなたが「理解」を越えて「ロジカルシンキングを使いこなしたい」なら、ぜひ一読を勧めたい必読書だ。
ロジカルシンキング本おすすめ書籍-2:入門 考える技術・書く技術――日本人のロジカルシンキング実践法
ロジカルシンキングは、あなたの頭の中にあるだけでは意味がない。
ビジネスの現場では、レポーティングや業務メール、あるいは提案書など「自分の考え」を文章に落とす局面は多い。
本書は、ベストセラーとなったバーバラ・ミントの「考える技術・書く技術」の翻訳者が著した、日本人向けのロジカルライティングの書籍だ。
ロジカルライティングは、ロジカルシンキングと異なり、常に「相手」を想定しなければならない。
本書の特筆すべき点は、ロジカルシンキングを「相手に合わせて」「文章に落とす」実行可能な方法論を、徹底的にわかりやすく解説してくれていることだ。
ビジネスとは、突き詰めれば人と人との間にある営みだ。
しかし「自分が伝えたいことをロジカルに伝える」ことはできても「相手が知りたいことロジカルに伝える」ことができる人は、そう多くない。
もし本書を手に取れば、あなたは「ロジカルシンキングを相手に伝わる形に変換する」スキルを身に付けることができるはずだ。
このブログから書籍化した本4冊
★「シャープな仮説を生み出す頭の使い方」を徹底解説
冒頭でも紹介したが、再度ここでも紹介させていただこう。
あらゆるビジネスは「仮説」こそが成否を握る。
なぜなら、仮説を生み出せなければ次の一手を見出しようがなく、検証のしようもなくなるからだ。つまり、ビジネスの成長は止まってしまうことになる。
しかし仮説思考の書籍の多くは、仮説思考の重要性は説くものの、肝心の「仮説思考の身につけ方」になると、
- 「センスが必要」
- 「経験の積み重ねが物を言う」
など「それを言ったらお終いよ」という結論で終わらせている書籍が多い。
しかし本書は、外資系コンサルティングファームと広告代理店を経験した筆者が「仮説思考に必要な頭の使い方の手順」を、豊富な事例とともに徹底解説している。よって、その手順通りに頭を使えば「センス」や「長年の経験」に頼ることなく、誰でも優れた仮説を導き出せるようになる。
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もしあなたがシャープな仮説を導き出せるようになりたいなら、ぜひ本書を手にとってみて欲しい。
★ロジカルシンキングでは学べない「視点力」と「法則力」を身につける※無料のオーディオブック特典付
人は誰しも「視点」を通してしか物事を考えることができない。
別の言い方をすれば「そもそも何を考えるべきか?」という論点(=イシュー)は、視点が決めてしまうともいえる。
また、どんなに適切な視点を置いたとしても「ああなれば→こうなるだろう」という「予測のパターン(=法則)」が頭の中になければ、確かな仮説を導き出すことはできない。
本書はビジネス書から「視点」と「法則」を発見し、思考の質とスピードを上げていく独学術を解説した書籍だ。
1つの「視点」しか持てない人は、1つの論点しか設定することができない。当然、導き出せる仮説も1つだけだ。
しかし5つの「視点」を持てれば、5つの論点を設定できるようになる。その結果、5つの仮説を導き出すことができるようになるはずだ。
もしあなたが自由自在に「視点」を操ることができるようになれば、物事の多様な側面に気づき、次々と「新たな可能性」を拓くことができるようになる。
また、数多くの「法則」をストックしていけば、様々な現象に「法則」を当てはめることで「筋の良い仮説」を瞬時に導き出すことが可能になるはずだ。
おかげさまで、本書はThe21や日経、STUDY HACKERなど多くのメディアに取り上げていただき、発売3か月で海外の翻訳出版も決定した。Amazonレビューでも、
- 視点力や仮説思考、抽象化スキルが身に付く良書
- これまでの読書術の常識を次々と塗り替えている目からウロコの本
- まさに「モノの見方を変える方程式」
など、ありがたい言葉を頂戴している。
もしあなたが「フレームワーク」だけでは得られない「視点力」と「思考スピード」を身につけたいなら、ぜひ本書で紹介する読書法を実践して欲しい。
★8ジャンル57個の仕事術で「実践力」を身につける
どのようなビジネスも、実践が伴わなければ成果は出ない。しかし、いざ「実践力」を身につけようとしても、その分野は、
- 時間管理術
- 段取り術
- コミュニケーション術
- 資料作成術
- 会議術
- 学び術
- 思考術
- 発想術
など多分野に渡り、最低8冊分の読書時間と書籍代がかかってしまうのが難点だ。
しかし、本書「超効率ハック」は、8つの分野の仕事術の「重要ポイントだけ」を抜き出し、ギュッと1冊に凝縮した書籍だ。
さらに、本書は「訓練や習慣化が必要な作業テクニック」ではなく「行動を変えるための頭の使い方」の解説に力を入れているため「頭のスイッチを切り替える」だけですぐに実践できるのも特色だ。
おかげさまで、本書を題材にしたSchooのオンライン授業では「思考法ジャンル」で人気ランキング1位を頂いた(139講座中)。また、lifehackerやOggiなど数多くのメディアで取り上げていただき、Kindleでは「オペレーションズ部門」でベストセラー1位を獲得している。
Amazonレビューでも、
- 「思考と行動の質を上げるヒントが盛りだくさん」
- 「読んでみると、頑張りどころを間違えてたことに気付かされる」
- 「仕事が速い人はこれをやってたんだな、ということがよくわかった」
など、ありがたい言葉を頂戴しており嬉しい限りだ。
もしあなたが「短時間で網羅的に仕事術を学びたい」「根本から仕事の生産性を高めたい」と感じているのなら、ぜひ手に取ってみて欲しい。
★ブランディングの理論と実践をつなぐ「ブランディングの教科書」
本書は、筆者の専門である「ブランディング」について解説した書籍だ。
ブランディングは、ややもすれば「デザインの話」「広告の話」「世界観の話」など、掴みどころのない抽象論に陥りがちだ。
しかしブランディングは「ブランド戦略」という言葉があるように、企業の成否を大きく左右する戦略のひとつだ。そして投資が伴う以上、一定の合理性と説明責任が求められる。決して、売上や利益から逃げてはならないのだ。
本書は、つい「感覚論」に陥りがちな「ブランディング」に対して「論理的な納得性」と「直感的な腹落ち感」の両面を追求した書籍だ。
「論理」が理解できなければ、ブランディングを体系的に理解することできず、再現性を生むことができない。
そして「直感的な腹落ち感」がなければ、ブランディングを実務に落とせず、成果をもたらすことができない。
本書は、広告代理店&外資系コンサルティングファームで培った「生の知見」と「体系的な解説」を通して、ブランディングの理論を実践へとつなげて解説している。
おかげさまで、本書はAmazon kindle売れ筋ランキング「消費者主義」ジャンルでベストセラー入りを果たし、Amazonレビューでも、
- 「ふわっとしたブランディングの本が多い中で、異彩を放っている」
- 「事例も多いので実践のイメージが湧きやすい」
- 「海外企業の事例ばかりが紹介されている輸入本だとピンとこない、という方にお薦め」
など、ありがたい言葉を頂いている。
もし本書を手にとって頂ければ、ブランディングの専門用語はもちろん、実践の手順や実務の勘所が、一通り学べるはずだ。
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終わりに
今後も、折に触れて「ロジカルで、かつ、直感的にわかる解説」を続けていくつもりだ。
しかし多忙につき、このブログは不定期の更新となる。
それでも、このブログに主旨に共感し、何かしらのヒントを得たいと思ってもらえるなら、ぜひこのブログに読者登録やTwitter、facebook登録をしてほしい。
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