この記事に辿り着いたあなたなら「視野を広げる方法が知りたい」あるいは「広い視野を持ちたい」と考えているはずだ。あるいは「視野を広げるトレーニングがしたい」と考えているのかもしれない。
巷には「ロジカルシンキング」の本が溢れ、ロジカルシンキング研修も活況を呈しているようだ。
しかし「視野を広げる能力」は「ロジカルシンキング」とは全く別の能力だ。
一般に、ロジカルシンキングは「前提を置き」→「推論を働かせ」→「結論に至る」という筋道を辿る。しかしロジカルシンキングは「推論の働かせ方」は教えてくれても「前提の置き方」は教えてくれない。
逆を言えば「前提の置き方」次第で「推論の働かせ方」が変わり、結果「結論」も変わってしまうのがロジカルシンキングだ。
ロジカルシンキングは、前提の置き方次第で結論が変わる。しかしこれを逆手に取れば「前提の置き方次第で、ロジカルシンキングでは辿り着けない新たな世界を切り拓くことができる」ともいえる。
そして「新たな世界を切り拓く」上で欠かすことができないのが「視野の広さ」だ。
よく「イノベーションとは、常識を覆し、新たな常識を創り出すことである」といわれるが「視野の広さ」はあなたの「常識(=置いている前提)」を覆し、新たなアイデアやイノベーションを生む源となる。
今回は、新たなアイデアやイノベーションを生む源泉である「視野の広さ」について解説する。また、合わせて視野を広げるトレーニングをする上で有効な12個の習慣を具体的に紹介する。
「視野の広さ」は、あなたが見ている世界の広さとイコールだ。そして人は、自分が見えている範囲でしか、考え、行動することができない。
もしあなたが「視野を広げたい」と考えているのなら、今回の記事を「視野を広げるためのチェックリスト」として活用いただきたい。そうすれば、自分の幅が広がり「あなたが見える世界」は格段に広がるはずだ。
★仕事の質と生産性を上げたい方へ。このブログから書籍化した「超効率ハック」。
冒頭で僭越ながら、拙著を紹介させて頂こう。
拙著「超効率ハック」は、仕事の生産性向上を目的に「時間・段取り・コミュニケーション・資料作成・会議・学び・思考・発想」という8つのジャンルのライフハック術を網羅的にカバーしている書籍だ。
もちろん、視野を広げるために身につけておくべき「思考法」や「発想法」なども、各1章ずつ割いて解説している。
本書が類書の「ライフハック本」と大きく異なる点は「EXCELの関数を覚える」「ショートカットキーを使い倒す」などの小手先のテクニックではなく、その大元にある「頭のスイッチの切り替え方」を解説している点だ。
どんなに時短テクニックを駆使して処理スピードを上げたとしても、その作業自体が必要のない作業だったとしたら意味がない。しなくてもいいことを効率的に行うことほど、無駄なことはない。
この場合、必要なのは「作業の処理スピードを速める力」ではなく「不必要な作業を見極め、周囲を納得させる力」だ。
本書は、このような「頭のスイッチの切り替え方」を8ジャンル57項目に分けて、具体的な処方箋を交えながら紹介している。
おかげさまでSchooやlifehacker等で紹介いただき、Amazon Kindleの「オペレーションズ部門」でベストセラー1位を頂いている。Amazonレビューでも、
- 「どのライフハック本と比べても異色であり、学べることが多かった」
- 「読んでみると、頑張りどころを間違えてたことに気付かされる」
- 「仕事が速い人はこれをやってたんだな、ということがよくわかった」
など、ありがたい言葉を頂いている。
もしあなたが「仕事術をマスターしたい」「仕事の生産性を劇的に高めたい」と感じているのなら、ぜひ一読してみて欲しい。
- ★仕事の質と生産性を上げたい方へ。このブログから書籍化した「超効率ハック」。
- 視野とは?視野の意味を定義する
- 「視野を広げる」とは?全体を見る力を身につける
- 視野を広くするコツと12個のトレーニング方法
- 視野を広くするコツとトレーニング方法-1:「部分」から「全体」へ視野を広げる
- 視野を広くするコツとトレーニング方法-2:「独立」から「関係」へ視野を広げる
- 視野を広くするコツとトレーニング方法-3:「直接」から「間接」へ視野を広げる
- 視野を広くするコツとトレーニング方法-4:「単独」から「組み合わせ」へ視野を広げる
- ★このブログから書籍化!「シャープな仮説を生み出す頭の使い方」を徹底解説
- 視野を広くするコツとトレーニング方法-5:「個別」から「グループ」へ視野を広げる
- 視野を広くするコツとトレーニング方法-6:「論理」から「前提」へ視野を広げる習慣
- 視野を広くするコツとトレーニング方法-7:「規模」から「範囲」へ視野を広げる
- 視野を広くするコツとトレーニング方法-8:「絶対」から「相対」へ視野を広げる
- 視野を広くするコツとトレーニング方法-9:「法則」から「例外」へ視野を広げる
- 視野を広くするコツとトレーニング方法-10:「コンテンツ」から「コンテキスト」へ視野を広げる
- 視野を広くするコツとトレーニング方法-11:「時点」から「推移」へ視野を広げる
- 視野を広くするコツとトレーニング方法-12:「現在」から「未来」へ視野を広げる
- 視野・視座・視点を広げる本|おすすめ書籍3冊
- このブログから書籍化した本3冊
- その他の解説記事とおすすめ書籍
- 終わりに
視野とは?視野の意味を定義する
あなたは、ビジネスにおいて周囲や上司から、
- 長期的な観点で物事を考えろ
- 全体を押さえてから物事を考えろ
と諭されたことはないだろうか?もしあるとすれば、それは物事を見る「視野の広さ」に起因する問題だ。
「視野」とは、別の言い方をすれば「物事を見たり考えたりする範囲」のことを指す。
重要なので繰り返すが「視野の広さ」は、あなたが見ている世界の広さとイコールだ。だとすれば、視野の広さはあなたが物事を考える上での前提となる。
下の図でいえば「赤い円の大きさ」が「視野の広さ」であり「前提」だ。
例えあなたがどんなにロジカルシンキングに長けていたとしても、ロジカルシンキングの前提となる「視野」が狭ければ、あなたの仕事は幅が狭いものとなり、宝の持ち腐れとなることがおわかりいただけるはずだ。
「視野を広げる」とは?全体を見る力を身につける
「視野を広げる」とは-1:視野が狭いことのデメリット
視野が狭いことのデメリットは、社会人として、ひいては人間としての幅が大きく狭まってしまうことだ。その結果「仕事ができない人」というレッテルを貼られることになる。
「井の中の蛙大海を知らず」ということわざにもある通り、狭い視野に囚われたままでは論理や発想の幅が狭くなり「新たな可能性」に気づくことができない。
また、視野が狭いままでは個別の事象に振り回され「全体の傾向」や「長期的な見通し」に基づいた大局的な判断ができない。そのため、リーダーとしての資質を疑われてしまうことになる。
更には、視野が狭いと「自分に見えている範囲」でしか物事を考えられないため「自分が見えている範囲外」に想像が至らず、思い込みや偏見の温床となる。
よく人間の度量に対して「器が大きい」「器が小さい」などと表現することがあるが、視野が狭いとあなたの成長を妨げ「器が小さい」人間になりがちだ。これは、本来あなたが考えるべきイシュー(=論点)を狭めてしまうため、リーダーや管理職を目指す上で、大きなデメリットになる。
「視野を広げる」とは-2:視野を広げるメリットと重要性
「視野を広げる」とは物事を俯瞰的に捉え、全体を見る力を身につけることで新たな気付きを得ることを指す。
もしあなたが視野を広げるコツを理解し、視野を広げる習慣を身につけることができれば、今までにない物事に気づけるようになり「目に見える変化」の奥底にある本質を洞察することが可能になる。
ビジネスは、有限なリソースの中で選択と集中の繰り返しだ。そして常に「何を選択し」「何に集中するか」の決断を迫られる。その際には、
- 全体を見て、全体像を把握し
- 全体と部分の関係を理解し
- 中長期的な競争力強化のために何を優先すべきか
を考えなければならない。もし、あなたが視野を広げることができれば、些末な事情に囚われずに全体の傾向を見抜いた上で、ビジョンや戦略あるいは目標を決定することができるようになる。
更には、視野を広げることでアナロジーを駆使し自分の成長を加速することも可能になる。
アナロジーとは「自分が知っている情報や経験」を「自分が知らない分野」へ応用することを指す。もしあなたがアナロジーを駆使することができれば、あらゆる物事を別の分野に応用して学びの対象にすると同時に、アウトプットの対象にすることができるようになる。
視野が狭い人は「異なる分野に応用する習慣」がないため「これはこれ、あれはあれ」とすべての情報や経験を別々に考えてしまう。そのためまったく応用が利かなくなるが、もしあなたが視野を広げアナロジーを駆使することができれば、自身で得た学びを別の分野に応用することで、成長の速度を数倍にすることも可能になるはずだ。
視野を広くするコツと12個のトレーニング方法
視野を広げる重要性が理解できたところで、ここからはあなたの視野を広げるトレーニング方法を二項対立形式で紹介していこう。
あえて二項対立としている理由は以下の2点だ。
- 二項対立とすることで、あなたが見逃している「もう片方の着眼点」への気づきを促し、あなたの視野を広げるため。
- 二項対立とすることで、背反する2つの着眼点を高いレベルで両立させる思考を促すため。
大切なことなので繰り返すが、物事は「前提の置き方」次第で別の可能性が拓く。ぜひこの二項対立リストで視野を広げるトレーニングすることで、自分が無意識に置いている「視野の広さ・狭さ」に気づき、新しい世界を切り拓くきっかけにしてほしい。
視野を広くするコツとトレーニング方法-1:「部分」から「全体」へ視野を広げる
視野を広げるトレーニング習慣の1つ目は「部分」から「全体」へ視野を広げる習慣だ。
「部分」は組み合わせると「全体」になる。そして「全体」を分解すると「部分」で構成されていることがわかる。
「全体」と「部分」は、あなたの視野を広げる上で習慣にして欲しい着眼点だ。
例えば「エステ業界」で考えてみよう。エステ業界関係者からすれば「エステ業界」が「全体」となる。しかし近年では「家庭用美顔器」「家庭用スチーマー」などの美容家電が普及しており、エステ業界を侵食し始めている。
もし、あるエステ企業が「エステ業界=全体」と捉え、エステ業界の動向だけをモニターしていては「美容家電」というエステ業界を越えたライバルの台頭に気付けないことになる。
一方で、もし全体を「美容業界」として再定義することができれば「エステ業界」は「美容業界」の「部分」として捉えることができるようになる。その結果、美容家電業界の動向も注視できるようになるはずだ。
もしあなたが自分の視野を広げたいなら、クリティカルシンキングを通して「自分が捉えている全体は、本当に全体なのか?」「もし部分だと仮定すれば、全体とは何か?」を考える習慣をつけよう。
視野を広くするコツとトレーニング方法-2:「独立」から「関係」へ視野を広げる
視野を広げるトレーニング習慣の2つ目は「独立」から「関係」へ視野を広げる習慣だ。
物事は、独立して存在しえない。物事には、必ず「対象物」と「周辺との関係」という2つの側面が存在する。
人は物事を捉える際に「対象物」のみを捉え「周辺との関係」を見逃しがちだ。しかし物事は「対象物の変化」だけでなく「周辺との関係の変化」によって大きく動いていくことがある。
だとすれば、物事を「対象物」として独立して考えるだけでなく、視野を広げて「周辺との関係」という側面でも捉えてみよう。そうすれば、物事同士には、
- 相関関係
- 因果関係
- 包含関係
- 補完関係
- 相乗関係
- 依存関係
- 対立関係
- 矛盾関係
- 主従関係
- 代替関係
- 順序関係
- 連鎖関係
など、様々な「関係」があることに気が付けるはずだ。
もしあなたが「対象物」だけでなく、視野を広げて「関係」に対する洞察を深めれば、新たな発見を手に入れ、見える景色を広げてくれるはずだ。
視野を広くするコツとトレーニング方法-3:「直接」から「間接」へ視野を広げる
視野を広げるトレーニング習慣の3つ目は「直接」から「間接」へ視野を広げる習慣だ。
物事には「直接的に作用する事柄」と「間接的に作用する事柄」の2つの側面が存在する。
例えばマーケティングの世界でいえば「販売促進」は値引きや景品をつけることで直接的に販売につなげる取り組みだ。
一方で「ブランディング」は、直接的な販売には寄与しないが、長い時間をかけて知名度や好意度を上げていくことによって、間接的に販売に寄与させていく取り組みといえる。
「直接的な事柄」は目に見えてわかりやすいだけに、ついそこだけに着眼点を置きがちだ。しかし視野を広げて「間接的な事柄」にも目を向けてみよう。「間接的な事柄」は目に見えないだけに真似されにくく、うまくマネジメントすれば強い競争力になりえる。
視野を広くするコツとトレーニング方法-4:「単独」から「組み合わせ」へ視野を広げる
視野を広げるトレーニング習慣の4つ目は「単独」から「組み合わせ」へ視野を広げる習慣だ。
単独では素晴らしく思えても、組み合わせると大きくパフォーマンスが落ちるのは、よくあることだ。
例えば昔放映していたTV番組に「小学生クラス対抗30人31脚」という番組がある。小学生30人が片足ずつ紐で結び、30人で50メートル走のタイムを競う競技だ。
この競技は、1人の足の速い「スーパー小学生」がいても絶対に勝てない。なぜならこの競技の本質は「30人の組み合わせ」であり、そのタイムは「最も足の遅い小学生」に依存するからだ。
物事は、単独で捉えただけでは問題が解決しないことがある。もしあなたが「単独」ではなく「組み合わせ」まで視野を広げて考えることができれば、これまで光が当たらなかった「見えないボトルネック」が発見できるようになるはずだ。
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「シャープな仮説を生み出す頭の使い方」を徹底解説
視野を広くするコツとトレーニング方法-5:「個別」から「グループ」へ視野を広げる
視野を広げるトレーニング習慣の5つ目は「個別」から「グループ」へ視野を広げる習慣だ。
物事は、個別で認識するよりもグループで認識したほうが、新たな概念を発見しやすくなる。
例えばあなたが男性なら、多くの場合「配偶者」や「恋人」は女性だろう。ここで「配偶者や恋人」を「女性」としてグループ化して捉えると「女性は男性と違い子供を産む」「女性は男性と同様に社会進出が進みつつある…」など、個別性に縛られず一般化した形で、様々な切り口を考えることができるようになる。
そうすれば「男性と女性には、生物学的な違いがある」「男性と女性には、ジェンダーとしての見方がある」など、新たな概念・切り口を発見しやすくなるはずだ。
このように、物事は「個別具体的」に見るだけでなく、視野を広げて「グループ」として捉えることで、これまで自覚的でなかった新たな概念に気づくことができる。
視野を広くするコツとトレーニング方法-6:「論理」から「前提」へ視野を広げる習慣
視野を広げるトレーニング習慣の6つ目は「論理」から「前提」へ視野を広げる習慣だ。
ロジカルシンキングが普及してからというもの「論理の筋道が正しいかどうか?」を厳密に考える機運は大いに高まったといえる。
そして冒頭でも触れた通り、ロジカルシンキングは「前提」→「推論」→「結論」で構成されるが、ともすれば「推論」ばかりに焦点があてられ「前提」の部分がおざなりになりがちだ。
もしあなたが「ロジカルシンキング」から一歩抜け出したいなら、論理の筋道だけでなく「そもそもの前提」まで視野を広げて、疑ってかかる「クリティカルシンキング」や「ラテラルシンキング」の習慣をつけよう。もし「クリティカルシンキング」や「ラテラルシンキング」を通して「前提」を覆すことができれば、新たなイノベーションを生み出すきっかけとなるはずだ。
視野を広くするコツとトレーニング方法-7:「規模」から「範囲」へ視野を広げる
視野を広げるトレーニング習慣の7つ目は「規模」から「範囲」へ視野を広げる習慣だ。
製造業の世界では、生産規模が大きくなるほど単位コストが下がり、コスト競争力が増すといわれる。いわゆる「規模の経済」といわれる現象だ。
しかし「規模の経済」の前提は「生産した分だけ売れ続けること」であり、もし売れなければ在庫が溜まり、生産量は落ち、規模の経済は働かなくなる。
日本国内では、すでに人口は減少局面に移っており、企業努力とは無関係に消費人口は減っていく。つまり「規模の経済」は働きにくくなる。
よって、今後多くの企業で求められるのは、より広い視野で世の中を見渡す「範囲」の視点だ。
例えば自動車業界では、単に「たくさん車を売る」のは限界を迎えつつある。よって「リースやレンタル、シェアリングなどのビジネスに範囲を広げる」「都市全体のモビリティサービスに範囲を広げる」などが求められてくるだろう。
物事は、つい「規模」や「量」で捉えがちだが、視野を広げて「範囲」に目を向けてみよう。思わぬ地平が広がっているかもしれない。
視野を広くするコツとトレーニング方法-8:「絶対」から「相対」へ視野を広げる
視野を広げるトレーニング習慣の8つ目は「絶対」から「相対」へ視野を広げる習慣だ。
物事を絶対的に捉えるだけでは、判断を間違うことがある。
例えば、あなたが担当している商品のブランドイメージスコアを思い浮かべてみよう。当初思い描いていた通り、ブランドイメージスコアで最も高かった項目が「親しみやすさ」だったとしたら、どのような感想を持つだろうか?
「当初の目論見通りだから」と言って喜ぶのは時期尚早だ。
なぜなら、あなたの競合ブランドの方が「親しみやすさ」のスコアが高かったら、あなたのブランドは後塵を喫していることになるからだ。
あるいは、あなたのブランドの見込み客が「親しみやすさ」を重視してなかったとすればどうだろうか?
物事は、絶対的な視点だけではその良し悪しを分析できない。もしあなたが正しい判断をしたいなら、視野を広げて相対的に「比べる」視点を取り入れよう。
視野を広くするコツとトレーニング方法-9:「法則」から「例外」へ視野を広げる
視野を広げるトレーニング習慣の9つ目は「法則」から「例外」へ視野を広げる習慣だ。
人は何らかの法則を見つけると、それに従いたくなる生き物だ。
例えば「広告量を増やせば売り上げが上がる」という法則を見つけたら「売り上げを上げるために広告量を増やそう」という結論になり「人口密度が高い地区に出店すれば、多くの来店客数が見込める」という法則を見つけたら「来店客数を確保するために、人口密度が高い地区に出店しよう」という結論になる。
法則は、先々のリスクを低減する上で重要な考え方だが、一方で視野を広げて「例外」に目を向けることで、新たな可能性を見出すことが可能になる。
例えば「広告費ゼロなのに売り上げを上げ続けている企業があるのはなぜか?」「人口密度が低い地区に出店しているのに来店客数が多い店が存在するのはなぜか?」など「例外」を起点にした問いは、これまで常識とされていた「法則」を打ち破るきっかけになる。
視野を広くするコツとトレーニング方法-10:「コンテンツ」から「コンテキスト」へ視野を広げる
視野を広げる習慣の10個目は「コンテンツ」から「コンテキスト」へ視野を広げる習慣だ。
物事には「事実(=コンテンツ)」と「事実の裏側にある背景(=コンテキスト)」が存在する。
例えば、今あなたの目の前に椅子が置いてあると仮定しよう。「椅子という存在」そのものは事実であり「コンテンツ」だ。
しかし、もしあなたが「10キロのマラソンを終えて帰ってきたばかりである」という背景(=コンテキスト)が存在したら、あなたにとってその椅子は「疲れた体を癒してくれるありがたい存在」となるはずだ。
一方で、もしあなたが「引っ越し作業の真っ最中である」という背景(=コンテキスト)が存在したら、あなたにとってその椅子は「運び出さなきゃいけない面倒な存在」となる。
このように、例え同じ事実(=コンテンツ)でも「背景(=コンテキスト)」が変わることによって、コンテンツの意味合いが変わることがある。
もしあなたが「コンテンツ」から視野を広げ「コンテキスト」にも目を向けることができれば、事実そのものは変えられなくても「事実の裏側にある背景」を変えることで「事実の意味合い」を変えることができる。
視野を広くするコツとトレーニング方法-11:「時点」から「推移」へ視野を広げる
視野を広げるトレーニング習慣の11個目は「時点」から「推移」へ視野を広げる習慣だ。
物事を「その時点のみ」で捉えると、良し悪しの判断を間違うことがある。
例えば、仮に「今時点でのあなたの商品の市場シェアが40%」だとしたら、一般論として高いシェアといえるだろう。しかし「推移」に視野を広げた結果「ここ10年でシェアが下がり続けている」ことがわかったとしたら、大きな問題として認識するはずだ。
「いまこの時点でのスナップショット」だけでは「そのような状況に至った背景」を伺い知ることはできない。もしあなたが自分の視野を広げたいなら「今時点」だけでなく「そうなった推移」にも目を向けよう。
視野を広くするコツとトレーニング方法-12:「現在」から「未来」へ視野を広げる
視野を広げるトレーニング習慣の12個目は「現在」から「未来」へ視野を広げる習慣だ。
現在を起点に未来を考えるということは「現状の延長線上に未来がある」と考えるのとイコールだ。
しかし変化が激しい現在においては、必ずしも現状の延長線上に未来があるとは限らない。「イノベーションのジレンマ」にもあるように「現在を起点に考える」こと自体が大きなリスクになりえる時代だ。
もしあなたが視野を広げ「未来から逆算して現在を考える」ことができれば、過去や現在に囚われない大胆な発想ができるようになる。
未来のあるべき姿を考え、その姿を実現する上で必要な条件を洗い出し、一つ一つ条件を満たしていけば「現状の延長線上」とは異なる未来を創り出すことができるはずだ。
視野・視座・視点を広げる本|おすすめ書籍3冊
締めくくりに、あなたにおすすめできる「視座・視野・視点を広げる本」を紹介しよう。選定した基準は下記の通りだ。以下のどれかに当てはまるものをピックアップした。
- k_birdが実際に読み、単純に「素晴らしかった」と思える本。
- 実際に戦略立案実務や事例共有に役立っている関連書籍。
- 長年に渡って読み継がれており、時代を越えても変わらない「本質」や「原理」が見出せる書籍。
もしあなたが「視野が狭い」と悩んでいるなら、おすすめの本だ。
視野・視座・視点を変える本おすすめ書籍-1:賢さをつくる
もはや正解が存在しない現在では、ロジカルシンキングを越えて「どのように視座・視野・視点を切り替えて」頭を使うか?が問われてくる時代だ。
本書は「具体」と「抽象」の往復運動を「頭の良さ」と定義した上で
- 個別的(具体)⇔全体的(抽象)
- 短期的(具体)⇔長期的(抽象)
- 実用的(具体)⇔本質的(抽象)
- 五感的(具体)⇔概念的(抽象)
- 現実的(具体)⇔精神的(抽象)
- 一面的(具体)⇔多面的(抽象)
- 手段(具体)⇔目的(抽象)
- 問題解決力(具体)⇔問題設定力(抽象)
など、具体と抽象を対比させながら「概念化=コンセプチュアルスキル」の重要性と伸ばし方を解説している書籍だ。
ロジカルシンキングは、物事を論理的に深掘りしてくタイプの思考法だ。しかしそれに加えて本書が提示する「具体と抽象を往復する思考法」を身につけることができれば「自由自在に視野を広げる」ことが可能になる。
もしあなたが「論理的思考は得意だが、視野を広げるのが苦手」と感じているのなら、ぜひ一読をお薦めする。
視野・視座・視点を変える本おすすめ書籍-2:5W1Hの思考法
5W1Hといえば、もはや多くのビジネスパーソンにとって「基本」ともいえるフレームワークだろう。
その基本とは「Who(だれが)「When(いつ)」「Where(どこで)」「What(なにを)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」を明確にすることで、「より齟齬のないコミュニケーションをしましょう」というコミュニケーションの基本として語られることが多い。
しかし、本書のスタンスは次の2点で明確に異なる。
1つ目は「5W1H」を「問いのフレームワーク」として捉え直している点だ。5W1Hの「Why(なぜ)」を掘り下げていくことで、より本質的な思考が可能になり、これまでとは異なる広い視野で物事を捉えることが可能になる。その具体的な手順を解説しているのが大きな特徴だ。
2つ目は「5W1H」を「発想のフレームワーク」として捉え「5W1Hをずらす視点」を持つことで、これまでの常識とは異なるユニークなアイデアを生む方法論を解説している点だ。
「5W1H」と言えば、つい「使い古されたフレームワーク」という印象を持ちがちだか、使い方を工夫すれば「人とは違った視野や発想を得るきっかけ」にすることができる。
もしあなたが「視野が狭い」「発想するのが苦手」と感じているのなら、ぜひ本書を手に取ってみてほしい。
「5W1H」という誰もが知るフレームワークが、あなたを劇的に変えてくれるはずだ。
視野・視座・視点を変える本おすすめ書籍-3:メタ思考トレーニング
例え同じ事実でも、視点の置き方によってその事実に対する解釈は変わる。
本書は、物事を「一つ上の視点」から客観的に考えるメタ思考の重要性と実践法を解説した良書だ。
これまで個別に見ていた問題も、一つ上の視点から眺めると実は「全体に対する部分」であったことに気付くことができる。
また、一見、規則性なく散らばった「バラバラの問題」も、一つ上から俯瞰的に眺めることで、その「意味」や「関係性」を読み解き、それらを引き起こす根本課題を特定して解決することができるようになる。
ビジネスの世界では「型の奴隷になるな。型の創造者たれ」という言葉がある。
もしあなたがメタ思考を身に付けることができれば、複数の問題に対する根本課題を読み解き、問題解決に活かすことが可能になるはずだ
このブログから書籍化した本3冊
★既刊|「シャープな仮説を生み出す頭の使い方」を徹底解説
視野を広げることに関心があるあなたなら、すでに仮説思考の重要性はご存じのはずだ。
誤解を恐れずに言えば、あらゆるビジネスは「仮説」こそが成否を握る。
なぜなら、仮説を生み出せなければ次の一手を見出しようがなく、検証のしようもなくなるからだ。つまり、ビジネスの成長は止まってしまうことになる。
しかし仮説思考の書籍の多くは、仮説思考のメリットは説くものの、肝心の「仮説思考のマスターの仕方」になると、
- 「センスが必要」
- 「経験の積み重ねが物を言う」
など「それを言ったらお終いよ」という結論で終わらせているものが多い。
一方で本書は「仮説思考に必要な推論の手順」を、豊富な事例とともに解説している。よって、その手順通りに推論を重ねれば「センス」や「長年の経験」に頼ることなく、誰でも優れた仮説を導き出せるようになる。
おかげさまで、本書はflierとグロービスが主催する「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」にノミネートいただき、NewsPicksやNIKKEI STYLE、lifehackerなど多くのメディアで取り上げていただいた。Amazonレビューでも、
- 「ここ数年の仮説思考系の書籍で久々のヒット」
- 「自分オリジナルの武器にしていけそうな良書」
- 「一生もののスキルになるのは間違いない」
など有難い言葉を頂戴しており、増刷(四刷)を重ねている。
もしあなたがシャープな仮説を導き出せるようになりたいなら、ぜひ本書を手にとってみて欲しい。
★新刊|「仕事の質と生産性を上げる57の方法」を徹底解説
拙著「超効率ハック」は、仕事の生産性向上を目的に「時間・段取り・コミュニケーション・資料作成・会議・学び・思考・発想」という8つのジャンルのライフハック術を網羅的にカバーしている書籍だ。
ただし、類書の「ライフハック本」と大きく異なる点は「EXCELの関数を覚える」「ショートカットキーを使い倒す」などの小手先のテクニックではなく、その大元にある「頭のスイッチの切り替え方」を解説している点だ。
どんなに時短テクニックを駆使して処理スピードを上げたとしても、その作業自体が必要のない作業だったとしたら意味がない。しなくてもいいことを効率的に行うことほど、無駄なことはない。
この場合、必要なのは「作業の処理スピードを速める力」ではなく「不必要な作業を見極め、周囲を納得させる力」だ。
本書は、このような「頭のスイッチの切り替え方」を8ジャンル57項目に分けて、具体的な処方箋を交えながら紹介している。
おかげさまでSchooやlifehacker等で紹介いただき、Amazon Kindleの「オペレーションズ部門」でベストセラー1位を頂いている。Amazonレビューでも、
- 「どのライフハック本と比べても異色であり、学べることが多かった」
- 「読んでみると、頑張りどころを間違えてたことに気付かされる」
- 「仕事が速い人はこれをやってたんだな、ということがよくわかった」
など、ありがたい言葉を頂いている。
もしあなたが「仕事術をマスターしたい」「仕事の生産性を劇的に高めたい」と感じているのなら、ぜひ一読してみて欲しい。
★既刊|ブランディングの理論と実践をつなぐ「ブランディングの教科書」
本書は、筆者の専門である「ブランディング」について解説した書籍だ。
ブランディングは、ややもすれば「デザインの話」「広告の話」「世界観の話」など、掴みどころのない抽象論に陥りがちだ。
しかしブランディングは「ブランド戦略」という言葉があるように、企業の成否を大きく左右する戦略のひとつだ。そして投資が伴う以上、一定の合理性と説明責任が求められる。決して、売上や利益から逃げてはならないのだ。
本書は、つい「感覚論」に陥りがちな「ブランディング」に対して「論理的な納得性」と「直感的な腹落ち感」の両面を追求した書籍だ。
「論理」が理解できなければ、ブランディングを体系的に理解することできず、再現性を生むことができない。
そして「直感的な腹落ち感」がなければ、ブランディングを実務に落とせず、成果をもたらすことができない。
本書は、広告代理店&外資系コンサルティングファームで培った「生の知見」と「体系的な解説」を通して、ブランディングの理論を実践へとつなげて解説している。
おかげさまで、本書はAmazon kindle売れ筋ランキング「消費者主義」ジャンルでベストセラー入りを果たし、Amazonレビューでも、
- 「ふわっとしたブランディングの本が多い中で、異彩を放っている」
- 「事例も多いので実践のイメージが湧きやすい」
- 「海外企業の事例ばかりが紹介されている輸入本だとピンとこない、という方にお薦め」
など、ありがたい言葉を頂いている。
もし本書を手にとって頂ければ、ブランディングの専門用語はもちろん、実践の手順や実務の勘所が、一通り学べるはずだ。
その他の解説記事とおすすめ書籍
もしあなたが本解説以外にも関心があるのであれば、リンクを張っておくのでぜひ必要な記事を探していただきたい。
★17のビジネス分野別おすすめ書籍の解説
★思考力が身につくおすすめ書籍の解説
★ビジネススキルが身につくおすすめ書籍の解説
★ブランディング・マーケティングの知識が身につくおすすめ書籍の解説
終わりに
今後も、折に触れて「あなたをブランドにする思考法」の解説を続けていくつもりだ。
しかし多忙につき、このブログは不定期の更新となる。
それでも、このブログに主旨に共感し、何かしらのヒントを得たいと思ってもらえるなら、ぜひこのブログに読者登録やTwitter、facebook登録をしてほしい。
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