この記事に辿り着いたあなたなら「クリティカルシンキングとは何か?」あるいは「クリティカルシンキングの鍛え方を知りたい」と考えていることだろう。
このブログ「Mission Driven Brand」は、外資系コンサルティングと広告代理店のキャリアを持つ筆者が、ビジネスの「できない、わからない」を解決するブログだ。
クリティカルシンキングとは「物事を鵜呑みにせずに吟味し、適切に疑う思考態度」のことを指す。別名「批判的思考」とも呼ばれる。
「批判的」と聞くと何やら物騒な感じがするが「クリティカルシンキング(批判的思考)」はこれからのビジネスパーソンにとって必要不可欠な考え方だと断言できる。
なぜなら、今後ビジネスパーソンに求められるのは「決まったことを正確にできる人」ではなく「常識を疑い、自分の頭で考え、新しい価値を生み出せる人」だからだ。そのカギを握るのがクリティカルシンキングといえる。
よって、今回は「クリティカルシンキング」のポイントや鍛え方を、例題も交えながら解説する。その内容は以下の通りだ。
- クリティカルシンキングとは何か?
- クリティカルシンキングに必須の2つの実践ポイントとは?
- クリティカルシンキングの鍛え方の具体手順とは?
情報や知識は「目に見えるもの」だ。そして短時間で簡単に手に入る。しかし短時間で得られる競争力は、短時間で真似される競争力でしかない。
一方で「クリティカルシンキング」などの「思考力」は「目に見えないもの」であり、いったん身につければ、簡単には真似できない長期的な競争力になる。ぜひ今回の解説を、あなたの「持続可能な競争力」に結び付けて欲しい。
また、この記事の最後には、記事内で紹介した図版のスライド資料を用意しているので、ぜひ活用頂きたい。
- ★「シャープな仮説を生み出す頭の使い方」を徹底解説
- クリティカルシンキングとは何か?
- クリティカルシンキングのポイントと例題
- クリティカルシンキングの鍛え方と例題
- クリティカルシンキングの本|おすすめ書籍2冊
- このブログから書籍化した本4冊
- その他の解説記事とおすすめ書籍
- 終わりに
- クリティカルシンキングとは|批判的思考のポイントと鍛え方|スライド資料
★「シャープな仮説を生み出す頭の使い方」を徹底解説
本論に入る前に、僭越ながら拙著「推論の技術」を紹介させていただこう。
あらゆるビジネスは「仮説」こそが成否を握る。
なぜなら、仮説を生み出せなければ次の一手を見出しようがなく、検証のしようもなくなるからだ。つまり、ビジネスの成長は止まってしまうことになる。
しかし仮説思考の書籍の多くは、仮説思考の重要性は説くものの、肝心の「仮説思考の身につけ方」になると、
- 「センスが必要」
- 「経験の積み重ねが物を言う」
など「それを言ったらお終いよ」という結論で終わらせている書籍が多い。
翻って本書は「仮説思考に必要な推論の手順」を、豊富な事例とともに解説している。よって、その手順通りに推論を重ねれば「センス」や「長年の経験」に頼ることなく、誰でも優れた仮説を導き出せるようになる。
誤解を恐れずに言えば、あらゆるビジネスは「仮説」こそが成否を握る。
なぜなら、仮説を生み出せなければ次の一手を見出しようがなく、検証のしようもなくなるからだ。つまり、ビジネスの成長は止まってしまうことになる。
おかげさまで本書は6版を重ね「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」にノミネートいただいた。NewsPicksやNIKKEI STYLE、lifehackerなど多くのメディアで取り上げていただき、中国や台湾、香港でも出版が決定している。
さらにAmazonレビューでも、
- 「ここ数年の仮説思考系の書籍で久々のヒット」
- 「自分オリジナルの武器にしていけそうな良書」
- 「一生もののスキルになるのは間違いない」
など有難い言葉を頂戴しており、5刷を重ねている。
もしあなたがシャープな仮説を導き出せるようになりたいなら、ぜひ本書を手にとってみて欲しい。
クリティカルシンキングとは何か?
クリティカルシンキングとは?-1:わかりやすい意味
クリティカルシンキングの「クリティカル(critical)」とは「批判的」という意味を持つ。このことから、クリティカルシンキングは別名「批判的思考」とも呼ばれる。
「批判」といえば、日常用語では悪いニュアンスが伴うが、本来の「批判」の定義とは「良い部分・悪い部分を意識的に見分け、評価・判定すること」であり「先入観にとらわれず、中立的な姿勢を重視する」という意味だ。
これらを踏まえると、クリティカルシンキングのわかりやすい定義は下記のようになる。
物事を鵜呑みにせず適切に疑うことができれば、これまでの当たり前や常識を覆し、新たな側面の発見につながる。
- 自分の考えは正しいはず
- 専門家が言ってることは正しいはず
- みんなが頷いているから正しいはず
- 論理的に筋が通っているのだから正しいはず
- 常識的に考えると正しいはず
そんな思い込みに対して適切に疑う態度を持ち「別の可能性はないか?」を考え続けるのがクリティカルシンキングだ。
クリティカルシンキングとは?-2:クリティカルシンキングとロジカルシンキングの違い
ここで、クリティカルシンキングとロジカルシンキングの違いについても触れておこう。
ロジカルシンキングとは、筋道立てて矛盾なく推論を行う思考法のことを指す。
しかしロジカルシンキングは「前提の置き方」を教えてはくれない。別の言い方をすれば「前提の置き方」次第で「結論」は無数に存在することになる。
また、ロジカルシンキングは論理を展開する際の「切り口(視点)」を教えてくれるわけではない。物事を考える際には多様な切り口が存在するが「切り口の選び方」に正解はない。
あらゆるビジネスが未来に向けてなされる以上、ビジネスの世界に「正解」など存在しない。
置いている前提が1ミリでも変われば、その後の未来は大きく変わる。そして、過去に成立した因果関係が未来にも成立するとは限らない。
だとすれば、ビジネスに絶対的な模範解答などなく、常に「暗中模索」や「試行錯誤」があるだけだ。
クリティカルシンキングをマスターしている人はそのことを理解しており、どんなに素晴らしい本に書いてあったことも、どんなに論理の筋道が通っていたとしても、全ては「こうかもしれない」という可能性の一つに過ぎないと考える。
そのため、時に誰もが驚くような「別の可能性」を見出して、周囲を驚かせることがあるのだ。
クリティカルシンキングのポイントと例題
続いては、ロジカルシンキングとの違いを意識しながら、クリティカルシンキングの実践ポイントを解説していこう。
クリティカルシンキングの実践ポイント-1:「前提」を批判的にを疑う
まずは下記の図をご覧いただきたい。もしあなたがロジカルシンキングをご存知なら、下の図が「ロジックツリー」であることは、すぐに気づくはずだ。
ロジカルシンキングの場合、まずは「売上を上げる」という前提を「受け入れる」。受け入れた上で、右側の箱に、
- 新規の購入者数を増やす
- 既存顧客の購入頻度を上げる
- 客単価を上げる
など「売上を上げるための手段」へと分解していく。
しかし、クリティカルシンキングでは「売上を上げる」という前提を「受け入れる」前に、まずは「建設的に前提を疑う」ことから始めるのがポイントだ。
あらゆる企業において「売上を上げる」ことは必要不可欠だ。しかし「売上を上げる」ことは「利益を上げる」ための手段であり目的ではない。
ビジネスの局面によっては「売上を上げる」より「コストを下げ、利益を増やす」ことのほうが重要な局面がある。
また、例えどんなに高い売上を上げたとしても、それ以上にコストがかかり利益がマイナス(つまり赤字)になってしまえば本末転倒であることは、あなたも理解できるはずだ。
だとすれば「売上を上げる」という前提をいったんは疑い「利益を上げる」ことを目的にすれば、その手段は「売上を上げる」だけでなく「コストを下げる」という別の選択肢も見えてくる。
このように、ロジカルシンキングは、
- 目的を「前提」として受け入れて
- その前提を元に論理の筋道を考えていく「思考技術」
であることがわかる。一方でクリティカルシンキングは、
- 「目的という前提」そのものを建設的に疑い
- 別の可能性を探そうとする「思考態度」
であるといえる。
クリティカルシンキングの実践ポイント-2:「切り口(視点)」を批判的に疑う
続いて、以下の図をご覧いただきたい。こちらも「ロジックツリー」の展開例だ。
もし「売上を上げる」場合、想定される手段は先ほど解説した通り、
- 新規の購入者数を増やす
- 既存顧客の購入頻度を上げる
- 客単価を上げる
のいずれかとなる。そしてこれらは、
- MECE(モレなくダブリなく)が成立している
- 「売上を上げる」という目的に対する手段として、因果関係が成立している
という2つを満たしてることから「ロジカルシンキング的には」全く問題のないロジックツリーだ。
しかしあなたがクリティカルシンキングを身につけたいなら、適切に疑う思考態度を持たなければならない。例えば「分解の切り口は、本当に正しいのか?」という疑い方だ。
確かに売上を上げるためには、
- 新規の購入者数を増やす
- 既存顧客の購入頻度を上げる
- 客単価を上げる
のどれかを実現しなければならない。
しかしこれらはすべて「企業側から見た視点」であり「市場側から見た視点」が入っていない。
だとすれば「市場から見た視点」を取り入れ、以下のような切り口で分解するのはどうだろうか?
売上高を「市場規模×市場シェア」という切り口で分解すれば、
- 売上を上げるために、市場を広げていくべきなのか?
- 売上を上げるために、市場シェアを上げるべきなのか?
という「市場」を加味した「戦略レベルの検討」ができるようになる。もし市場が成長局面なら「市場を広げる」という成長戦略が優先課題となるかもしれない。
あるいは市場が成熟局面なら「競合ブランドからのブランドスイッチを促す」という競争戦略が優先課題となりうる。
鋭いあなたならお気づきの通り「論理の筋道が正しい(=ロジカルシンキング的視点)」ことと「論理の筋道を考える際の切り口が正しい(=クリティカルシンキング的視点)」こととは、まったく別次元の問題だ。
「論理的に正しい」ことと「ビジネス的に正しい」ことは、必ずしもイコールにならない。
だからこそ「論理的に正しいからOK」ではなく「本当にその切り口(=論点)で正しいのか?」を疑い続ける思考態度が必要となる。それがクリティカルシンキングのポイントだ。
クリティカルシンキングの鍛え方と例題
クリティカルシンキングとは何か?が理解できたら、続いては「クリティカルシンキングの実践ポイント」について具体例を交えて解説していこう。
クリティカルシンキングの鍛え方と例題-1:適切に疑う「視点」を持つ
この記事をお読みのあなたなら、すでに「ロジカルシンキングとは何か?」について理解していることだろう。
ロジカルシンキングの本を読めば、必ずといっていいほど登場するのが「So What?/Why So?」のフレームワークだ。
「So What?」とは「だから何?」という意味合いであり「現在持っている情報から、主張や結論を導き出す際の問いかけ」だ。
また「Why So?」とは「なぜ、そう言えるのか?」という意味合いであり「結論に対して、納得できる理由があるかを確認する問いかけ」と言える。
しかし賢明なあなたならお気づきだと思うが「So What?/Why So?」は「原因と結果」や「根拠と結論」など、物事の因果関係を検証するためのフレームワークであり「前提を疑う視点」や「多様な切り口(=イシュー)を見出す視点」が入らない。そのため、現状を覆し、別の可能性を切り拓くのには向いていないのが難点だ。
もしあなたがクリティカルシンキングを実践したいなら「So What?/Why So?」以外に持っておきたいのが、以下の2つの視点だ。
- True?-本当か?
- Anything else?-他には?
適切に疑う視点を持つ-1:True?(本当か?)
クリティカルシンキングに必要な視点の1つ目は「True?(本当か?)」という視点だ。
ビジネス環境が目まぐるしく変化している現在では「今までの方法でうまくいったのだから、これからもこの方法でうまくいくはずだ」といった考え方は通用しない。
例えば、これまで小売業界では「整然とした商品陳列と売れ筋把握」が成功要因とされてきたが、その常識を「True?(本当か?)」と問いかけたのがドン・キホーテだ。
ドン・キホーテは「魔境感のある商品陳列」と「本当に売れるの?と思えるような見せ筋の仕入れ」という常識を覆すアプローチで売上を伸ばしており、ビジネス 前提を疑うことで成功している事例だ。
このように、これまでの「当たり前」や「常識」を「True?(本当か?)」と疑うことができれば、様々な可能性に思考を巡らせることができる。
適切に疑う視点を持つ-2:Anything else?(他には?)
クリティカルシンキングに必要な視点の2つ目は「Anything else?(他には?)」という視点だ。
例えば以下の通りだ。
- タイの高級洋菓子市場は市場規模が拡大している。
→高級洋菓子市場が拡大しているのはタイだけなのか?その他の国はないのか?
→高級洋菓子市場以外は拡大していないのか?例えばカジュアルギフト市場はどうか? - 自社にとって「タイの高級洋菓子市場」は魅力的な市場だ。
→市場が拡大しているだけで「魅力的」といえるのか?
→市場の成長性だけでなく、市場規模は十分か?
→競争環境は激しくないのか?
→自社の強みは活かせるのか?
このように、現在の視点に対して「Anything else?(他には?)」という視点を持てれば、より広い視野で、かつ精緻に物事を捉えることができるようになる。その結果、より確度の高い意思決定へとつながるはずだ。
クリティカルシンキングの鍛え方と例題-2:適切に疑う「思考習慣」を持つ
続いて、クリティカルシンキングの鍛え方を、問題解決プロセスに準じて解説しよう。
適切に疑う思考習慣を持つ-1:現状を疑う
冒頭で、クリティカルシンキングとは「物事を鵜呑みにせずに吟味し、適切に疑う思考態度」だと解説したが、クリティカルシンキングを実践する習慣を持てれば、これまで当たり前すぎて誰も気づかなかった問題に気づけるようになる。
なぜなら、問題発見は「現状の在り方」や「現状の方法」を疑うことから始まるからだ。
そして当たり前のことだが、そもそも問題を発見できなければ、問題を解決することはできない。
上記を踏まえれば、本質的な問題を発見し解決するには、クリティカルシンキングが必須のスキルであることがご理解いただけるはずだ。
もしあなたがクリティカルシンキングを鍛えたいなら、まずは現状を適切に疑う(True?)ことから始めよう。
そうすれば「時代に合わなくなった常識」「不合理なルール」が認識できるようになり、問題解決のスタートラインに立てるようになるはずだ。
適切に疑う思考習慣を持つ-2:問題を疑う
現状を疑い問題が発見できたら、次は「問題を疑う」ステップだ。より分かりやすく理解するために、具体例を交えて解説しよう。
もしあなたが、テーマパークの責任者だったと仮定しよう。
そのテーマパークは驚くほどの盛況で、毎日のように開門ゲート前に行列ができる状況だ。
責任者であるあなたにとっては嬉しい限りだが、一方でゲート付近は極端に狭い作りのスペースになっているため、ゲートが開いて群衆が一斉に走り出した際に、互いの肩がぶつかりあうような状況だ。
つまり、いつ事故が起きてもおかしくない状況といえる。
あなたは責任者として現場担当者に改善策を検討させたところ、以下のような提案が挙がってきた。
- 問題:ゲート付近が極端に狭い作りになっていること
- 解決策:ゲート付近に工事を入れ、人同士がぶつからないようにスペースを広げる
この問題解決策は、問題を「ゲート付近が極端に狭いスペースになっていること」と定義している。
しかしクリティカルシンキングとは「物事を鵜呑みにせずに吟味し、適切に疑う思考態度」のことだ。よって責任者であるあなたは、本当に「ゲート付近が極端に狭いスペースになっていること」が問題なのか?(=True?)と疑わなければならない。
そして、もし問題そのものを適切に疑うことができれば、
- 真の問題は「ゲート付近が極端に狭い作りになっていること」ではなく「入場者が一斉に走り出してしまうこと」だ。
という新たな気づきを得ることができる。
そうすれば、入場者が一斉に走り出さないように「入場直前に、テーマパーク内で使えるクーポン冊子を配る」という別の解決策を導き出すことも可能になる。
入場者がクーポン冊子を手に取れば、走りながら文字は読めないため急ぐ人を減らすことができるからだ。
このように「問題」は「問題そのものを疑い、捉え直す」ことで、解決が容易になる場合がある。
上記の例の場合「ゲート付近に工事を入れること」と「入場直前にクーポン冊子を配ること」では、後者の方がはるかに手間がかからず、低コストで問題を解決できるはずだ。
もしあなたがクリティカルシンキングを鍛えたいなら、問題を発見した際には「その問題の捉え方は、本当に正しいのか?」と適切に疑う(True?)習慣をつけよう。そしてうまく問題を捉え直すことができれば、驚くほど簡単に問題解決に至る場合がある。
適切に疑う思考習慣を持つ-3:思考の偏りに気づく
問題の解決策を考える際に、多くの人が陥りがちなのが心理バイアスだ。
「バイアス」とは「偏り」のことであり、人が人である以上「価値観」や「性格」も含めて「心理的な偏り」は避けようがない。
しかし、あらかじめ「人はどのような心理に偏りやすいのか?」を知っておけば、常に「この考えはバイアスがかかっていないか?」と疑えるようになりバイアスを避けやすくなる。
特に、多くの人が陥りやすい心理バイアスは以下の通りだ。
- 現状維持バイアス:
変化を避け、現状を維持したくなる心理バイアス - リスク回避性向:
得られる利益の大きさより、失う損失の大きさを重視してしまう心理バイアス - バンドワゴン効果:
みんなが良いと評価しているものを高く評価してしまう心理バイアス - ハロー効果:
目立ちやすい特徴に引っ張られ評価してしまう心理バイアス - フレーミング効果:
知らないうちに視点や枠組みを固定してしまう心理バイアス
心理バイアスが恐ろしいのは、多くの人がこれらのバイアスに対して無自覚であることだ。つまり、疑うきっかけや余地がないまま、無意識に受け入れてしまっているともいえる。
いったん疑いはじめれば「何を疑うべきか」は自然と見えてくることが多いが、そもそもバイアスに無自覚で「疑う気がない」あるいは「疑うということを思いつかない」ときには、疑う思考回路自体が働かなくなる。
もしあなたがクリティカルシンキングを鍛えたいなら、様々な心理バイアスに自覚的になり、常に「自分は心理バイアスに囚われていないか?」と疑う習慣を持ち続けよう。
適切な思考習慣を持つ-4:別の可能性を考え続ける
問題解決策を立案する際には、自分に対して常に「True?」と問いかけることで前提を疑い「Anything else?」と問いかけることで別の可能性を模索しつづけよう。
例えば、以下のロジックツリーをご覧になってほしい。法人営業における一般的なロジックツリーだ。
ここまでお読みのあなたなら「このロジックツリーを鵜呑みにしない」のがクリティカルシンキングであることはご理解いただけているはずだ。
仮に「売上を上げるには?」という前提が正しいとした場合、分解の切り口には、どのような「別の可能性」が考えられるだろうか?
例えば、以下のロジックツリーは「売上は営業が上げるもの」という前提を疑い(=True?)、それ以外のどんな可能性がありうるか?(=Anything else?)というクリティカルシンキングの視点で作成したロジックツリーだ。
もし広報活動で商品カテゴリー自体の社会的ニーズを創造することができれば、それは市場が広がることを意味するため、売上向上につながりやすくなる。
またマーケティング活動では、ブランドマーケティングによって商品の知名度が上がれば、それだけ引き合いの数は多くなり、売上向上につながりやすくなる。
また、コンテンツマーケティングを通して資料請求数が増えれば、こちらも売上向上に寄与していくはずだ。
これらのように「売上を上げるのは営業だけ」「改善すべきは営業活動プロセスだけ」と考えるのではなく、常に「前提は正しか?(=True?)」「他にはないか?(=Anything else?)」と考え続ける習慣を鍛えることができれば、あなたはすでに立派なクリティカルシンカーだ。
クリティカルシンキングの本|おすすめ書籍2冊
締めくくりに、あなたにおすすめできる「クリティカルシンキング本」を紹介しよう。選定した基準は下記の通りだ。以下のどれかに当てはまるものをピックアップした。
- k_birdが実際に読み、単純に「素晴らしかった」と思えるクリティカルシンキング本。
- 実際に実務や事例共有に役立っているクリティカルシンキング関連書籍。
- 長年に渡って読み継がれており、時代を越えても変わらない「本質」や「原理」が見出せるクリティカルシンキング本。
もちろん、すべて「なぜ読むべきなのか?」という解説付きだ。
クリティカルシンキング本おすすめ書籍-1:ビジネス思考法使いこなしブック
ロジカルシンキング・ラテラルシンキング・クリティカルシンキングという3つの思考法を体系的に扱っている書籍は、そう多くはない。そのような中で、それぞれの思考法の違いも含めて、わかりやすくかつ体系的に学べるのが本書の特徴だ。
本書では3つのキャラクターが登場し、同じ問題に対してそれぞれのキャラクターがロジカルシンキング・ラテラルシンキング・クリティカルシンキングの異なるアプローチで問題解決策を立案する。その際に「どのように結論が変わりえるか?」という比較がなされるため、それぞれの思考法の違いが理解しやすいのが特徴だ。
また、表紙の画像をご覧いただければわかる通り、内容はとっつきやすく物語形式で描かれているため「クリティカルシンキングとは何か?」「クリティカルシンキングはロジカルシンキングと何が違うのか?」と迷いがちな初心者にはわかりやすいはずだ。
もしあなたが「クリティカルシンキングは難しそう」と感じるなら、初めのとっかかりとしてふさわしい書籍だ。
クリティカルシンキング本おすすめ書籍-2:入社1年目で知っておきたい クリティカルシンキングの教科書
あなたは「論理的思考は理解できるが、なかなか実践できない」と悩んではいないだろうか?
例え論理的思考の方法論が理解できたとしても、誰にも認識されていない課題を自ら設定できなかれば、主体的な行動を起こすことはできない。そして「誰にも認識されていない課題」を設定する上で必要不可欠なのがクリティカルシンキングだ。
本書は、主体的な課題設定ができる「クリティカルシンカー」になるために必要な「実践のプロセス」や「重要ポイント」をステップごとに提供してくれている。
もしあなたがクリティカルシンキングを「実践」に落とし込みたいなら、ぜひ手元に置いておきたい書籍だ。
このブログから書籍化した本4冊
★「シャープな仮説を生み出す頭の使い方」を徹底解説
冒頭でも紹介したが、再度ここでも紹介させていただこう。
ここまでお読みになったあなたなら、クリティカルシンキングには、仮説思考が必須であることがおわかりいただけているはずだ。
なぜなら、例え「前提を疑う視点」で物事を眺めたとしても「別の側面」としての仮説が立てなければ、その先のステップには進めないからだ。
しかし仮説思考の書籍の多くは、仮説思考のメリットは説くものの、肝心の「仮説思考のマスターの仕方」になると、
- 「センスが必要」
- 「経験の積み重ねが物を言う」
など「それを言ったらお終いよ」という結論で終わらせているものが多い。
翻って本書は「仮説思考に必要な推論の手順」を、豊富な事例とともに解説している。よって、その手順通りに推論を重ねれば「センス」や「長年の経験」に頼ることなく、誰でも優れた仮説を導き出せるようになる。
誤解を恐れずに言えば、あらゆるビジネスは「仮説」こそが成否を握る。
なぜなら、仮説を生み出せなければ次の一手を見出しようがなく、検証のしようもなくなるからだ。つまり、ビジネスの成長は止まってしまうことになる。
おかげさまで本書は6版を重ね「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」にノミネートいただいた。NewsPicksやNIKKEI STYLE、lifehackerなど多くのメディアで取り上げていただき、中国や台湾、香港でも出版が決定している。
さらにAmazonレビューでも、
- 「ここ数年の仮説思考系の書籍で久々のヒット」
- 「自分オリジナルの武器にしていけそうな良書」
- 「一生もののスキルになるのは間違いない」
など有難い言葉を頂戴しており、5刷を重ねている。
もしあなたがシャープな仮説を導き出せるようになりたいなら、ぜひ本書を手にとってみて欲しい。
★8ジャンル57個の仕事術で「実践力」を身につける
どのようなビジネスも、実践が伴わなければ成果は出ない。しかし、いざ「実践力」を身につけようとしても、その分野は、
- 時間管理術
- 段取り術
- コミュニケーション術
- 資料作成術
- 会議術
- 学び術
- 思考術
- 発想術
など多分野に渡り、最低8冊分の読書時間と書籍代がかかってしまうのが難点だ。
しかし、本書「超効率ハック」は、8つの分野の仕事術の「重要ポイントだけ」を抜き出し、ギュッと1冊に凝縮した書籍だ。もちろん、思考術に関しても重要ポイントを解説している。
さらに、本書は「訓練や習慣化が必要な作業テクニック」ではなく「行動を変えるための頭の使い方」の解説に力を入れているため「頭のスイッチを切り替える」だけですぐに実践できるのも特色だ。
おかげさまで、本書を題材にしたSchooのオンライン授業では「思考法ジャンル」で人気ランキング1位を頂いた(139講座中)。また、lifehackerやOggiなど数多くのメディアで取り上げていただき、Kindleでは「オペレーションズ部門」でベストセラー1位を獲得している。
Amazonレビューでも、
- 「思考と行動の質を上げるヒントが盛りだくさん」
- 「読んでみると、頑張りどころを間違えてたことに気付かされる」
- 「仕事が速い人はこれをやってたんだな、ということがよくわかった」
など、ありがたい言葉を頂戴しており嬉しい限りだ。
もしあなたが「短時間で網羅的に仕事術を学びたい」「根本から仕事の生産性を高めたい」と感じているのなら、ぜひ手に取ってみて欲しい。
★ロジカルシンキングでは学べない「視点力」と「法則力」を身につける※無料のオーディオブック特典付
人は誰しも「視点」を通してしか物事を考えることができない。
別の言い方をすれば「そもそも何を考えるべきか?」という論点(=イシュー)は、視点が決めてしまうともいえる。
また、どんなに適切な視点を置いたとしても「ああなれば→こうなるだろう」という「予測のパターン(=法則)」が頭の中になければ、確かな仮説を導き出すことはできない。
本書はビジネス書から「視点」と「法則」を発見し、思考の質とスピードを上げていく独学術を解説した書籍だ。
1つの「視点」しか持てない人は、1つの論点しか設定することができない。当然、導き出せる仮説も1つだけだ。
しかし5つの「視点」を持てれば、5つの論点を設定できるようになる。その結果、5つの仮説を導き出すことができるようになるはずだ。
もしあなたが自由自在に「視点」を操ることができるようになれば、物事の多様な側面に気づき、次々と「新たな可能性」を拓くことができるようになる。
また、数多くの「法則」をストックしていけば、様々な現象に「法則」を当てはめることで「筋の良い仮説」を瞬時に導き出すことが可能になるはずだ。
おかげさまで、本書はThe21や日経、STUDY HACKERなど多くのメディアに取り上げていただき、発売3か月で海外の翻訳出版も決定した。Amazonレビューでも、
- 視点力や仮説思考、抽象化スキルが身に付く良書
- これまでの読書術の常識を次々と塗り替えている目からウロコの本
- まさに「モノの見方を変える方程式」
など、ありがたい言葉を頂戴している。
もしあなたが「フレームワーク」だけでは得られない「視点力」と「思考スピード」を身につけたいなら、ぜひ本書で紹介する読書法を実践して欲しい。
★ブランディングの理論と実践をつなぐ「ブランディングの教科書」
本書は、筆者の専門である「ブランディング」について解説した書籍だ。
ブランディングは、ややもすれば「デザインの話」「広告の話」「世界観の話」など、掴みどころのない抽象論に陥りがちだ。
しかしブランディングは「ブランド戦略」という言葉があるように、企業の成否を大きく左右する戦略のひとつだ。そして投資が伴う以上、一定の合理性と説明責任が求められる。決して、売上や利益から逃げてはならないのだ。
本書は、つい「感覚論」に陥りがちな「ブランディング」に対して「論理的な納得性」と「直感的な腹落ち感」の両面を追求した書籍だ。
「論理」が理解できなければ、ブランディングを体系的に理解することできず、再現性を生むことができない。
そして「直感的な腹落ち感」がなければ、ブランディングを実務に落とせず、成果をもたらすことができない。
本書は、広告代理店&外資系コンサルティングファームで培った「生の知見」と「体系的な解説」を通して、ブランディングの理論を実践へとつなげて解説している。
おかげさまで、本書はAmazon kindle売れ筋ランキング「消費者主義」ジャンルでベストセラー入りを果たし、Amazonレビューでも、
- 「ふわっとしたブランディングの本が多い中で、異彩を放っている」
- 「事例も多いので実践のイメージが湧きやすい」
- 「海外企業の事例ばかりが紹介されている輸入本だとピンとこない、という方にお薦め」
など、ありがたい言葉を頂いている。
もし本書を手にとって頂ければ、ブランディングの専門用語はもちろん、実践の手順や実務の勘所が、一通り学べるはずだ。
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★ビジネススキルが身につくおすすめ書籍
★ブランディング・マーケティングの知識が身につくおすすめ書籍
終わりに
今後も、折に触れて「ロジカルで、かつ、直感的にわかる解説」を続けていくつもりだ。
しかし多忙につき、このブログは不定期の更新となる。
それでも、このブログに主旨に共感し、何かしらのヒントを得たいと思ってもらえるなら、ぜひこのブログに読者登録やTwitter、facebook登録をしてほしい。
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