Mission Driven Brand

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ブランディングの戦略家が【ブランド戦略の全て】を解説するブログ

ブランド力を高める10個のブランド提供価値と事例

 ブランド提供価値とは?【ブランド力を高める】10の要素と成功事例を徹底解説

「ブランド力とは何か?」と聞かれたら、あなたはどう答えるだろうか?あるいは「ブランド提供価値とは何か?」と聞かれたら、いかがだろうか?

このブログ「Mission Driven Brand」は、外資系コンサルティングと広告代理店のキャリアを持つ筆者が、ブランディングやマーケティングの「できない、わからない」を解決するブログだ。

ブランド力の強さは、ブランド提供価値の大きさで決まる。だとすれば、あなた自身が「ブランド提供価値」を理解できていない限り、ブランド力を向上し、高めることはできない。

今回は、広告代理店と外資系コンサルティングファームでの2つの現場経験をもとに「ブランド力を向上させる10のブランド提供価値」について解説する。

ぜひこの記事を何度も繰り返し読んでみてほしい。

そうすれば、どのようなブランド提供価値を強化すれば「ブランド力」を向上させることができるのか?を理解できるようになり、周囲に説明できるようにもなる。

ブランド戦略を学びたい方に。このブログから書籍化した「ブランディングの教科書」。

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まずは冒頭に、僭越ながら拙著を紹介させていただこう。

「ブランディング」は捉えどころがなく、なかなか一歩を踏み出せない。あなたはこのような状況に陥ってはいないだろうか?

本書の執筆陣は、ある時は広告代理店のストラテジックプランナーとして、ある時は、外資系コンサルティングファームのコンサルタントとして、クライアントの実務担当者が悪戦苦闘する姿を見てきた。

「ブランディング」は、その本質を理解しないまま実行に移そうとすると、的を射ない小手先の手法を延々と繰り出すことになりがちだ。結果、やみくもに予算を消化したまま、成果が出ない事態に陥ってしまう…。

そのような事態を1件でも減らしたい。そう考えたのが本書を執筆した理由だ。

ブランディングの本は、どれも「ブランドのらしさ」「ブランドの世界観」など「ふわっと」した話になりがちだ。そして「ふわっ」とした話になればなるほど抽象的かつ曖昧な概念論になってしまい、企業組織の中で通すことが難しくなる。

本書は、外資系コンサルティングファームと広告会社で培った「生の知見」をふんだんに盛り込みつつ、つい「抽象論」に陥りがちな「ブランディング」に対して「論理的な納得性」と「直感的な腹落ち感」の両面を追求した書籍だ。

本書では、ブランド戦略はもちろん、PEST分析・3C分析・STP戦略など、ブランディングに関わる理論と実務の両面を、幅広く解説している。

「理論」が理解できなければ、ブランディングを体系化できず、ビジネスに再現性を生むことができない。そして「実践」が理解できなければ、ビジネスに成果をもたらすことができない。

本書は、ブランディングの理論と実践をつなぐ「ブランディングの教科書」として、ブランド戦略の再現性と成果を目指した書籍だ。

おかげさまで、本書はAmazon kindle売れ筋ランキング「消費者主義」ジャンルでベストセラー1位を獲得し、Amazonレビューでも、

  • 「ふわっとしたブランディングの本が多い中で、異彩を放っている」
  • 「事例も多いので実践のイメージが湧きやすい」
  • 「海外企業の事例ばかりが紹介されている輸入本だとピンとこない、という方にお薦め」

など、ありがたい言葉を頂いている。

  • クッキー規制によりデジタルマーケティングでCTRやCVRが頭打ち。CPAは下がるどころか、少しずつ上昇傾向ですらある。
  • 矢継ぎ早に新商品を繰り出してもすぐに競合に追い付かれ、差別化ができない。商品開発サイクルは更に早まり、自転車操業状態になっている。
  • 「自社にはブランディングが必要だ」と理解はしているが、概念が抽象的過ぎて、どう周囲を巻き込んでいいかがわからない。

もし、あなたがこれらに当てはまるなら、ぜひAmazonのページで本書の目次をチェックしていただきたい。つい感覚論になりがちな「ブランディング」に対して、

  • なぜ、そうなのか?
  • どう、ビジネスに役立つのか?
  • 何をすればいいのか?
  • 具体的な日本のブランドの事例は?

を徹底して解説しているので、あなたのお役に立てるはずだ。

kindle Unlimitedを契約されている方は無償で手に入れることができるので、気軽に手に取っていただきたい。

ブランド力向上の前提知識:ブランディングとは何か?

まずは本題に入る前に、そもそも「ブランディング」の定義を簡単に確認しておこう。K_birdが考える「ブランディング」の定義は以下の通りだ。

ブランディングとは何か?

  • ブランドとは、生活者から見て「独自の役割」を持ち「感情移入」が伴ったモノやサービス。
  • ブランディングとは「できるだけ多くの人に」「できるだけ強い」独自性と感情移入を形創っていく取り組みを指す。
  • その成果は「衝動買い頼み」を越えた「指名買い」によるロングセラーブランドだ。

ブランド力とは?ブランド力を向上させる「ブランド提供価値」とは

ブランド提供価値とは-1:「価値」が巻き起こす弊害

このブログに辿り着いたあなたなら、既に「ブランディング」や「ブランド力強化」に言及した本やWEBサイトをご覧になっていることだろう。

かくいうk_birdも、全てとは言わないががかなりの数のブランディング関連本やWEBサイトをチェックしている。すると、よく出くわすのが「ブランド価値」という言葉だ。例にあげると、以下の通りだ。

  • ブランディングの目的とは、ブランド価値の向上である…。
  • ブランド価値向上で顧客獲得…。
  • 今年の企業のブランド価値ランキングは…。

ブランディング関連の本・WEBサイトで頻繁に登場する言葉であることからも「ブランド価値」がブランド強化のために非常に重要な概念であることがわかる。

しかし一方で「ブランド価値とは、要は何なのか?」に言及されている本・WEBサイトは意外と少ない。そしてそもそも「ブランド価値の意味」がわからなければブランド力を向上させようがない。

この議論を難しくしている根本的な原因は「価値」という言葉の意味の曖昧さだ。

ビジネスの現場において「価値」という言葉が使われる局面は非常に多い。例えばあなたも、以下のような言葉を見聞きしたことがあるはずだ。

  • 企業価値
  • 価値創造
  • 提案価値
  • 顧客価値

こうしてあらためて見てみると、あなたも「○○価値」という言葉が具体的に何を指しているのか、ピンときずらいことにお気づきいただけたのではないだろうか?

「価値」という言葉は、ビジネスの現場で利用頻度が多い割には抽象的で、人によって多様な解釈ができる言葉だ。

もし「ブランド力がある」という状態がブランディングの重要な目的の一つだとすれば、ブランド力の源泉となる「ブランド提供価値」の意味が曖昧であるということは「目的」が曖昧にであることを意味する。

そして「目的」が曖昧になればなるほど、あなたのチームには、例外なく以下の現象が起こる。

  • ブランディングに対する目的意識が薄れるので、手段の目的化が起きる。
  • ブランディングのそもそもの目的が曖昧になるので、ブランドチームの解釈がバラバラになる。
  • その結果、それぞれが一貫しない散発的な施策を繰り出す事態が起きる。

k_birdの長年の実務経験の中でも、クライアント内で「ブランディングの必要性」や「ブランディングのメリット」が理解されているにも関わらず「商品開発部門」や「広告宣伝部門」、あるいは「デジタル部門」や「営業・販売部門」などそれぞれの部門で手段の目的化が起こり、結果、一貫しないバラバラな施策が打ち出されているケースを数多く見てきた。

このブログが目指すのは、このような「ブランディング」のできない、わからないを解決していくことだ。

「ブランド提供価値」の曖昧さが「ブランド力の向上につながらない状態」を引き起こしているのなら「ブランド提供価値」に対して直感的な腹落ち感」と「論理的な納得性」の両方を兼ね備えた解説をしてみよう。

ブランド提供価値とは-2:「価値」とは何か?

まずは「価値」についての定義だ。k_bird流の「価値」の定義はいたってシンプルだ。

「価値」の定義とは

価値=相手が感じ取る喜びの度合い

しかしここで1点注意が必要だ。喜びの度合いは「誰にとって」という主体によって、その意味は大きく変わる。

例えば「企業価値」についていえば「社会にとって」が主体であれば「その企業から社会が受けとる喜びの度合い」となる。いわばCSRやCSVの文脈だ。

一方で「投資家にとって」であれば「その企業から投資家が受け取る喜びの度合い」となり、その多くは株価上昇によるキャピタルゲインとなるだろう。

より間違いが起きやすいのは「顧客価値」だ。

「顧客価値」は「顧客」という言葉で表現されていることから「顧客にとっての」喜びの度合いと勘違いしがちだが、これは「企業が」顧客から受け取る喜びの度合いを指す。

CRMの文脈で使われることが多く「企業が既存顧客から得られる喜びの度合い=既存顧客から得られる利益」とイコールだ。

ブランド提供価値とは-3:「ブランド提供価値」の意味

ここまでお読みいただければ「ブランド提供価値」とは何かが、ほぼ想像がつくはずだ。k_birdが定義している「ブランド提供価値」の定義は、以下の通りだ。

ブランド提供価値とは?

ブランド提供価値=ブランドから顧客が感じ取る「喜びの度合い」

ブランディングが「ブランドに対する感情移入」を形創っていく取り組みであることはすでに述べた。

そして感情移入を通して「生活者が感じ取る喜びの度合い」を高めていくことができれば、そのブランドは多くの生活者にとって「思い入れ」や「愛着」を感じる、かけがえのないブランドに育っていく。言い換えれば、ブランド力が向上していく。

ブランド提供価値とは、ブランドが顧客に届けている「喜びの度合い」のことだ。

もしそうだとすれば、生活者はブランドからどのような「価値=喜び」を感じ取ることで、ブランドに感情移入をしてくれるのだろうか?その答えがわかれば、ブランド力向上に向けた戦略は極めてストレートになる。

それでは「ブランド力を向上させる10個の提供価値」について、成功事例を交えて解説しよう。

ブランド力を向上させる10個の価値と成功事例

ブランド力を向上させる10個の価値-1:ブランドの実利が提供する価値

生活者にとって最もベーシックな喜びは、そのブランドから「実利を得られる喜び」だ。多くの企業では、ライバルよりもうまくこの喜びを提供するために、開発競争にしのぎを削っているはずだ。

この「実利的価値」は、生活者の視点から見ると、この「実利価値」は大きく4つにわけることができる。

ブランドの実利が提供する価値-1:ブランドの「品質」がもたらす価値(=喜び)

ブランドの実利が提供する価値-1:ブランドの「品質」がもたらす価値(=喜び)

品質の良さは、安心感を創る。

当たり前のことながら、生活者は「品質の悪い商品」より「品質の良い商品」を欲しがる。「品質が良い=安定的に長持ちする」という連想が働くからだ。

品質はブランド力の中でも最もベーシックなものであり、K_birdの経験上、この価値がない商品は、以降説明するどのような提供価値があったとしてもブランド力の向上にはつながらず、むしろ長期的には衰退していく。

ブランドの実利が提供する価値-2:ブランドの「性能」がもたらす価値(=喜び)

ブランドの実利が提供する価値-2:ブランドの「性能」がもたらす価値(=喜び)

性能の良さは、期待を創る。

生活者は「性能が低い商品」より「性能が高い商品」の方に魅力を感じ、高い評価をするものだ。なぜなら、性能が高い商品であればあるほど、人はその商品がもたらす実利的な喜びに大きな期待を寄せるからだ。

事例として、PCバッテリーを想像してみよう。PCバッテリーの性能が良く、バッテリーの持ちが長ければ長いほど、あなたは「長時間、カフェで作業ができそうだ」「旅行や海外出張でも困らなさそうだ」など「自分ができることが増えそうだ」という期待が大きくなるはずだ。これが、ブランド力の源泉となる。

ブランドの実利が提供する価値-3:ブランドの「ユーザービリティ」がもたらす価値(=喜び)

ブランドの実利が提供する価値-3:ブランドの「ユーザービリティ」がもたらす価値(=喜び)

ユーザービリティは、慣れや習慣を創る。

近年「ユーザビリティ」の重要性は急速に高まっている。プロダクトライフサイクルが成熟化し「品質」や「性能」の差別化が難しくなってきたからだ。

ぜひ、事例としてiPhoneやAmazonを思い浮かべてほしい。どちらも、使いこなす際に「必死に取り扱い説明書を読み込んだ」という人は稀なはずだ。

こちらも当たり前のことながら、生活者は「扱いにくい商品」より「扱いやすい商品」の方に魅力を感じる。

そして「扱いやすい商品」を使い続けていると、その商品の使い方に対して「慣れ」や「習慣」が生まれるため、他の商品に浮気しにくくなる。もしあなたがiPhoneを使い続けているなら、Androidはとても使いにくく感じるはずだ。またAmazonを使い続けているなら、楽天は使いにくいと感じるはずだ。

近年「サービスデザイン」や「CX」など「顧客経験」を重視する考え方が急速に広まっていることからもわかる通り「ユーザビリティ」はブランド価値やブランド力の向上を目指すうえで欠かせない価値だ。

ブランドの実利が提供する価値-4:ブランドの「利用用途」がもたらす価値(=喜び)

ブランドの実利が提供する価値-4:ブランドの「利用用途」がもたらす価値(=喜び)

利用用途が広ければ広いほど、そのブランドは生活者にとって欠かせない存在になる。

例えば「ぽん酢」を事例に説明しよう。

その昔、ぽん酢は「鍋」で使われることが一般的だった。しかし現在ではぽん酢メーカーの企業努力によって「肉料理に使う」「サラダ料理に使う」「パスタ料理に使う」など、その用途は広がっている。

そしてぽん酢の用途が広がれば広がるほど消費量が増えるのはもちろん、主婦にとっては便利で手放せないものとなる。

また、スマートフォンも同様だ。

今やスマートフォンは「通話」「メール」「ソーシャルメディア」「ブラウジング」「写真撮影」「動画撮影」「ショッピング決済」など、利用用途は多岐にわたる。もはやあなたにとってスマートフォンは手放せないものになっているはずだ。

このように利用用途が広がれば広がるほど、生活者がそのブランドから実利的な喜びを感じる度合いは増えていく。結果、そのブランドの知覚品質は高まり生活者にとって欠かせない存在になっていく。

ブランド力を向上させる10個の価値-2:ブランドの感性が提供する価値

生活者が喜びを感じるのは、何も「実利価値」だけではない。

もちろん、生活者にとって最も重要なのは、そのブランドから得られる「実利価値」だが、一方で生活者は「左脳的なロジック」だけでなく「右脳的な感性」でもブランドを判断している。

生活者が「感性」や「感覚」を持った人間である以上、自分の感性に合わないものよりも、自分の感性に合うものを選びたいと思うものだ。

近年、市場が成熟化し「実利価値」での差別化は難しくなっている。もしあなたの商品でも「実利価値」で差別化が難しくなっていると感じているのなら「感性価値」に着目したブランド力の向上は必須の検討課題だ。

ブランドの感性が提供する価値-1:ブランドの「デザイン」がもたらす価値(=喜び)

ブランドの感性が提供する価値-1:ブランドの「デザイン」がもたらす価値(=喜び)

デザインは、直感的な「選ばれやすさ」を創る。

生活者が初めてあなたのブランドに知るとき、一番初めに目にするのは「デザイン」だ。

そして認知心理学を紐解くと、人は物事に初めて触れたとき、最初の0.2秒で直感的な取捨選択を行い、次の0.2秒以降で合理的な取捨選択をするといわれる。つまり始めの0.2秒の「直感的な取捨選択」で生き残らなければ、次の0.2秒の「合理的な取捨選択」に至らずに、あなたのブランドは生活者の選択から脱落することになる。

あなたが携わっているブランドも、周囲を見渡せば多くの競合商品が存在するはずだ。それらの中からあなたのブランドを選ばれやすくする上で、最初の0.2秒の「直感的な取捨選択」に関与していく「デザイン」の重要性は、これでご理解いただけたことだろう。

さらにあなたのブランドのデザインが、狙った生活者の感性に合うものであれば、生活者はあなたのブランドから「自分の感性にフィットする喜び」を感じ、長く愛用していただけるようになる。

ブランドの感性が提供する価値-2:ブランドの「パーソナリティ」がもたらす価値(=喜び)

ブランドの感性が提供する価値-2:ブランドの「パーソナリティ」がもたらす価値(=喜び)

ブランドのパーソナリティ(個性)もまた、デザインと同様に「選ばれやすさ」を創る。

もしあなたが車を買おうと思ったとき、まずは何をするだろうか?恐らくは、一通りWEBサイトで車を調べることになると思う。しかし現在、国内で売られている車の車種は150種類を越える。あなたはその150種類すべてをWEBサイトでくまなく調べるだろうか?

おそらくあなたは、自分が知っている車種の中でも、自分にとって好ましい印象を持っている車種から優先的に調べていくはずだ。そして150種類すべてを調べることはしないままいくつかの車種を絞り込み、その後、スペックや価格など「実利価値」の部分を比較検討した上で最終購入に至る。

鋭いあなたならお気づきかもしれないが、このプロセスも先に解説した「デザイン」と同様に「まずは直感的な印象やイメージで絞り込んで」「絞り込んだ中から実利価値で比較検討する」という2段階のステップを辿っている。

もし、あなたのブランドが「直感的な印象やイメージで絞り込む」という段階で生き残らなければ「絞り込んだ中から実利価値で比較検討する」という段階に至らないまま脱落することになる。

これでブランドのパーソナリティもまた、デザインと同様に「選ばれやすさ」を大きく左右することが、ご理解いただけたはずだ。

さらに、こちらも「デザイン」と同様に、あなたのブランドのブランドパーソナリティが生活者の感性に合うものであれば、生活者はあなたのブランドから「自分の感性にフィットする喜び」を感じ、長く愛用していただけるようになる。

ブランド力を向上させる10個の価値-3:ブランドの情緒が提供する価値

人は誰だって「後ろ向きな気分」よりも「前向きな気分」でいたいものだ。そして「前向きな気分」が得られたとき、人は喜びを感じる。

近年「ブランド体験価値」の重要性が叫ばれているが、この「ブランド体験価値」を考える上で重要なのが「情緒価値」だ。

「情緒価値」とは聞き慣れないかもしれないが、ブランド力を高めていく上で非常に重要な価値となる。以下、2つの「情緒価値」を解説しよう。

ブランドの情緒が提供する価値-1:ブランドの「実感」がもたらす価値(=喜び)

ブランドの情緒が提供する価値-1:ブランドの「実感」がもたらす価値(=喜び)

あなたは、野菜ジュースを飲んだことがあるだろうか?

野菜ジュースは「最近、野菜を摂ってないな」と感じたとき、野菜の代わりに手軽に摂取できる飲料として、飲料市場の中で独自の存在感を放っている。

その野菜ジュースのブランドの1つに、液体だけでなくあえて「野菜の切りくず」を混ぜている野菜ジュースが存在する。飲んでみると確かに液体だけでなく「野菜の切りくず」の食感が感じられる。

しかしこのメーカーはなぜ、あえて「野菜の切りくず」を入れているのだろうか?

昔、ご担当者に伺った話によると「野菜の切りくず」を入れると、プラスアルファのコストがかかるそうだ。それでもあえて入れているのは、飲んだ後に「ちゃんと野菜を摂った」という「実感」を創るためだ。

「最近、野菜を摂ってないな」と感じている人にとって「ちゃんと野菜を摂った」という「前向きな実感」は、大きな喜びと安心感を創る。

このような「実感がもたらす価値」を創る工夫は、ほかにも随所で見られる。

例えばある高級車メーカーが、あえてドアを閉める際に「ドスン」と低い音がするように、何回もテストを繰り返しているのは有名な話だ。あえて「ドスン」という低い音をさせることによって「自分は高級車のオーナーである」という実感と喜びを提供するためだ。

さらに、ある下着メーカーは、オケージョンによってバストサイズの見た目を変えられる可変型ブラジャーを開発する際に、あえてサイズを変えるときに「カチ・カチ…」と音が出るようにしたそうだ。こちらも「音」を通して「オン・オフで気分を変えられる」という実感を提供しているのだ。

上記の「野菜ジュース」「高級車」「女性用下着」を例から見えてくるのは、それらのブランドの実感を通した「前向きな気分が得られる」喜びだ。

ブランドの情緒が提供する価値-2:ブランドの「体験」がもたらす価値(=喜び)

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モノの価値は同じでも、提供のされ方によって受け取る側の「喜びの大きさ」は変わる。

事例として、ティファニーを恋人にプレゼントするときのことを思い浮かべてみよう。

ある男性Aさんは、恋人をティファニー銀座本店に連れていき、2人で一緒に指輪を選び、購入した。この恋人は、

  • ティファニー本店で手厚い接客を受けた
  • 大好きな彼氏と一緒に指輪を選べた
  • 大好きな彼氏からティファニーをプレゼントしてもらえた

などを「体験」し、指輪というモノの価値を越えた喜びを感じ取っているはずだ。

別の男性Bさんは、ディスカウントストアに1人で行き、たまたま販売されていたティファニーを選び、そのディスカウントストアの包装紙にくるまれた状態で恋人にプレゼントした。

AさんもBさんも、恋人にプレゼントしたのは、同じ「ティファニーの指輪」だ。しかし残念ながらBさんは、Aさんほど恋人に喜ばれないということは、あなたにもわかるはずだ。

生活者は、必ずしも「モノ」だけでその価値を判断していない。モノの価値は同じでも、その提供のされ方によっては受け取る側の「喜びの大きさ」は変わる。

これは一般に「ブランド体験価値」と言われる。そして「体験」は、時に生活者にとって、一生記憶に残るような喜びを生み出す。

単なる「モノの価値」だけでなく、その「モノ」を通して、どのような体験を創り上げることができるか?もまた、ブランド力を高めていく上で、大切な要素となる。

ブランド力を向上させる10個の価値-4:ブランドが象徴する価値観が提供する価値

突然だが、あなたは人生を生きていく上でどのような価値観をお持ちだろうか?

「常に革新者でありたい」「挑戦者でありたい」「どんな時も遊び心を大事にしたい」「人の輪を大切にしたい」…。

もし、あなたが明確な価値観をお持ちなら、あなたの言葉や行動、あるいはモノの選び方は、その価値観に影響を受けているはずだ。

そしてその「価値観」がブランドが結び付いたとき、ブランド力はより強いものとなる。

以下、2つの「共鳴価値」を解説しよう。

ブランドが象徴する価値観が提供する価値-1:「自己表現」がもたらす価値(=喜び)

ブランドが象徴する価値観が提供する価値-1:「自己表現」がもたらす価値(=喜び)

もしあなたが明確な価値観をお持ちなら、あなたはその価値観をどう表現するだろうか?

言葉や文章、行動はもちろんだが「持ち物」でもまた、あなたは自分の価値観を表現しようとするはずだ。そしてあなたの価値観と似たような価値観を象徴したブランドが存在していたとしたら、あなたは「自分の価値観を表現するにふさわしいもの」として、そのブランドを認識することになる。

そしてあなたがそのブランドを手に入れた際には、単なる「実利」や「利便性」を越えて「自分の価値観を表現できる喜び」を得ることができるはずだ。

生活者からすれば、商品を使うということは「自身のライフスタイル」の一要素を構成する存在ということであり、そこには「自身の価値観・信条」と折り合っているかどうかを吟味するプロセスが存在する。

冒頭で「ブランディングとは、感情移入を形創ること」と述べたが「価値観」は人が生きる上で最も根底をなすものと言っていい。

そうである以上、いったん「価値観レベル」で感情移入がなされると、あなたはそのブランドを通して自尊心が満たされ、ほかに替えがたいブランドとして評価するようになる。

ブランドが象徴する価値観が提供する価値-2:「社会実現」がもたらす価値(=喜び)

ブランドが象徴する価値観が提供する価値-2:「社会実現」がもたらす価値(=喜び)

あなたは、ブランドを通して社会をどのような場所に変えていきたいだろうか?

近年、社会貢献意識が高まっているといわれる。世界的に見てもリーマンショック以降、アメリカではトランプ大統領の誕生、イギリスでは国民投票によるBrexitの可決など、経済重視から、経済を犠牲にしてでも社会的幸福を選ぼうとする機運が見られる。

日本国内でもソーシャルメディアの台頭により、いわゆる「営利一辺倒」とみなされた企業は、叩かれたり、炎上したりする憂き目にあっている。

ブランディングは、単に「ビジネス上の観点から市場に位置付ける」だけでは、もはや共感や共鳴を得にくくなっている。これからの時代、ブランドは社会に位置付ける」CSVの考え方を取り入れることが必要だ。

ここまで何度も説明している通り、ブランディングとは「そのブランドに対する感情移入を形創ること」だ。

もし、あなたが自社のブランドを社会的に位置づけて「社会をどのようにより良い方向に変えていけるのか?」を示すことができれば、あなたのブランドは社会を味方につけることになる。

そして、あなたのブランドが掲げる「より良い社会の姿」に共鳴してくれる者が増えれば、その「共鳴」自体がブランドへの感情移入につながる。

ブランドを社会に位置づけ、生活者とゴールを共有することができれば、生活者はあなた味方になる。

そしてブランディングに「共創」という視点が入ってくれば、生活者はあなたのブランドに共鳴感情を抱きながら、時に応援したり、協力したりすることを通して「よりよい社会を実現する喜び」を感じることができる。

これが、ソーシャルメディア時代に重要になってくるであろう「社会実現がもたらす喜び」だ。

ブランド力を強化し向上させる10のブランド提供価値:PDFダウンロード

ここまでの解説を一枚に集約したのが以下の画像だ。

PCでご覧になっている方は、この画像をクリックするとPDFダウンロード、あるいはプリントアウトできるはずだ。ぜひあなたのチームで共有するなど、ブランディング実務に活用していただきたい。

ブランド力を強化・向上させる10の要因:チェックリスト

強いブランドの条件=ブランドプロミス(ブランドの約束)

ブランディングの世界には「ブランドプロミス(ブランドの約束)」という言葉がある。

ブランドプロミスとは、そのブランドが世の中や生活者に対して提供する価値(=喜び)を守り続けるためのコミットメントを指す。

ブランドは、生活者に対して一貫した価値(=喜び)を継続的に提供していかない限り、築くことはできない。

そして、今回の記事で解説した「ブランド力を向上させる10の要素」とは、まさにブランドが社会や生活者に対して約束すべきブランドプロミスの根幹をなす要素だ。

もし、あなたのブランドが「ブランドの提供価値=ブランドプロミス」をしっかり定義できていないなら、ぜひブランドプロミスを定義し、ブランドチーム間で共有しよう。

このブログから書籍化した本4冊

ブランディングの理論と実践をつなぐ「ブランディングの教科書」

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冒頭でも紹介したが、再度ここでも紹介させていただこう。

ブランディングは、ややもすれば「デザインの話」「広告の話」「世界観の話」など、掴みどころのない抽象論に陥りがちだ。

しかしブランディングは「ブランド戦略」という言葉があるように、企業の成否を大きく左右する戦略のひとつだ。そして投資が伴う以上、一定の合理性と説明責任が求められる。決して、売上や利益から逃げてはならないのだ。

本書は、つい「感覚論」に陥りがちな「ブランディング」に対して「論理的な納得性」と「直感的な腹落ち感」の両面を追求した書籍だ。

「論理」が理解できなければ、ブランディングを体系的に理解することできず、再現性を生むことができない。

そして「直感的な腹落ち感」がなければ、ブランディングを実務に落とせず、成果をもたらすことができない。

本書は、広告代理店&外資系コンサルティングファームで培った「生の知見」と「体系的な解説」を通して、ブランディングの理論を実践へとつなげて解説している。

おかげさまで、本書はAmazon kindle売れ筋ランキング「消費者主義」ジャンルでベストセラー1位を獲得し、Amazonレビューでも、

  • 「ふわっとしたブランディングの本が多い中で、異彩を放っている」
  • 「事例も多いので実践のイメージが湧きやすい」
  • 「海外企業の事例ばかりが紹介されている輸入本だとピンとこない、という方にお薦め」

など、ありがたい言葉を頂いている。

もし本書を手にとって頂ければ、ブランディングの専門用語はもちろん、実践の手順や実務の勘所が、一通り学べるはずだ。

kindle Unlimitedを契約されている方は無償で手に入れることができるので、気軽に手に取っていただきたい。

シャープな仮説を生み出す頭の使い方」を徹底解説

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あらゆるビジネスは「仮説」こそが成否を握る。

なぜなら、仮説を生み出せなければ次の一手を見出しようがなく、検証のしようもなくなるからだ。つまり、ビジネスの成長は止まってしまうことになる。

しかし仮説思考の書籍の多くは、仮説思考のメリットは説くものの、肝心の「仮説思考のマスターの仕方」になると、

  • 「センスが必要」
  • 「経験の積み重ねが物を言う」

など「それを言ったらお終いよ」という結論で終わらせているものが多い。

一方で、本書は「仮説思考に必要な推論の手順」を、豊富な事例とともに解説している。よって、その手順通りに推論を重ねれば「センス」や「長年の経験」に頼ることなく、誰でも優れた仮説を導き出せるようになる。

おかげさまで本書は5版を重ね「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」にノミネートいただいた。NewsPicksやNIKKEI STYLE、lifehackerなど多くのメディアで取り上げていただき、中国や台湾、香港でも出版が決定している。

さらにAmazonレビューでも、

  • 「ここ数年の仮説思考系の書籍で久々のヒット」
  • 「自分オリジナルの武器にしていけそうな良書」
  • 「一生もののスキルになるのは間違いない」

など有難い言葉を頂戴しており、5刷を重ねている。

もしあなたがシャープな仮説を導き出せるようになりたいなら、ぜひ本書を手にとってみて欲しい。

ロジカルシンキングでは学べない「視点力」と「法則力」を身につける※無料のオーディオブック特典付

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人は誰しも「視点」を通してしか物事を考えることができない。別の言い方をすれば、「何を考えるか?」は視点が支配してしまうともいえる。

 人の思考は必ず、

  1. 視点:まずは何らかの「視点」を置き
  2. 法則:その「視点」を元に「ああなれば→こうなるだろう」という「法則性」に当てはめ
  3. 結論:結論を出す

というステップを辿る。

つまり、どんなにロジカルシンキングに長けていても、論理の前提となる「視点を置き方」を間違えれば結論は間違ったものになる。

また、どんなに適切な視点を置いたとしても「ああなれば→こうなるだろう」という「法則」のストックがなければ、再現性の高い仮説を導き出すことはできない。

本書はビジネス書から「隠れた視点」と「隠れた法則」を発見し、思考の質とスピードを上げていく方法を解説した書籍だ。

もしあなたが自由自在に「視点」を操ることができるようになれば、物事の多様な側面に気づき、次々と「別の選択肢」「別の可能性」を生み出すことができるようになる。

さらに、数多くの「法則」をストックしていけば、様々な現象に「法則」を当てはめることで「的を射た」仮説を瞬時に導き出すことが可能になるはずだ。

おかげさまで、本書はThe21やNIKKEI STYLE、STUDY HACKERなど多くのメディアで取り上げていただいた。Amazonレビューでも、

  • これまでの読書術の常識を次々と塗り替えている目からウロコの本
  • 読書を通して、視点力や仮説思考、抽象化スキルが身に付く良書
  • まさに「モノの見方を変える方程式」

など、ありがたい言葉を頂戴している。

数多くの視点を持っている人は、たとえ同じ状況を見ていても「気づくこと」や「気づきの量」が格段に違う。

数多くの法則を持っている人は「ああなれば→こうなりやすい」という「法則」に当てはめて考えることで、精度の高い未来を予測している。

もしあなたが「ロジカルシンキング本」では学べない「視点力」や「法則力」を身につけたいなら、ぜひ本書で紹介する読書法を実践して欲しい。

※無料のオーディオブック特典付

8ジャンル57個の仕事術で「実践力」を身につける

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どのようなビジネスも、実践が伴わなければ成果は出ない。しかし、いざ「実践力」を身につけようとしても、その分野は、

  1. 時間管理術
  2. 段取り術
  3. コミュニケーション術
  4. 資料作成術
  5. 会議術
  6. 学び術
  7. 思考術
  8. 発想術

など多分野に渡り、最低8冊分の読書時間と書籍代がかかってしまうのが難点だ。

しかし、本書「超効率ハック」は、8つの分野の仕事術の「重要ポイントだけ」を抜き出し、ギュッと1冊に凝縮した書籍だ。

さらに、本書は「訓練や習慣化が必要な作業テクニック」ではなく「行動を変えるための頭の使い方」の解説に力を入れているため「頭のスイッチを切り替える」だけですぐに実践できるのも特色だ。

おかげさまで、本書を題材にしたSchooのオンライン授業では「思考法ジャンル」で人気ランキング1位を頂いた(139講座中)。また、lifehackerやOggiなど数多くのメディアで取り上げていただき、Kindleでは「オペレーションズ部門」でベストセラー1位を獲得している。

Amazonレビューでも、

  • 「思考と行動の質を上げるヒントが盛りだくさん」
  • 「読んでみると、頑張りどころを間違えてたことに気付かされる」
  • 「仕事が速い人はこれをやってたんだな、ということがよくわかった」

など、ありがたい言葉を頂戴しており嬉しい限りだ。

もしあなたが「短時間で網羅的に仕事術を学びたい」「根本から仕事の生産性を高めたい」と感じているのなら、ぜひ手に取ってみて欲しい。

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終わりに

今後も、折に触れて「ロジカルで、かつ、直感的にわかる解説」を続けていくつもりだ。 

しかし多忙につき、このブログは不定期の更新となる。

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