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抽象化とは|抽象化の意味と抽象化思考の鍛え方を解説

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この記事に辿り着いたあなたなら「抽象化とは何か?」あるいは「抽象化思考を鍛えたい」と考えていることだろう。

このブログ「Mission Driven Brand」は、外資系コンサルティングと広告代理店のキャリアを持つ筆者が、ビジネスの「できない、わからない」を解決するブログだ。

「抽象的」と聞くと、多くの人が思い浮かべるのは、

  • 「漠然としていて具体性がないもの」
  • 「曖昧で扱いずらいもの」

など、どちらかと言えば悪いイメージだろう。しかし、もしあなたが自由自在に「抽象化能力」を使いこなすことができれば、

  • 新しい発想を生み出せるようになる
  • コミュニケーション能力が高まる
  • 精度の高い仮説を導き出せるようになる

など、その恩恵は絶大だ。よって今回は「抽象化」について解説しよう。その内容は以下の通りだ。

  • 抽象化とは何か?
  • 抽象化思考を鍛える4つのメリットとわかりやすい例とは?
  • 抽象化思考を鍛えるための具体手順

情報や知識は「目に見えるもの」だ。そして短時間で簡単に手に入る。しかし短時間で得られる競争力は、短時間で真似される競争力でしかない。

一方で「抽象化思考」などの「思考力」は「目に見えないもの」であり、いったん身につければ、簡単には真似できない長期的な競争力になる。ぜひ今回の解説を、あなたの「持続可能な競争力」に結び付けて欲しい。

また、この記事の最後には、記事内で紹介した図版のスライド資料を用意しているので、ぜひ活用頂きたい。

シャープな仮説を生み出す頭の使い方」を徹底解説

本論に入る前に、僭越ながら拙著「推論の技術」を紹介させていただこう。

あらゆるビジネスは「仮説」こそが成否を握る。

なぜなら、仮説を生み出せなければ次の一手を見出しようがなく、検証のしようもなくなるからだ。つまり、ビジネスの成長は止まってしまうことになる。

しかし仮説思考の書籍の多くは、仮説思考のメリットは説くものの、肝心の「仮説思考のマスターの仕方」になると、

  • 「センスが必要」
  • 「経験の積み重ねが物を言う」

など「それを言ったらお終いよ」という結論で終わらせているものが多い。

しかし本書は「仮説思考に必要な推論の手順」を、豊富な事例とともに解説している。よって、その手順通りに推論を重ねれば「センス」や「長年の経験」に頼ることなく、誰でも優れた仮説を導き出せるようになる。

誤解を恐れずに言えば、あらゆるビジネスは「仮説」こそが成否を握る。

なぜなら、仮説を生み出せなければ次の一手を見出しようがなく、検証のしようもなくなるからだ。つまり、ビジネスの成長は止まってしまうことになる。

おかげさまで、本書は「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」にノミネートいただき、NewsPicksやNIKKEI STYLE、lifehackerなど多くのメディアで取り上げていただいた。Amazonレビューでも、

  • 「ここ数年の仮説思考系の書籍で久々のヒット」
  • 「自分オリジナルの武器にしていけそうな良書」
  • 「一生もののスキルになるのは間違いない」

など有難い言葉を頂戴しており、5刷を重ねている。

もしあなたがシャープな仮説を導き出せるようになりたいなら、ぜひ本書を手にとってみて欲しい。

抽象化とは何か?抽象化の意味を定義する

抽象化とは?-1:抽象化の意味

抽象化とは「具体的なもの」を「形のない概念」へと置き換える思考のプロセスを指す。

抽象化とは?

  • 「具体的なもの」を「形のない概念」へと置き換える思考のプロセス。

「抽象」の反対は「具体」だが、具体とは、

  • 「視点を集中して細かい特徴を捉えること」

である以上「限定された狭い範囲に目を向ける」ことになる。その結果、周囲の広い範囲が見えなくなり、視野が狭くなってしまう。

一方で「抽象化」とは「具体的なもの」を「形のない概念」へと置き換えることである以上、細かい特徴は捉えづらくなる反面「形に囚われずに自由に発想できる」ようになる。その結果、良い意味での柔軟さが生まれ、解釈の幅が広げやすくなるのがメリットだ。

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抽象化とは?-2:抽象化の例

ここで、直感的に「抽象化」をイメージしてもらうために、例を使って解説しよう。

今、あなたが上司から「"鉛筆"を持ってきて」と頼まれたとする。しかし、周りを見渡してみて鉛筆が見つからなかったら「すみません、鉛筆が見つかりませんでした」と答えることになるだろう。

これを「具体と抽象」という意味合いで捉えると「鉛筆」という「具体的なもの」を頼まれたが見つからなかったので「すみません、鉛筆が見つかりませんでした」と答えざるを得ない状態に至ったと考えることができる。

一方で、もし上司から「"書くもの"を持ってきて」と頼まれたらどうだろうか?

周りを見回したところ「鉛筆」は見つからなかったが「ボールペン」が見つかったとしたら、あなたは「ボールペンがありました!」と言いながら上司にボールペンを差し出すはずだ。

こちらも「具体と抽象」という意味合いで捉えると、今回は「書くもの」という「概念」で頼まれた結果、鉛筆という「形」に囚われずに「(書くものと言えば)鉛筆でも、ボールペンでも、マジックでもOK」と自由に解釈し「ボールペンがありました!」と上司に差し出せたことになる。

このように「抽象化」は「具体を概念に置き換える」ことで「自由で柔軟な解釈」をもたらし、様々なメリットをもたらしてくれる。

では、具体的に「抽象化」はどのようなメリットをもたらしてくれるのだろうか?続いては「抽象化」がもたらす4つのメリットについて解説しよう。

抽象化思考を鍛える4つのメリットと例

抽象化思考を鍛えるメリットと例-1:発想を広げられるようになる

抽象化思考を鍛えることができれば、あなたは「発想」を広げられるようになる。例えば、今あなたの前に「水」が存在しているとしよう。

「物理的な液体としての水」は、目に見える「具体」に過ぎない。しかし「水」を形のない「概念」に置き換えれば「飲むもの」と捉え直すことができる。これで、あなたの頭は「形」から解放され「柔軟な解釈」を手に入れたことになる。

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そして様々な角度から視点を加えることができれば「水=飲むもの」だけでなく、

  • 水=洗うもの
  • 水=火を消すもの
  • 水=泳いで遊ぶもの

など、複数の「概念」に置き換えることが可能になる。これは別の言い方をすれば「水」という具体から自由になり、発想を広げたことと同じだ。

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更に今度は逆に「水=洗うもの」という概念に「形」を与え「具体」に落としていこう。すると、

  • 手を「洗うもの」=手洗い用洗浄水
  • トイレを「洗うもの」=トイレ用洗浄水
  • 電子部品を「洗うもの」=工業用洗浄水

など、さらに発想を広げていくことができるはずだ。

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このように、物事を「形のある具体」から「形のない概念」に置き換えたり、逆に「概念」に形を与え「具体」に落とし込んで考えるなど「具体と概念」を自由自在に横断できるようになれば、あなたは今よりも遥かに発想を広げることが可能になる。

抽象化思考を鍛えるメリットと例-2:コミュニケーション能力が高まる

抽象化思考を鍛えることができれば、あなたのコミュニケーション能力は飛躍的に高まる。なぜならコミュニケーションには下記の図の通り「論点」と「抽象度」の2つの側面が存在するからだ。

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例えば「営業活動を強化する方法」という論点1つをとってみても、

  • 「営業活動の在り方そのもの」を考える「上位概念レベルの話」
  • 「商談時の話し方を工夫する」など「具体レベルの話」

では、話の抽象度が大きく異なる。そして、、例え論点は同じでも、お互いが抽象度の違う話を持ち出したら会話は噛み合わなくなるだろう。

特にありがちなのが、会議などで、

  • 長期的な話(概念) vs 短期的な話(具体)
  • 全体的な話(概念) vs 個別的な話(具体)
  • 根本的な話(概念) vs 現実的な話(具体)

など「抽象度のレベル」が乱れ合い、全く前に進まなくなるケースだ。

しかし、もしあなたが抽象化思考を身につけることができれば「今は上位概念の話をすべきなのか?」「それとも足元の具体レベルの話をすべきなのか?」などを判断できるようになる。

更に上級者になれば「上位概念の話を」「具体的な事例で話す」など「概念と具体を自由自在に切り替えて説明する」ことも可能になるはずだ。

抽象化思考を鍛えるメリットと例-3:マネジメント能力が身につく

もしあなたが抽象化思考を鍛えることができれば、マネジメント力を向上させることができる。

例えば「人材育成」を例に考えてみよう。もしあなたの部下が、

  • 資料を作成する能力が足りない
  • 人にわかりやすく説明する能力が足りない
  • うまく段取りを進める能力が足りない

など「ないないづくし」だったとしよう。あなたはどのような育成方針を立てるだろうか?もしあなたの抽象化思考力が乏しかったら、

  • まずは「資料作成の仕方」を教える
  • 次に「わかりやすい説明の仕方」を教える
  • 最後に「段取りの進め方」を教える

などと1:1の「個別対応」を考えてしまうだろう。

しかし、抽象化思考を身につけることができれば「資料作成力」「コミュニケーション力」「段取り力」には、共通する上位概念として

  • 「どのような資料を作るか」を考える力
  • 「どのように説明すればわかりやすいか」を考える力
  • 「どのように段取りを踏めばスムースか」を考える力

など「考える力」が必要であることに気がつけるはずだ。

別の言い方をすれば「資料作成力」や「コミュニケーション力」「段取り力」は「考える力」を前提にした能力であり、単なる「応用能力」でしかないことに気がつけるようになる。

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そうすれば、

  • 考える力を育成すれば → 資料作成力は高まる
  • 考える力を育成すれば → コミュニケーション力は高まる
  • 考える力を育成すれば → 段取り力は高まる

という因果関係を見抜き「考える力の育成」に集中することで、同時に3つの力を育成できるようになる。

逆を言えば、どんなに「資料作成の仕方」を教えても、その上位概念である「考える力」が身につかなければ、部下は教えたこと以外は応用がきかず、いつまでたっても「箸の上げ下げを教える」という個別対応から抜け出せないことになる。これはコミュニケーション力であれ、段取り力であれ同様だ。

このように「上位概念」は「下位概念」の在り方を決定づける。

そして「上位概念を設定する力」や「上位概念を見抜く力」が乏しいまま下位概念のみで対応しようとすると、物事は個別的になり、散発的になり、一貫性がないものになっていく。その結果、成果は限定的なものになってしまうだろう。

もしあなたが「上位概念を設定する力」や「上位概念を見抜く力」を身につけ、優れたマネジメントへと成長したいなら「抽象化思考」は必須の能力だ。

抽象化思考を鍛えるメリットと例-4:法則をストックできる

あらゆるビジネスは、未来に向かってなされる。だとしたら「未来に向けた仮説」こそが、ビジネスの行く末を左右すると言っても過言ではない。

仮説とは「未来はこうなるだろう」という仮の答えである以上、

  • 「こんなときは → こうなりやすい」
  • 「こういうときは → こうしたほうがうまく行きやすい」

など、再現性の高い「法則」を数多く知っているかどうかがカギになる。あらかじめ再現性の高い「法則」を数多くストックしておけば、目の前で起きている物事に法則を当てはめることで、素早く、かつ精度の高い仮説を導き出すことができる。

その際に、極めて重要となるのが「抽象化思考」だ。

より理解を深めるために、こちらも例を使って解説しよう。まずは次の文章をお読みいただきたい。

  • ごみの不法投棄の現場に「ごみ捨て禁止の看板」を置いても、ごみの不法投棄は減らなかった。
  • しかし、不法投棄の現場に「お地蔵さん」を置いたら、ごみの不法投棄は激減した。

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この文章を読んで、多くの人は「うまいこと考えたな」という感想だけでスルーしてしまうのではないだろうか?いわば「ごみの不法投棄のエピソード」という「その時その場の、具体的なエピソードの話」で終わらせてしまうのだ。

しかし「抽象化思考に長けた人」は、このエピソードを読んで「幅広く応用できる“概念”に置き換えられないか?」と考える。例えば、

  • 「ゴミ捨て禁止の看板」を置いても → ごみの不法投棄は減らなかった

という「具体的なエピソード」でしかない事柄に対して、

  • 一方的にルールを押し付けても → 人はいうことを聞かない
  • 罰則規定がないルールを押し付けても → 人はいうことを聞かない

など「形のない概念」に置き換えた上で「ああなれば→こうなりやすい」という「普遍的な法則」を導き出すような頭の使い方をしている。

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また、

  • 「お地蔵さん」を置いたら → ごみの不法投棄は減った

という事実も「形のない"概念"に置き換えられないか?」と抽象化して考え、

  • 人は罪悪感を感じると → 自発的に行動を止める
  • 自発的な気持ちを引き出せれば → 人は強制されずに動く

などの「普遍的な法則」を導き出す頭の使い方をしている。

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このように「個別具体的なエピソード」を幅広く応用できる「概念」に置き換え「ああなれば → こうなりやすい」と「法則化」することができれば、様々なビジネスシーンで応用が効くようになる。例えば、

  • 自発的な気持ちを引き出せれば → 人は強制されずに動く

という「法則」は、

  • (様々な社内規則を設けるより)ビジョンに対する共鳴感情を引き出したほうが → 社員は能動的に頑張ってくれる

という組織運営に応用できるかもしれない。

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あるいは、

  • (性能の良さを押し出すより)ブランド哲学に対する共感を引き出したほうが → 消費者は積極的に購入してくれる

など、ブランディングに応用できるかもしれない。

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こうして見ていくと、はじめは「ゴミ捨て場の看板の話」という個別具体的なエピソードに過ぎなかったものが、

  1. 抽象化:個別具体的な物事を、形のない「概念」に置き換える
  2. 法則化:その「概念」を元に「こういうときは→こうなりやすい」という「法則」に仕立て上げる

というステップを踏むことで、あなたの中に様々な「法則」がストックされていくことがご理解いただけるはずだ。

そして、今度は様々なビジネスシーンで「法則」に当てはめて考えていくことで、素早く、かつ精度の高い仮説を導き出すことが可能になる。

抽象化思考の鍛え方

では、どのような頭の使い方をすれば、抽象化思考を鍛えることができるのだろうか?抽象化には、大きくわけて3つのパターンが存在する。

  • 「モノ」の抽象化
  • 「視点」の抽象化
  • 「因果関係」の抽象化

ここからは、抽象化思考のフレームワーク「FAVAフレームワーク」を使いながら、上記3つの抽象化パターンに沿った形で「抽象化思考の鍛え方」を解説していこう。

抽象化思考の鍛え方-1:抽象化思考のフレームワーク「FAVA」

まず初めに、抽象化思考のフレームワークである「FAVA」について紹介しよう。

FAVAフレームワークを使えば、4つの要素を順番に考えていくことで「抽象化の頭の使い方の手順」を辿っていくことができる。

FAVAの各要素は以下の通りだ。

  1. Fact:事実
  2. Abstraction:抽象化
  3. Viewpoint:視点
  4. Actualize:具体化

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抽象化思考の鍛え方-2:「モノを抽象化する」頭の使い方の手順

まずは、モノを抽象化する頭の使い方について解説しよう。

「モノ」を抽象化できれば、様々なモノに対して、これまで見過ごしがちだった新たな側面を発見し、アイデアやイノベーションを生み出しやすくなる。

Fact:事実

抽象化思考のスタートはFAVAフレームワークの「F」、つまり「事実(Fact)」を捉えることだ。

例えば、今あなたの目の前に「本」が存在したとする。この「本」が「事実(Fact)」であり、具体と抽象の関係でいえば「具体」にあたる。

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Abstraction:抽象化

続いてはFAVAフレームワークの「A」、つまり「本」を「抽象化(Abstraction)」するステップだ。

抽象化とは「具体的なもの」を「形のない概念」へと置き換えることだ。よって、ここでは「本」という「形のある実体」を「形のない概念」へと置き換えてみよう。

気を付けて欲しいのは「抽象化」には正解・不正解もないことだ。

「実体」は1つだが「概念」は無限に存在する。よって、はじめは「抽象化思考を鍛えるため」と割り切って「形のない概念」に置き換えられればOKと考えよう。

ここでは、

  • 「本 → 読むもの」

という「概念」に置き換えることにしよう。「具体」を「概念」に置き換えると「解釈の幅が広がる」という性質があることから、

  • 具体:本 概念:読むもの

という不等式が成り立っていることを確認して欲しい。

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Viewpoint:視点

続いてはFAVAフレームワークの「V」、つまり「読むもの」という概念に対して「視点(Viewpoint)」を加えていくステップだ。

視点を加えることで「概念」が持つ「解釈の自由さ」を利用し、発想の幅を広げることが可能になる。

ここでは「本 → 読むもの」に対して「真逆の視点」を加えてみよう。すると、

  • 現在の視点:「本 → 読むもの」
  • 真逆の視点:「本 → 読まないもの

となるはずだ。「真逆の視点」を加えたことで「本の概念」が180度転換して新しくなったことに気が付けるはずだ。

このように「これまでにないアイデア」や「これまでにないイノベーション」を発想したいときは、導き出した「概念」に対して「真逆の視点」を入れてみるのがおすすめだ。

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Actualize:具体化

FAVAフレームワークの最後は「A」、つまり「視点を加えて導き出した概念」を「具体化(Actualize)」していくステップだ。

ここで自分に問いかけたいのは、

  • 「本 = 読まないもの」だとしたら、どんな本がありうるか?

という具体化に向けた問いだ。自分の中にこの問いが生まれれば、

  • 「本 =読むものではなく →  書くもの
    →ドリルのように書き込んで著者とともに完成させるビジネス書
  • 「本 = 読むものではなく → 飾るもの
    →装丁が美しく中身が白紙のインテリア専用の本

など、様々なアイデアが生み出せるようになるはずだ。

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このように「モノ」を抽象化した上で新たな「視点」を加え、さらに「具体」へと落とすことができれば「モノ」に対する新たな側面の発見につながる。そうすれば、これまでにない新たなアイデアやイノベーションを生み出しやすくなる。

抽象化思考の鍛え方-3:「視点を抽象化する」頭の使い方の手順

続いては「視点を抽象化する」頭の使い方の手順について解説しよう。

人は、視点を通してしか物事を考えることができない。逆を言えば、何を考えるかは「あなたが置いている視点」が決めてしまうといっても過言ではない。

しかし、もし「視点」を抽象化できれば、あなたは自分が置いている視点とは別の視点に目を向けやすくなる。そうすれば「1つの視点で考えたら煮詰まった」という状態から脱し、全く別の打開策を発見しやすくなるはずだ。

Fact:事実

「視点の抽象化」においても、まず最初は「事実(Fact)」を正確に捉えることが必要だ。

例えば「我が社の商品は全国スーパーの配荷率が低い」という事実があったとしよう。具体と抽象の関係でいえば、これは個別性の高い「具体」にあたるものだ。

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Abstraction:抽象化

続いては「我が社の商品は全国スーパーの配荷率が低い」という「視点」を「抽象化(Abstraction)」していこう。

ここでぜひ気を付けて欲しいのは、先ほどの「モノの抽象化」とは異なり、今回は「視点」を抽象化することだ。

こちらも正解・不正解はないが、頭の使い方のコツは、

  • この「事実」には、どのような「視点」が隠されているのか?

に想いを巡らせてみることだ。すると、

  • 我が社の商品は全国スーパーの配荷率が低い

という事実には、

  • 我が社の商品は全国スーパーの配荷率が低い→ 【ネガティブな視点

が隠されていることに気が付けるはずだ。

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Viewpoint:視点

更に「ネガティブな視点」という概念に対して「別の視点(Viewpoint)」を加えていこう。こちらも、

  • 我が社は商品全国スーパーの配荷率が低い → 【ネガティブな視点

に対して「真逆の視点」を加えてみよう。すると、

  • 現在の視点:「我が社の商品は全国スーパーの配荷率が低い → ネガティブな視点」
  • 真逆の視点:「我が社の商品は全国スーパーの配荷率が低い → ポジティブな視点

となるはずだ。

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Actualize:具体化

最後は「我が社の商品は全国スーパーの配荷率が低い → ポジティブな視点」を「具体化(Actualize)」していこう。

ここで自分に問いかけたいのは、

  • 「全国スーパーの配荷率が低いこと」を「ポジティブな視点」で捉え直すとすれば、何が言えるか?

という問いだ。この問いが生まれれば、

  • 「全国スーパーの配荷率が低いこと」 → 「ポジティブな視点に変換すると?」→「D2C(直販)に対するしがらみが少ない」

など、行き詰っていた問題に対して新たな打開策が生み出せるようになるはずだ。

このように「視点」を抽象化する習慣が持てれば、あなたは自分の中に様々な視点をストックできるようになる。

そうすれば、例え1つの視点で考えが行き詰ったとしても、別の角度から新しい視点を加えることで、これまで気づけなかった打開策を見いだせるようになるはずだ。

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抽象化思考の鍛え方-4:「因果関係を抽象化する」頭の使い方の手順

抽象化のパターンの最後は「因果関係の抽象化」だ。どのような思考プロセスも必ず、

  • ステップ1:まずは視点を置き【視点】
  • ステップ2:その視点を起点にしながら「ああなれば→こうなるだろう」と考え【法則】
  • ステップ3:結論を出す【結論】

というステップを辿る。

人は何らかの「視点」を置かない限り「思考の出発点」にすら立てないが、一方で「視点」を持てたとしても、その先にある「ああなれば→こうなるだろう」という因果関係を見出すことができなければ、やはり適切な結論に至ることはできない。

だとすれば、もしあなたが事前に

  • 「こんなときは→こうなりやすい」
  • 「こういうときは→こうしたほうがうまく行きやすい」

など「因果関係」を「法則」としてストックしていれば、目の前で起きている現象に「法則」を当てはめることで「的を射た」仮説を瞬時に導き出すことが可能になる。

Fact:事実

「因果関係の抽象化」も「モノの抽象化」や「視点の抽象化」と同様に、まずは「事実(Fact)」を正確に捉えよう。

例えば、あなたがネット記事で以下のような文章を読んだとしよう。

  • お土産用に買ってきた「5個セットのリンゴ」がある。2人いる子供にどうわければいいか?
  • ある人は「1人に2個ずつ分けて、残り1個は半分に切って分ける」と言った。
  • 別の人は「 5個のリンゴすべてをミキサーにかけてジュースにし、ジュースを2人の子供にわける」と言った。

この場合「因果関係」という意味合いで「事実(Fact)」を整理すると、

  • リンゴを2つに切り分けて → 2人の子供に分けた
  • リンゴをジュースにして → 2人の子供に分けた

となる。

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Abstraction:抽象化

続いては、この「リンゴをわける話」という個別具体的なエピソードを「こういうときは → こうなりやすい」という因果関係の視点で「抽象化(Abstraction)」していこう。頭の使い方のコツは、

  • この「事実」には、どのような「こういうときは → こうなりやすい」という因果関係が隠されているのか?

に想いを巡らせてみることだ。すると「リンゴを2つに切り分けて → 2人の子供に分ける」という事実は、

  • 「リンゴを固形物のまま配らなければならない」という前提で考えると
    → 誰もが思いつく当たり前の結論に至りやすい

という因果関係を発見できる。これを「リンゴの話」という個別性から離れて「概念」に置き換えると、

  • 「暗黙の前提」をそのまま受け入れると
    → 当たり前の結論に至りやすい

という法則を発見することができる。また「リンゴをジュースして → 2人の子供に分ける」という事実は、

  • 「リンゴを固形物のまま配らなければならない」という暗黙の前提を疑うと
    → 思いもよらないユニークな結論に至りやすい

という因果関係を発見できる。こちらも「リンゴの話」という個別具体的なエピソードから離れて「概念」に置き換えると、

  • 「暗黙の前提」に気づいて疑うと
    → ユニークな結論に至りやすい

という法則を導き出すことができるはずだ。

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Viewpoint:視点

「法則」は、法則のままにしているだけでは意味がない。様々なビジネスシーンに応用できて初めて「法則」の価値は生まれる。

「因果関係の抽象化」の場合「導き出した法則を何に当てはめて応用するか?」という「視点(Viewpoint)」が必要だ。別の言い方をすれば「得られた法則の応用先」と言ってもいい。

もしあなたが商品開発担当者なら、

  • 「暗黙の前提」に気づいて疑うと → ユニークな結論に至りやすい

という法則を「商品開発の視点」で応用できるかもしれない。あるいは、もしあなたが人事担当者なら「新卒採用の視点」で応用できることもありうる。

このように、もしあなたが「因果関係の抽象化」を通して「法則」を発見できたら「何に応用すると役立つか?」という視点を持とう。

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Actualize:具体化

最後は、発見した法則を「A:具体化」するステップだ。

ここでは、先ほど発見した「暗黙の前提に気づいて疑うと → ユニークな結論に至りやすい」という法則を「具体化(Actualize)」していこう。

もし仮に、あなたが自転車業界の商品開発担当者だったとしよう。「暗黙の前提に気づいて疑うと → ユニークな結論に至りやすい」という法則を応用すれば、

  • 「自転車 = 移動を楽にするもの」

という暗黙の前提を疑い、

  • 「自転車 = 移動を楽にしなくてもいいもの」

という発想に至ることができる。すると、

  • あえてペダルを重くすることで、日常の買い物がてらダイエットができる「ダイエットサイクル」

という商品開発アイデアが思いつくかもしれない。あるいは、もしあなたが人事担当者だったとしたら、

  • 「新卒採用数を大幅に増やすには、エントリーシートの大幅増が必要」

という「暗黙で置いている前提」に気づいて疑えば、

  • そもそも採用者は新卒である必要があるのか?
    →第二新卒を含めてはダメなのか?
  • エントリーシートの大幅増という手段は本当に必要なのか?
    →必要な採用数だけダイレクトリクルーティングすればいいのではないか?

など、これまでとは異なるアプローチを見出せるかもしれない。

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このように「因果関係」を抽象化する習慣が持てれば、あなたは自分の中に様々な「法則」をストックし、幅広い分野・業務に応用できるようになるはずだ。

このブログから書籍化した本4冊

シャープな仮説を生み出す頭の使い方」を徹底解説

冒頭でも紹介したが、再度こちらでも紹介させていただこう。

抽象化に関心があるあなたなら、すでに仮説思考の重要性はご存じのはずだ。なぜならビジネスモデルとは、突き詰めていえば社会やビジネスに対して仮説を立てる取り組みともいえるからだ。

しかし仮説思考の書籍の多くは、仮説思考のメリットは説くものの、肝心の「仮説思考のマスターの仕方」になると、

  • 「センスが必要」
  • 「経験の積み重ねが物を言う」

など「それを言ったらお終いよ」という結論で終わらせているものが多い。

しかし本書は「仮説思考に必要な推論の手順」を、豊富な事例とともに解説している。よって、その手順通りに推論を重ねれば「センス」や「長年の経験」に頼ることなく、誰でも優れた仮説を導き出せるようになる。

誤解を恐れずに言えば、あらゆるビジネスは「仮説」こそが成否を握る。

なぜなら、仮説を生み出せなければ次の一手を見出しようがなく、検証のしようもなくなるからだ。つまり、ビジネスの成長は止まってしまうことになる。

おかげさまで、本書は「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」にノミネートいただき、NewsPicksやNIKKEI STYLE、lifehackerなど多くのメディアで取り上げていただいた。Amazonレビューでも、

  • 「ここ数年の仮説思考系の書籍で久々のヒット」
  • 「自分オリジナルの武器にしていけそうな良書」
  • 「一生もののスキルになるのは間違いない」

など有難い言葉を頂戴しており、5刷を重ねている。

もしあなたがシャープな仮説を導き出せるようになりたいなら、ぜひ本書を手にとってみて欲しい。

8ジャンル57個の仕事術で「実践力」を身につける

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どのようなビジネスも、実践が伴わなければ成果は出ない。しかし、いざ「実践力」を身につけようとしても、その分野は、

  1. 時間管理術
  2. 段取り術
  3. コミュニケーション術
  4. 資料作成術
  5. 会議術
  6. 学び術
  7. 思考術
  8. 発想術

など多分野に渡り、最低8冊分の読書時間と書籍代がかかってしまうのが難点だ。

しかし、本書「超効率ハック」は、8つの分野の仕事術の「重要ポイントだけ」を抜き出し、ギュッと1冊に凝縮した書籍だ。もちろん、思考術に関しても重要ポイントを解説している。

さらに、本書は「訓練や習慣化が必要な作業テクニック」ではなく「行動を変えるための頭の使い方」の解説に力を入れているため「頭のスイッチを切り替える」だけですぐに実践できるのも特色だ。

おかげさまで、本書を題材にしたSchooのオンライン授業では「思考法ジャンル」で人気ランキング1位を頂いた(139講座中)。また、lifehackerやOggiなど数多くのメディアで取り上げていただき、Kindleでは「オペレーションズ部門」でベストセラー1位を獲得している。

Amazonレビューでも、

  • 「思考と行動の質を上げるヒントが盛りだくさん」
  • 「読んでみると、頑張りどころを間違えてたことに気付かされる」
  • 「仕事が速い人はこれをやってたんだな、ということがよくわかった」

など、ありがたい言葉を頂戴しており嬉しい限りだ。

もしあなたが「短時間で網羅的に仕事術を学びたい」「根本から仕事の生産性を高めたい」と感じているのなら、ぜひ手に取ってみて欲しい。

ロジカルシンキングでは学べない「視点力」と「法則力」を身につける※無料のオーディオブック特典付

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人は誰しも「視点」を通してしか物事を考えることができない。

別の言い方をすれば「そもそも何を考えるべきか?」という論点(=イシュー)は、視点が決めてしまうともいえる。

また、どんなに適切な視点を置いたとしても「ああなれば→こうなるだろう」という「予測のパターン(=法則)」が頭の中になければ、確かな仮説を導き出すことはできない。

本書はビジネス書から「視点」と「法則」を発見し、思考の質とスピードを上げていく独学術を解説した書籍だ。

1つの「視点」しか持てない人は、1つの論点しか設定することができない。当然、導き出せる仮説も1つだけだ。

しかし5つの「視点」を持てれば、5つの論点を設定できるようになる。その結果、5つの仮説を導き出すことができるようになるはずだ。

もしあなたが自由自在に「視点」を操ることができるようになれば、物事の多様な側面に気づき、次々と「新たな可能性」を拓くことができるようになる。

また、数多くの「法則」をストックしていけば、様々な現象に「法則」を当てはめることで「筋の良い仮説」を瞬時に導き出すことが可能になるはずだ。

おかげさまで、本書はThe21や日経、STUDY HACKERなど多くのメディアに取り上げていただき、発売3か月で海外の翻訳出版も決定した。Amazonレビューでも、

  • 視点力や仮説思考、抽象化スキルが身に付く良書
  • これまでの読書術の常識を次々と塗り替えている目からウロコの本
  • まさに「モノの見方を変える方程式」

など、ありがたい言葉を頂戴している。

もしあなたが「抽象化」だけでは得られない「視点力」と「思考スピード」を身につけたいなら、ぜひ本書で紹介する読書法を実践して欲しい。

ブランディングの理論と実践をつなぐ「ブランディングの教科書

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本書は、筆者の専門である「ブランディング」を解説した書籍だ。

ブランディングは、ややもすれば「デザインの話」「広告の話」「世界観の話」など、掴みどころのない抽象論に陥りがちだ。

しかしブランディングは「ブランド戦略」という言葉があるように、企業の成否を大きく左右する戦略のひとつだ。そして投資が伴う以上、一定の合理性と説明責任が求められる。決して、売上や利益から逃げてはならないのだ。

本書は、つい「感覚論」に陥りがちな「ブランディング」に対して「論理的な納得性」と「直感的な腹落ち感」の両面を追求した書籍だ。

「論理」が理解できなければ、ブランディングを体系的に理解することできず、再現性を生むことができない。

そして「直感的な腹落ち感」がなければ、ブランディングを実務に落とせず、成果をもたらすことができない。

本書は、広告代理店&外資系コンサルティングファームで培った「生の知見」と「体系的な解説」を通して、ブランディングの理論を実践へとつなげて解説している。

おかげさまで、本書はAmazon kindle売れ筋ランキング「消費者主義」ジャンルでベストセラー入りを果たし、Amazonレビューでも、

  • 「ふわっとしたブランディングの本が多い中で、異彩を放っている」
  • 「事例も多いので実践のイメージが湧きやすい」
  • 「海外企業の事例ばかりが紹介されている輸入本だとピンとこない、という方にお薦め」

など、ありがたい言葉を頂いている。

もし本書を手にとって頂ければ、ブランディングの専門用語はもちろん、実践の手順や実務の勘所が、一通り学べるはずだ。

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終わりに

今後も、折に触れて「あなたをブランドにする思考法」の解説を続けていくつもりだ。 

しかし多忙につき、このブログは不定期の更新となる。

それでも、このブログに主旨に共感し、何かしらのヒントを得たいと思ってもらえるなら、ぜひこのブログに読者登録Twitterfacebook登録をしてほしい。

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