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ブランド戦略とは?10個ある戦略メリットと成功事例を徹底解説

ブランド戦略とは?10個ある戦略メリットと成功事例を解説

ブランド戦略とは何か?

あなたはこの素朴な疑問に、明快に答えられるだろうか?

このブログに辿り着いたあなたなら「ブランド戦略」に対して、何らかの魅力や可能性を感じているはずだ。しかしあなたは「ブランド戦略」の意味やビジネスメリットを、周囲に「腹落ちできるレベルで」説明できるだろうか?

ブランド戦略を推進する際には「商品開発部門」「デザイン部門」「広告宣伝部門」「デジタル部門」「PR部門」「販売促進部門」「営業・店舗部門」など、多くの部門が絡んでくる。

例えあなたがブランド戦略の成功を信じ「これからはブランド戦略に力を入れていくべきだ!」とチームを動かそうとしても「ブランド戦略」の意味やメリットを明確に説明できなければ「漠然とした話」で片づけられてしまう。

仮にあなたの主張が理解されたとしても、ブランド戦略の意味やメリットを充分に理解してもらえなければ、それぞれの部門は個別の事情で一貫性のない施策を繰り出してしまうことにもなりかねない。

その結果、ブランド戦略に向けた取り組みは迷走し、あなたの会社の商品は、コモディティ化や価格競争化のリスクにさらされたままとなってしまうだろう。

今回は「ブランド戦略とは何か?」そして「ブランド戦略が生み出す10個のビジネスメリット」について、成功事例を交えながら解説する。

この解説を最後まで読んでいただければ、あなたは胸を張って「ブランド戦略の意味」や「なぜブランド戦略が必要なのか?」あるいは「ブランド戦略は、どうビジネスの競争力に貢献するのか?」をロジカルに説明できるようになるはずだ。

ブランド戦略とは?ブランド戦略の位置づけと意味から理解する

あなたの周囲の人たちは「ブランド戦略」に対して、以下のような認識を持ってはいないだろうか?

  • ブランド戦略とは「高級ファッションブランド」が取る戦略であり、自社ブランドは関係ない。
  • ブランド戦略とは広告宣伝によって成し得るものであり、宣伝部が考えることだ。
  • 良い製品を作ってさえいれば、それらの製品はおのずとブランドに育つはず。「ブランド」とは後からついてくるものだ。

k_birdは、ある時は広告代理店の戦略プランナーとして、ある時は外資系コンサルティングファームのコンサルタントとして、長年ブランド戦略の現場を歩いてきた。そして実感するのは、上記のような誤解がまだまだ多いことだ。

しかし一方でブランド戦略に長けた企業では「ブランド戦略」はマーケティングの上位に位置付けられ、マーケティング活動そのものを規定するための「上位戦略」として認識されている。

事実「ブランド戦略」に長けた企業経営者は、以下のような発言をしている。

 

会社のブランドは、人の評判に似ている。難題に必死に取り組むことで得るものなのだ。

-ジェフ・ベソス(Amazon.com CEO)

 

 

 

情報が完全に過多になり、人々が日々受け取る情報に圧倒されている世界では、ブランドがさらに重要になる。

人々には、日常生活の全ての事柄に選別している時間はない。ブランドは、その選別を助けてくれる。

-スティーブ・ジョブス(Apple元CEO)

 

 

 

リーダーにとって、ブランドをしっかりと定義することは、社内の力を合わせるという意味でも極めて重要です。

デザイナー、エンジニア、生産、物流、マーケティング、広報といった部門を1つにまとめ、一体感を生むことができるからです。1つのブランドを定義することで、ベクトルが同じ方向を向くのです。

-カルロス・ゴーン(日産自動車会長)

 

これらの経営者の発言からもわかる通り、ブランド戦略とは「高級ファッションブランド」でもなければ「広告宣伝部管轄の戦術」でもない。マーケティング活動そのものを規定する「上位戦略」だ。

「ブランド戦略」の中核となるブランディングは、高度に抽象的な概念であるため様々な解釈が存在するが、k_birdが考えるブランド戦略を定義すると下記の通りとなる。

ブランド戦略の意味とは?

  1. ブランドとは「生活者の感情移入」が伴ったモノやサービス。
  2. ブランディングとは「できるだけ多くの人に」「できるだけ強い」感情移入を形創っていく取り組みを指す。
  3. その成果は「衝動買い頼み」を越えた「指名買い」によるロングセラーブランドだ。

 

詳しくは以下の解説を参考にしてほしい。「ブランド戦略とはそもそも何か?」という問いに対して、より理解が深まるはずだ。

www.missiondrivenbrand.jp

 

ブランド戦略とは?ブランド戦略のメリットから理解する

ブランド戦略やマーケティング戦略の現場を見てきた上での実感だが、あらためてマーケティング担当者に「ブランド戦略とは何か?」「ブランド戦略がもたらすメリットは何だと思うか?」と尋ねると、答えに詰まる人は意外と多い。

マーケティング担当者の中には「知名度の向上」と答える方が一番多いが「それ以外では?」と尋ねると、やはり考え込んでしまう。

ブランド戦略は、ビジネスの一貫として投資が伴うものだ。そして投資が伴うものである以上、ブランド戦略の必要性やメリットに関して、充分な説明が求められる。

世の中にあまたある「ブランド戦略」の本は、必ずといっていいほど「ブランド戦略のメリット」は解説されている。しかし「なぜ」そのようなメリットがもたらされるのかを解説した本は、意外に少ない。

結果「なぜ」という本質部分が理解できていないため、ブランド戦略は「自分ではわかっているつもり」「でも、周囲が腹落ちするような説明ができない」という状態に陥りがちだ。

ブランド戦略の本質や意味を理解するには、ブランド戦略のメリットと「なぜ」そのようなメリットをもたらされるのかを知ることが早道となる。よって、以降の解説ではブランド戦略の10個のメリットを解説する。もちろん「なぜ?」という理由つきだ。

ブランド戦略の10個の戦略メリットと成功事例

ブランド戦略がもたらす効果-1:「販売拡大」のメリット

当たり前のことだが、生活者は「知らないものを欲しがる」ことはできない。

逆を言えば、知名度が上がり知っている人が増えていくことで、欲しがる人も比例的に増えることになる。結果、販売数量も比例的に拡大していくメリットが生じる。

さらに、多くの生活者は同じジャンルの「無名の商品」と「有名な商品」を比べた場合、有名な商品の方を選ぶ傾向にある。

なぜなら、生活者はモノを購入する際に「有名な商品だから、大丈夫だろう」という安心感を得たがるからだ。

社会心理学者のR・ザイアンスによれば、人々は見知らぬ「記号」であっても、何回も繰り返し見せられるとその記号に対して好意を持つようになるという。つまり人間は知らないものより知っているもののほうに、強い理由もなく好意を抱く傾向を持っているのだ。

知名度向上によりブランドに「安心感」という感情移入を起こすことができれば、あなたの商品は他社商品よりはるかに選ばれやすくなる。

さらには、知名度の向上だけでなく、ブランドに対するポジティブな感情移入が強まれば強まるほど、その顧客がブランドを周囲に推奨してくれるメリットが生じる。いわゆる「クチコミによる推奨効果」だ。

近年のソーシャルメディアやレビューサイトの普及によって、以前と比べてクチコミの影響範囲ははるかに広くなっている。

ブランドの知名度が高まり、愛着感情を持ってくれる顧客が増えれば、クチコミ推奨による販売機会も広がるはずだ。

ブランド戦略がもたらす効果-2:「価格プレミアム」のメリット

もしあなたの商品が価格競争に晒されているのなら、ブランド戦略は必要不可欠だ。

一般に、ビジネスの売上高は「販売数量×販売単価」で決まる。しかし、近年の市場成熟化及び競争激化で「販売単価」が下落するプレッシャーは年々高まっている。

そのような状況の中でも適切にブランド戦略を実行に移せれば、高い単価を維持できるメリットを享受できる。その理由を解説しよう。

ブランドは感情移入の度合いが強まれば強まるほど、生活者から見て「思い入れが強い特別なブランド」に育っていく。結果「ほかには替えられないブランド」となり、例え類似商品より多少高くても選ばれやすくなる。

その上、さらに感情移入の度合いが強まれば、生活者はそもそも類似商品と比べることすらしなくなる。いわば比較をせずに「指名買い」をしてくれる状況だ。その結果、価格競争に巻き込まれず、高い商品価格を維持しやすくなるメリットが生じる。

これが、ブランド戦略でよく語られる「価格プレミアム」のメカニズムだ。

高い価格を維持できるということは、財務的には利益率を高く維持できることにつながり、好業績の大きな要因となる。

ブランド戦略がもたらす効果-3:「リピート率向上」のメリット

「リピート率の高さ」は、あなたのビジネスにとって致命的に重要な要素だ。

あなたが携わっている商品の顧客構成を分解すると「新規顧客+既存顧客」にわけることができるはずだ。そしてあなたのブランドのビジネス構造は、新規顧客獲得のため大きな投資を行い、リピート購入の利益によって投資を回収していく構図になっている。

もし既存顧客のリピート率が低ければ、新規顧客獲得コストが回収できなくなり、あなたのビジネスはじり貧に陥っていく。それぐらい「リピート率の向上」はビジネスの成否を左右する重要なファクターだ。

しかし一方で、あなたのブランドには数多くのライバル商品が存在する。そしてそれらのライバル商品は、虎視眈々とあなたの顧客を狙っている。

もし、ライバル商品の戦略が優れていれば優良顧客の流出が起き、あなたのブランドのリピート率は下降していく。競争が激しい現状においては、これは大きなビジネスリスクだ。

ブランド戦略は「リピート率の向上」にも大きなメリットをもたらす。

「価格プレミアム」でも触れたが、ブランドは、感情移入の度合いが強まれば強まるほど、生活者から見て「思い入れが強いブランド」に育っていく。そして「愛着感情」が強くなればなるほど、競合商品に対する「浮気」が起きにくくなるため「リピート率」を高く維持できるようになる。

一般に、リピート顧客にかかるコストは、新規顧客にかかるコストの1/5で済むと言われる

ブランド戦略による感情移入で高いリピート率が維持できれば、新規顧客獲得コストの回収可能性が高まるだけでなく、ビジネスの収益性向上にも大きく貢献するようになる。

ブランド戦略がもたらす効果-4:「ビジネス機会の拡大」のメリット

 ブランド戦略の考え方の一つに「ブランド拡張」という考え方がある。

「ブランド拡張」とは、シンプルに言えば「築き上げたブランドの知名度や魅力をうまく活用しながら、新しい市場に新事業・新商品を展開する取り組み」を指す。

例えばAppleの成功事例を元に解説しよう。

アップルの成功事例

アップルのことは、当然あなたはご存知のことだろう。もともとはパソコンのブランドであり、多くの日本人の思い入れや愛着、感情移入を勝ち取ってきたブランドだ。

そしてブランド戦略の観点から言えば、アップルはブランド拡張を次々に成功させてきたブランドでもある。

「iPhone:スマホ市場」や「iPod:タブレット市場」、「iTunes:音楽配信市場」や「iPod:携帯音楽プレーヤー市場」など、アップルというブランドの知名度や魅力をうまく利用して、PC市場とは異なる市場を次々に開拓してきた。

Appleの例に見られる通り、いったんブランドを確立すると、生活者はそのブランドに大きな期待を抱くようになる。そしてその期待をうまく利用することで、新しい市場の開拓を有利に進めることができるようになる。

これが、ブランド戦略による「ビジネス機会拡大」のメリットだ。

ブランド戦略がもたらす効果-5:「アライアンス機会の拡大」のメリット

ブランド戦略により知名度が上がり感情移入の度合いが強まるのは、何も生活者に限った話ではない。ブランド戦略がうまく機能すれば、多くの企業もあなたのブランドに注目することになる。

ユニクロの成功事例

例えばユニクロの成功事例を例にとると、ユニクロの大ヒット商品である「ヒートテック」が、東レとの共同開発で生まれた商品であることは有名な話だ。

しかし想像してみてほしい。

もし、ユニクロが未だ知名度もブランド力もない山口県のローカルチェーンだったとしたら、果たして東レとの共同開発や、ヒートテックの大ヒットは実現しただろうか?

ブランド戦略が成功すれば、生活者以外にも多くのステークホルダーを惹きつける。

すると惹きつけられた企業からの協業の機会が増え、更なる成長のための戦略オプションも広がるメリットが生じるはずだ。

ブランド戦略がもたらす効果-6:「仕入れコストの削減」のメリット

ブランド戦略の実務の現場では「ブランド戦略のメリット」は販売面の効果のみに焦点が当てられ、コスト面の効果はあまり語られることはない。

しかし、ビジネスは売り上げからコストを差し引いて初めて利益になる以上「ブランド戦略によるコスト削減」のメリットも理解しておきたい。

ブランド戦略がうまくいくと、ブランドの知名度が高まり販売数量は増えていく。

そして販売数量が増えれば、当然原材料の仕入れ数量も増えることになるため、以前と比べて仕入れ業者に対する価格交渉力は大きく高まっていく。

さらに、あなたのブランドが社会的に評判のブランドへと飛躍した場合、今度は「採算ラインぎりぎりでもいいから、ぜひあなたの会社と取引をしたい」という取引先が現れ始める。

なぜならば、その取引先から見れば、社会で評判のあなたのブランドと取引をすることは、自社の社会的な信用を高め、技術や品質が認められた大きな実績となるからだ。

そしてその実績を引っ提げて他の様々な企業にアプローチできるようになるため、例えあなたとの取引が採算ぎりぎりであっても、その取引先にとっては次のビジネスに向けた大きなメリットとなるのだ。

これは、あなたの会社からみれば、破格の低コストで原材料を仕入れることが可能になることを意味する。

上記2つの理由から、ブランド戦略は「仕入れ面」でのコスト削減にも大きなメリットをもたらす。

ブランド戦略がもたらす効果-7:「広告宣伝コストの削減」のメリット

広告宣伝費は、あなたにとってコストだろうか?それとも必要な投資だろうか?

あなたが瞬間的に売り上げを上げたいと思えば、その広告宣伝費はコストとなる。しかし一瞬大きく売り上げは伸びるだろうが、その効果は一時的なものとなり、後には何も残らない。いわば広告宣伝費を「消費して終わる」こととなる。

しかし長期的にブランドを構築したいと思えば、広告宣伝費は投資という性格を帯びる。ブランドに対して感情移入し、永続的に指名買いしてもらえる顧客を増やすことが目的となるからだ。

ここでぜひ、あなたのブランドの知名度が高まり、社会的に定着し、多くの生活者から「指名買い」されている状態を思い浮かべてみて欲しい。

「多くの生活者に指名買いされている状態」ということは、つまり「広告宣伝を見たり聞いたりしなくても、向こうから指名で買っていただけている状態」と同じだ。

つまり「これまでは多大な広告宣伝費を使わないと買ってもらえなかった」状態から「例え広告宣伝をしていなくても、指名で買っていただけてる生活者が多数いる状態」になるため、同じ売り上げを上げるにも、広告宣伝費は必要最小限で済むようになる。

これが、ブランド戦略による「広告宣伝費の削減」のメリットだ。

もし、あなたがインターネット広告の運用経験がおありなら、売り上げに比例して広告宣伝費がかかってくる「自転車操業状態」のつらさは、よくおわかりのはずだ。

もちろん、広告宣伝費を「売上を上げるためのコスト」とみなした「一発芸」を否定するものではないが「広告宣伝費の削減メリット」も含めて、より戦略的にかつ長期的にブランドの競争力を築きたいのであれば「広告宣伝費=投資」という視点も必要だ。

ブランド戦略がもたらす効果-8:「人材獲得効果」のメリット

ブランディングにより知名度や感情移入の度合いが高まれば、優秀な人材獲得にも好影響を与える。

新卒の就職活動を見てもわかる通り、学生は知名度の高い企業を就職候補に選びやすい。

毎年雑誌の誌面を賑わす「就職したい企業ランキング」も、上位にランキングされるのは知名度の高い企業ばかりだ。

また、近年の就職活動は、いわゆる「就活サイト」への登録が半ば常識となっているが、学生は知名度の高い企業を検索して探そうとするため、やはり知名度の高い企業が有利となる。

先にブランド戦略の目的は「指名買い」であると解説したが、就職マーケットでもまた、ブランド戦略は知名度の向上を通して「学生からの指名買い」を増やす有力な手段となる。

さらに「ブランドに対する感情移入の強さ」もまた、知名度とは別の側面で人材獲得面で大きなメリット与える。むしろ、ブランドの競争力強化という観点ではこちらの方が重要だ。

スターバックスやディズニーランドの成功事例

例えば「スターバックス」や「ディズニーランド」を思い浮かべてほしい。どちらも、強い感情移入が伴ったブランドの成功事例だ。

この2つのブランドの「人材面」での共通点は、双方ともに正社員ではないアルバイトスタッフが極めて優秀であり「そのブランドらしさ」を体現した働きを自発的にすることだ。

スターバックスやディズニーランドで働くアルバイトスタッフは、そもそもそのブランドのファンであることが多い。そして、ファンであるがゆえに「そのブランドらしさ」を誰よりも深く理解している。

その結果、たとえマニュアルがない局面でも、自発的に「そのブランドらしいふるまい」をし、顧客を喜ばすことができるのだ。

さらに、そのブランドが好きでアルバイトに応募し働いているため、アルバイトスタッフであるにもかかわらずブランドに対する帰属心や貢献意欲が高く「そのブランドの役に立ちたい」というモチベーションが高い。

結果、企業の外側からの「見栄え」だけでなく、内側からもブランドを強くしていく「組織文化」が形成・強化され、その組織文化が「そのブランドらしい」個性的な商品やサービスを生み出していく。

そしてその優れた商品やサービスが、感情移入を伴う強いブランドを創り、そのブランドに惹かれた優秀な人材を集めるという好循環が創られていく。

これは何も、スターバックスやディズニーランドなどの接客業のみに当てはまるケースではない。例えば「リクルート」や「マッキンゼー」なども成功事例だ。

特に「人」が競争力のカギとなる企業の場合、ブランド戦略による人材獲得効果の向上は、極めて大きなメリットとなるはずだ。

ブランド戦略がもたらす効果-9:「働く誇りの向上」のメリット

続いてのブランド戦略のビジネスメリットは「働く誇りを向上させる効果」だ。

広告代理店という職業柄、ブランド戦略の一貫として知名度向上を目的としたTVCMの仕事をさせていただくことがある。

初めてTVCMを行うクライアントの場合、TVCMは決して安い投資ではないため、社員の皆さんは一様に期待と不安が入り交じった表情をされることが多い。

しかしTVCMのオンエア後、その状況は一変する。皆さん一様に誇らしい顔つきに変わるのだ。

もちろんブランド戦略の成果が出て「ブランドとして知名度が高まった」ことに対する誇らしさはあるだろう。しかし現場の実感値として最も多いのは、自分の家族や関係者からの反響に対する誇らしさだ。

  • 娘さんから「お父さんの会社のCM見たよ。いいね」とLINEがきた。
  • 田舎のご両親が、わざわざ流れたCMを録画してくれていた。
  • 営業担当者が、取引先の方からCMを誉められた。

数値には現れにくいことだが、なかなかバカにできないメリットだ。こういった1つ1つの出来事が社員の皆さんの誇りに変わる瞬間を何度も目にしてきた。

誰だって、自分達が「この商品は、世の中をより良く変えるはずだ」と信じて、苦労に苦労を重ねて作った商品が世の中に知られるようになり、多くの人から愛着を持たれ、ブランドとして成長していく姿を見るのは誇らしいものだ。

そしてそれらの誇りが、いつか自分の会社や、職務に対する誇りへと変わる。

一般に、企業の経営資源は「ヒト」「モノ」「カネ」と言われる。

しかし「モノ」を生産するのも、販売を通して「カネ」に変えるのも、その真ん中にいて使いこなすのはいつだって「人」だ。

そして、企業の経営資源のうち「人」だけが喜怒哀楽の感情を持つ。

そしてここまで読んでいただければ、もうお分かりのはずだ。ブランド戦略は、時に感情移入を通して「モノ」や「カネ」以上の価値を「社員」から引き出すのだ。

ブランド戦略がもたらす効果-10:「資金調達コストの削減効果」のメリット

 最後は、ブランド戦略による資金調達コストの削減メリットだ。

多くのマーケティング担当者にとって「ブランド戦略」と「資金調達コストの削減」とは結び付きにくいかもしれない。よって、まずはデフォルメされた例を挙げて解説しよう。

今ここに、1羽のニワトリがいたとする。普通のニワトリとこのニワトリの違いは、1週間に1個「金の卵」を生み出し続けることだ。

さて、あなたは資金を提供する投資家としてこのニワトリに投資する場合、いくらの金額の投資なら妥当だと考えるだろうか?

一般的なファイナンス理論における答えはこうだ。

このニワトリが2年生きると想定した場合、このニワトリは合計104個の金の卵を生み出すことになる。金の卵が1個10万円の価値があるとすれば、このニワトリは1,040万円(1個10万円×104週間)の価値を生み出すことになる。

だとすれば、あなたはこのニワトリを1,040万円未満の金額で投資をすることが妥当だという結論に達する。

しかしニワトリは生き物だ。残念ながら半年後に死んでしまうかもしれない。当然、そのリスク分は、あなたの投資金額から割り引いて考えなければならない。

さて、上記のデフォルメされた例を「ニワトリ=あなたのブランド」「金の卵=あなたのブランドが生み出す利益」「半年後に死んでしまうリスク=あなたのブランドが抱えるリスク」に置き換えて考えてみよう。

資金提供者が投資を検討する際の重要なファクターは、

  • あなたのブランドは、今後どれだけ利益(=金の卵)を生み出すのか?
  • そうならないリスク(=例えば2年経たずにニワトリが死んでしまうリスク)はどれくらいあるのか?

の2点に集約されることに気付くはずだ。

ここでブランド戦略に話を戻すと、これまで解説してきたように、強いブランドは弱いブランドと比べて「知名度の向上」「価格プレミアム」「リピート率の向上」などを通して、多くの利益(=金の卵)を生み出す。

そして「ブランドに対する感情移入」「指名買い顧客の増加」などを通して顧客流出の可能性を減らすことができるため、資金提供者から見たリスク(=2年経たずに死んでしまうリスク)」を低減させる。

結果、金融機関や投資家から見れば、強いブランドを持った企業は「資金を提供しやすい企業」となり、翻って企業の立場から見れば、ブランド戦略は「資金調達コストの削減効果につながる」というメリットをもたらすのだ。

ブランド戦略を理解する:ブランド戦略のメリット×バリューチェーン

以下、ブランド戦略をバリューチェーンの観点から順番に整理すると以下のように整理できる。

  1. 資金調達のメリット:
    強いブランドは弱いブランドと比べて「知名度の向上」「価格プレミアム」「リピート率の向上」などを通して多くの利益を生み出す。
    さらに「ブランドに対する感情移入」「指名買い顧客の増加」などを通して顧客流出の可能性を減らし、事業そのもののビジネスリスクを減らす。
    その結果、資金調達コストが下がり、ビジネスの投資資金を調達しやすくするメリットをもたらす。
  2. 人材獲得のメリット:
    知名度の向上やブランドの魅力の向上を通して「学生からの指名買い」を増やし、ブランドに対する帰属心や貢献意識が高い人材を採用できるメリットをもたらす。
    さらにブランドの成長が自分の会社や職務に対する誇りを生み出す。
  3. 商品開発のメリット:
    ブランドに対する期待を利用し、新しい市場への進出が用意になる。
    また、ブランドは生活者以外の多くのステークホルダーを惹きつけるため、更なる成長のための戦略オプションを広げられるメリットが生まれる。
  4. 生産のメリット:
    販売数量の拡大に応じて仕入れ数量も増えることになるため、仕入れ業者に対する価格交渉力が高まる。
  5. 広告宣伝のメリット:
    指名買い顧客が増えていくため「例え広告宣伝をしていなくても指名で買っていただける状態」が創れるため、長期的な広告宣伝費削減メリットが生じる。
  6. 販売のメリット:
    知名度の向上に比例して「欲しい」と感じてくれる生活者が増える。
    また、感情移入による思い入れや愛着を持ってくれる顧客が増えれば推奨による販売機会の裾野が広がる。
    さらに、ブランドに対する感情移入の度合いが強まれば「ほかには変えられないブランド」として類似商品より多少高くても選ばれやすくなる。
    また、競合商品に対する「浮気」が起きにくくなるため「リピート率」を高く維持できるメリットも生じる。

ブランド戦略の成功事例を学ぶおすすめ本3冊

最後に、ブランド戦略を学ぶ上でおすすめしたい書籍を3冊紹介して締めくくろう。ブランド戦略の全体像や成功事例が、より深く理解できるようになるはずだ。

ブランド戦略全書

本書は、ブランド戦略の全体像を研究者と実務家が多面的にまとめあげた書籍だ。

大学教授だけでなく調査の専門家や商標の専門家といった異なる立場の著者にからブランド戦略の解説がなされている。

ブランドという概念から最新のフレームワークまで、この一冊でブランド戦略の全体がわかる良書だ。

 ブランド戦略・ケースブック 

いわゆるブランド関連本は数多く出版されているが、本書は様々なブランドの成功事例を扱った稀有な書籍だ。

本書で扱っている事例は、三ツ矢サイダー、BMW、パイオニアKURO、花キューピット、R25、フラット35、セブン銀行、由比桜えび/駿河湾桜えび、熱海、揖保乃糸など多岐に渡る。

ブランド戦略は、ともすれば抽象的かつ概念的になりがちだが、もしあなたがブランド戦略の具体事例から学びを得たければ、本書は最もおすすめの一冊となる。

P&Gウェイ: 世界最大の消費財メーカーP&Gのブランディングの軌跡

本書はマーケティングの神様として名高いP&Gの成功事例から最近の戦略まで「P&G流ブランディング」の本質が語られた書籍だ。

本書の特筆すべき点は、経営陣や従業員との独占インタビューが許可された、史上初めての書籍である点だ。

最終章が「ブランド構築の原則」という内容で締めくくられていることからもわかる通り、P&Gのブランド力を高める秘訣を徹底的に解明した本でもある。

もしあなたがブランド戦略やマーケティング極めたいのなら方、読んでおくべき書籍だ。

終わりに

今回は「ブランド戦略の意味」と「ブランド戦略が生み出す10個の戦略メリット」を、成功事例を交えながら解説した。

ブランド戦略とは、多くの生活者からの感情移入を形創っていく取り組みだ。そして「感情移入」が創られるのは生活者の心の中である以上、求められるのは徹底した「顧客志向」だ。

しかし「企業目線」や「企業都合」が組織文化として定着している企業では、ブランド戦略は「青臭い理想論」として切り捨てられがちだ。

しかし、今回の解説をお読みになれば、ブランド戦略はマーケティングの上位戦略であり、バリューチェーンを跨いで様々なメリットをもたらすことに気付けるはずだ。

ブランド戦略は「一貫性」「統一性」「長期に渡る継続性」が求められるため、決して簡単な取り組みではない。しかしそれはあなたの競合企業も同様であり、もしそうなら、ブランド戦略を通して強いブランドを確立できたとき、それは競合企業が容易に模倣できない競争優位性を築けたことを意味する。

「会社の上層部やチームメンバーが、なかなかブランド戦略の必要性を理解してくれない」

もしあなたがそのような立場に置かれているのなら、ぜひ本解説を読むことを勧めてみてほしい。

今後も、折に触れて「ロジカルで、かつ、直感的にわかるブランディングの解説」を続けていくつもりだ。(過去記事と今後の掲載予定はこちら

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