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ブランディングの戦略家が【ブランド戦略の全て】を解説するブログ

ブランディングとは|ブランディングの意味と実務に活かせる基本知識

ブランディングの解体新書の文字

ブランディングに対する誤解

このブログに辿り着いたあなたなら「ブランディングとは?」について関心をお持ちのことだろう。

多くのマーケティング担当者が、口々に「これからはブランディングが重要だ」と言う。しかしあなたは「ブランディングの意味」を正確に把握しないままブランディング活動を展開しようとしていないだろうか?

「ブランディング」は抽象的な概念であるために、ともすれば「ブランディング施策」の話に偏りやすい。例えばあなたの周囲には以下のようにブランディングの意味を誤解をしている人がいるはずだ。

  • ブランディングとはロゴデザインのことだ。まずはデザイン会社に相談して、ロゴデザインを依頼しよう…。
  • ブランディングとは認知度のことだ。さっそく広告代理店を呼んで、広告プロモーションを提案してもらおう…。
  • ブランディングとはブランドイメージを向上させることだ。我々もこれからはブランド広告を露出し、ブランドイメージ向上に力を入れよう…。

特にデジタルマーケティングが隆盛な昨今、CVやCPA重視のマーケティング担当者が「効率至上主義」に限界を感じ「ブランディング=広告露出によるブランドイメージの刷り込み」という「手法論」に走ってしまう例が目立つ。

確かに上記3つはブランディング施策の一部ではあるが、全てではない。

どのようなビジネスも、まずは「戦略」が方向性を決め「戦術」がその方向性を加速させる役割を担う。

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しかし、もし戦略(=向かうべき方向)を間違えれば、それに沿って展開される戦術(=施策)も間違うことになる。つまり、ビジネスを間違った方向に加速させてしまうことになるのだ。

ここまでお読みになればお気づきだと思うが、先ほど紹介した「3つのブランディングの意味」はすべて「ブランディング施策」という「戦術」部分しか見ていない。

ブランディングは「ブランド戦略」という言葉があるように、ビジネスの方向性を決めるための「戦略」だ。

しかし抽象的な概念であるため、目に見えやすい施策面だけで捉えてしまうという間違いが起きやすい。

さらに「戦略(=向かうべき方向)」は通常一つだが、戦略を加速させるための「戦術(=施策)」は複数の手段が存在する。

その結果、人によって複数の「ブランディングの意味」が乱立してしまい、ブランディング活動が混乱をきたしてしまうのだ。

どれだけ「ブランディング」の必要性を痛感していたとしても、組織メンバーそれぞれの「ブランディングの意味」が異なれば、あなたの企業のブランディングは「立脚点すら揃わない」まま前へ進んでしまうことになる。

そして、立脚点が揃わないままブランディング活動を展開してしまえば、それぞれの組織メンバーが散発的なブランディング施策を繰り出すことになり、成果が伴わないことは自明の理だ。

よって、今回は「ブランディング」について基本的な解説を行う。その内容は、以下の通りだ。

  • 実務的な「ブランディング」の意味
  • ブランディングの種類
  • ブランドの構成要素
  • ブランディングのメリット
  • ブランディングの7つのステップと方法

この解説を最後まで読んでいただければ、あなたは直感的かつシンプルに「ブランディングとは何か?」が理解できるようになる。さらには、数多く乱立する「ブランディングの種類」や「ブランディングの方法」も一通り学べるはずだ。

その結果、組織メンバー内で「ブランディングとは何か?」という「立脚点」が揃うようになり、組織全体でブランディングの実践に弾みがつくはずだ。

ブランディングとは?ブランディングの意味とは

ブランドとは何か?教科書的な定義

まずはブランドの「教科書的な意味」について解説しよう。

もしあなたがブランディングの書籍を読んだことがあるなら、ブランドに関する以下の文章を目にしたことがあるはずだ。

ブランドとは?:
「ブランド」とは、北欧の古い言語であるノルド語の「brander」に由来し、そもそも飼っている家畜に目印として焼き印をつけることを意味した。日本語では「商標」などと訳される。

ブランディングの専門書であれば、ほぼ例外なく1ページ目に解説される「ブランドの定義」だ。そしてこれもまた例外なく、その後の文章でブランドの「差別化」や「独自性」の重要性が説かれる。

しかしあなたはこの文章を読んで「ブランディングとは何か?」という素朴な疑問の答えとして、腹落ちできただろうか?

ぜひ、あなたの組織メンバーの顔を思い浮かべてほしい。果たして彼ら彼女らは「なるほど!」と納得するだろうか?おそらく浮かない顔のまま「ふ~ん…。」で終わるはずだ。

続いて、こちらもよく引用されるAMA(アメリカマーケティング協会)のブランドの定義を見てみよう。

アメリカマーケティング協会のブランドの定義:

個別の売り手もしくは売り手集団の商品やサービスを識別させ、競合他社の商品やサービスから差別化するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはそれらを組み合わせたもの。

AMA(アメリカマーケティング協会)

さて、あなたはこの定義を読んでどう感じただろうか?率直に言って「理解しずらい、小難しい定義だな」と感じたのではないだろうか?

上記の文章はアメリカマーケティング協会の「公式定義」という性格から「より正確な単語を、より誤解のないように」という意図はわかる。しかしそれが逆に「ブランドとは何か?」をわかりずらいものにしている。

さらに「差別化」「名称」「デザイン」などの言葉が出てくることから「結局、ブランディングとはロゴデザインやパッケージデザインを差別化することでは?」などの手法論をイメージしがちだ。

しかし、ロゴデザインやパッケージデザインの差別化だけでブランディングが成功するとは、あなたも思っていないだろう。

「直感的にわかりずらい」

これが「教科書的なブランドの定義」の弱点だ。あなたが学者であれば「教科書的なブランドの定義」は一定の価値を持つだろうが、この解説をお読みいただいているあなたは実務家のはずだ。

残念ながら上記のブランドの定義は直感的にわかりずらいために、組織内で共有しずらい。ただでさえ忙しく、時間に限りのある実務家に必要なのは「もっと直感的で」「もっとわかりやすく」「実務がイメージしやすい」ブランドの定義だ。

実務的な「ブランド」の定義

それでは、私たち実務家にとって直感的でわかりやすい「ブランド」とは何だろうか?

ブランドの意味をシンプルに理解するには、モノを「製品」「商品」「ブランド」にわけて考えてみるとわかりやすくなる。

製品とは何か?

倉庫に積まれている製品の画像

「製品」とは、工場の倉庫にある出荷待ちのものを指す。

製品開発者が長年かけて開発し、工場担当者が丹精込めて生産する。

倉庫担当者が倉庫棚に整理し、出荷待ちの状態となる。しかしこの時点で生活者の関与はなく、企業側主導で事が進められる。

商品とは何か?

店頭に積まれている商品の画像

「商品」とは、お店の棚に並んだ販売待ちのものを指す。

商品開発担当者が「どう売るか?」を考えながらロゴやパッケージデザインを開発し、価格設定もなされている。

そして営業担当者もやはり「どうバイヤーに売るか?」を考え、知恵を搾る。そしてその努力が結実すれば、無事小売店の棚に並ぶことになる。

しかし、商品棚には様々な競合商品がひしめきあっている。

そしてたまたま偶然その棚を通りがかった生活者が、たまたま偶然あなたの商品を目にし、更にたまたま偶然その時のニーズにマッチすれば、買い物かごに放り込む。

「商品」の状態のままでは、数々の「たまたま偶然」をくぐり抜けた上での「衝動買い」に頼らざるを得ない状況だ。

結果「衝動買い」を創るために、販売促進担当者が「どう売るか?」を考え、値引き販売をしてみたり、ノベルティを付けてみたり、懸賞キャンペーンを展開するなど、やはり「製品」と同様、企業側主導で事が進められることが多いはずだ。

ブランドとは何か?

女性が胸の前で指でハートマークを作っている画像

「ブランド」とは、生活者1人1人の心の中にある。

長年、広告代理店と外資系コンサルティングファームの両方で「ブランディングのリアル」を体験してきたk_birdにとって、実務に直結しやすい「ブランドの定義」は以下の通りシンプルだ。

ブランドとは何か

ブランドとは「独自の役割を持ち」
「生活者の感情移入が伴ったモノやサービス」のこと。

強いブランド力を持つと評判のブランドを思い起こしてみて欲しい。

アップル、グーグル、ディズニー、スターバックス、コカ・コーラのロゴ画像

例を挙げれば、アップル、グーグル、ディズニー、スターバックス、コカ・コーラ…。どのブランドも、生活者のライフスタイルの中で独自の役割を持ち、単なる「モノ」や「サービス」を越えて、生活者からの感情移入が伴っていないだろうか?

k_birdは、広告代理店と外資系コンサルティングファーム時代を合わせて、延べ200回以上のマーケティングリサーチ経験を有している。

その経験からしても、独自の役割を持ち、感情移入が伴っているブランドとそうでないものとでは、指名購入意向率が5倍以上変わる例はザラにある。一方で、逆の例は1件も見たことがない。

どのようなモノやサービスも、人の感情が乗った時、その人にとっての「ブランド」に変わる。

もしあなたがこれからブランディング活動を始めるなら、ぜひ自社の製品・サービスを振り返ってみてほしい。自分達の製品やサービスはどれだけ「独自の役割」を持ち「生活者から感情移入されているだろうか?」と。

実務的な「ブランディング」の定義

ブランドとは「独自の役割を持ち」「生活者からの感情移入されている」モノやサービスのことだ。そしてブランディングとは「できるだけ多くの人に」「できるだけ際立った」独自性と感情移入を形創っていく活動を指す。

どのような製品・サービスも、独自の役割を築き、感情移入を促す取り組みを続けることによって、長く愛されるようになる。つまり「ロングセラーブランド」に育てることができる。

これが、k_bird流の「ブランディングとは」の答えだ。

ブランディングとは何か?

  • ブランドとは「独自の役割」を持ち「生活者の感情移入」が伴ったモノやサービス。
  • ブランディングとは「できるだけ多くの人に」「できるだけ際立った」独自性と感情移入を促していく取り組みを指す。
  • その成果は「衝動買い頼み」を越えた「指名買い」によるロングセラーブランドだ。

冒頭で「ブランドの定義」の話をしたことを、覚えておいでだろうか?

鋭いあなたならすでにお気づきかもしれないが「ブランド=焼き印」の話は「製品」の話をしているにすぎない。「違いとなる目印」を創ったからといって、生活者が感情移入をし、継続的に指名買いをしてくれるわけではない。

一方で、アメリカマーケティング協会のブランドの定義は「商品」の話をしている。「差別化するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン」などの話も、結局はそれを実現したからと言って「強いブランド」が創れるとは限らない。

そしてどちらも共通しているのは「ブランド」が「企業側の目線」でしか語られていないことだ。

マーケティング担当者は、優秀な人であればあるほど、一日中「マーケティング」について熟考を重ねていく。

「どうすれば、この商品は売れるのか?」「どうすれば、このサービスは競合より優位に立てるのか?」。そして、熟考を重ねれば重ねるほど「企業都合」「モノ起点」「どう売るか?」という発想に陥ってしまう。これが多くの組織で起きているマーケティングの実態だ。

しかし、一方の「生活者」の視点に立つとどうだろうか?

そのマーケティング担当者とは裏腹に、生活者はそのブランドについて、1日1分も考えていない。なぜなら、生活者の興味は「今よりも理想的なライフスタイルを実現すること」であり、ブランドは、彼ら彼女らにとってはその生活を実現するための「名脇役の一つ」でしかないからだ。

ともすればマーケティング担当者は「マーケティング」の名の元に「企業都合」で「商品=主役」と捉えてしまう。しかし、生活者からすれば、主役は「自分のライフスタイル」であって、商品は「脇役」にすぎない。

生活者はそれぞれ多様なライフスタイルや価値観を持っている。そしてそのコンテキスト(背景)に対する広範な理解を伴わない限り、生活者からの感情移入を勝ち取ることはできない。つまり、ブランディングは成功しないのだ。

製品、商品、ブランドの違いの画像

「ブランド」とは先に述べた通り「独自の役割を持ち、生活者からの感情移入が伴った商品・サービス」だ。

そして、一度ブランドを確立してしまえば、あなたは「販促による衝動買い頼み」から脱し「指名買い」という次のステージを切り拓くことができる。

もしあなたのチームが「企業都合」「モノ起点」「どう売るか?」という従来のマーケティング発想を越えて「生活者都合」「顧客認識起点」「感情移入重視」という「ブランディング」への発想転換ができたなら、単なる「教科書的」ではない血肉の通ったブランディングが実践できるはずだ。

販促頼みは瞬間芸だが、ブランディングは感情移入の蓄積により指名買いを創る

ブランディングの種類

続いて、ブランディングの「種類」について解説しよう。

このブログでは、主にBtoCの商品/サービスブランディングを中心に解説をしている。しかし無用な混乱を避けるためにまずは「ブランディングの種類」について解説しておこう。

ブランディングは、大きく分けて3つの種類が存在する。

  • 「何を」ブランディングするのか?:
    「商品/サービスブランディング」と「企業ブランディング」
  • 「誰に」ブランディングするのか?:
    「アウターブランディング」と「インナーブランディング」
  • 「誰が」ブランディングするのか?:
    「BtoCブランディング」と「BtoBブランディング」

「何を」「誰に」「誰が」の基準でブランディングの種類を示した画像

以下、わかりやすく解説しよう。

ブランディングの種類-1:商品/サービスブランディングと企業ブランディング

「何を」ブランディングするのか?を基準に分類すると、ブランディングは「商品/サービスブランディング」と「企業ブランディング」の2種類が存在する。

商品・サービスブランディングと企業ブランディングの違いを示した画像

商品/サービスブランディングとは、その名の通り商品/サービス単位でブランディングを展開することを指す。一般的には「ターゲット=商品/サービスの見込み客」であり、マーケティング領域でのブランディングであることから、別名ブランドマーケティングとも呼ばれる。

日本では「ブランディング」といえば「広告宣伝」という手法論に矮小化されがちだが、欧米ではブランディングはマーケティングの上位概念の戦略として位置付けられている。欧米企業がブランディングに長けており、マーケティングを「ブランドマーケティング」と呼ぶのはこのためだ。

一方で企業ブランディングとは、個々の商品ではなく、企業単位でブランディングを展開することを指す。企業ブランディングの対象は「社会」「従業員」「取引先」「株主・投資家」など「全ステークホルダー」となるのが一般的だ。

近年の企業ブランディングの例では、松下電器がパナソニックへ、 富士重工がスバルへと企業名を変更し、企業ブランディングを展開したのは記憶に新しいところだ。

ブランディングの種類-2:アウターブランディングとインナーブランディング

「誰に」ブランディングするのか?を基準に分類すると、ブランディングは「アウターブランディング」と「インナーブランディング」の2種類が存在する。

アウターブランディングとインナーブランディングの違いを示した画像

アウターブランディングとは、消費者や顧客など自社の「外側」にいる人達に対してブランディングを展開することを指す。

一方でインナーブランディングとは、別名「インターナルブランディング」とも呼ばれ「従業員」を中心に、自社の「内側」にいる人たちに対してブランディングを展開することだ。

インナーブランディングの目的は、従業員に対してブランドのミッション(社会的使命)やブランドビジョン(在りたい姿)あるいはブランドバリュー(価値観・マインドセット)を一人ひとりに理解してもらい、自分ごととして日々の業務を実践してもらうことだ。

スターバックスや東京ディズニーリゾートの例を見ればわかるように、人を介してサービスを提供するサービス業では、接客スタッフ1人ひとりの接客態度や接客品質がブランドの評価に直結していく。

また、近年「ブランド体験」や「カスタマージャーニー」の重要性が叫ばれて久しいが、部門を越えて一貫したブランド体験やカスタマージャーニーを実現していく上でも、インナーブランディングはとりわけ重要な取り組みとなる。

ブランディングの種類-3:BtoCブランディングとBtoBブランディング

「誰が」ブランディングするのか?を基準に分類すると、ブランディングは「BtoCブランディング」と「BtoBブランディング」の2種類が存在する。

BtoCブランディングとBtoBブランディングの違いを示した画像

消費財を提供しているBtoC企業がブランディングすることを「BtoCブランディング」と呼ぶ一方で、ビジネス財を提供しているBtoB企業がブランディングを展開することを「BtoBブランディング」と呼ぶ。

グローバルなBtoB企業では、ブランディングに力を入れている企業は多い。例を挙げれば、IBM/GE/インテル/シスコシステムズ/オラクル/SAP/JPモルガン/アクセンチュア/アドビシステムズ/キャタピラーなど、数え上げればきりがない。

これらのBtoB企業は、世界のブランド価値ランキングの常連企業だ。そして高い収益性を実現していることからも分かる通り、ブランディングはBtoB企業にとっても大きな競争力となる。

ブランドの構成要素

冒頭で、ブランドとは「独自の役割を持ち、生活者の感情移入が伴ったモノやサービス」であると解説したが「感情移入」を創るためには、どのような要素が必要だろうか?

そもそも、ブランドに対して何の連想も働かなければ、ブランドに感情移入しようがない。よって、まず形創るべきは「ブランド連想」だ。

さらに、ブランドから得られる連想には「価値(=喜び)」が伴っていなければならない。なぜなら、ブランドから得られる「価値」が連想されて初めて、ブランドに対する感情移入が生まれるからだ。

これを、ブランディングの世界では「ブランド提供価値」と呼ぶ。

「ブランド提供価値」は、大きく4つの構成要素に分類することができる。以下、簡単に解説しよう。

ブランドの構成要素-1:ブランドの実利的価値

生活者にとって最もベーシックな喜びは、そのブランドから「実利を得られる喜び」だ。具体的には「品質」や「機能」あるいは「利便性」がもたらす喜びだ。

多くの企業は、この喜び(=ブランドの実利的価値)を提供するために、開発競争にしのぎを削っているはずだ。しかし市場が成熟化してくると生活者は「ココロの豊かさ」に関心が移るため、差別化要因にはなりにくくなる。

ブランドの構成要素-2:ブランドの感性価値

生活者にとって最も重要なのが「実利価値」であることは論をまたない。しかし一方で生活者は「左脳」だけでなく「右脳的な感性」でもブランドの好き嫌いを判断している。
生活者が「感性」や「感覚」を持った人間である以上、自分の感性に合わないものよりも、自分の感性に合うものを選びたいと思うのは当然の心理だ。

例えばあなたが車を買おうと思ったとき、まずは何をするだろうか?現在、国内で売られている車の車種は150種類を越える。あなたはその150種類すべてをくまなく調べるだろうか?

おそらくあなたは、自分にとって好ましい印象を持っている車種から優先的に調べていくはずだ。そしてままいくつかの車種を絞り込み、その後、スペックや価格など「実利価値」の部分を比較検討した上で最終購入に至る。

鋭いあなたならお気づきかもしれないが、このプロセスは「まずは直感的な印象やイメージで絞り込んで」「絞り込んだ中から実利価値で比較検討する」という2段階のステップを辿っている。

特に近年では多くの市場が成熟化し「実利価値」での差別化は難しくなっている。

もしあなたの商品でも「実利価値」で差別化が難しくなっていると感じているのなら、「ブランドの感性的な価値」に着目してみよう。

ブランドの構成要素-3:ブランドの情緒的価値

人は誰でも「後ろ向きな気分」でいるよりも「前向きな気分」でいたいと考えるのが自然だ。そして「前向きな気分」が得られたとき、人は喜びを感じる。

近年「ブランド体験価値」の重要性が叫ばれて久しいが、この「ブランド体験価値」を考える上で重要なのが「ブランドの情緒価値」だ。

例えばある高級車メーカーが、あえてドアを閉める際に「ドスン」と低い音がするように、何回もテストを繰り返しているのは有名な話だ。これは、あえて「ドスン」という低い音をさせることによって「自分は高級車のオーナーである」という情緒的価値を提供するためだ。

ブランドの構成要素-4:ブランドの共鳴価値

あなたは一人の人間として、どのような価値観をお持ちだろうか?

もし、あなたが明確な価値観をお持ちなら、あなたの言葉や行動、あるいはモノの選び方は、その価値観に沿ったものになっているはずだ。

そしてあなたの価値観と似たような価値観を掲げたブランドが存在していたとしたら、あなたは「自分の価値観を表現するにふさわしいもの」として、そのブランドを認識することになる。

そしてあなたがそのブランドを手に入れた際には、単なる「実利」や「利便性」を越えて「自分の価値観を表現できる喜び」を得ることができるはずだ。

生活者からすれば、商品を使うということは「自身のライフスタイル」の一要素を構成する存在ということであり、そこには「自身の価値観・信条」と折り合っているかどうかを吟味するプロセスが存在する。

以前「ブランディングとは、感情移入を形創ること」と述べたが「価値観」は人が生きる上で最も根底をなすものと言っていい。

そうである以上、いったん「価値観レベル」で感情移入がなされると、あなたはそのブランドを通して自尊心が満たされ、ほかに替えがたいブランドとして評価するようになる。

ブランディングのメリットと効果

以下、ブランディングの効果をバリューチェーンのフレームワークの観点から順番に整理すると以下のように整理できる。

ブランディングのメリットと効果-1:ブランド戦略×資金調達

強いブランドは弱いブランドと比べて「知名度の向上」「価格プレミアム」「リピート率の向上」などを通して多くの利益を生み出す。

さらに「ブランドに対する感情移入」「指名買い顧客の増加」などを通して顧客流出の可能性を減らし、事業そのもののビジネスリスクを減らす。

その結果、安定したキャッシュフローへの期待が資金調達コストを下げ、ビジネスの投資資金を調達しやすくするメリットをもたらす。

ブランディングのメリットと効果-2:ブランディング×人材採用

ブランド力の向上は、ブランドに対する帰属心や貢献意識が高い人材を採用できるメリットをもたらす。

さらにブランドの成長が自分の会社や職務に対する誇りを生み出す。

ブランディングのメリットと効果-3:ブランディング×商品開発

強いブランドを築き上げることができれば、ブランドに対する期待を利用し、新しい市場への進出が容易になる。

また、ブランドは生活者以外の多くのステークホルダーを惹きつけるため、更なる成長のための戦略オプションを広げられるメリットが生まれる。

ブランディングのメリットと効果-4:ブランディング×生産

販売数量の拡大に応じて仕入れ数量も増えることになるため、仕入れ業者に対する価格交渉力が高まる。

ブランディングのメリットと効果-5:ブランディング×広告宣伝

指名買い顧客が増えていくため「例え広告宣伝をしていなくても指名で買っていただける状態」が創れるようになる。そのため、長期的な広告宣伝費削減メリットが生じる。

ブランディングのメリットと効果-6:ブランディング×営業・販売

知名度の向上に比例して「欲しい」と感じてくれる生活者が増える。

また、感情移入による思い入れや愛着を持ってくれる顧客が増えれば推奨による販売機会の裾野が広がる。

さらに、ブランドに対する感情移入の度合いが強まれば「ほかには変えられないブランド」として類似商品より多少高くても選ばれやすくなる。

また、競合商品に対する「浮気」が起きにくくなるため「リピート率」を高く維持できるメリットも生じる。

ブランディングのステップと方法

続いて、ブランディングのすてっぷについて解説しよう。ブランディングのステップは、おおまかには以下の7ステップとなる。

ブランディングのステップと方法-1:ブランディングの立脚点を揃える

ブランディングを進めるにあたって、まず重要なのが「ブランディングの意味」を組織メンバーと共有することだ。

ブランディングは高度に抽象的であることから、人によって多様な解釈が存在する。また、ブランディングによってもたらされる「組織横断的な」メリットを充分に理解してもらえなければ、それぞれの部門は個別の事情で一貫性のない施策を繰り出してしまうことにもなりかねない。

以下の記事では、ぜひ組織メンバーと共有しておきたい内容を解説している。ぜひ、ご覧いただきたい。

ブランディングのステップと方法-2:ブランドを取り巻く環境変化を捉える

環境変化と向き合わないブランディングはあり得ない。そのために必要となるのが、以下の外部環境分析だ。

  • 世の中の流れを味方につけるための「PEST分析」
  • 業界構造を味方につけるための「ファイブフォース分析」
  • 市場の変化を味方につけるための「3C分析」

以下の記事では「PEST分析」「ファイブフォース分析」「3C分析」に必要不可欠な視点と分析手順を解説しているので、ご興味があれば御覧いただきたい。

ブランディングのステップと方法-3:ブランド戦略を策定する

ブランド戦略は「独自性を際立たせ」「感情移入を形創る」ために、以下の項目を策定するの必要がある。

  1. ブランドが創り上げる「より良い社会の姿」を定義する
    =ブランドアイデンティティ/ブランドライフビジョンの定義
  2. ブランドが提供する価値(=喜び)を定義する
    =ブランド提供価値の定義
  3. ブランドが際立つための個性を定義する
    =ブランドパーソナリティの定義
  4. 上記を体現するデザインポリシー・ガイドラインを策定する
    =ビジュアルアイデンティティの構築

以下の記事では、それぞれに必要不可欠な視点を詳細に解説しているので、ご興味があれば御覧いただきたい。

ブランディングのステップと方法-4:ブランディングの評価指標を設定する

見えないものは、管理できない。そして管理できないものには、再現性がない。

ブランド戦略を策定したら、次は「ブランディングの評価指標」を設定しよう。

以下の記事では「ブランディングの評価指標」や「KPIの設定方法・手順」について解説しているので、ご興味があれば御覧いただきたい。

ブランディングのステップと方法-5:STP戦略を策定する

STP戦略とは「生活者を分類し(=S:セグメンテーション)」「その分類の中からターゲットを選択し(=T:ターゲティング)」「そのターゲットにとって独自の役割を創っていく(=P:ポジショニング)取り組みを指す。

しかしSTPというフレームワークは、扱い方を間違えれば「企業側の都合で一方的に決める」取り組みとなりがちだ。

このため、このブログの筆者であるk_birdはターゲティングとポジショニングの間に「ペルソナ設定」と「消費者インサイト」を加えることを推奨している。

以下の記事では上記の「STP」に加え「ペルソナ設定の方法・手順」「消費者インサイトの見出し方」についても解説しているので、ご興味があれば御覧いただきたい。

ブランディングのステップと方法-6:実行戦略を策定する

マーケティングの実行戦略は「教科書上のきれいごと」では事が進まず、最も大きな壁となりやすい。

一般に、STP戦略はマーケティング部門が主導して進むことが多い。しかしマーケティングの実行戦略に局面が移ると、多くの部門が関与し始めることになる。つまり、あなたには「考え方が異なる他部門を束ねる」という責任が生じてくる。

また、優れた「ブランドエクスペリエンス」を実現するにも多くの関連部門を巻き込む必要があるため「なぜ、これからはブランドエクスペリエンスが必要なのか?」という関連部門からの質問に対して「ロジカルに納得させるレベルの」説明力が必要となる。

以下の記事では「マーケティングミックス」に加え「ブランドエクスペリエンス」についても解説しているので、ご興味があれば御覧いただきたい。

ブランディングのステップと方法-7:適切にブランドマネジメントを行う

ビジネスの世界では「戦略2割・実行8割」と言われるように、ブランド戦略を「策定した」だけでは、ゴールではなくスタートにすぎない。

ブランディングを成果に結びつけるためには「優れたブランド戦略」が必要なのはもちろんだが「ブランド戦略を実現させる優れたブランドマネジメント」も求められる。

下記の記事では、ブランドマネジメントとは「何を」「どうする」ことなのかについて解説している。ぜひ、ご覧いただければ幸いだ。

 

ブランディングの基本知識:おすすめブランディング本6冊

締めくくりに、マーケティング・ブランディング担当者へのお薦めのブランディング本を紹介しよう。選定した基準は下記の通りだ。以下のどれかに当てはまるものをピックアップした。

  • k_birdが実際に読み、単純に「素晴らしかった」と思えるブランディング関連本。
  • 実際に「ブランディング」の戦略&施策実務に役立っているブランディング関連本。
  • 長年に渡って読み継がれており、時代を越えても変わらない「本質」や「原理」が見出せるブランディング関連本。

もちろん、すべて「なぜ読むべきなのか?」という解説付きだ。

おすすめブランディング本-1:デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 「顧客体験」で差がつく時代の新しいルール

ブランディングは、かつての「ブランド広告で創るもの」から「ブランド体験で創るもの」に変化しつつある。

その変化に対応したブランディングの入門書が本書だ。

本書はブランドコンサルティングファームの代表であり、ツイッター界隈でも有名な山口義宏氏が、デジタル時代にふさわしいブランディングの方法論を、初心者にもわかりやすく解説してくれている書籍だ。

k_birdが知る限り、ブランディングの方法論が網羅され、ブランディングとUXの関係が明快に解説されているのは、本書だけだ。

もしあなたがデジタルのコンバージョン施策で行き詰っているのなら、ネクストステップである「ブランディング」を検討する上で有用な書籍となるはずだ。

おすすめブランディング本-2:企業を高めるブランド戦略

あなたは、アーカーやケラーの「ブランド理論書」を読んで「やはりブランド論は難しい」と感じたことはないだろうか?

本書はそんな「ブランド論」を、極めて優しく解説してくれている学術的入門書だ。
しかし、入門書だからといって内容が薄いわけではない。「ブランディングとは?」というそもそも論から、強いブランドの構築・維持するためのブランドマネジメント方法、ひいては事例に至るまで「新書」とは思えないくらいカバー範囲は広く、内容は濃い。

日々、ブランディングやマーケティングの実務に没頭していると、つい「俯瞰視点」や「体系的な整理」がおろそかになる。

しかしどのような物事も、体系的に整理できていなければ、周囲にわかりやすく説明することはできない。

本書は、いまあなたが行っている様々なブランディング業務を体系立てて整理する上で、有用な指南書となるはずだ。

企業を高めるブランド戦略 (講談社現代新書)

おすすめブランディング本-3:事例でわかる! ブランド戦略【実践】講座

どんなに優れたブランド戦略も「実践」に結びつけることができなければ、その成果はゼロだ。

本書は、事業会社出身のブランドコンサルタントが、ブランド戦略の「実践」を指南した解説書だ。

本書の著者は、味の素ゼネラルフーヅ(株)、マキシアム・ジャパン(株)、ハーシージャパン(株)などで、ブランド・マネージャー、マーケティング・マネージャー、マーケティング・ディレクターを歴任し、豊富な実戦経験を持つ。

上記の企業はどれも決してNo.1企業ではないが、そうであるがゆえにガリバーブランドとの戦い方や、その実践を熟知している。

単なる机上の理論に留まらない「現場」を意識した事例と実践指南は、多くのマーケティング担当者にとって貴重な示唆となるはずだ。※「アマゾンなか見!検索」有

事例でわかる! ブランド戦略【実践】講座

おすすめブランディング本-4:グローバル企業に学ぶブランドマーケティング

日本企業は、ブランド戦略が苦手だといわれる。

もしそうなら、コカコーラやユニリーバなど、ブランディングに長けたグローバル企業の事例や方法論から学ぶが早道だ。

本書は、様々なグローバル企業で経験を積んだ著者が、消費者調査や流通管理をはじめとしたブランドマーケティングのポイントを、なんと90の項目にわけて解説してくれている。

このブログを読んでいるほとんどの方は、日本の企業で働いていることだろう。
だからこそ、日々の職場では学びづらい、外資系企業ならでは方法論は有益なノウハウとなるはずだ。

グローバル企業に学ぶ ブランド・マーケティング90の項目

おすすめブランディング本-5:プラットフォームブランディング

本書は、ジャーナリストとブランドコンサルティング会社がタッグを組んで著した稀有な書籍だ。

ビジネスを取り巻く環境変化についてジャーナリストが解説し、あるべきブランド戦略、そしてブランドマネジメントまでをブランドコンサルタントが解説してくれている。

ブランディングやマーケティングは、多額の投資が必要であるにもかかわらず「ブラックボックス」になりやすい領域だ。そのため、ブランド戦略を推進する上で、関係する多くの部署との調整に手間取りがちだ。

本書は、そういった起こりうるブランディングの局面や落とし穴に対して現実的な処方箋や対応事例を用意してくれている。

ブランド戦略は再現性のあるロジックであり、組織だった学習によって習得可能なスキルだ。本書はそのことを実感させてくれる一冊だ。

プラットフォーム ブランディング

おすすめブランディング本-6:ブランドで競争する技術

本書は「ブランドをいかに造り出し、ブランドを使っていかに競争に勝つか」という問いに答える実践的な手引書だ。

本書の特筆すべき点は、著者がハンズオンで企業再生を支援するターンアラウンドスペシャリストである点だ。

「改革を志すものは、単なる理屈の正しさ以上の技術を有する責任がある」とあるように、机上の空論ではない迫力に満ちている。

事例はファッションブランドのケースが多いが「ブランドバリューポジショニングマップ」「リスク分散手法」「出島理論」「TICS」など、ファッションブランドを越えて普遍的に通用するフレームワークも満載だ。

本書は事業再生という修羅場を通して、多くの実務家が競争に勝つための切り口・考え方を提示してくれている実践的競争戦略の指南書だ。

ブランドで競争する技術

 

その他の解説記事とおすすめ書籍

もしあなたが本解説以外にも関心があるのであれば、リンクを張っておくのでぜひ必要な記事を探していただきたい。

また、下記の記事ではより深くブランディングやマーケティングを学びたい方におすすめ書籍を紹介している。ぜひご覧いただければ幸いだ。

ブランディング・マーケティング関連のおすすめ書籍紹介

マネジメント・問題解決関連のおすすめ書籍紹介

終わりに

今回は「ブランディングとは?実務に活かせるブランディングの定義と基本知識」と題して、ブランディングの意味や種類、ブランディングのステップについて解説した。

ブランディングとは何か?:PDF無料ダウンロード

今回は「ブランディングに必要な3つの発想転換」を一枚に集約したPDFを用意した。

PCでご覧になっている方は、この画像をクリックするとPDFダウンロード、あるいはプリントアウトできるはずだ。ぜひあなたのチームで共有するなど、ブランディング実務に活用していただきたい。

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今後も、折に触れて「ロジカルで、かつ、直感的にわかるブランディングの解説」を続けていくつもりだ。 

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