このページに辿り着いたあなたなら「マーケティングミックスとは何か?」あるいは「マーケティングの4P」や「マーケティングの4C」に関心があることだろう。
このブログ「Mission Driven Brand」は、外資系コンサルティングと広告代理店のキャリアを持つ筆者が、ブランディングやマーケティングの「できない、わからない」を解決するブログだ。
マーケティングミックスとは、ブランド戦略やSTP戦略を機能させるための「実行戦略」のことを指す。別名「マーケティングの4P」や「マーケティングの4C」とも呼ばれる。
「マーケティングミックス」は、マーケティングの書籍をひも解けば必ずと言ってよいほど登場するフレームワークといえる。しかし、実務に落とそうとすると最も大きな壁となりやすいのも「マーケティングミックス」だ。
よって、今回は理屈としてはわかりやすいが実行局面に壁になりやすい「マーケティングミックス」について手法や事例を交えながら解説する。その内容は以下の通りだ。
- マーケティングミックスとは何か?
- 「マーケティングの4P」の構成要素と勘所は?
- 「マーケティングの4C」とは?
- マーケティングミックスを機能させる3つの重要ポイントとは?
今回の解説を最後までお読みになれば、あなたは「マーケティングミックスとは何か?」について理解できるはずだ。
また、この記事の最後には、記事内で紹介した図版のスライド資料を用意しているので、ぜひ復習時に活用頂きたい。
★ブランドマーケティングを学びたい方へ。このブログから書籍化した「ブランディングの教科書」
本論に入る前に、僭越ながら拙著を紹介させていただこう。
「ブランディング」は捉えどころがなく、なかなか一歩を踏み出せない。あなたはこのような状況に陥ってはいないだろうか?
本書の執筆陣は、ある時は広告代理店のストラテジックプランナーとして、ある時は、外資系コンサルティングファームのコンサルタントとして、クライアントの実務担当者が悪戦苦闘する姿を見てきた。
「ブランディング」は、その本質を理解しないまま実行に移そうとすると、的を射ない小手先の手法を延々と繰り出すことになりがちだ。結果、やみくもに予算を消化したまま、成果が出ない事態に陥ってしまう…。
そのような事態を1件でも減らしたい。そう考えたのが本書を執筆した理由だ。
ブランディングの本は、どれも「ブランドのらしさ」「ブランドの世界観」など「ふわっと」した話になりがちだ。そして「ふわっ」とした話になればなるほど抽象的かつ曖昧な概念論になってしまい、企業組織の中で通すことが難しくなる。
本書は、外資系コンサルティングファームと広告会社で培った「生の知見」をふんだんに盛り込みつつ、つい「抽象論」に陥りがちな「ブランディング」に対して「論理的な納得性」と「直感的な腹落ち感」の両面を追求した書籍だ。
本書のタイトルは「ブランディングの教科書-ブランド戦略の理論と実践」だ。
「理論」が理解できなければ、ブランディングを体系化できず、ビジネスに再現性を生むことができない。そして「実践」が理解できなければ、ビジネスに成果をもたらすことができない。
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など、ありがたい言葉を頂いている。
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- なぜ、そうなのか?
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- 具体的な日本のブランドの事例は?
を徹底して解説しているので、あなたのお役に立てるはずだ。
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- マーケティングミックスとは何か?
- マーケティングの4Pとは?
- マーケティングの4Cとは
- 「マーケティングの4P」と「マーケティングの4C」の関係
- マーケティングミックスの戦略ポイント
- マーケティングミックスを理解する:おすすめ書籍3冊
- このブログから書籍化した本4冊
- その他の解説記事とおすすめ書籍
- 終わりに
- マーケティングミックスとは|マーケティングの4P・4Cの要素と戦略ポイント|スライド資料
マーケティングミックスとは何か?
マーケティングミックスとは?
マーケティングミックスとは、ブランド戦略やSTP戦略を有効に機能させるための「実行戦略」のことを指す。別の言い方をすれば、ブランド戦略やSTP戦略に基づいた「打ち手の組み合わせ」のことだ。
マーケティングミックスのフレームワークには複数あるが、最も有名なフレームワークは「マーケティングの4P」だ。しかしそれ以外にもサービスマーケティングの実行戦略策定に使われる「サービスマーケティングの7P」や、より顧客志向に立ってマーケティングミックスを考える「マーケティングの4C」などが存在する。
マーケティングミックスの位置づけ
どのマーケティングミックスにも共通するのは、ブランド戦略やSTP戦略を具現化するための「実行戦略」である点だ。
つまりマーケティングミックスには前提として必ず「ブランド戦略」や「STP戦略」が存在し、そこで明確に定義された「ブランドアイデンティティ」や「ターゲット設定」あるいは「ポジショニング設定」がインプットとなって、マーケティングミックスに展開されていく。
マーケティングの4Pとは?
マーケティングの4Pの意味
こっからは、マーケティングミックスの代表格といえる「マーケティングの4P」について詳しく解説しよう。
「マーケティングの4P」とは、STP戦略で決めたターゲットやポジショニングを実行に移すために必要な4つの要素のことを指す。その要素とは以下の通りだ。
- 商品(Product)
- 価格(Price)
- 流通(Place)
- プロモーション(Promotion)
「マーケティングの4P」は、1960年代前半にアメリカの経済学者であるジェローム・マッカーシーが提唱したマーケティングフレームワークだ。「マーケティングの4P」の意味合いをひも解くと、
- 商品戦略(Product):
ターゲットのニーズに対応した「商品」を開発し - 価格戦略(Price):
ターゲットに最適な「価格」を設定し - 流通戦略(Place):
ターゲットに届けるために最も効率的な「流通網」を構築し - プロモーション戦略(Promotion):
ターゲットに対して最も効果的な「プロモーション」を展開する
以下「マーケティングの4P」の各要素について、重要なポイントを解説していこう。
マーケティングの4Pの要素
マーケティングの4Pの要素-1:商品戦略(Product)と事例
当たり前のことだが、商品戦略は「マーケティングの4P」の中でも、最も重要な要素だ。
商品戦略(Product)とは、生活者に対してどの様な商品を提供するかを決定する取り組みだ。まずはターゲットに対する提供価値を考え、商品コンセプトとして磨き上げ、それを支える技術や生産、パッケージ、サポートサービスなどを組み合わせて「商品」に仕上げていく。
その要となるのが「商品コンセプト」だが、あなたは「商品コンセプトとは何か?」と問われて、明確に説明できるだろうか?
多くの実務現場を歩いてきたk_birdの経験からすると、様々な企業で「商品コンセプト」という言葉自体は使われている。しかし一方で「商品コンセプトという考え方そのもの」が曖昧だったり、チームメンバー間で大きくズレていたりする局面に出くわすことも多い。
結果「単にスペックを並べ挙げただけ」の商品コンセプトや、それらを無理やりまとめあげた「総花的で独自性に乏しい」商品コンセプトに出くわすことも日常茶飯事だ。
ここで、より「商品コンセプト」の理解を深めるために、簡単な事例を解説しよう。下の画像をご覧頂きたい。あなたには何が見えるだろうか?
「紙コップでしょ?」もしあなたがそう考えたのなら、半分は正解だが半分は間違いだ。なぜなら、上記の画像をより正確に表現するなら「白い紙でできた円柱形の立体物」だからだ。
だまし討ちのようで恐縮だが「紙コップ」とは「白い紙でできた円柱形の立体物」という実体に「水を飲むもの」という「概念」が加わって初めて成立する。
もし仮に「白い紙でできた円柱形の立体物」に花を生ければ、上記は紙コップではなく「紙でできた花瓶」になりうる。
あるいは紙コップにお洒落なイラストを描けば、それは「インテリア雑貨」にもなりうる。
更にもう一つ「商品コンセプト」の理解を深めるための例を示そう。
あなたの傍らには、スマートフォンがあるはずだ。しかし、仮にスマートフォンを見たことがないアフリカの原住民がスマートフォンを手に取ったら、その原住民はどう感じるだろうか?
あなたにとっては片時も手放せないスマートフォンだが、アフリカの原住民にとっては狩りにも農作にも使えない、単なる「黒い板状の固形物」でしかない。しばらくは興味を持つだろうが、いずれ手に取るのをやめて放置されることになるはずだ。
なぜなら彼ら彼女らが認識しているのは「黒い板状の固形物」という「実体」のみであり「インターネットで情報が取れる」「遠隔でコミュニケーションが取れる」「写真が撮れる」などの「概念」を理解していないからだ。
あらゆる物事は「実体」と「概念」に切り離して考えることができる。そして単なる「実体」だったものに「これまでにない概念」を吹き込むことができれば、そこに新しい価値が生まれる。
「実体」は企業側にとっての事実だ。そして1つしかない。しかし「概念」は生活者側の認識であり、無限に存在する。そして生活者側に無限に存在する「概念」のうち、どの部分を切り取って「実体」である製品と結び付けるか?がマーケティング担当者であるあなたの力量であり「商品コンセプト」となる。
具体例でいえば、ある高級車は「車輪の上のリビングルーム」という商品コンセプトを掲げている。「走る鉄の塊」という実体に「リビングルームのような快適さ」という「概念」を加えて商品コンセプトを創り上げた事例だ。
「概念」とは、英語に訳すと「コンセプト」となる。そして「製品」という実体に「概念」を吹き込んだものが「商品コンセプト」だ。
あらゆる物事に対して「実体」と「概念」を切り離して思考を巡らせる思考習慣が身に付けば、あなたは優れた商品コンセプトを生み出しやすくなるはずだ。
マーケティングの4Pの要素-2:価格戦略(Price)と事例
「マーケティングの4P」の2つ目は「Price:価格戦略」だ。価格戦略とは「生活者が商品の対価として支払う金額」を決めることを指す。
価格戦略が極めて重要であることに、あなたも異論はないはずだ。価格はそのままあなたのブランドの売上に直結していく。高すぎる価格設定をすれば商品は売れなくなり、低すぎる価格設定をすれば、商品は売れるかもしれないが利益は出なくなる。
非常に悩ましい連立方程式だが、一般に価格設定は以下の視点を念頭に進めることが多い。
- コストの視点
- 価格相場の視点
- マーケティング戦略の視点
- ブランディングの視点
以下、一つずつ簡単に解説していこう。
価格戦略の手法と事例-1:コストの視点
当たり前のことだが、コストよりも商品価格が上回らなければ利益はでない。一方で、生活者の心理的な相場価格より商品価格が高ければ、商品は売れない。この2つをうまく両立させるには、あなたは「商品の損益分岐点」と「生活者の価格相場観」の両方を把握しておかなければならない。
「商品の損益分岐点を把握する」とは、要は「いくらで何個売ったら利益がでるのか?」を把握することだ。これには管理会計上の「変動費」「固定費」の理解が必要不可欠となる。
「変動費」とは「1個売れるごとに比例的にかかるコスト」のことを指す。代表的なのが「製造原価」だ。売れれば売れるほど、製造原価は比例的にかかっていく。そして販売価格から「変動費(=1個売れるごとにかかるコスト)」を差し引いたものが「粗利」となる。
しかし「粗利=利益」と考えるのは早計だ。なぜなら企業には「1個売れるごとに比例的にかかるコスト」だけでなく「売れようが売れまいが必ずかかるコスト=固定費」が存在するからだ。例えばあなたの人件費は、商品が売れようが売れまいが必ずかかる「固定費」となる。
ここで鋭いあなたならお気づきかもしれないが、商品価格から変動費を差し引いた「粗利」を積み重ねていくことで「固定費」をカバーしていく、というのがあなたのビジネスの基本構造となる。
例えば価格が100円の商品の変動費(=1個売れるたびにかかる費用)が50円だった場合、粗利は50円となる。そしてもしあなたの人件費が50万円なら1万個売って初めて収支はトントンとなる。つまり、販売目標は1万個以上だ。
しかし、もしあなたが販売価格を下げることで販売量の増加をもくろんだとしよう。
例えば価格を90円にした場合、粗利は40円となる。そして上記と同じようにあなたの人件費が50万円なら1.25万個売って初めて収支はトントンとなる。価格を10%下げたことで販売目標は25%増となるが、果たして25%もの販売増を、あなたは実現できるだろうか?
逆に、あなたが販売価格を上げることによって、利益の増加をもくろんだとしよう。
例えば販売価格を110円にした場合、粗利は60円となる。そしてあなたの人件費が50万円なら、販売目標は8,333個となる。
このように、コストの側面から価格を決めていく方法を、マーケティングの専門用語では「コストプラス価格設定法」という。利点は変動費や固定費を変えながら、柔軟に価格設定や販売目標設定を行える点だ。
しかし、先ほど「10%価格を下げて、25%の販売増を実現できるだろうか?」あるいは「10%上乗せした110円で商品が売れるだろうか?」と問いかけた通り「その価格設定で本当に買っていただけるのか?」という生活者目線が入っていないのがデメリットだ。
価格戦略の手法と事例-2:価格相場の視点
上記の「コストプラス価格設定法」は生活者目線が入っていないのが難点だ。それをカバーするためには「生活者が感じている相場価格」を念頭に置かなければならない。その方法としてよく使われるのがPSM分析だ。
PSMとは「Price Sensitivity Measurement」の頭文字をとったもので、日本語に訳すと「価格感度測定」となる。生活者へのアンケート調査を通して「価格の相場観」を把握し分析する手法だ。アンケート調査の4つの項目で「生活者の価格相場」を把握することが多い。
- 高すぎてとても手が出ないと思う(思い始める)価格
- ちょっと高い(高いと感じ始める)と思う価格
- ちょっと安い(安いと感じ始める)と思う価格
- 安すぎて品質を不安に思う(思い始める)価格
これらの調査を行うと、例えば以下のようなことがわかる。
- 商品価格を100円にした場合、生活者の何%が「高すぎて手がでない」と思うか
- 商品価格を100円にした場合、生活者の何%が「ちょっと高い」と思うか
- 商品価格を100円にした場合、生活者の何%が「ちょっと安い」と思うか
- 商品価格を100円にした場合、生活者の何%が「安すぎて品質が不安」と思うか
さらにPSM分析の良いところは「価格感度」の名の通り「100円なら」「110円なら」「120円なら」などの価格設定に応じて柔軟に上記の割合を把握できる点だ。さらに「上限価格の相場観」や「下限価格の相場観」などを見極めることで、設定する価格帯を絞り込んでいくことも可能だ。
価格戦略の手法と事例-3:マーケティング戦略の視点
「コスト面」及び「生活者の相場価格面」の両方を検討したら、次に必要なのが「戦略」の視点だ。
あなたの商品にはライバルが存在する。そのライバルに対して価格面でどう戦っていくのか?を考えるのが価格戦略の視点だ。価格設定を戦略の側面から捉える場合、大きく分けて以下の2つの考え方が存在する。
- 市場浸透価格戦略(ペネトレーションプライス戦略)
- 上澄み吸収価格戦略「(スキミングプライス戦略)
まずは1番目の「市場浸透価格戦略(ペネトレーションプライス戦略)について解説しよう。
市場浸透価格戦略(ペネトレーションプライス戦略)とは、商品を早期に市場に浸透させることを目的に、価格設定を「コストと同じ」か、あるいは「コスト以下」に設定する価格戦略を指す。
競合ブランドは思い切った低価格についてこれなくなるため、結果として大きなシェアが実現する。しかし市場浸透価戦略をとる場合には、以下の3つの条件が揃っている必要がある。
1つ目は「販売数量が増えるにつれてコストが下がる」見込みが立つかどうかだ。
例えば「大量販売&大量仕入れによって原材料費の単価が劇的に下がる」あるいは「工場の稼働率が飛躍的に上がり商品1個当たりの間接費が大幅に下がる」などだ。
2つ目は「利益が出るまで原価割れに耐えうるだけの企業体力かあるかどうか」だ。
市場浸透価格戦略とは、発売当初は競合他社が追随できない原価割れの価格で大きなシェアを取り、シェアを取った後は数量効果によるコスト削減分で利益を生み出す、という価格戦略だ。当初は体力を削りつつ、後から「実を取る」戦略であるため「実を削る」期間の体力を必要とする戦略だ。
3つ目は、変動費率が低いかどうかだ。
例えばITソフトウェアはそれなりに開発費はかかるものの、いったんソフトウェアができてしまえば「データのコピー」で済むため変動費率は低い。そのため、利用者が何人に増えようが大きなコストがかからないため「まずは普及させて」「後から有料課金を促す」という価格戦略が可能になる。フリーミアム戦略などが典型だ。
次に「上澄み吸収価格戦略(スキミングプライス戦略)」について解説しよう。
上澄み吸収価格戦略(スキミングプライス戦略)とは、市場浸透価格戦略とは反対に、最初から利益を上げることを目的とした価格戦略だ。当初は比較的高い価格をつけて、初期の段階で開発費や設備投資を回収してしまうやり方だ。
もし仮に競合ブランドが低価格で参入してきた場合には、その段階で価格を引き下げることで対抗する。この戦略がうまくいけば初期段階で開発費や設備投資費を回収しているので、値下げをしてもある程度の利益が出ることになる。
多くの企業はこちらの価格戦略を採用することが多い。
価格戦略の手法と事例-4:ブランディングの視点
あなたは「1,000円のリンゴ」と聞いて、どんな連想を思い浮かべるだろうか?恐らくは「高いけど、手間暇かけて作られた、おいしいリンゴに違いない」と感じるのではないだろうか?
価格には「金銭的対価」としての役割のほかに「価値の大きさを期待させる」効果がある。これをマーケティングの専門用語で「価格シグナル」と呼ぶ。
強いブランドには「価格の好循環」が作用する。ブランド力が強化されると、高い価格でも購入したいという生活者が増えるので「プレミアム価格」をつけることができる。
そして「プレミアム価格」をつけることができれば、先ほどの「1,000円のリンゴ」のように「高かろう、良かろう」の心理メカニズムが作用するため、生活者が「知覚する品質」は高くなる。
逆に言えば、あまりにも安い価格設定は「安かろう、悪かろう」の心理が働き、例え良いものでも売れなくなるという現象が起きる。一時期これに苦しんだのがユニクロだ。
もしあなたが上記の上澄み吸収価格戦略(スキミングプライス戦略)を取るのなら「高い価格設定」と同時に「価格の好循環」が作用しやすいブランド戦略を策定しよう。
マーケティングの4Pの要素-3:流通戦略(Place)と事例
「マーケティングの4P」の3つ目は「Place:流通戦略」だ。「流通」とは商品と生活者を結ぶ経路のこと言い「流通戦略」とは販売を行う場所を決めることを指す。
流通チャネルは一度構築してしまえば大きな強みとなる反面、変更が難しい点に注意が必要だ。
また、流通戦略は必ずしも自社内のみで完結する戦略ではないことから、様々なしがらみを生みやすい。例えば化粧品業界や生命保険業界ではインターネット販売の旺盛により、これまで長い時間をかけて築き上げた特約店チャネルが逆に弱みとなりつつある。
よって、流通戦略を考える際には「目の前の売り上げ」だけでなく「中長期的な視点」で賢い戦略を作り上げる必要がある。
流通戦略は、以下の5つにわけることができる。
- 開放的チャネル戦略
- 選択的チャネル戦略
- 排他的チャネル戦略
- チャネルミックス戦略
- チャネル開拓戦略
以下、簡単に解説しよう。
流通戦略の手法と事例-1:開放的チャネル戦略とは?
「開放的チャネル戦略」とは流通チャネルを限定せずに、広範囲にわたって開放的に商品を流通させる戦略だ。多くの店頭消費財はこのチャネル戦略を採用している。
一気に販売数量を拡大できるというメリットがある一方で流通のコントロールが難しく、販売管理が行き届かないというデメリットが存在する。いわば「自社商品がどこで、いくらで売られているか把握できない」という状態だ。
また、様々な流通事業者間の競争に巻き込まれやすいため、常に価格下落やブランド力の低下リスクに晒されることになる。そのため、プレミアム価格の商品よりも薄利多売型の商品に向いているチャネル戦略だ。
流通戦略の手法と事例-2:選択的チャネル戦略とは?
「選択的チャネル戦略」とは、販売力や資金力、あるいは契約内容の順守度などに応じて流通チャネルを選別する戦略だ。
このチャネル戦略を採用している具体例がアップルだ。アップルは「自社商品の扱い条件」や「陳列方法」などの条件を厳しく定め、その条件を飲む家電量販店にのみ販売を許している。その結果、アップルの販売コーナーは常に独特の個性を保ち、アップルらしいブランド演出と売り場管理が行き届いている。
「選択的チャネル戦略」は流通事業者を選別した上で適度にブランドコントロールできるメリットがあるため、よりブランディングを重視した企業に採用されやすいチャネル戦略だ。
流通戦略の手法と事例-3:排他的チャネル戦略
「排他的チャネル戦略」とは、特定の地域や製品の販売先に独占販売権を与える戦略だ。例えば自動車業界における自動車ディーラーや、新聞業界における新聞販売店などが典型だ。販売先は、代理店や特約店などと呼ばれることが多い。
排他的チャネル戦略では、流通チャネルをコントロールしやすく、販売管理が容易になるメリットがある。しかし近年では量販店やインターネットの普及により「様々なブランドを横断して比較・購入できる」環境が整っているため「そのメーカーのブランドしか買えない」特約店制度は機能しずらくなっている。
また、排他的チャネル戦略は「特約店支援」や「販売インセンティブ」などチャネル維持のコストが大きくなり、かつ、独占販売権を与えている以上チャネル間の競争が働きにくくなるため、各流通チャネルが主体的な販売努力をしなくなるデメリットも存在する。
流通戦略の手法と事例-4:チャネルミックス戦略
チャネルミックス戦略とは、生活者が置かれている状況や利便性に応じて、柔軟に流通チャネルを使い分けるチャネル戦略を指す。
例えば、ある化粧品企業では「ドラッグストア/スーパー」「自社EC」「コンビニエンスストア」の3つのチャネルを利用し、生活者の利便性に応じて使い分けるチャネルミックス戦略を展開している。
まず「ドラッグストア/スーパー」では、小容量で価格を抑えたスキンケア商品を販売している。スキンケア商品の最大のチャネルは「ドラッグストア/スーパー」だが、小容量で価格を抑えることで「初めは安く試したい」と考える生活者のニーズを汲み取って間口を広げるという考え方だ。
一方で「自社EC」では、ドラッグストアやスーパーでは棚回転率の観点から扱ってもらいにくい大容量の商品を販売している。その狙いは以下の通りだ。
- トライアルユーザーは、だんだんリピートユーザーに育ってくると購入頻度が上がり、毎回「ドラッグストア/スーパー」で購入するのが億劫になってくる。
- そこで、その化粧品企業はリピートユーザーに対して大容量版をお勧めし、自社ECに促す。
- するとリピートユーザーは大容量版を手に入れることで「毎回ドラッグストアやスーパーで買わなきゃいけない」という手間が省け、利便性が高まる。
- 更に大容量版は、容量の割にリーズナブルな価格に設定されているため、リピートユーザーにとってみれば毎回ドラッグストアやスーパーで購入するよりも経済的にお得になるというメリットもある。
- 化粧品企業側からすれば、自社ECで買ってもらうと顧客データが取れるので、CRMを展開することが可能になる。
- そしてCRMを通して上手くブランドロイヤリティを引き上げて「定期お届けサービス」に移行してもらえれば、顧客の囲い込みは盤石なものとなる。
さらにその化粧品企業は、コンビニエンスストアではミニサイズの「使い切り版」を販売している。こちらは、自社ECを利用しているロイヤルユーザーが「たまたま商品を切らしてしまい、注文はしたけど数日持たなきゃいけない時」や「急に友達や彼氏の家に泊まることになり、急場を凌ぎたい時」に購入してもらうための商品だ。
コンビニエンスストア用の「ミニサイズ」は、容量に比べて比較的高めに価格設定されているが、ユーザーからすれば「急場凌ぎ」であるため、価格感度はそれほど高くない。「ミニサイズ」はそんな「急場凌ぎ」を見越した戦略だ。
この化粧品企業のように、チャネルをうまくミックスさせて優れたブランド経験を形創るのがチャネルミックス戦略だ。
流通戦略の手法と事例-5:チャネル開拓戦略
チャネル開拓とは、既存の流通チャネルに囚われずに、新たな流通チャネルを開拓していく戦略を指す。それなりの手間やコストはかかるものの、いったん独自開拓したチャネルが機能しはじめると、いわば「独占チャネル」となるため、大きな利益を生みやすくなる。
この「チャネル開拓戦略」を積極的に推し進めた成功事例が「ネスカフェ・アンバサダー」だ。「ネスカフェ・アンバサダー」のチャネル開拓の仕組みは、以下の通りだ。
まずはオフィスの中にいるOLを「ネスカフェ・アンバサダー」として募り、コーヒーマシンを無償で貸与する。そして職場内でコーヒーを飲みたい同僚に声をかけてもらい、コーヒー代金を集めてもらう。「ネスカフェ・アンバサダー」であるOLはその代金で「ネスカフェ」をネットで購入し、ネスレ日本はその代金で利益を得るという仕組みだ。
近年、オフィス内ではメールやグループチャットなどが浸透し、フェイスtoフェイスでのコミュニケーションが失われつつあると言われる。そのような状況の中「ネスカフェ・アンバサダー」は「1杯20円のコーヒーから、オフィスの会話を生みだす」という理念を掲げている。
そしてその理念に賛同したネスカフェ・アンバサダーは無報酬でこの仕組みに参加し、今では20万人を越える規模になっているという。いわばこの20万人がネスカフェアンバサダーの「流通チャネル」となる。
あなたもご存じの通り、総合スーパーや百貨店、家電量販店など、いわゆる既存のチェーンストア業態は苦境に喘いでいる状況だ。
このような状況の中で、既存流通チャネルのみを「Place(流通チャネル)」と短絡的に捉えてしまうとマーケティングの視野は大きく狭まる。
あなたの目的は商品を生活者に届け、ブランディングによって指名買いを勝ち取ることであって、既存流通はそのための一手段にすぎない。
そして既存流通が商品を届ける一手段にすぎない以上、既存流通の枠組みだけに囚われず「新たな流通チャネルを開拓する」という視点で、広くブランドエクスペリエンス(ブランド体験)を捉え直してみることも必要だ。
マーケティングの4Pの要素-4:プロモーション戦略(Promotion)と事例
「マーケティングの4P」の4つ目は「Promotion:プロモーション戦略」だ。
プロモーション戦略とは、ターゲットや流通業者に対して、商品の存在や 機能、価値を効果的に伝え、ニーズを創り上げていくための取り組みを指す。
プロモーションは、大きく分けて5つに分類できる。そしてそれらを組み合わせてより効果を上げていく手法を「プロモーションミックス」を呼ぶ。以下、ひとつずつ要素を簡単に解説しよう。
プロモーション戦略の手法と事例-1:生活ニーズを創造する「戦略PR」
マスコミやインフルエンサーへの働きかけを通して「生活ニーズ」を顕在化させていくのが戦略PRの役割だ。
例えば「赤ちゃんの睡眠が脳の発達に影響する」という情報をマスコミやインフルエンサーを通して広く社会に提供していくことで「自分の赤ちゃんの睡眠を守りたい」という生活ニーズを創造する、などが典型だ。
プロモーション戦略の手法と事例-2:情報ニーズを満たす「コンテンツマーケティング」
インターネット上のオウンドメディアなどを通して生活者の情報ニーズを満たし、そこからブランドのセールスに結び付けていくのが「コンテンツマーケティング」という手法だ。
例えば「自分の赤ちゃんの睡眠を守りたい」という生活ニーズの次には「具体的に何をすれば赤ちゃんの睡眠を守れるの?」という情報ニーズが生まれる。
インターネット上のオウンドメディアなどを通してその情報ニーズを満たすコンテンツを提供しながら、赤ちゃんの睡眠を守る有力な方法として自社のオムツ商品を紹介すれば、優れたブランディングとセールスにつながるはずだ。
プロモーション戦略の手法と事例-3:広告で衝動買いを促す「ダイレクトマーケティング」
広告を見たその瞬間に購買衝動を創り、購入に結び付けていく手法がダイレクトマーケティングだ。近年ではインターネット広告のA/BテストやPDCAサイクルを通して、購入直結させるための様々なノウハウが開発されている。
ダイレクトマーケティングの分野では、そのノウハウが公開されていることも多いため、知りたい方はぜひググってみよう。様々なノウハウが見つかるはずだ。
プロモーション戦略の手法と事例-4:ブランドを有名にする「マス広告」
インターネットの普及に伴い、マス広告の影響力は低下しているといわれる。確かに影響力の低下は否めない事実だが「腐っても鯛」という言葉があるように、未だ様々な面で「おいしい鯛」であることは事実だ。
k_birdの実務経験からしても、インターネット上の施策だけでは、どんなに頑張ってもブランド認知率の引き上げは30%を越えない。一方でマス広告(特にTVCM)であれば、ブランド認知の閾値とされる60%を越えることも可能だ。
マス広告は強制視認性を伴うため批判は多いが、裏を返せば「知らないブランドを知ってもらう」ことにかけては、未だ絶大な力を発揮する。
費用は高額となるが、ぜひ、ここぞというときに活用して欲しい。
プロモーション戦略の手法と事例-5:売り場で衝動買いを促す「セールスプロモーション」
スーパーで買い物をする主婦は、その80%が非計画購買、つまり買うものを決めずに訪れているという。残りの20%の指名買いの内側に入るのがブランディングの目的だが、とはいえ短期的なセールスの最大化には80%の非計画購買層へのアプローチも欠かせない。
セールスプロモーションは、売り場における様々な施策を通して、他社ブランドとの比較で迷っている非計画購買層の背中を後押しする取り組みだ。
セールスプロモーションの手法は、大きくは「ノベルティの提供」「特別な体験の提供」「値引き」の3つのパターン別に分けられる。更にそこから細かい手法に分類すると20パターンを越えるほど奥が深い手法だ。いずれこのブログでは、細かい手法1つ1つを解説していく予定だ。
マーケティングの4Cとは
マーケティングの4Cの意味
ここまで「マーケティングの4P」について解説してきた。続いて「マーケティングの4C」について簡単に解説しよう。「マーケティングの4C」の構成要素とは、以下の通りだ。
- カスタマーバリュー(Customer Value):顧客にとっての価値
- カスタマーコスト(Customer Cost):顧客の負担
- コンビニエンス(Convenience):顧客から見た入手利便性
- コミュニケーション(Communication):顧客とのコミュニケーション
マーケティングの4Cの要素-1:カスタマーバリュー(Customer Value)と事例
マーケティングの4Cの1つ目は「カスタマーバリュー戦略」だ。
この「カスタマーバリュー戦略」は、マーケティングの4Pの「プロダクト(Product)」と対応している。
商品やサービスを「プロダクト(Product)」と捉えてしまうと、どうしても「仕様」という狭い発想に陥りがちだ。それを生活者の視点から「カスタマーバリュー」として捉え直すことで「生活者側が得られる価値から逆算して製品を捉える」視点が持てるようになる。
生活者は、何も「仕様」だけで購入判断をしているわけではない。以下の記事では生活者がブランドから感じ取る10個の価値を解説している。合わせてお読みいただきたい。
マーケティングの4Cの構成要素-2:カスタマーコスト(Customer Cost)と事例
マーケティングの4Cの2つ目は「カスタマーコスト戦略」だ。
この「カスタマーコスト戦略」は、マーケティングの4Pの「プライス(Price)」と対応している。
こちらも商品やサービスにかかるコストを「プライス(Price)」と捉えてしまうと、大きく視野を狭める。生活者の視点から見ると、商品やサービスを得るために支払う「犠牲」は金銭的なものだけではない。例えば、以下のようなものも「カスタマーコスト」となる。
- 時間的コスト:
例えば「納期までのコストの長さ」「商談時間の長さ」あるいは「商品の使い方に慣れるまでの時間の長さ」など - 労力的コスト:
「商品を探し回る労力」や「購入手続きの手間」あるいは「商品を持って帰る労力」など - 心理的コスト:
モノやサービスを購入するときの「引け目」や「心理的なブレーキ」を指す。例えば「メルセデス・ベンツを買いたいけど、自分には身分不相応かもしれない」と感じている場合など
こうしてお読みいただければ「P:Price」を「C:Customer Cost」と捉え直すことで、より生活者視点に立ち、様々な発見・改善につなげることができるはずだ。
マーケティングの4Cの構成要素-3:コンビニエンス(Convenience)と事例
マーケティングの4Cの3つ目は「コンビニエンス戦略」だ。
この「コンビニエンス戦略」は、マーケティングの4Pの「プレイス(Place)」と対応している。
こちらも上記2つと同様に「商品やサービスを提供する場所」を短絡的に「プレイス(Place)」捉えてしまうと重要な視点が抜け落ちる。
例えば、車好きのドライバーにとっては、車用品やパーツの品ぞろえの豊富な大型店は「たくさんの中から選べて便利」となる。
しかし「車=生活の道具」と捉えているドライバーにとっては「豊富な品ぞろえの中から選ぶこと=余計な労力」であり、むしろ売れ筋商品だけを並べた小型店の方が「選ぶ手間がなくて便利」ということになる。
このように「Place」を短絡的に「場所」と捉えるのではなく「Convenience」と捉えることで、より生活者視点に立ったマーケティングが展開できるはずだ。
マーケティングの4Cの構成要素-4:コミュニケーション(Communication)と事例
マーケティングの4Cの最後は「コミュニケーション戦略」だ。
この「コミュニケーション戦略」は、マーケティングの4Pの「プロモーション(Promotion)」と対応している。
こちらも「プロモーション=広告/販売促進」と狭く捉えるのではなく「コミュニケーション=顧客や生活者との絆創り」と捉え直せば「CRM」や「ブランドコミュニティ形成」などもコミュニケーション施策として視野に入ってくることになる。
例えば、ブランドのファンコミュニティを形創り、そのコミュニティに参加した顧客同士に同類意識を持ってもらう。そしてファン同志のコミュニケーションを促すことで更なるブランドロイヤリティを高める、など、より広い発想が持てるようになるはずだ。
「マーケティングの4P」と「マーケティングの4C」の関係
「マーケティングの4C」は、よく「マーケティングの4Pに替わるもの」という文脈で語られる。
しかし「マーケティングの4C」を提唱したロバート・ラウターボーンは「4Pを設定する前に、まず買い手の視点での4Cの検討から入るべき」と主張している。また「マーケティング担当者は、ターゲット市場の顧客を4Cの視点で理解すれば4Pの設定もはるかに容易になる」とも述べている。
つまり「マーケティングの4C」は「4Pに替わるもの」ではなく「優れた4Pを実現するための思考ツール」という位置づけだ。ぜひ、マーケティングの「4C」と「4P」をうまく使いこなしながら、優れたマーケティングミックスを実現して欲しい。
マーケティングミックスの戦略ポイント
最後に、マーケティングミックスを機能させるためのポイントを解説しよう。
マーケティングミックスの戦略ポイント-1:ブランド戦略との一貫性があるか?
1つ目は、ブランディングとの一貫性だ。本ブログでいう「ブランディング」の定義は以下の通りだ。
- ブランドとは「生活者の感情移入」が伴ったモノやサービス。
- ブランディングとは「できるだけ多くの人に」「できるだけ強い」感情移入を形創っていく取り組みを指す。
- その成果は「衝動買い頼み」を越えた「指名買い」によるロングセラーブランドだ。
詳しくは「ブランディングとは|10のメリットと21の戦略手法|全手順 」で解説しているが、その中核をなすのが「ブランドアイデンティティ」だ。ブランドアイデンティティとは「そのブランドが守るべき、一貫した姿勢」のことを指す。
心理学の世界では、人間は「予測可能性が高い」物事には安心感を感じ、逆に「予測可能性が低い」物事には不安を感じるとされる。
これをブランディングやマーケティングに応用すれば「ブランドアイデンティティ(そのブランドが守るべき姿勢)が一貫している」ということは、そのブランドに対する「予測可能性」が高くなることを意味する。結果、そのブランドに対して安心感や信頼感が生まれやすくなる。
一方で「ブランドアイデンティティ」が一貫せずバラバラであれば、そのブランドに対する「予測可能性」は低くなる。そのため、逆に不安感や不信感が生まれやすくなる。
ブランドアイデンティティに一貫性があれば「予測可能性」と高めることでブランドに対する信頼感を形創ることができる。そして「ブランドに対する信頼」が「理屈抜きにそのブランドを信じる」という状態であることを鑑みれば、ブランドにとって最も重要な「感情移入」の一つとなる。
これらのことを踏まえれば、マーケティングミックスはブランドマネジメントの一貫であることは、おわかりいただけるはずだ。
マーケティングミックスの戦略ポイント-2:STP戦略との一貫性があるか?
例えば「富裕層に対して、贅沢で特別な体験を提供する」というSTP戦略を掲げたジュエリーブランドが、ドン・キホーテで販売を始めたら、あなたはどう感じるだろうか?
「そんなバカな…」とあなたは笑うかもしれないが、他人事ではない。程度の差はあれ、このような事態は必ず起こる。
なぜなら、マーケティング基本戦略であるSTP戦略はマーケティング部門主導で進むことが多いが、マーケティングミックス戦略に局面が移ると多くの部門が絡むことになるからだ。
結果、戦略立案したあなたの手から離れ、各部門の思惑や利害が複雑に絡み合いながら遠心力が働いていく。気が付いてみたら、現場では「STP戦略の方針」とは一貫性のない施策が乱発されていた、などはマーケティングの世界では「あるある」だ。
マーケティングミックスの難しさは、それぞれの事情や思惑を抱える関連部門の微妙なバランスを解きほぐしながら、いかに正しい判断を進めていくか?という点に尽きる。
そのために必要なのは、社内の関連部門を動かしうる事実やロジック、洞察力だ。そして、時にあなた自身の「情熱」や「志」あるいは「覚悟」など、青臭い人間力も必要となる。
人を動かすということは、本質的には権限で行うことではない。ブランディングやマーケティングを志す者として、ぜひ「単なる理屈の正しさ」以上の情熱を加えて、STP戦略とマーケティングミックス戦略の一貫性を守り切ってほしい。
マーケティングミックスの戦略ポイント-3:相乗効果はあるか?
最後は、マーケティングミックスの相乗効果だ。
マーケティングミックスがマーケティング「ミックス」である所以は、ただ4Pを使えばいいというのではなく、4Pの組み合わせによる相乗効果を目指しているからだ。
マーケティングの4Pをうまく「ミックス」すれば、先ほど事例で取り上げた化粧品企業のように、互いの要素の利点を組み合わせて、優れた顧客体験を形創ることができる。ぜひ、マーケティングミックス戦略を立案する際には、4Pの相乗効果を検討しよう。
マーケティングミックスを理解する:おすすめ書籍3冊
最後にマーケティングミックスを理解する上でお薦めのマーケティング書籍を紹介しておこう。
選定した基準は下記の通りだ。以下のどれかに当てはまるものをピックアップした。
- k_birdが実際に読み、単純に「素晴らしかった」と思えるマーケティング書籍
- 実際にマーケティングの実務で役立っているマーケティング書籍
- 長年に渡って読み継がれており、時代を越えても変わらない「本質」や「原理」が見出せるマーケティング書籍。
もちろん、すべて「なぜ読むべきなのか?」という解説付きだ。
コトラーのマーケティングコンセプト
マーケティングには「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」「ブランド」など、様々な専門用語が居並ぶ。
本書は、現代マーケティングの父と言われるフィリップ・コトラーが、今日のマーケティングにおいて必要だと思われる80の基本用語・概念について、実例を交えながら解説したベストセラー書籍だ。
書いてある内容はマーケティングの初心者が読むべき基礎項目ばかりだが、特筆すべき点は、ABC順にマーケティングコンセプト・用語が解説されていることだ。
フィリップ・コトラーの代表的著書である「マーケティング・マネジメント」あるいは「マーケティング原理」は、MBA学生の必読書ともいわれているが、2冊とも日本語訳で1000ページ前後もあり、マーケティング初心者が気軽に手に取れる書籍とはいえなかった。
しかし本書はマーケティング戦略について、キーワードを数多く網羅したリファレンス的な書籍となっている。そのため、マーケティングを勉強したい初心者にとっては、実践の中でわからない用語が出てきた際に、辞書的に引ける点が魅力だ。
もしあなたがマーケティング担当者として着任した際には、必読の参考書だ。
たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング
本書は、P&G、ロート製薬、ロクシタン、スマートニュースで一貫してマーケティング畑を歩いてきた「マーケティングの実務家」が著した書籍だ。
いわゆる「事業会社側」で活躍する現役のマーケッターが、これだけのノウハウとフレームワークを惜しみなく紹介するのは、かなり珍しいことだと言える。
本書の特筆すべき点は、描かれている内容がマーケティングの実務経験に裏付けられているため、極めてリアリティがあり、かつ実践的である点だ。
かと言って、単なる「How To本」ではなく、本書の根底にはマーケティングそのものを成り立たせている本質や哲学が流れている。
もし、本ブログの筆者であるk_birdが「マーケティングとは何か?」と聞かれたら、自信をもって「この本を読め!」と挙げられる書籍であり、素直に「もっと多くのマーケッターに売れて(読んで)欲しい」と思える書籍でもある。
本書は「考え方」の面でも「実務」の面でも「マーケティングの真ん中」を行く書籍だ。
USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門
本書の執筆者である森岡 毅氏は、P&Gジャパンでヴィダル・サスーンのブランドマネージャーを勤めた後、P&G世界本社でパンテーンのブランドマネージャーを歴任した凄腕のマーケッターだ。
また、森岡氏は経営難に陥っていたUSJのCMOとして乗り込み、劇的にV字回復差せたことで知られる。そんな森岡氏が、USJのV字回復の軌跡を「マーケティング理論に当てはめて」執筆したのが本書だ。
アマゾンのレビューを見れば納得頂けると思うが、本書は単なるUSJのマーケティング事例本ではない。STPやマーケティングミックスなどのフレームワークを「そもそも論」から解説した上で、更にそれらを「実践に活かす方法」にまで落とし込んで解説しているマーケティングの名著であり、人気のベストセラー書籍だ。
「成功を引き寄せるマーケティング入門」というサブタイトルにもある通り実務上の示唆も多く、あらゆるマーケティング担当者が読むべき必読の入門書と言えるだろう。
このブログから書籍化した本4冊
★ブランディングの理論と実践をつなぐ「ブランディングの教科書」
冒頭でも紹介したが、再度ここでも紹介させていただこう。
ブランディングは、ややもすれば「デザインの話」「広告の話」「世界観の話」など、掴みどころのない抽象論に陥りがちだ。
しかしブランディングは「ブランド戦略」という言葉があるように、企業の成否を大きく左右する戦略のひとつだ。そして投資が伴う以上、一定の合理性と説明責任が求められる。決して、売上や利益から逃げてはならないのだ。
本書は、つい「感覚論」に陥りがちな「ブランディング」に対して「論理的な納得性」と「直感的な腹落ち感」の両面を追求した書籍だ。
「論理」が理解できなければ、ブランディングを体系的に理解することできず、再現性を生むことができない。
そして「直感的な腹落ち感」がなければ、ブランディングを実務に落とせず、成果をもたらすことができない。
本書は、広告代理店&外資系コンサルティングファームで培った「生の知見」と「体系的な解説」を通して、ブランディングの理論を実践へとつなげて解説している。
おかげさまで、本書はAmazon kindle売れ筋ランキング「消費者主義」ジャンルでベストセラー1位を獲得し、Amazonレビューでも、
- 「ふわっとしたブランディングの本が多い中で、異彩を放っている」
- 「事例も多いので実践のイメージが湧きやすい」
- 「海外企業の事例ばかりが紹介されている輸入本だとピンとこない、という方にお薦め」
など、ありがたい言葉を頂いている。
もし本書を手にとって頂ければ、ブランディングの専門用語はもちろん、実践の手順や実務の勘所が、一通り学べるはずだ。
kindle Unlimitedを契約されている方は無償で手に入れることができるので、気軽に手に取っていただきたい。
★「シャープな仮説を生み出す頭の使い方」を徹底解説
あらゆるビジネスは「仮説」こそが成否を握る。
なぜなら、仮説を生み出せなければ次の一手を見出しようがなく、検証のしようもなくなるからだ。つまり、ビジネスの成長は止まってしまうことになる。
しかし仮説思考の書籍の多くは、仮説思考のメリットは説くものの、肝心の「仮説思考のマスターの仕方」になると、
- 「センスが必要」
- 「経験の積み重ねが物を言う」
など「それを言ったらお終いよ」という結論で終わらせているものが多い。
一方で、本書は「仮説思考に必要な推論の手順」を、豊富な事例とともに解説している。よって、その手順通りに推論を重ねれば「センス」や「長年の経験」に頼ることなく、誰でも優れた仮説を導き出せるようになる。
おかげさまで、本書はflierとグロービスが主催する「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」にノミネートいただき、NewsPicksやNIKKEI STYLE、lifehackerなど多くのメディアで取り上げていただいた。Amazonレビューでも、
- 「ここ数年の仮説思考系の書籍で久々のヒット」
- 「自分オリジナルの武器にしていけそうな良書」
- 「一生もののスキルになるのは間違いない」
など有難い言葉を頂戴しており、5刷を重ねている。
もしあなたがシャープな仮説を導き出せるようになりたいなら、ぜひ本書を手にとってみて欲しい。
★ロジカルシンキングでは学べない「視点力」と「法則力」を身につける※無料のオーディオブック特典付
人は誰しも「視点」を通してしか物事を考えることができない。別の言い方をすれば、「何を考えるか?」は視点が支配してしまうともいえる。
人の思考は必ず、
- 視点:まずは何らかの「視点」を置き
- 法則:その「視点」を元に「ああなれば→こうなるだろう」という「パターン」に当てはめ
- 結論:結論を出す
というステップを辿る。
つまり、どんなにロジカルシンキングに長けていても、論理の前提となる「視点を置き方」が適切でなければ、結論は間違ったものになる。
また、どんなに適切な視点を置いたとしても「ああなれば→こうなるだろう」という「パターン」が頭の中になければ、仮説をスピーディーに導き出すことはできない。
本書はビジネス書から「隠れた視点」と「隠れた法則」を発見し、思考の質とスピードを上げていく方法を解説した書籍だ。
もしあなたが自由自在に「視点」を操ることができるようになれば、物事の多様な側面に気づき、次々と「新たな可能性」を見出すことができるようになる。
さらに、数多くの「法則」をストックしていけば、様々な現象に「法則」を当てはめることで「筋の良い仮説」を瞬時に導き出すことが可能になるはずだ。
おかげさまで、本書はThe21やNIKKEI STYLE、STUDY HACKERなど多くのメディアに取り上げていただき、発売3か月で海外の翻訳出版も決定した。Amazonレビューでも、
- 視点力や仮説思考、抽象化スキルが身に付く良書
- これまでの読書術の常識を次々と塗り替えている目からウロコの本
- まさに「モノの見方を変える方程式」
など、ありがたい言葉を頂戴している。
もしあなたが「ロジカルシンキング本」では学べない「思考スピード」を身につけたいなら、ぜひ本書で紹介する読書法を実践して欲しい。
★8ジャンル57個の仕事術で「実践力」を身につける
どのようなビジネスも、実践が伴わなければ成果は出ない。しかし、いざ「実践力」を身につけようとしても、その分野は、
- 時間管理術
- 段取り術
- コミュニケーション術
- 資料作成術
- 会議術
- 学び術
- 思考術
- 発想術
など多分野に渡り、最低8冊分の読書時間と書籍代がかかってしまうのが難点だ。
しかし、本書「超効率ハック」は、8つの分野の仕事術の「重要ポイントだけ」を抜き出し、ギュッと1冊に凝縮した書籍だ。
さらに、本書は「訓練や習慣化が必要な作業テクニック」ではなく「行動を変えるための頭の使い方」の解説に力を入れているため「頭のスイッチを切り替える」だけですぐに実践できるのも特色だ。
おかげさまで、本書を題材にしたSchooのオンライン授業では「思考法ジャンル」で人気ランキング1位を頂いた(139講座中)。また、lifehackerやOggiなど数多くのメディアで取り上げていただき、Kindleでは「オペレーションズ部門」でベストセラー1位を獲得している。
Amazonレビューでも、
- 「思考と行動の質を上げるヒントが盛りだくさん」
- 「読んでみると、頑張りどころを間違えてたことに気付かされる」
- 「仕事が速い人はこれをやってたんだな、ということがよくわかった」
など、ありがたい言葉を頂戴しており嬉しい限りだ。
もしあなたが「短時間で網羅的に仕事術を学びたい」「根本から仕事の生産性を高めたい」と感じているのなら、ぜひ手に取ってみて欲しい。
その他の解説記事とおすすめ書籍
おすすめ記事
★ブランディング・マーケティングの知識が身につくおすすめ記事
★思考力が身につくおすすめ記事
★ビジネススキルが身につくおすすめ記事
おすすめ書籍
★17のビジネス分野別おすすめ書籍
★ブランディング・マーケティングの知識が身につくおすすめ書籍
★思考力が身につくおすすめ書籍
★ビジネススキルが身につくおすすめ書籍
終わりに
今後も、折に触れて「ロジカルで、かつ、直感的にわかるブランディングの解説」を続けていくつもりだ。
しかし多忙につき、このブログは不定期の更新となる。
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