このページに辿り着いたあなたなら、何らかの理由で「質問力とは何か」あるいは「質問力を磨きたい」と考えていることだろう。
このブログ「Mission Driven Brand」は、外資系コンサルティングと広告代理店のキャリアを持つ筆者が、ビジネスの「できない、わからない」を解決するブログだ。
質問力とは、相手の世界を「理解」し「広げる」ために、適切な質問を投げかける力を指す。
「質問力」は、うまく使いこなせば「質問を受けた人」に気づきを与え、これまでとは異なる新たな思考を促し、相手の世界を広げることができる。そこで今回は「質問力」について解説しよう。その内容は以下の通りだ。
- 質問力とは何か
- 質問力を磨くことで得られる5つのメリット
- 3つの「質問の種類」
- 質問力を磨く方法と75個の質問例
この記事を最後までお読みになれば、あなたは「質問」を自由自在に操ることで、自分と相手の世界を広げていくことができるようになるはずだ。
また、この記事の最後には、記事内で紹介した図版のスライド資料を用意しているので、ぜひ復習時に活用頂きたい。
★8ジャンル57個の仕事術で「実践力」を身につける
本論に入る前に、僭越ながら拙著「超効率ハック」を紹介させていただこう。
どのようなビジネスも、実践が伴わなければ成果は出ない。しかし、いざ「実践力」を身につけようとしても、その分野は、
- 時間管理術
- 段取り術
- コミュニケーション術
- 資料作成術
- 会議術
- 学び術
- 思考術
- 発想術
など多分野に渡り、最低8冊分の読書時間と書籍代がかかってしまうのが難点だ。
しかし、本書「超効率ハック」は、8つの分野の仕事術の「重要ポイントだけ」を抜き出し、ギュッと1冊に凝縮した書籍だ。もちろん、質問力についても重要ポイントを徹底解説している。
さらに、本書は「訓練や習慣化が必要な作業テクニック」ではなく「行動を変えるための頭の使い方」の解説に力を入れているため「頭のスイッチを切り替える」だけですぐに実践できるのも特色だ。
おかげさまで、本書を題材にしたSchooのオンライン授業では「思考法ジャンル」で人気ランキング1位を頂いた(139講座中)。また、lifehackerやOggiなど数多くのメディアで取り上げていただき、Kindleでは「オペレーションズ部門」でベストセラー1位を獲得している。
Amazonレビューでも、
- 「思考と行動の質を上げるヒントが盛りだくさん」
- 「読んでみると、頑張りどころを間違えてたことに気付かされる」
- 「仕事が速い人はこれをやってたんだな、ということがよくわかった」
など、ありがたい言葉を頂戴しており嬉しい限りだ。
もしあなたが「短時間で網羅的に仕事術を学びたい」「根本から仕事の生産性を高めたい」と感じているのなら、ぜひ手に取ってみて欲しい。
- ★8ジャンル57個の仕事術で「実践力」を身につける
- 質問力とは何か?
- 質問力を磨くメリット
- 質問の種類
- 質問力を磨く方法と質問の例
- 質問力の本|おすすめ書籍2冊
- このブログから書籍化した本4冊
- その他の解説記事とおすすめ書籍
- 終わりに
- 質問力とは|質問力を磨く5つのメリットと75個の質問例|スライド資料
質問力とは何か?
あなたは「質問力とは何か?」と聞かれて、どのように答えるだろうか?多くの人は、
- 質問力=「わからないこと」や「疑問に思ったこと」を問いかける力
といった意味合いのことを答えるのではないだろうか?しかし筆者が考える「質問力」の定義は少々異なる。
筆者が上記のように「質問力」を定義しているのは「質問力」とは、コミュニケーション能力の一つだと捉えているからだ。コミュニケーション能力とは「互いの共通認識を作り、信頼関係を築く力」であり、その本質は「信頼関係づくり」にある。
「わからないことや疑問に思ったことを相手に問いかける」のは、ヒアリングやインタビューであって「こちら都合の一方的な問いかけ」でしかない。
しかし「質問力」が「信頼関係づくり」の一貫であると捉えれば「こちら都合」に留まるのではなく、時に「質問によって相手に気づきを与え、相手の世界を広げる」という「相手のため」という視点も求められる。これが、
- 質問力=相手の世界を「理解」し「広げる」ために、質問を投げかける力
と定義している理由だ。
質問力を磨くメリット
質問力を磨くメリットは、大きくわけて5つある。その5つとは以下の通りだ。
- 相手の考えを理解することができる
- 会話の流れを誘導することができる
- 相手の思考を深めることができる
- 相手の世界を広げることができる
- 相手の主体性を引き出すことができる
もしここまでをお読みになって「質問力って、そんなメリットもあるの?」と疑問に感じた方は、ぜひ続きをお読み頂きたい。「質問力」とは極めて奥深く、かつパワフルなスキルであることがご理解いただけるはずだ。
質問力を磨くメリット-1:相手の考えを引き出すことができる
突然の質問で恐縮だが、今このブログを読んでいるあなたは「管理職」だろうか?
質問には、問いかけられたことに対して否応なく考えさせてしまう力がある。
事実、今あなたは「管理職だろうか?」と問いかけられて、無意識に「自分は管理職だだ)」あるいは「自分は管理職ではない」と頭によぎってしまったのではないだろうか?
人は、質問されると瞬時に「思考のスイッチ」が入るようにできている。よって、質問をする側が適切な質問を投げかければ、あたかも相手の頭の中を遠隔操作するかのように頭のスイッチを入れ、相手の考えを引き出すことが可能になる。
例えば、商談相手が「今回はプランAよりも、プランBで行きたいです」という言葉を発したとしよう。その言葉に対して「と、いうと?」という質問を投げかければ、相手の頭にスイッチが入って「なぜプランBに決めたのか?」という「背景」や「意図」の話をしてくれるので、それまで出ていない話しを引き出す効果がある。
「具体的には?」という質問を入れれば、やはり相手の頭にスイッチが入って「具体的にはですね…」とディテールの話をしてくれるはずだ。「具体的には?」という質問には、漠然としている発言内容を「相手の頭を使って」明確にしていけるメリットがある。
また「なぜ?」という質問を入れれば、相手の発言の裏側にある目的や根拠、理由を引き出すことができる。さらに「他には?」という質問は、相手の思考を「それ以外」に向けることで「伝え忘れ」を防ぐこともできる。
また、多少高等テクニックになるが「〇〇という条件を満たせば、XXということでいいですか?」など「仮定を置いた質問」をうまく使えば、より一層「相手の考え」の解像度を上げていくことができる。
人が発する言葉の多くは、その人の考えの断片でしかない。それだけでは相手の考えの全体像を見通すことはできない。しかし、適切な質問を適切なタイミングで入れることができれば、次々に相手の情報を引き出し、相手の真意を浮き彫りにし、より深く相手の考えを理解することができるようになる。
多くのビジネスパーソンは「わかってもらいたい」「理解してもらいたい」という気持ちが強すぎて、つい「話しすぎてしまう」というミスを犯しがちだ。
しかしここまでお読みになればお気づきの通り、話の主導権を握っているのは、実は「話す側」ではなく「質問する側」だ。
質問力を磨くメリット-2:相手の意識を誘導することができる
誤解を恐れずに言えば、人と人との会話の行き先は「質問」によって決まる。そういう意味では「人は質問に支配されている」といっても過言ではない。
先ほど「質問は、相手の頭の中のスイッチを入れる」という話をしたが、質問をうまく組み立てて連鎖させていくことができれば、相手の頭の中を整理しつつ、相手の意識をコントロールすることが可能になる。
このことを理解するために、商談のシーンを例に解説しよう。
商談のシーンでは、まず投げ掛けたいのは次のような質問だ。
- 「今、山田さんが感じている困りごとは何ですか?」
このように「困りごとは何か?」という質問を入れれば、山田さんの頭の中に思考のスイッチが入り「今、自分が困っていること」を話してくれるはずだ。すると、次に差し込むべきは、次のような質問だ。
- 「その困りごとが生じている原因をいくつか挙げるとすれば、どんなことが挙げられそうですか?」
この質問の意図は、山田さんに対して「今、生じている困りごと」を引き起こしている「原因」について意識を向けてもらうことだ。「困りごと」は表に現れている「現象」に過ぎず、どのような「現象」にも、それを引き起こしている「原因」が存在するはずだ。
しかし、あなたはその「困りごと」の当事者ではないのだから、あなたがいろいろ考えるよりも、当事者である山田さんに考えてもらったほうが、より的を射た「原因」に辿り着けるはずだ。
そして、もし山田さんが複数の原因を挙げたとしたら、次に投げ掛けたいのは次の質問だ。
- 「その中で、山田さん的に最も影響が大きそうだと感じているのはどれですか?」
鋭いあなたならお気づきだと思うが、この質問は山田さんなりに考える「優先順位」を明らかにする質問だ。当然ながら「優先順位が低い原因」より「優先順位が高い原因」のほうが、より山田さんにとって深刻であり、お金を払ってでも解決したい「課題」となりうる。
そして「優先順位が高い原因」が明らかになったら、あなたがすべき質問は次の通りだ。
- 「もし、それを解決できる方法があるとすれば、興味はありますか?」
この時点で、山田さんが「興味がある」と答える可能性は極めて高いはずだ。なぜなら山田さんにとってみれば、
- 誰かに強制されたわけでなく、自分で自発的に考えて結論に至った「困りごとの原因」に対して
- それを解決してくれる提案
になっているからだ。
「質問」の良いところは、例え商談上の「売る側」「買う側」という関係だったとしても「質問する側」と「質問される側」が、良い意味で対等な関係になれる点だ。
そして、あらかじめ「質問の組み立て」や「質問の連鎖」を考えておけば、相手の頭の中を整理しつつ、こちらが望むような道筋で思考してもらうことが可能になる。
質問力を磨くメリット-3:相手の思考を深めることができる
思考の手前には、必ず「質問」が存在する。なぜなら「思考」とは、質問に対して答えを探そうとする頭の働きを指すからだ。
質問は人の思考を方向付ける。新しい質問を投げかければ、思考も新しい方向に向き、思い込みに気づかせ、相手の思考を深めていくことができる。
筆者は現職で新卒採用の面接官をすることがあるが、必ず次のような質問を投げかけるようにしている。
- 「大学時代に、何らかの修羅場経験はありますか?」
この質問を投げかけると、比較的流暢に回答してくる就活生は多い。「修羅場経験を聞く」のは新卒採用質問の定番であり、就活生も事前に対策をしているのだろう。
そこで筆者は、ひとしきり就活生が「修羅場経験」の説明を終えた後、次のような質問を重ねることにしている。
- 「今、時間が巻き戻ってその時に戻れるとしたら、今度は何をしますか?」
この質問は「修羅場経験」という貴重な体験を放置せず、そこから根本的な課題を見出して解決する思考習慣があるかどうかを見極める質問だ。別の言い方をすれば、自分の中でPDCAを回し、自律的に成長できる人材かどうかを問う質問と言ってもいい。
多くの就活生は、この質問を投げかけると「うーん…」としばらく考え込んでしまう。しかし「考え込んでしまう」ということは「質問をきっかけに思考を深めている」ことと同じであり、どのような形にせよ本人なりの答えが見いだせれば、その就活生は一つ、成長したことになる。
このようにうまく「質問」を使いこなせば、相手を深い思考に導き、相手の成長を促すことができる。
質問力を磨くメリット-4:相手の世界を広げることができる
全く新しい角度から質問をすれば、相手の「モノの見方」を変え、これまで本人がたどり着けなかった「全く新しい答え」に導くことが可能になる。
ここで話をわかりやすくするために、例を用いて解説しよう。
今、あなたはふくよかな体型の A さんから、ダイエットについての相談を乗っているとしよう。「ダイエットをしたいのですが、どうすればいいでしょうか?」と相談されたあなたは、おそらく次の 2 つの選択肢を思い浮かべるはずだ。
- 摂取カロリーを減らすために、食事制限をすすめる
- 消費カロリーを増やすために、運動をすすめる
しかしこの 2 つの選択肢を提案しても、A さんはなかなか納得しようとしない。考えてみれば当たり前だ、Aさんだってダイエットをするにはこの 2 つしか選択肢がないことはわかっている。しかしそれができないから、Aさんは悩んでいるのだ。
そこであなたは視点を変え、次のように質問してみることにした。
- 「そもそも、ダイエットをしたいと思ったのはどうして?」
すると、A さんから返ってきた答えは次の通りだ。
- 「うーん、そうですね…。モテる自分になりたいから…かな?」
質問の結果判明したのは、A さん自身も自覚していなかった真の目的は「痩せること」ではなくて「モテること」だったということだ。別の言い方をすれば、本来の目的は「モテること」であって「痩せること」はそのための手段にすぎない。
このように、もしあなたが「新しい角度からの質問」を通して、 A さんの真の目的を理解できれば、
- 「じゃあ、ふくよかな体型好きが集まる街コンを探して、行ってみるのはどう?」
など、先ほどとはまったく異なる解決策を提案できるようになる。この解決策は「食事制限」や「運動」などの労力が要らず、かつ A さんの真の目的にも適っているため、快く受け入れてくれるかもしれない。
このように「Aさんはダイエットをしたがっている」という前提を疑い、新しい角度から質問をすることによって、これまでAさん自身すら思いもよらなかった新しい解決策に辿り着くことがある。これは「ダイエットをしなければいけない」と思い込んでいたAさんの世界を広げたことと同じだ。
このように、全く新しい角度から新しい気づきを与える質問を自由自在に使いこなすことができるようになれば、あなたは相手の世界を広げてあげることができる。
質問力を磨くメリット-5:相手の主体性を引き出すことができる
適切な質問は、相手に考えてもらうきっかけを作り、相手の主体性を引き出すことができる。
例えば、相手に対して「この作業は、いつまでにできそうですか?」と質問すれば、相手の頭は自動的に「期限のことを考える」スイッチが入るはずだ。その結果「○日までだったらできそうです」などと答えてくれることだろう。この期限は、誰かから強制されたものではなく、「質問」を通して相手が自発的に決めた期限だ。
同じ「期限」でも、それが他人から命令されたものか、それとも自分で決めたのかで、その後の行動の「質」と「量」は大きく変わる。
こうした「相手の意思」を促す上で大きな力を発揮するのが「質問」だ。適切な質問は相手の思考を促し「自分で気づいた」「自分で考えた」「自分で決めた」という状態を作り出すことができる。
人は皆、誰かから強制されて物事を決めるのではなく、自らの意思で物事を決めたいと思っている。適切な質問は「相手の思考のスイッチ」を入れ、自発的な行動につなげていくことができる。
質問の種類
質問力を磨くメリットが理解できたら、続いては「質問の種類」について説明しよう。
「質問のメリット」だけでなく「質問の種類」も理解しておけば、様々な局面で、より適切な質問を入れることができるようになるはずだ。
今回説明する「質問の種類」とは、以下の3つだ。
- オープンクエスチョン
- クローズドクエスチョン
- サトルクエスチョン
質問の種類-1:オープンクエスチョン
「オープンクエスチョン」とは、相手に自由に答えてもらう質問の仕方を指す。例えば、
- 「御社の今の困りごとは何ですか?」
- 「その困りごとを引き起こしている原因は何だと思いますか?」
などの質問がオープンクエスチョンにあたる。
オープンクエスチョンのメリットは、質問する側が「きっとこうなのでは?」という仮説を用意しなくていいことだ。また、回答内容を100%相手に委ねるので、質問する側から見た「想定外」の答えを得られやすいのもメリットだ。
さらに、回答の仕方が自由である以上、相手は「自分でその答えを導き出した」と感じやすく、自発性を引き出したい場合にも有効だ。しかし一方で、
- 「あなたの人生の目的は何ですか?」
など、質問内容によっては相手がかなり深く考えなければならなくなるので、まだ相手との関係性が浅い場合には、多用できないというデメリットもある。
さらに気を付けて欲しいのは、上司に対してはオープンクエスチョンを多用してはいけないということだ。
- 「僕は何をしたらいいですか?」
- 「私はどうしたらいいですか?
などのオープンクエスチョンは、ビジネスの世界では「指示待ち」と呼ばれる状態であり「考える作業」を上司に丸投げしているのと同じだ。
これを繰り返すと、いずれ「指示待ち部下」という烙印を押され、あなた自身も思考停止に陥り、成長できなくなってしまう。
もし上司に何か質問したい場合には、次に説明する「クローズドクエスチョン」で質問する習慣をつけよう。
質問の種類-2:クローズドクエスチョン
クローズドクエスチョンとは、質問相手が「Yes or No」の二者択一や「A or B or C」の三者択一など、回答範囲を狭く限定した質問の仕方を指す。例えば、
- 「御社の今の困りごとは、売上の低迷ですか?」(Yes or No)
- 「売上の低迷を引き起こしている原因は、顧客数が減ってることですか?客単価が下がっていることですか?購入頻度が減っていることですか?」(A or B or C)
などの質問がオープンクエスチョンにあたる。
クローズドクエスチョンのメリットは、質問する側が「きっとこうなのでは?」という仮説を用意し相手に選ばせることで、自分が得たい情報に誘導していける点だ。しかしあまり多用してしまうと「尋問」や「詰問」のようになってしまうので注意が必要だ。
また、先ほど触れた通り、もしあなたが上司に質問したい場合には「何をすればいいですか?」「どうすればいいですか?」などのオープンクエスチョンを使うのではなく「●●なのでXXしてもいいですか?」など上司がYes or Noで答えやすいクローズドクエスチョンを多用する習慣をつけよう。
質問の種類-3:サトルクエスチョン
「オープンクエスチョン」や「サトルクエスチョン」は聞いたことがあっても「サトルクエスチョン」は聞きなれない人が多いのではないだろうか?
サトルクエスチョンの「サトル」とは「さりげなく」という意味であり、相手に警戒心を与えずに情報を引き出す質問の仕方を指す。例えば、あなたが何らかのコンサルティングを売り込みたいときに、
- 「今、御社ではどのようなプロジェクトが進んでいるのですか?」
とストレートに聞いても、相手に警戒心があれば、質問をはぐらかされてしまうこともありうる。しかし、
- 「御社のことをネットニュースで見ました。いろいろなプロジェクトが、とんとん拍子で進んでらっしゃるんでしょうね?」
と質問すれば、
- 「いやいや~。うまく行ってないプロジェクトもありますよ。例えばDXのプロジェクトなんか、とん挫しかかってますよ」
などと「思わず」口を滑らせてくれるかもしれない。あるいは、
- 「今、お付き合いされているコンサル会社は、とても優秀なんでしょうね?」
と質問すれば、
- 「いやいや~。SDGs関連で入っているコンサルは、全然ダメダメなんですよね~」
などと答えてくれるかもしれない。
鋭いあなたならお気づきだと思うが「いろいろなプロジェクトが、とんとん拍子で進んでらっしゃるんでしょうね?」という質問は「プロジェクトがとんとん拍子で進んでいるかどうか?」を聞きたい質問ではなく「どのようなプロジェクトがうまく行っていないのか?」を聞き出すための質問だ。
同様に「今、お付き合いされているコンサル会社は、とても優秀なんでしょうね?」という質問は「今入っているコンサルが優秀かどうか?」を聞きたいわけではなく「コンサルをリプレースする余地がありそうなプロジェクトはどれか?」を探り当てるための質問だ。
このように「サトルクエスチョン」は「きっと、こうなんでしょうね?」と質問とも感想とも取れる表現で質問を入れることで、相手に警戒心を与えずに情報を引き出す質問の仕方だ。また、あえて相手が否定するであろう質問を入れることで「いやいや、そうではなくてですね…」などと「思わず話させるテクニック」ともいえる。
もし「相手は警戒心が強そうだ」と感じたときは、ぜひ試していただきたい。
質問力を磨く方法と質問の例
質問力を磨くには、様々な局面で使える数多くの質問を、あらかじめ自分の中にストックしておくことだ。
よって、ここでは筆者がよく使う質問の例を、局面ごとに紹介しよう。質問の表現の仕方(オープンクエスチョン・クローズドクエスチョン・サトルクエスチョン)については、あなたなりにアレンジして頂きたい。
質問の例×問題解決
質問の例×問題発見
-
1.「今生じている困りごとは何ですか?」
-
2.「将来想定できるリスクは何ですか?」
-
3.「御社が掲げる理想と、今のギャップは何だと考えていますか?」
質問の例×問題定義
-
4.「その問題は、御社にとって最も重要な問題ですか?」
-
5.「その問題は、どこで(部門・商品等)生じていそうですか?」
-
6.「問題を生じさせている、根本的な原因は何だと思いますか?」
- 7.「それらの原因のうち、最も影響が大きい原因は何だと思いますか?」
質問の例×問題解決
-
8.「その原因に対して、どのような解決策がありえそうですか?」
-
9.「問題解決策の優先順位をつけるためには、どのような基準が必要そうですか?」
-
10.「その基準に照らすと、最も優先順位の高い解決策はどれですか?」
質問の例×イノベーション
質問の例×現状認識
-
11.「御社の業界で通用している"常識"とは、どのようなものがありますか?」
-
12.「他にも”常識"はありますか?」
質問の例×イノベーション
-
13.「それらの常識のうち、覆したらインパクトが強そうなものはどれですか?」
-
14.「その常識を覆すとしたら、どのような視点がありそうですか?」
-
15.「その視点で”常識"を覆すとしたら、障害になりそうなものは何ですか?」
- 16.「その障害を取り除くには、どのような取り組みが必要そうですか?」
質問の例×戦略策定
質問の例×マクロ環境
-
17.「御社の追い風になりそうな、政治的なトレンドはありますか?」
-
18.「御社の追い風になりそうな、経済的なトレンドはありますか?」
-
19.「御社の追い風になりそうな、社会的なトレンドはありますか?」
-
20.「御社の追い風になりそうな、技術的なトレンドはありますか?」
質問の例×ミクロ環境
-
21.「御社が参入している市場には、どのようなニーズがありますか?」
-
22.「御社の競合企業が抱えている弱みは何ですか?」
-
23.「御社ならではの強みは何ですか?」
-
24.「御社の強みを通して、競合企業より上手に市場ニーズを満たすには、なにがKFS(重要成功要因)になりそうですか?」
質問の例×STP
-
25.「ニーズの違いを浮き彫りにするためには、どのような切り口で市場を細分化すべきですか?」
-
26.「細分化した市場のうち、どの市場をターゲットに据えるべきですか?」
-
27.「その市場の中で、御社だけが果たせる独自の役割は何ですか?」
質問の例×4P
-
28.「その市場で独自の役割を築くためには、どのような商品を開発すべきですか?」
-
29.「その市場で独自の役割を築くためには、価格をいくらに設定すべきですか?」
-
30.「その市場で独自の役割を築くためには、どのような流通ルートで販売すべきですか?」
-
31.「その市場で独自の役割を築くためには、どのような広告宣伝手法で市場に働きかけるべきですか?」
質問の例×プロジェクトマネジメント
質問の例×プロジェクト設計
-
32.「そのプロジェクトは、何のためにやるのですか?」
-
33.「そのプロジェクトは、どのような状態になればゴールと言えますか?」
-
34.「そのゴールにたどり着くには、どのようなタスクを積み重ねる必要がありますか?」
-
35.「それらのタスクは、どのような順番で進めるとスムーズですか?」
-
36.「それらのタスクは、どのように役割分担をするとスムーズに進みますか?」
-
37.「そのプロジェクトは、どのようなリソース(ヒト・モノ・カネ・情報)が必要ですか?」
-
38.「そのプロジェクトは、どの程度のリソース(ヒト・モノ・カネ・情報)が必要ですか?」
-
39.「そのプロジェクトは、どれくらいの期間が必要ですか?」
-
40.「そのプロジェクトは、どのようなリスクが想定できますか?」
-
41.「そのプロジェクトは、どの段階でチェックポイントを設けるべきですか?」
質問の例×プロジェクト管理
-
42.「そのプロジェクトの成果物の品質は、必要十分ですか?」
-
43.「そのプロジェクトのコストは、計画通りに収まっていますか?」
-
44.「そのプロジェクトのメンバーのモチベーションは、維持されていますか?」
-
45.「そのプロジェクトの進捗は、計画通り進んでいますか?」
-
46.「そのプロジェクトの進捗を妨げている原因は何ですか?」
-
47.「そのプロジェクトで生じた、新たなリスクは何ですか?」
質問の例×会議
質問の例×会議の計画
-
48.「その会議は、何のためにやるのですか?」
-
49.「その会議は、どのような状態になれば終わりと言えますか?」
-
50.「そのの会議は、どのようなアジェンダで進めますか?」
-
51.「その会議は、どのように時間配分をしますか?」
-
52.「その会議は、誰に参加してもらえばいいですか?」
質問の例×会議の進行
-
53.「今、議論で答えを出すべき論点は何ですか?」
-
54.「発言している人が置いている暗黙の前提は何ですか?」
-
55.「会議の結論はどのように決めるべきですか?」
-
56.「会議での決定事項は何ですか?」
-
57.「会議後にすべきToDoは何ですか?」
-
58.「そのToDoは、いつまでにすべきですか?」
-
59.「そのToDoは、誰がすべきですか?」
質問の例×ビジネスコミュニケーション
質問の例×聞く
-
60.「相手の期待は何ですか?」
-
61.「相手の困りごとは何ですか?」
- 62.「相手は、どの程度のリテラシーを持っていますか?」
質問の例×伝える
-
63.「相手に対して、何を伝えるべきですか?」
-
64.「相手に対して、それを伝えることでどのような行動を起こしてほしいですか?」
-
65.「相手に対して、どのような根拠で説明すれば納得してもらえますか?」
-
66.「相手に対して、どのような順番で話せばわかりやすいですか?」
-
67.「相手に対して、どのような言葉を選べばわかりやすいですか?」
-
68.「その説明を聴いた人は、どのように感じると思いますか?」
質問の例×学び
-
69.「今回の仕事は、どのような意味がありましたか?」
-
70.「今回、新たに得られた知識は何ですか?」
-
71.「今回、新たに得られた視点は何ですか?」
-
72.「今回、新たに得られたノウハウは何ですか?」
-
73.「それらを次に活かすとすれば、何に活かせそうですか?」
-
74.「それらを次に活かすとすれば、どう活かせそうですか?」
- 75.「今回得た学びを、どう組織の力に変えていけますか?」
質問力の本|おすすめ書籍2冊
締めくくりに、あなたにおすすめできる「質問力の本」を紹介しよう。選定した基準は下記の通りだ。以下のどれかに当てはまるものをピックアップした。
- k_birdが実際に読み、単純に「素晴らしかった」と思える質問力の本。
- 実際に実務に役立っている質問力関連の書籍。
- 長年に渡って読み継がれており、時代を越えても変わらない「本質」や「原理」が見出せる質問力関連の名著。
もちろん、すべて「なぜ読むべきなのか?」という解説付きだ。
質問力の本おすすめ書籍-1:革新的な会社の質問力
「質問力」は、うまく使いこなせば「相手」だけでなく「自分」にも気づきを与え、これまでとは異なる新たな思考を促すことができる。
本書は「質問」を専門とする「しつもんコンサルタント」の著者が、
- 自分自身への質問力の高め方
- 自発的に考える部下を育てる質問の仕方
- 会議を劇的に変える質問の仕方
- 顧客の欲しい気持ちを高めていく質問の仕方
などを解説した書籍だ。
本書の秀逸な点は、極めて平易な語り口で「こんな時は、こんな質問だとうまく行きやすい」という事例を数多く紹介している点だ。そのため、それぞれのシーンに当てはめて応用しやすいのが特色と言える。
優れた質問は、人の思考にスイッチを入れる。
もしあなたが「質問」を通して変化を起こしていきたいなら、まずは本書をお読みいただきたい。
質問力の本おすすめ書籍-2:博報堂クリエイティブプロデューサーが明かす 「質問力」って、じつは仕事を有利に進める最強のスキルなんです。
本書は、博報堂のクリエイティブプロデューサーが書いた「質問力」の書籍だ。
本書がユニークな点は、通常の「質問力の効果」に加えて「相手に本音を吐かせる質問の仕方」や「自分が会話の主導権を握る質問の仕方」など、類書にはない視点の「質問の仕方」が指南されている点だ。
また、中身は登場人物の会話形式で進むためわかりやすく、5日間の講義形式で構成されているため、段階を踏みながら質問力が身につくのも秀逸だ。
もしあなたが自分の仕事を有利に進めるために「質問力」を身につけたいなら、ぜひ本書を読んでみて欲しい。
このブログから書籍化した本4冊
★8ジャンル57個の仕事術で「実践力」を身につける
冒頭でも紹介したが、ここでも再度、紹介させていただこう。
どのようなビジネスも、実践が伴わなければ成果は出ない。しかし、いざ「実践力」を身につけようとしても、その分野は、
- 時間管理術
- 段取り術
- コミュニケーション術
- 資料作成術
- 会議術
- 学び術
- 思考術
- 発想術
など多分野に渡り、最低8冊分の読書時間と書籍代がかかってしまうのが難点だ。
しかし、本書「超効率ハック」は、8つの分野の仕事術の「重要ポイントだけ」を抜き出し、ギュッと1冊に凝縮した書籍だ。もちろん、質問力に関しても重要ポイントを徹底解説している。
さらに、本書は「訓練や習慣化が必要な作業テクニック」ではなく「行動を変えるための頭の使い方」の解説に力を入れているため「頭のスイッチを切り替える」だけですぐに実践できるのも特色だ。
おかげさまで、本書を題材にしたSchooのオンライン授業では「思考法ジャンル」で人気ランキング1位を頂いた(139講座中)。また、lifehackerやOggiなど数多くのメディアで取り上げていただき、Kindleでは「オペレーションズ部門」でベストセラー1位を獲得している。
Amazonレビューでも、
- 「思考と行動の質を上げるヒントが盛りだくさん」
- 「読んでみると、頑張りどころを間違えてたことに気付かされる」
- 「仕事が速い人はこれをやってたんだな、ということがよくわかった」
など、ありがたい言葉を頂戴しており嬉しい限りだ。
もしあなたが「短時間で網羅的に仕事術を学びたい」「根本から仕事の生産性を高めたい」と感じているのなら、ぜひ手に取ってみて欲しい。
★「シャープな仮説を生み出す頭の使い方」を徹底解説
あらゆるビジネスは「仮説」こそが成否を握る。
なぜなら、仮説を生み出せなければ次の一手を見出しようがなく、検証のしようもなくなるからだ。つまり、ビジネスの成長は止まってしまうことになる。
しかし仮説思考の書籍の多くは、仮説思考の重要性は説くものの、肝心の「仮説思考の身につけ方」になると、
- 「センスが必要」
- 「経験の積み重ねが物を言う」
など「それを言ったらお終いよ」という結論で終わらせている書籍が多い。
しかし本書は「仮説思考に必要な頭の使い方の手順」を、豊富な事例とともに徹底解説している。よって、その手順通りに頭を使えば「センス」や「長年の経験」に頼ることなく、誰でも優れた仮説を導き出せるようになる。
おかげさまで本書は5版を重ね「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」にノミネートいただいた。NewsPicksやNIKKEI STYLE、lifehackerなど多くのメディアで取り上げていただき、中国や台湾、香港でも出版が決定している。
さらにAmazonレビューでも、
- 「ここ数年の仮説思考系の書籍で久々のヒット」
- 「自分オリジナルの武器にしていけそうな良書」
- 「一生もののスキルになるのは間違いない」
など有難い言葉を頂戴している。
もしあなたがシャープな仮説を導き出せるようになりたいなら、ぜひ本書を手にとってみて欲しい。
★ロジカルシンキングでは学べない「視点力」と「法則力」を身につける※無料のオーディオブック特典付
人は誰しも「視点」を通してしか物事を考えることができない。
別の言い方をすれば「そもそも何を考えるべきか?」という論点(=イシュー)は、視点が決めてしまうともいえる。
また、どんなに適切な視点を置いたとしても「ああなれば→こうなるだろう」という「予測のパターン(=法則)」が頭の中になければ、確かな仮説を導き出すことはできない。
本書はビジネス書から「視点」と「法則」を発見し、思考の質とスピードを上げていく独学術を解説した書籍だ。
「質問力」においても「視点」は極めて重要な要素となる。
なぜなら、1つの「視点」しか持てない人は、1つの質問しか投げかけることができないからだ。一方で、5つの「視点」を持てれば、5つの質問を投げかけることによって、相手の思考を広げることができるようになる。
もしあなたが自由自在に「視点」を操ることができれば、物事の多様な側面に気づき、次々と「新たな可能性」を拓くことができるようになる。
また、数多くの「法則」をストックしていけば、様々な現象に「法則」を当てはめることで「筋の良い仮説」を瞬時に導き出すことが可能になるはずだ。
おかげさまで、本書はThe21や日経、STUDY HACKERなど多くのメディアに取り上げていただき、発売3か月で海外の翻訳出版も決定した。Amazonレビューでも、
- 視点力や仮説思考、抽象化スキルが身に付く良書
- これまでの読書術の常識を次々と塗り替えている目からウロコの本
- まさに「モノの見方を変える方程式」
など、ありがたい言葉を頂戴している。
もしあなたが「ロジカルシンキング」だけでは得られない「視点力」と「思考スピード」を身につけたいなら、ぜひ本書で紹介する読書法を実践して欲しい。
★ブランディングの理論と実践をつなぐ「ブランディングの教科書」
本書は、筆者の専門である「ブランディング」について解説した書籍だ。
ブランディングは、ややもすれば「デザインの話」「広告の話」「世界観の話」など、掴みどころのない抽象論に陥りがちだ。
しかしブランディングは「ブランド戦略」という言葉があるように、企業の成否を大きく左右する戦略のひとつだ。そして投資が伴う以上、一定の合理性と説明責任が求められる。決して、売上や利益から逃げてはならないのだ。
本書は、つい「感覚論」に陥りがちな「ブランディング」に対して「論理的な納得性」と「直感的な腹落ち感」の両面を追求した書籍だ。
「論理」が理解できなければ、ブランディングを体系的に理解することできず、再現性を生むことができない。
そして「直感的な腹落ち感」がなければ、ブランディングを実務に落とせず、成果をもたらすことができない。
本書は、広告代理店&外資系コンサルティングファームで培った「生の知見」と「体系的な解説」を通して、ブランディングの理論を実践へとつなげて解説している。
おかげさまで、本書はAmazon kindle売れ筋ランキング「消費者主義」ジャンルでベストセラー入りを果たし、Amazonレビューでも、
- 「ふわっとしたブランディングの本が多い中で、異彩を放っている」
- 「事例も多いので実践のイメージが湧きやすい」
- 「海外企業の事例ばかりが紹介されている輸入本だとピンとこない、という方にお薦め」
など、ありがたい言葉を頂いている。
もし本書を手にとって頂ければ、ブランディングの専門用語はもちろん、実践の手順や実務の勘所が、一通り学べるはずだ。
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★ブランディング・マーケティングの知識が身につくおすすめ記事
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★17のビジネス分野別おすすめ書籍
★ビジネススキルが身につくおすすめ書籍
★思考力が身につくおすすめ書籍
★ブランディング・マーケティングの知識が身につくおすすめ書籍
終わりに
今後も、折に触れて「あなたをブランドにするビジネススキル」の解説を続けていくつもりだ。
しかし多忙につき、このブログは不定期の更新となる。
それでも、このブログに主旨に共感し、何かしらのヒントを得たいと思ってもらえるなら、ぜひこのブログに読者登録やTwitter、facebook登録をしてほしい。
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