この記事に辿り着いたあなたなら「ファイブフォース分析とは何か?」あるいは「5ファイブォース分析のやり方」に関心があることだろう。
このブログ「Mission Driven Brand」は、外資系コンサルティングと広告代理店のキャリアを持つ筆者が、ブランディングやマーケティングの「できない、わからない」を解決するブログだ。
今回解説するファイブフォース分析は、あなたが「新ブランドの立ち上げ」や「ブランド拡張」をする際に使えるビジネスフレームワークだ。
しかし、ビジネスフレームワークは使い方を誤れば「単なる穴埋め問題」になりがちだ。
今回の解説で目指すのは「フレームワークのカタログ本」によくある浅い解説ではない。ファイブフォース分析のロジックやメカニズムを理解し「使い倒す」ための完全解説を行う。その内容は以下の通りだ。
- ファイブフォース分析とは何か?
- ファイブフォース分析の根底にある2つのロジックとは?
- ファイブフォース分析の具体手順
- ファイブフォース分析の事例
もしあなたが「ファイブフォース分析について知りたい」だけでなく「ファイブフォース分析のやり方をマスターしたい」と考えるなら、ぜひこの解説を最後までお読みいただきたい。
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- ★「シャープな仮説を生み出す頭の使い方」を徹底解説
- ファイブフォース分析とは?ファイブフォース分析の意味と定義
- ファイブフォース分析の目的とロジックとは?
- ファイブフォース分析(5Forces分析)の手順と例
- 5フォース分析のやり方と事例
- ファイブフォース分析(5Forces分析)のやり方:PDFテンプレート
- ファイブフォース分析の本:おすすめ書籍3冊
- このブログから書籍化した本4冊
- その他の解説記事とおすすめ書籍
- 終わりに
ファイブフォース分析とは?ファイブフォース分析の意味と定義
ファイブフォース分析とは-1:業界分析のフレームワーク
ファイブフォース分析(5Forces Analysis)とは、
- 買い手の交渉力
- 売り手の交渉力
- 業界内の競争
- 新規参入の脅威
- 代替品の脅威
という5つの競争要因(=5つの力)から「業界の魅力度」や「その業界に働く特有の力学」を分析するフレームワークだ。別名「5つの力分析」「業界分析」とも呼ばれる。
このファイブフォース分析は、史上最年少でハーバード・ビジネススクールの教授となったマイケル・ポーターが提唱したことで知られる。1980年に出版されたマイケル・ポーターの著書「競争の戦略」は、現在でも多くの経営者やビジネススクール読まれており「MBA取得者が選ぶお薦め経営学書ランキング」で第1位を獲得している。
ファイブフォース分析とは-2:5フォース分析の根底にある思想
ファイブフォース分析の根底に流れる思想は、突き詰めれば「競争が激しい業界にいれば収益性は低くなり、競争が限定的な業界にいれば収益性は高くなる」というシンプルなロジックだ。
競争が限定的な業界にいれば収益性は高くなる。
これだけを見れば、あなたは「当たり前のことでは?」と感じるかもしれない。しかしファイブフォース分析が優れている点は、
- どのような条件が揃えば競争が激しくなりやすく、収益性が下がりやすいのか?
- どのような条件が揃えば競争が起きにくく、収益性が上がりやすいのか?
を分析できる点だ。
ファイブフォース分析で陥りがちなのは「5つの箱を埋めて分析した気になってしまう」ことだが、重要なのは「参入余地があるレベルで魅力的な業界なのか?」あるいは「5つの競争要因のうち、どこをどう攻略すれば収益性は高まるのか?」など「戦略に向けた仮説を立てる」ところまで行き着くことだ。
ファイブフォース分析の目的とロジックとは?
ファイブフォース分析は、ファイブフォースモデルに内在している「目的」と「2つのロジック」さえ理解できていれば、より有用な示唆が導き出せる。その「2つのロジック」とは、以下の通りだ。
- 業界全体での利益の上げやすさのロジック
- 業界内での利益の取り分のロジック
いきなり上記を示されても、あなたは何のことかわからないだろう。しかしファイブフォース分析を腹落ちできるレベルで理解するためには、ぜひ頭にいれておきたいロジックだ。
よって、まずはファイブフォース分析の本質である「2つの目的とロジック」について解説しよう。
ファイブフォースモデルの目的とロジック-1:業界全体での利益の上げやすさのロジック
あなたが「新ブランドの立ち上げ」や「ブランド拡張」を検討しているのなら、できるだけ売上を上げやすく、コストが下げやすい業界で戦いたいと思うはずだ。
ファイブフォースモデルは、そんな「売上が上がりやすく」「コストが下げやすい」業界に参入したいというあなたの願望を、しっかりフレームワークに反映している。
よって、まずはファイブフォース分析に内在している「業界全体での利益の上げやすさのロジック」について見ていこう。
買い手の交渉力
買い手の交渉力の「買い手」とは、モノやサービスを販売する「販売先の業界」ことを指す。例えばあなたが新規参入しようとしている業界が食品業界なら「買い手」はスーパーやコンビニ業界となる。
そして買い手の交渉力の「交渉力」とは、あなたが参入しようとしている業界と販売先業界との間に作用する「力学」のことを指す。例えば食品業界を例にとれば「食品メーカーとスーパー業界(買い手)との間にある力学」だ。
もし仮に、あなたが新規参入しようとしている食品業界でコモディティ化が進んでいれば、買い手(=販売先のスーパー)からみれば「どの食品メーカーからも似たような商品を仕入れることができる」状態となるため、価格競争が激しくなる。
そして価格競争は企業の売上を下げる要因となるため、あなたが新規参入しようしている食品業界は「売上の上げやすさ」という点で魅力が薄いことになる。
売り手の交渉力
売り手の交渉力の「売り手」とは、部品や材料を供給してもらう「供給元の業界」ことを指す。例えば、もしあなたが参入しようとしている業界がパソコン業界だったら「売り手」とは供給元であるインテルやマイクロソフトだ。
そして売り手の交渉力の「交渉力」とは、あなたが参入しようとしている業界と供給元である業界との間に作用する力学のことであり、例えばパソコン業界を例にとれば「パソコン業界と部品業界(売り手)に流れる力学」のことだ。
パソコン業界の場合、部品の供給元にはインテルやマイクロソフトなど、各専門分野で事実上のデファクトスタンダードとなっている企業が存在する。
このように供給元に独占事業者が存在する場合、部品を供給してもらう際には独占事業者から「言い値」で調達せざるを得なくなる。このため「コストの下げやすさ」という点で魅力が薄い業界となる。
業界全体での利益の上げやすさのロジック
ここまでお読みになれば、勘の良いあなたならもうお気づきのはずだ。
- 買い手の交渉力の分析:その業界での「売上の上げやすさ」を分析すること
- 売り手の交渉力の分析:その業界の「コストの下げやすさ」を分析すること
そしてどのような業界も、売上(=買い手のとの力学)からコスト(=売り手との力学)を差し引いて業界全体の利益になるのだから、ファイブフォース分析の横関係の分析の目的は、
- 業界全体の売上-業界全体のコスト=業界全体の利益
という「業界全体の上げやすさ」を分析することに他ならない。
ファイブフォースモデルの目的とロジック-2:業界の中での利益の取り分のロジック
ここまでは、ファイブフォース分析の「横関係の分析」として「業界全体の利益の上げやすさ」の分析について解説した。
しかし当たり前のことだが「業界全体の利益」は、あなたの企業で独占できるわけではない。
業界内には数々のライバル企業が存在することから「業界全体の利益」は競争を通して、各企業に「取り分」として配分されることになる。
だとすれば、業界の魅力度を分析するためには「業界全体の上げやすさ」を分析するだけでは不十分であり「業界全体で上げた利益のうち、自社の取り分はどうなりそうか?」という「利益の配分」の分析が必要となる。
ファイブフォース分析は広く業界全体を見渡すビジネスフレームワークであるため、いったん「業界全体の利益の上げやすさ」を分析したあと「業界全体で得た利益は、誰に、どう配分されやすい力学が働いているのか?」という分析プロセスを踏む。
以下、ファイブフォース分析のもう一つのロジックである「業界の中での利益の取り分のロジック」について見ていこう。
業界内の競争
「業界内の競争」とは、業界の中で直接的に競合しているライバル企業との競争を指す。
これは当たり前のことだが、業界内での競争が激化すれば、価格競争などを通して「自社の利益の取り分」は減ることになる。
もし仮に、あなたが新規参入しようとしている業界でコモディティ化が進んでいたり、あるいは直接競合する企業が百花繚乱のような状態であれば、例え業界全体の利益は大きかったとしても、あなたの企業の「取り分」は小さくなる。
結果、あなたの企業にとって業界の魅力度は下がることになる。
新規参入の脅威
新規参入の脅威とは、その業界に対する「新規参入のしやすさ」のことを指す。
業界全体の利益の取り分は、必ずしも「業界内」に留まるわけではない。
もし、あなたがこれから参入しようとしている業界の参入障壁が低ければ、あなたの企業が参入して以降も、続々と新規参入企業が登場するはずだ。そして新規参入企業が増えれば増えるほど「あなたの企業の取り分」は減ることになる。
結果、あなたにとって業界の魅力度は下がることになる。
代替品の脅威
代替品の脅威とは、商品・サービス自体は異なるものの「提供価値」において同等の商品やサービスを指す。
例えばマクドナルドなどハンバーガーチェーン業界の提供価値の一つに「安く素早く食事を済ませられる」が挙げられる。しかし牛丼業界の「吉野家」や「すきや」あるいは「コンビニ弁当」もまた、同じように「安く素早く食事を済ませられる」というニーズを満たすことができる。よって「吉野家」や「すきや」「コンビニエンスストア」はマクドナルドの代替品として脅威になりうる。
また、身近なところでは出版業界やデジタルカメラ業界、あるいは家庭用ゲーム業界などは、スマートフォンが代替品として大きな脅威となっている。
もし、あなたがこれから参入しようとしている業界に強力な代替品が存在しているのなら「あなたの企業の取り分」が減るリスクが生じる。
結果、あなたにとって業界の魅力度は下がることになる。
業界内での利益の取り分のロジック
ここまでお読みになれば、ファイブフォース分析の「縦」のロジックは、もう理解できたはずだ。
業界全体の利益は、それぞれ「業界内の競合」「新規参入事業者」そして「代替品」に分配される。
つまりファイブフォース分析の縦関係の分析の目的は「自社の取り分が増えやすいか?減りやすいか?」を分析することだ。
ファイブフォース分析(5Forces分析)の手順と例
ここまで「ファイブフォース分析の目的とロジック」を解説してきた。
しかし残念ながらファイブフォース分析のロジックを理解したからと言って、すぐにファイブフォース分析ができるようにはならない。
通常、書店に溢れる「フレームワークのカタログ本」ではここまでの解説しかなされていない。しかしファイブフォース分析で重要なのは、5つの力それぞれに対して「何が」「どうであれば」「魅力的な業界と言えるのか」あるいは「何が」「どうであれば」「利益を上げることができるのか」だ。
つまりファイブフォース分析を行う際には、5つの競争要因を知るだけでなく「5つの競争要因を分析・判断する視点」も知っておく必要がある。
「業界の魅力度を評価・判断するための視点」は業界によって様々だが、以降の解説では代表的な例を解説していこう。
ファイブフォース分析の手順と例-1:「買い手の交渉力」を分析する
「買い手の交渉力」を分析する上で重要な視点は、わかりやすく言えば「売上が上げやすいのかどうか」だ。そして売上は「販売数量×販売単価」の2つで決まる。結果、あなたが持つべき視点は以下の通りとなる。
あなたが参入しようとしている業界は、どの程度「販売数量が減少する」あるいは「販売単価が下落する」力学が働いているのか?
以下「販売数量の減少」あるいは「販売単価の下落」を引き起こしやすい条件の代表例を簡単に解説しよう。
買い手の交渉力の視点-1:供給過剰の度合い
あなたが新規参入しようとしている業界が供給過剰、つまり「今あるニーズを満たしきっており、供給の量の方が多い状態」のときは注意が必要だ。なぜならその業界は「市場成熟期」であることを意味するからだ。
一般論として市場の成熟は、すでに多くの顧客に商品が行きわたっていることを意味する。結果、市場ニーズはリピート需要のみとなるため「新規需要+リピート需要」の両方が存在する市場成長期と比べて「販売数量が減少する」力学が働きやすい。
また、リピート需要がメインであるということは、販売数量を増やす手段は競合企業からのブランドスイッチがメインになる。しかしブランドスイッチ(=顧客の奪い合い)は価格競争を招きやすいため「販売単価が下落する」力学も働きやすくなる。
買い手の交渉力の視点-2:差別化のしにくさ
あなたが新規参入しようとしている業界が「差別化がしにくい」業界の場合「販売単価が下落する」力学が働きやすい。
なぜなら「差別化されてない」ということは、その業界の「買い手」からすれば「どの商品・サービスを買っても同じ」ということを意味する。このため、購入決定要因が「価格の安さ」だけになりやすいからだ。
買い手の交渉力の視点-3:価格相場のオープン性
あなたが新規参入しようとしている業界の価格相場がオープンになっている場合「販売単価が下落する」力学が働きやすい。
なぜなら「価格相場がオープンになっている」ということは、買い手からすれば「価格を比較しやすい」ことを意味する。その結果、価格競争になりやすいからだ。
現在では、価格比較が当たり前になっている家電業界によく見られる現象だ。
買い手の交渉力の視点-4:買い手の寡占度の度合い
あなたが新規参入しようとしている業界の買い手が寡占状態となっている場合には「販売単価が下落する」力学が働きやすい。
「買い手の寡占状態」が進むと、あなたの企業の売上の大半が「同じ買い手」という状態を創り出してしまう。
もし仮に、自社の売上の9割を占める買い手から値引き要請や取引条件の変更要請あれば、あなたは飲まざるを得なくなるはずだ。
なぜなら、自社の売上の9割を占める「寡占状況の買い手」から提示された条件が飲めずに取引を切られてしまえば、あなたの企業は途端に立ちいかなくなってしまう。「寡占状態の買い手」とは、いわば「あなたの企業の命運を握っている買い手」に他ならない。
現状、買い手の寡占度が高まりつつあるのが出版業界だ。街にある本屋が次々に廃業しアマゾンへの一極集中が進んでいる。結果、様々な軋轢が生み出されていることは、あなたもご存じのことだろう。
ファイブフォース分析の手順と例-2:「売り手の交渉力」を分析する
「売り手の交渉力」を分析する上で重要な視点は「仕入コストが下げやすい業界なのか、下げにくい業界なのか」だ。つまり、あなたが持つべき視点は以下の通りとなる。
あなたが参入しようとしている業界は、どの程度仕入コストが高止まりする力学が働いているのか?
以下、仕入コストが高止まりしやすくなる条件の代表例を簡単に解説しよう。
売り手の交渉力の視点-1:仕入部材の需要過多の度合い
あなたが新規参入しようとしている業界の仕入部材が需要過多、つまり「供給業者の生産量が追いつかない」状態のときに、仕入コストが高止まりしやすい。
部品や原材料を供給する企業もビジネスなのだから「供給量が追いつかない」という状態で売上を最大化しようとすれば、当然「高い価格で買ってもらえる企業に優先的に売る」という判断になりやすい。
そのような状況の中で、どうしてもその部材を仕入れたいのであれば、もはや供給業者の「言い値」に従わざるを得なくなる。結果、仕入れコストは高止まりしやすくなる。
売り手の交渉力の視点-2:仕入部材の差別化のしやすさ
仕入部材の独自性が強い、あるいは差別化されている場合も、仕入コストは高止まりしやすくなる。
なぜなら仕入部材の独自性が高いということは、あなたの企業にとって「比較できる代わりの部材がない」ことを意味する。その結果、供給業者の言い値に従わざるを得なくなるため、仕入コストは高止まりしやすくなる。
売り手の交渉力の視点-3:仕入部材の価格相場のブラックボックス性
仕入部材の価格相場がブラックボックスになっている場合、仕入コストは高止まりしやすくなる。
なぜなら「価格相場がブラックボックスになっている」ということは、買い手であるあなたからすれば「価格比較がしにくい」ことを意味し、その結果「高値掴み」をしてしまうリスクが高まるからだ。
売り手の交渉力の視点-4:仕入部材の供給業者の寡占度
あなたが新規参入しようとしている業界の売り手が寡占状態となっている場合、仕入コストは高止まりしやすくなる。
もし仕入部材の大半を「寡占状態の供給業者」に依存してしまえば、あなたの企業の製品は、その供給業者なしには作れない状態となる。
そしてその部材がその供給業者の寡占状態であるということは、ほかの供給業者からは仕入れることができないことを意味する。
もし仮に、寡占状態にある売り手から値上げ要請や取引条件の変更要請あれば、あなたは飲まざるを得なくなる。なぜなら「寡占状況の売り手」とは、あなたの企業の製品作りの命運を握っている売り手だからだ。
ファイブフォース分析の手順と例-3:「業界内の競争」を分析する
「業界内の競争」を分析する上で重要な視点は「業界内の競争によって、利益の取り分はどの程度減りそうなのか?」だ。
業界内の競争によって、利益の取り分はどの程度減りそうなのか?
例えどんなに売上を上げやすく、コストを下げやすい業界だったとしても、業界内の競争が激しければ、あなたの企業の「取り分」は減る。
以下、業界内の競争によって「利益の取り分が減りやすい」条件の代表例を簡単に解説しよう。
業界内の競争の視点-1:直接競合する企業の多さ
業界内で直接競合する企業の数が多ければ多いほど競争は激しくなり、あなたの企業の「取り分」は減りやすくなる。
なぜなら、競合企業が多ければ多いほど、あなたの企業は多くの選択肢の中のひとつでしかなくなる。いわば多くの企業でパイの奪い合いとなるため、1社当りの取り分は小粒になる。
業界内の競争の視点-2:固定費の高さ
あなたが新規参入しようとしている業界が「固定費の高い」業界の場合、業界内の競争は激しくなり、あなたの企業の「取り分」は減りやすくなる。
「固定費」をご存じでない方のために解説すると、固定費とは設備投資後の減価償却費や人件費など「モノが売れようが売れまいが、必ずかかってしまうコスト」のことを指す。
この「売れようが売れまいが、必ずかかってしまうコスト」は粗利で賄うことになるが、固定費の比率が高ければ高いほど、高い粗利を得られなければ固定費を賄えないことになる。
しかし一方で、モノやサービスの価格はおおよそ相場が決まっていることが多いため、必然的に固定費の賄うための粗利獲得は「販売数量」に依存することになる。
そして、業界内の多くの企業が「販売数量」を追いかけることになれば価格競争に陥りやすく、その結果1社当たりの利益の「取り分」は減ることになる。日本の家電業界や自動車業界などが典型だ。
業界内の競争の視点-3:撤退障壁の高さ
あなたが新規参入しようとしている業界が「撤退障壁が高い」業界の場合、利益の取り分は減りやすい。
なぜなら「撤退障壁が高い」ということは、例え赤字になったとしても撤退できずに、そのまま競争していかざるを得ない状況となるからだ。
撤退障壁が高い業界とは、大きく2つに分類できる。
一つ目は、初期に巨額の設備投資を必要とする業界だ。
もし巨額の設備投資を回収できないまま撤退すれば、最悪では資本金を上回る特別損失を一気に計上せざるを得なくなる。そのため、例え赤字になったとしても撤退できずに、そのまま競争していかざるを得ない状況となりやすい。
二つ目は、公共インフラなど高い社会的責任が求められる業界だ。
例えば航空業界がある地方路線から撤退しようとすれば、地方住民から反対運動がおこる。また、これは有り得ないことだが、東芝が「経営が苦しいので原発の廃炉事業から撤退します」と言いだせば、多くの社会的批判を浴びることは免れない。
このように「巨額の設備投資を必要とする」「高い社会的責任が求められる」業界は、例え赤字になってとして事業を継続せざるを得ないため、利益の「取り分」は減りやすくなる。
ファイブフォース分析の手順と例-4:「新規参入の脅威」を分析する
「新規参入の脅威」を分析する上で重要な視点は「どの程度、新規参入事業者に取り分を奪われそうなのか?」だ。
あなたが参入しようとしている業界は、どの程度「新規参入事業者」に取り分を奪われそうなのか?
あなたが参入しようとしている業界の利益は、必ずしも業界内の企業だけに分配されるわけではない。
もし業界外からの新規参入事業者が多ければ、例え業界全体の利益が多くても、業界外からやってきた新規参入事業者に奪われてしまう。その結果、あなたの企業の「取り分」は減ることになる。
以下「新規参入事業者に取り分を奪われやすい」条件の代表例を簡単に解説しよう。
新規参入の脅威の視点-1:法規制の少なさ
あなたが新規参入しようとしている業界に「法規制」が少ない場合、例えあなたの企業が新規参入したとしても、更なる新規参入を招きやすい。その結果、あなたの企業の取り分は減りやすくなる。
これは逆を考えてみればわかりやすくなる。
例えばTV業界や通信業界、あるいは製薬業界など法規制が多い業界は、法律で定められた様々な条件を満たさない限り新規参入がしにくい。結果、限られた業界内企業のみの競争となるため1社当たりの利益の取り分は安定する。
裏を返せば法規制が少ない業界の場合、法規制をかいくぐるハードルが低いため多くの新規参入を招きやすくなる。結果、あなたが新規参入した後も新規参入事業者が現れやすくなるため、利益の取り分は減りやすくなる。
新規参入の脅威の視点-2:規模の経済性の働きにくさ
あなたが新規参入しようとしている業界が「規模の経済性」が働きにくい業界の場合、例えあなたの企業が新規参入したとしても、更なる新規参入を招きやすい。その結果、あなたの企業の取り分は減りやすくなる。
「規模の経済性」とは、事業規模が拡大するにしたがって商品1個当たりのコストが低下し、コスト競争力が強化されていく現象を指す。そのメカニズムは大きく分けると下記の3点だ。
- 大量仕入れによる仕入部材の単価削減効果
- 工場稼働率の向上による商品1個当たりの減価償却費削減効果
- 工員の習熟度向上による商品1個当たりの労務費削減効果(いわゆる学習曲線)
つまり「規模の経済性」とは「先にたくさん作ったほうが勝つ」という理屈であり、後発となる新規参入事業者からすれば参入メリットは薄くなる。
裏を返せば規模の経済性が働きにくい多品種少量生産型の業界の場合はコスト差がつきにくいため後発企業の参入余地は大きくなる。つまりあなたが新規参入した後も後発参入事業者が現れやすくなるため、利益の取り分は減りやすくなる。
新規参入の脅威の視点-2:技術難易度の低さ
あなたが新規参入しようとしている業界の「技術難易度」が低い場合、あなたの企業が参入以降も、更なる新規参入を招きやすい。
技術難易度が低いということは「どの企業も似たような商品を簡単に作れる」こととイコールだからだ。
新規参入の脅威の視点-3:チャネル構築の容易さ
あなたが新規参入しようとしている業界が「チャネル構築しやすい」業界の場合、あなたの企業が参入以降も新規参入を招きやすい。
こちらも解説の必要はないだろう。チャネル構築がしやすいということは「どの企業も、商品を簡単に販売できる」こととイコールだからだ。インターネット通販などが新規参入しやすい典型だ。
逆に自動車業界などは、ゼロから販売店網(ディーラー網)を構築していく必要があるため、新規参入を招きづらい。
ファイブフォース分析の手順と例-5:「代替品の脅威」を分析する
「代替品の脅威」を分析する上で重要な視点は「どの程度、代替品に利益の取り分を奪われそうか?」だ。
あなたが参入しようとしている業界は、どの程度「代替品」に利益の取り分を奪われそうなのか?
あなたが参入しようとしている業界に優れた代替品が存在すれば、例え業界全体の利益が多かったとしても、その「取り分」は代替品を提供している企業に奪われてしまう。
以下「代替品に取り分を奪われやすい」条件の代表例を簡単に解説しよう。
代替品の脅威の視点-1:代替品の数の多さ
あなたが新規参入しようとしている業界が「代替品の数が多い業界」の場合、あなたの企業の「取り分」は減りやすい。
これは当たり前のことだが、代替品の数が多ければ多いほど、あなたの企業が得られるパイは小粒になっていくからだ。
代替品の脅威の視点-2:代替品の提供価値の高さ
あなたが新規参入しようとしている業界に「より提供価値が高い代替品」が存在する場合、あなたの企業の「取り分」は減りやすい。
例えばエステ業界の提供価値の一つに「痩せられる」がある。しかしその代替品として頭角を現しているのがトレーニングジム業界のライザップだ。ライザップは「結果にコミットする」と謳われている通り「痩せられる」という提供価値を約束し、かつ実証もしている。そのためエステ業界にとっては「提供価値の高さ」の面で脅威となり「取り分」は減りやすくなる。
代替品の脅威の視点-3:代替品のコストの低さ
あなたが新規参入しようとしている業界に「よりコストが低い代替品」が存在する場合、あなたの企業の「取り分」は減りやすい。
例えば同じエステ業界で例えると、近年は家庭用美容機器(美顔器やスチーマーなど)が普及している。エステに通えば数十万円かかるコストが、家庭用美容機器なら数万円で済んでしまう。結果、エステ業界は少しづつ家庭用美容機器という代替品に浸食されはじめている。
このように「よりコストが低い代替品」が存在する場合、あなたの企業の「取り分」は減りやすくなる。
代替品の脅威の視点-4:代替品業界の企業規模の大きさ
あなたが新規参入しようとしている業界に「代替品」が存在し、かつその代替品を提供している業界の企業規模が大きい場合、あなたの企業の「取り分」は減りやすい。
こちらもエステ業界で例えると、代替品である「家庭用美容機器」を提供している企業の一つは、家電大手の一角であるパナソニックの子会社「パナソニック電工」だ。
あなたもご存じの通り、パナソニック電工は多額の広告宣伝費をかけて、エステ業界の代替品となる美顔器やスチーマーの普及を推進している。
このように「代替品を提供している業界の企業規模」が大きい場合、その代替品に対して多額の投資を行う余裕があるため、あなたの企業の「取り分」は減りやすくなる。
5フォース分析のやり方と事例
ここまでお読みになれば、あなたはファイブフォース分析の「枠組み」と「ロジック」そして「5つの要素を評価する視点」はご理解頂けたはずだ。
それらを踏まえた上で、ここからはファイブフォース分析の事例を紹介していこう。
あくまでこれから紹介するファイブフォース分析例は、すべてk_birdの見方・見解であることをお断りしておく。
ハーゲンダッツのファイブフォース分析の例
ハーゲンダッツは、そのネーミングの響きから「北欧のブランド」と誤解されがちだが、実は1961年にアメリカで生まれたアイスクリームブランドだ。当時の創業者がデンマークの首都・コペンハーゲンから「ハーゲン」を取り、それに語感の響きのよいダッツを付け加えた造語であると言われる。
ハーゲンダッツが日本に市場参入したのは1984年にさかのぼる。東京の南青山に「ハーゲンダッツショップ1号店」をオープンさせた。
さらに1990年に日本でアイスクリームの輸入が自由化されると「ハーゲンダッツアイスクリームバー」の輸入を始め、日本拠点の独自商品も次々に展開、現在では独自のポジションを築いている。
以下、1990年当時に遡って、ハーゲンダッツを取り巻く環境をファイブフォース分析に当てはめていこう。
ファイブフォース分析の例-1:買い手の交渉力
1990年当時、すでに日本の小売業界は高度にチェーン化され強い交渉力を持っていた。
それに加え、アイスクリームの場合は流通上の要件として「冷凍在庫」「冷凍輸送」「冷凍陳列」が必要となるため「買い手」であるスーパー・コンビニ業界の協力なしには販売ができない。
このため、新規参入者だったハーゲンダッツにとっては、流通チェーンの「買い手の交渉力」にどう対抗し、あるいは味方につけていくかが大きな課題だったことが想像できる。
ファイブフォース分析の例-2:売り手の交渉力
ハーゲンダッツの主原料はミルクだ。しかしハーゲンダッツが規定している品質を守るためには、酪農時の牧草の土づくりや乳牛の体調管理、あるいは飼料の調整まで徹底的に管理が必要となる。
しかしこれらの品質管理に対応可能な酪農家は限られる。そのためミルクの供給業者の寡占度が高まりやすく、結果「売り手の交渉力」が強くなりやすい。
ファイブフォース分析の例-3:業界内の競争
1990年当時、アイスクリーム業界には森永乳業など大手競合企業がひしめき合っていた。よって「直接競合の多さ」に対してどう立ち向かっていくかも大きな課題になったはずだ。
ファイブフォース分析の例-4:新規参入の脅威
1990年のアイスクリームの輸入自由化によって、アイスクリーム市場への参入は容易になった。これは新規参入者であるハーゲンダッツにとっては追い風となる一方で、ハーゲンダッツ参入後も様々な企業が新規参入しやすくなるため、脅威にもなる。
実際に、アイスクリームの輸入自由化解禁後、サーティーワンアイスクリームやベン&ジェリーズなどの外国資本が日本市場に参入しており、これらの後発参入者に対してどう対抗していくかが課題となることがわかる。
ファイブフォース分析の例-5:代替品の脅威
当時、アイスクリームは「子供のおやつ」としての位置づけが主流だった。そのため代替品は「スナック」「チョコレート」「ガム」「キャンディ」など数が多く、かつそのほとんどが大手資本の菓子メーカーであったため「代替品の脅威」は大きかったことが推察される。
ファイブフォース分析を戦略策定に活かすやり方
冒頭で述べた通り、ファイブフォース分析は、単なる情報収集や情報整理のツールではなく「示唆」を導き出すためのビジネスフレームワークだ。
「示唆」とは「どこをどう攻略すれば戦いやすい土俵になるのか?」を見出すことであり、マイケルポーター教授も「業界に働く5つの競争要因からうまく自社を守り、自社に有利になるように競争要因を動かせる位置を業界内に見つけること」だと述べている。
ここからは、上記のハーゲンダッツの例に「ハーゲンダッツはどのようなロジックや戦略を導き出したのか?」についてk_birdの見解を解説しよう。
ハーゲンダッツの戦略①:ブランドポジショニング戦略
この時、ハーゲンダッツが取った戦略の一つ目が、ポジショニング戦略だ。
前述した通り、当時「アイスクリーム」といえば「子供のおやつ」という認識が主流だった中、ハーゲンダッツが打ち出したブランドポジショニングが「大人のデザート」だ。
この戦略を取れば、ロッテやグリコ、森永乳業など「子供向け」に提供されていたアイスクリームブランドは競合でなくなる。
真の競合は「百貨店デザート」となるが、百貨店は都市部にしかなく手軽に手に入らないため、スーパーやコンビニエンスストアで気軽に変えるハーゲンダッツにとっては業界内競争を優位に進めることが可能となる。
また、ハーゲンダッツを「大人のデザート」と位置付ければ「スナック」「チョコレート」「ガム」「キャンディ」などの代替品の脅威を打ち消すことも可能となる。
ハーゲンダッツの戦略②:プル型マーケティング戦略
プル型マーケティング戦略とは、最終消費者のニーズを喚起することによって流通チャネルを経由した商品の流通を促す戦略のことをいう。
ハーゲンダッツは1990年の輸入アイスクリーム自由化後、1991年には早々とTVCMをスタートさせ、一気にブランド認知率とブランド連想を浸透させる戦略を取った。
ハーゲンダッツの認知度やブランド連想が社会に浸透し、最終消費者のニーズが劇的に高まれば、スーパーやコンビニエンスストアなどの「買い手」は、例え「冷凍在庫」「冷凍輸送」「冷凍陳列」の手間があったとしても、ハーゲンダッツを店頭に並べざるを得なくなる。もし店頭に並べなければクレームや機会損失が生じたり、あるいはいち早く店頭に並べたライバルチェーンに顧客を奪われてしまうからだ。
そしてこの戦略が功を奏していることは、あなたもお気づきのはずだ。現在ではハーゲンダッツ専用のチルドコーナーが用意されている店舗も多い。
さらに、ハーゲンダッツは「Pure Pleasure(純粋な至福)」というブランドコンセプトを元に最終消費者に対してブランディングを継続し、早期にハーゲンダッツのブランド力(=生活者がハーゲンダッツに感情移入する度合い)を向上させた。
以降、サーティーワンアイスクリームやベン&ジェリーズなどの外国資本が日本市場に参入したが、ハーゲンダッツの先行者利得とブランド力の壁に阻まれ、ハーゲンダッツほどの存在感を発揮していないことは、あなたもご存じの通りだ。
ファイブフォース分析における「頭の使い方」
ことビジネスフレームワークとなると、つい入手した情報を当てはめて分析をした上で「現状にどう適応していくか?」という視点に陥りがちだ。
しかし上記のハーゲンダッツの例でもわかる通り、一見収益性が低そうに見えても「現状を成り立たせている前提そのものを覆せないか?」という視点を持つことで優れた戦略を導き出せる場合がある。
ぜひ、ファイブフォース分析を行う際には「現状を肯定」するだけでなく「現状を覆す」視点も持ち合わせておこう。
ファイブフォース分析(5Forces分析)のやり方:PDFテンプレート
ファイブフォース分析は、いわば「業界全体」を扱うだけに幅が広い。さらに「自社が新規参入者としての立場」なのか「新規参入者を迎え撃つ立場」なのかによって視点や使い方が変わるため、つい混乱しがちだ。
よって1人でうんうん頭をうならせるよりは、チームメンバーが参加するワークショップ形式のほうが生産性が高まりやすい。
今回の解説では、ファイブフォース分析を「思考ツール」として使いこなすためのテンプレートを用意している。以下の画像をクリックしてもらえれば、ダウンロードできるようになっている。
このテンプレートを貼り出してチームでポストイットワークを行えば、多様な視点でファイブフォース分析を行えるはずだ。ぜひ、あなたはもちろん、チームメンバーで使いこなしていただければ幸いだ。
ファイブフォース分析の本:おすすめ書籍3冊
締めくくりに、マーケティング・ブランディング担当者へのお薦めのビジネスフレームワーク関連書籍を紹介しよう。選定した基準は下記の通りだ。以下のどれかに当てはまるものをピックアップした。
- k_birdが実際に読み、単純に「素晴らしかった」と思えるビジネスフレームワーク関連書籍。
- 実務に役立っているビジネスフレームワーク関連書籍。
- 長年に渡って読み継がれており、時代を越えても変わらない「本質」や「原理」が見出せるビジネスフレームワーク関連書籍。
1冊目はいわゆる「ビジネスフレームワークカタログ本」だ。多くのビジネスフレームワークを網羅的に理解したい場合におすすめだ。
2冊目は、この記事が解説した「ファイブフォース分析」に特化して解説している書籍だ。
さらにもう3冊目は、様々なビジネスフレームワークを「使いこなす」ための一冊だ。
ぜひ、用途に応じて読み分けていただきたい。
グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50
フレームワークを知っているのと知らないのとでは、ビジネスの「質」も「スピード」も格段の差がでてきてしまう。
フレームワークの利点は、これまでのビジネスの歴史の中で鍛えられてきた「有用な視点・枠組み」をシンプルに提供してくれることだ。
優れたフレームワークは、すでにその有用性が担保されていることから、うまくビジネスに応用することでアウトプットの質は劇的に高まる。
また、暗中模索でスタートするよりも思考のスピードが劇的に高まることも利点だ。
フレームワークは「使えてなんぼ」である以上、数が多いから良いというものではない。
その点、本書はMBAスクールであるグロービスが厳選した50のフレームワークを紹介されている。もし、仕事の「質」や「スピード」を劇的に高めたいなら、ぜひ、デスクの上に置いておきたい一冊だ。
ポーター教授「競争の戦略」入門
この記事でも解説した通り、ファイブフォース分析はハーバード・ビジネススクールのマイケル・ポーター教授が提唱したビジネスフレームワークだ。その原典は「競争の戦略(ダイヤモンド社)」となるが、本人が経済学者ということもあり、論理構造が難解なのが難点だ。更に訳もこなれておらず高価でもある。
一方で、本書は「競争の戦略」で描かれている重要なエッセンスのみを取り出して、わかりやすく解説してくれている良書だ。
更に全体の論理構造をチャート化してまとめてくれているため、時間のないビジネスパーソンにとってはこちらがお勧めとなる。
また、本記事では省略した様々な「力学」も、わかりやすい事例を交えながら網羅的に解説してくれている。
本記事をお読みになった後、次のステップとしてファイブフォース分析を使いこなすためにお勧めの書籍だ。
戦略フレームワークの思考法
あなたは、様々なビジネスフレームワークを使いこなせているだろうか?
とりあえず情報をフレームワークに当てはめてみたものの、そこから先が使いこなせずにいるビジネスパーソンは多い。
また、ただ単に情報を整理するだけでは、価値ある示唆を導き出すことはできない。
本書の特筆すべき点は、単なるフレームワークの紹介にとどまらず、その使い方の解説が充実している点だ。
もしあなたが「多くのフレームワークを知ってはいるものの使いこなせない」「示唆を導き出せない」という状態なら、本書はあなたにとって価値ある書籍となるだろう。あなたを「フレームワークが使える」状態に導いてくれるはずだ。
このブログから書籍化した本4冊
★「シャープな仮説を生み出す頭の使い方」を徹底解説
冒頭でも紹介したが、再度ここでも紹介させていただこう。
誤解を恐れずに言えば、あらゆるビジネスは「仮説」こそが成否を握る。
なぜなら、仮説を生み出せなければ次の一手を見出しようがなく、検証のしようもなくなるからだ。つまり、ビジネスの成長は止まってしまうことになる。
しかし仮説思考の書籍の多くは、仮説思考のメリットは説くものの、肝心の「仮説思考のマスターの仕方」になると、
- 「センスが必要」
- 「経験の積み重ねが物を言う」
など「それを言ったらお終いよ」という結論で終わらせているものが多い。
一方で、本書は「仮説思考に必要な推論の手順」を、豊富な事例とともに解説している。よって、その手順通りに推論を重ねれば「センス」や「長年の経験」に頼ることなく、誰でも優れた仮説を導き出せるようになる。
おかげさまで本書は5版を重ね「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」にノミネートいただいた。NewsPicksやNIKKEI STYLE、lifehackerなど多くのメディアで取り上げていただき、中国や台湾、香港でも出版が決定している。
さらにAmazonレビューでも、
- 「ここ数年の仮説思考系の書籍で久々のヒット」
- 「自分オリジナルの武器にしていけそうな良書」
- 「一生もののスキルになるのは間違いない」
など有難い言葉を頂戴しており、5刷を重ねている。
もしあなたがシャープな仮説を導き出せるようになりたいなら、ぜひ本書を手にとってみて欲しい。
★ロジカルシンキングでは学べない「視点力」と「法則力」を身につける※無料のオーディオブック特典付
人は誰しも「視点」を通してしか物事を考えることができない。
別の言い方をすれば「そもそも何を考えるべきか?」という論点(=イシュー)は、視点が決めてしまうともいえる。
また、どんなに適切な視点を置いたとしても「ああなれば→こうなるだろう」という「予測のパターン(=法則)」が頭の中になければ、確かな仮説を導き出すことはできない。
本書はビジネス書から「視点」と「法則」を発見し、思考の質とスピードを上げていく独学術を解説した書籍だ。
1つの「視点」しか持てない人は、1つの論点しか設定することができない。当然、導き出せる仮説も1つだけだ。
しかし5つの「視点」を持てれば、5つの論点を設定できるようになる。その結果、5つの仮説を導き出すことができるようになるはずだ。
もしあなたが自由自在に「視点」を操ることができるようになれば、物事の多様な側面に気づき、次々と「新たな可能性」を拓くことができるようになる。
また、数多くの「法則」をストックしていけば、様々な現象に「法則」を当てはめることで「筋の良い仮説」を瞬時に導き出すことが可能になるはずだ。
おかげさまで、本書はThe21や日経、STUDY HACKERなど多くのメディアに取り上げていただき、発売3か月で海外の翻訳出版も決定した。Amazonレビューでも、
- 視点力や仮説思考、抽象化スキルが身に付く良書
- これまでの読書術の常識を次々と塗り替えている目からウロコの本
- まさに「モノの見方を変える方程式」
など、ありがたい言葉を頂戴している。
もしあなたが「フレームワーク」だけでは得られない「視点力」と「思考スピード」を身につけたいなら、ぜひ本書で紹介する読書法を実践して欲しい。
※無料のオーディオブック特典付
★8ジャンル57個の仕事術で「実践力」を身につける
どのようなビジネスも、実践が伴わなければ成果は出ない。しかし、いざ「実践力」を身につけようとしても、その分野は、
- 時間管理術
- 段取り術
- コミュニケーション術
- 資料作成術
- 会議術
- 学び術
- 思考術
- 発想術
など多分野に渡り、最低8冊分の読書時間と書籍代がかかってしまうのが難点だ。
しかし、本書「超効率ハック」は、8つの分野の仕事術の「重要ポイントだけ」を抜き出し、ギュッと1冊に凝縮した書籍だ。
さらに、本書は「訓練や習慣化が必要な作業テクニック」ではなく「行動を変えるための頭の使い方」の解説に力を入れているため「頭のスイッチを切り替える」だけですぐに実践できるのも特色だ。
おかげさまで、本書を題材にしたSchooのオンライン授業では「思考法ジャンル」で人気ランキング1位を頂いた(139講座中)。また、lifehackerやOggiなど数多くのメディアで取り上げていただき、Kindleでは「オペレーションズ部門」でベストセラー1位を獲得している。
Amazonレビューでも、
- 「思考と行動の質を上げるヒントが盛りだくさん」
- 「読んでみると、頑張りどころを間違えてたことに気付かされる」
- 「仕事が速い人はこれをやってたんだな、ということがよくわかった」
など、ありがたい言葉を頂戴しており嬉しい限りだ。
もしあなたが「短時間で網羅的に仕事術を学びたい」「根本から仕事の生産性を高めたい」と感じているのなら、ぜひ手に取ってみて欲しい。
★ブランディングの理論と実践をつなぐ「ブランディングの教科書」
本書は、筆者の専門である「ブランディング」について解説した書籍だ。
ブランディングは、ややもすれば「デザインの話」「広告の話」「世界観の話」など、掴みどころのない抽象論に陥りがちだ。
しかしブランディングは「ブランド戦略」という言葉があるように、企業の成否を大きく左右する戦略のひとつだ。そして投資が伴う以上、一定の合理性と説明責任が求められる。決して、売上や利益から逃げてはならないのだ。
本書は、つい「感覚論」に陥りがちな「ブランディング」に対して「論理的な納得性」と「直感的な腹落ち感」の両面を追求した書籍だ。
「論理」が理解できなければ、ブランディングを体系的に理解することできず、再現性を生むことができない。
そして「直感的な腹落ち感」がなければ、ブランディングを実務に落とせず、成果をもたらすことができない。
本書は、広告代理店&外資系コンサルティングファームで培った「生の知見」と「体系的な解説」を通して、ブランディングの理論を実践へとつなげて解説している。
おかげさまで、本書はAmazon kindle売れ筋ランキング「消費者主義」ジャンルでベストセラー1位を獲得し、Amazonレビューでも、
- 「ふわっとしたブランディングの本が多い中で、異彩を放っている」
- 「事例も多いので実践のイメージが湧きやすい」
- 「海外企業の事例ばかりが紹介されている輸入本だとピンとこない、という方にお薦め」
など、ありがたい言葉を頂いている。
もし本書を手にとって頂ければ、ブランディングの専門用語はもちろん、実践の手順や実務の勘所が、一通り学べるはずだ。
kindle Unlimitedを契約されている方は無償で手に入れることができるので、気軽に手に取っていただきたい。
その他の解説記事とおすすめ書籍
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★思考力が身につくおすすめ記事
★ビジネススキルが身につくおすすめ記事
★ブランディング・マーケティングの知識が身につくおすすめ記事
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★17のビジネス分野別おすすめ書籍
★思考力が身につくおすすめ書籍
★ビジネススキルが身につくおすすめ書籍
★ブランディング・マーケティングの知識が身につくおすすめ書籍
終わりに
今後も、折に触れて「ロジカルで、かつ、直感的にわかる解説」を続けていくつもりだ。
しかし多忙につき、このブログは不定期の更新となる。
それでも、このブログに主旨に共感し、何かしらのヒントを得たいと思ってもらえるなら、ぜひこのブログに読者登録やTwitter、facebook登録をしてほしい。
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