Mission Driven Brand

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コーポレートブランディングとは|企業ブランディングの進め方と全手順|事例有

コーポレートブランディングとは|企業ブランディングの進め方と全手順|事例有

このブログに辿り着いたあなたなら「コーポレートブランディング(企業ブランディング)とは何か?」あるいは「企業ブランディングの進め方」について関心を抱いていることだろう。

このブログ「Mission Driven Brand」は、外資系コンサルティングと広告代理店のキャリアを持つ筆者が、ブランディングやマーケティングの「できない、わからない」を解決するブログだ。

コーポレートブランディングは商品ブランディングと異なり「具体的な売り物」が存在しない。さらに商品ブランディングが「マーケティング関連部門の」「日々の業務」の話であるのに対し、企業のブランディングは「企業全体を巻き込んだ」「5年先あるいは10年先を見越した」話であるため、より複雑さが増す。

そこであなたに質問だ。そもそも「コーポレートブランディングの目的」とは何だろうか?

もし「コーポレートブランディングの目的とは何か?」という質問で、あなたが一瞬でも戸惑ったのなら、この解説を最後までお読みいただきたい。

コーポレートブランディングの理解が曖昧なまま段取りを進めてしまえば、せっかくのプロジェクトも「企業のロゴデザインを変える」「企業のスローガンを変える」など表層的な結果で終わってしまい、その成果はおぼつかない。

もしあなたが「コーポレートブランディング」に興味を持ち、自社のコーポレートブランディングを成功に導きたいと考えているのなら、今回の記事がその一助になれば幸いだ。

ブランディングの理論と実践をつなぐ「ブランディングの教科書」

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本論に入る前に、僭越ながら拙著「ブランディングの教科書」を紹介させていただこう。

ブランディングは、ややもすれば「デザインの話」「広告の話」「世界観の話」など、掴みどころのない抽象論に陥りがちだ。

しかしブランディングは「ブランド戦略」という言葉があるように、企業の成否を大きく左右する戦略のひとつだ。そして投資が伴う以上、一定の合理性と説明責任が求められる。決して、売上や利益から逃げてはならないのだ。

本書は、つい「感覚論」に陥りがちな「ブランディング」に対して「論理的な納得性」と「直感的な腹落ち感」の両面を追求した書籍だ。

「論理」が理解できなければ、ブランディングを体系的に理解することできず、再現性を生むことができない。

そして「直感的な腹落ち感」がなければ、ブランディングを実務に落とせず、成果をもたらすことができない。

本書は、広告代理店&外資系コンサルティングファームで培った「生の知見」と「体系的な解説」を通して、ブランディングの理論を実践へとつなげて解説している。

おかげさまで、本書はAmazon kindle売れ筋ランキング「消費者主義」ジャンルでベストセラー1位を獲得し、Amazonレビューでも、

  • 「ふわっとしたブランディングの本が多い中で、異彩を放っている」
  • 「事例も多いので実践のイメージが湧きやすい」
  • 「海外企業の事例ばかりが紹介されている輸入本だとピンとこない、という方にお薦め」

など、ありがたい言葉を頂いている。

もし本書を手にとって頂ければ、ブランディングの専門用語はもちろん、実践の手順や実務の勘所が、一通り学べるはずだ。

kindle Unlimitedを契約されている方は無償で手に入れることができるので、気軽に手に取っていただきたい。

コーポレートブランディング(企業ブランディング)とは?

コーポレートブランディング(企業ブランディング)とは-1:コーポレートブランディングによくある誤解

コーポレートブランディングは商品ブランディングとは異なり、企業全体を巻き込んだ取り組みとなる。

そして当たり前のことだが、コーポレートブランディングを成功させるには、プロジェクトメンバー全員が「コーポレートブランディングとは何か?」を理解していなければ、一枚岩になれない。

しかし、コーポレートブランディングは誤解も多いのも事実だ。例を挙げれば、以下のような誤解だ。

  • コーポレートブランディングとは、企業イメージを向上させることだ。
  • コーポレートブランディングとは、企業名やロゴデザインを目新しいものに変えて時代にマッチさせることだ。
  • わが社はまじめな会社だ。コーポレートブランディングのような「チャラチャラしたもの」は必要ない。
  • わが社はBtoB企業なのだから、コーポレートブランディングは必要ない。

もしあなたが「コーポレートブランディング」のプロジェクトリーダーを任されたのなら、遅かれ早かれ上記のような「誤解を持った人たち」に悩まされることになる。

残念ながら「ブランディング」は抽象的な概念であるため解釈の余地が大きい。そのため、それぞれが間違った解釈をしたまま「コーポレートブランディング」を進めてしまい、後々になって「解釈の違い」が原因で紛糾する例が後を絶たない。

どのようなプロジェクトもそうだが、プロジェクトメンバー間で「そもそもの立脚点」と「目的」が揃わなければ、決してプロジェクトの足並みは揃わない。

よって、まずあなたがすべきはプロジェクトメンバーの間で「コーポレートブランディングとは何か?」という「立脚点」と「コーポレートブランディングの目的とは何か?」という「ゴール」に対する共通認識を持つことだ。

コーポレートブランディング(企業ブランディング)とは-2:コーポレートブランディングの意味を定義する

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突然の質問で恐縮だが、あなたが所属する企業には「企業目標」があるだろうか?

k_birdはこれまで多くの企業と接してきたが、ほぼすべての企業で「企業目標」は存在する。特に上場企業では「売上高」「シェア」「営業利益額」「営業利益率」などの企業目標が設定されていることが多い。より財務的に進んだ企業ならEBITDAやEVAなどが設定されている企業もある。

このブログをご覧になっているあなたなら、しっかりと中期経営計画を理解し「企業目標」も頭に入っているはずだ。そんなあなたに、今度は以下の質問を投げかけてみよう。

  • 「あなたの企業の"企業目的"とは何ですか?」

もし仮に「見知らぬ外部の人」から上記の質問を投げかけられたら、あなたはどう答えるだろうか?

  • 「わが社の目的は、営業利益を〇〇〇億円に増やすことです」

と答えたとしたら、残念ながら「見知らぬ外部の人」は、あなたの企業に興味を失うことになる。なぜなら「あなたの企業の営業利益が〇〇〇億円に増えること」は「見知らぬ外部の人」にとっては他人事の話であり、どうでもいいことだからだ。

そして、上記の文章の「見知らぬ外部の人」を「社会」や「(潜在)顧客」と置き換えて見るといかがだろうか?

  • 「わが社の目的は、営業利益を〇〇〇億円に増やすことです」

という「企業目標」は、あなたの企業の都合であって「社会」や「顧客」にとってはどうでもいいことだ。

「社会」や「顧客」が関心があるのは「あなたの企業は、商品やサービスを通して、どのような社会を創りあげるのか?」という「企業目的」の方であり、もしあなたの企業の社員が「企業目的」を即座に答えられないなら、コーポレートブランディングは待ったなしといえる。

上記を踏まえ、k_birdは「コーポレートブランディング」を以下のように定義している。

コーポレートブランディング(企業ブランディング)とは?

コーポレートブランディングとは「企業が存在する社会目的」や「そこに向かう一貫した姿勢」を明確に示すことで、社会やステークホルダーからの感情移入を促し、味方につける取り組みを指す。

企業の目的を「我が社の営業利益」などに据えてしまうと「単なる内向きの話」で終わってしまう。本来あるべき企業の目的は「社会」や「潜在顧客」との関わりの中で位置づけられなければならない。

そしてここまでお読みになれば、冒頭の事例はすべて「誤解」であることに気が付けるはずだ。

  • コーポレートブランディングとは、企業イメージを向上させる手法のことだ。
  • コーポレートブランディングとは、企業名や企業のロゴデザインを目新しいものに変えることだ。
  • コーポレートブランディングのような「チャラチャラしたもの」は必要ない。
  • BtoB企業に、コーポレートブランディングは必要ない。

コーポレートブランディング(企業ブランディング)とは-3:コーポレートブランディングの効果

「コーポレートブランディングの意味」が理解できたら、続いては「コーポレートブランディングの効果」について解説しよう。

当たり前のことだが「コーポレートブランディング」は投資が伴う以上、ビジネスとしての成果が求められる。しかしコーポレートブランディングはその対象が「全ステークホルダー」となるため「効果そのものが定義しずらい」という困難さを伴う。

そこでk_birdは、以下の「バリューチェーン」のフレームワークに沿って説明することが多い。

コーポレートブランディングによる「資金調達面」の効果

コーポレートブランディングによる「資金調達面」の効果

どのような企業も、まずは元手となる「資金調達」から始まる。銀行や株式市場からの資金調達がままならなければ、そもそも新たなビジネスをはじめることすらできない。

もしコーポレートブランディングを通して「あなたの企業が存在する社会目的」や「そこに向かう一貫した姿勢」を示すことができれば、あなたの企業は銀行や株式市場から「期待」あるいは「信頼」という名の感情移入を獲得することが可能になる。

その結果、銀行や株式市場はあなたの企業の将来に信憑性を感じるようになり、資本コスト(=資金調達コスト)が下がることで有利な資金調達が可能になる。

鋭いあなたならもうお気づきだろうが、これはコーポレートブランディングにおける「IR効果」と呼ばれるものだ。

コーポレートブランディングにおける「人材採用面」の効果

コーポレートブランディングにおける「人材採用面」の効果

例え充分な資金を調達できたとしても、企業活動を遂行する上で充分な人材が揃わなければビジネスは回らない。

しかし、今後日本国内では労働人口が減少し、採用難になるといわれる。現実にk_birdが所属する広告代理店にも、中堅企業やBtoB企業を中心に「採用」をテーマにした相談が急増しているのが実態だ。

こと「採用」となると、短絡的に「給与水準を上げれば優秀な人が応募してくるのでは?」という議論になりがちだ。しかしk_birdの外資系コンサルティングファームで見てきた経験に照らせば「高額報酬で集まってきた人」は「高額報酬で去っていく人」だ。

さらに言えば、本当に優秀なハイパフォーマーは、もはや自分のスキルを「金銭的報酬」の次元で考えていない。なぜなら「金を追い求める職業人生は、金に支配される職業人生になる」ことをよく理解しているからだ。

真のハイパフォーマーは、常に「自分のスキルで何を実現できるか?」を考えている。そして「そんな価値観や志を共鳴できる仲間がいるかどうか?」を基準にフィールドを判断する人が多い。

もしコーポレートブランディングを通して「あなたの企業が存在する社会目的」や「そこに向かう一貫した姿勢」を示すことができれば、あなたは人材市場にいるハイパフォーマーから「共鳴」という名の感情移入を獲得することが可能になる。

これはブランディングの世界では「採用ブランディング」と言われるものだ。

コーポレートブランディングにおける「組織文化面」の効果

コーポレートブランディングにおける「組織文化面」の効果

例えあなたの企業に充分な人材が集まったとしても、1人1人の従業員が実力を発揮しなければビジネスの成果にはつながらない。

そこであなたに質問だ。従業員は「自社のビジネスは、営業利益を〇〇〇億円にするビジネスだ」と言われるのと「自社のビジネスは、世の中をより良い場所に変えるビジネスだ」といわれるのでは、どちらのほうが「自社に対する誇り」や「仕事の充実感」を感じるだろうか?

もしコーポレートブランディングを通して「あなたの企業が存在する社会目的」や「そこに向かう一貫した姿勢」を従業員に示すことができれば、あなたは自社の社員から「誇り」という名の感情移入を獲得することが可能になる。

これはブランディングの世界では「インナーブランディング」と呼ばれるものだ。

コーポレートブランディングにおける「マーケティング面」の効果

コーポレートブランディングにおける「マーケティング面」の効果

最後は「コーポレートブランディングにおける、マーケティング面の効果」だ。

もしあなたが潜在顧客の立場に立った場合「私たちの企業は、営業利益〇〇〇億円を目指している企業です」と言われるのと「私たちの企業は、ビジネスを通して社会をより良い場所に変えることを目指している企業です」と言われるのとでは、どちらの企業に「共鳴感情」を抱くだろうか?

もしコーポレートブランディングを通して「あなたの企業が存在する社会目的」や「そこに向かう一貫した姿勢」を潜在顧客に示すことができれば、あなたの企業は潜在顧客から「共鳴感情」あるいは「尊敬感情」という名の感情移入を獲得することが可能になる。

もし、まったく同一のスペック&価格の商品が2つ並んだ時、共鳴感情を抱いている商品とそうでない商品では、どちらが選ばれやすいだろうか?

コーポレートブランディング(企業ブランディング)とは-4:コーポレートブランディングが目指す姿

近年では、

  • SDGs(社会分野)
  • ESG(投資分野)
  • CSV(経営分野)
  • マーケティング3.0/4.0(マーケティング分野)

など、ビジネスにも「社会性」が求められる時代だ。現にイギリスでは「経済的利益」より「社会的幸福」を優先する国民が増えた結果Brexit(EUの離脱)が実現し、米国でもトランプ大統領誕生の原動力となった。

「社会性」と「ビジネス」を結び付けようとすると、どうしても「CSR」を連想しがちだが、今求められているのは「ビジネスとは関係のないところで社会貢献をする」だけでなく「ビジネスを通して社会をより良く変える」取り組みだ。

もしコーポレートブランディングを通して「あなたの企業が存在する社会目的」や「そこに向かう一貫した姿勢」を社会に示すことができれば、あなたの企業は社会で果たすべき役割を持ち、多くのステークホルダー(≒社会)から共鳴感情を引き出すことが可能になる。

更にあなたの企業がどのように社会をより良い場所に変えていくのか、一貫したストーリーを語れるようになる。

加えて、あなたの企業の従業員は、自分達が働いている企業の「社会目的」や「それに向かった一貫した姿勢」に誇りを感じ、一つ一つの仕事は今よりも意義あるものに変わる。

ここまでお読みいただければ、コーポレートブランディングの目的と効果とは、突き詰めれば「感情移入を通して社会やステークホルダーを味方につけ、中長期的かつ安定的に利益を確保する」ことだということが、ご理解いただけたことだろう。

コーポレートブランディング(企業ブランディング)の進め方と全手法

コーポレートブランディングの目的とビジネス効果が理解できたら、続いては「コーポレートブランディングの進め方」の解説に移ろう。

残念ながらコーポレートブランディングは商品ブランディングと異なり5年あるいは10年に一度の取り組みとなるため、社内にノウハウが残りにくい。そのため、プロジェクトリーダーに指名されたご担当者も、何をどこから手を付けていいか、途方に暮れることが多いようだ。

また、世の中には多くの「コーポレートブランディング本」が存在するが、その多くはブランドコンサルティング会社が執筆した書籍であり「コーポレートブランドの必要性」や「コーポレートブランドの成功事例」は紹介されていても、肝心の「コーポレートブランディングの進め方」は「あっさりと」しか解説されていないものがほとんどだ。

しかしこの解説を最後までお読みいただければ「コーポレートブランディングをどのような手順で進めればいいか」おおよそのイメージはつかめるようになる。

まずは、コーポレートブランディングのおおまかな進行イメージを頭に入れよう。コーポレートブランディングは、以下のステップで進めていくことが多い。

  1. コーポレートブランディングの気運を捉える
  2. 部門横断型のプロジェクトチームを編成する
  3. コーポレートブランドの現状を把握する
  4. コーポレートアイデンティティ(CI)を明確化する
  5. ビジュアルアイデンティティ(VI)を明確化する
  6. コーポレートブランディングの一貫性を保つルールを決める
  7. インナーブランディング(インターナルブランディング)を行う

以下、解説していこう。

コーポレート(企業)ブランディングの進め方と全手法-1:コーポレートブランディングの気運を捉える

コーポレート(企業)ブランディングの進め方と全手法-1:コーポレートブランディングの気運を捉える

この解説をお読みになっているあなたなら、何らかの理由でコーポレートブランディングの必要性を痛感していることだろう。

しかしコーポレートブランディングは「あなたの部署の取り組み」ではなく「企業全体の取り組み」となるため「全社的な気運」を捉えた上で上申しなければ決裁はされにくい。

k_birdの経験上「コーポレートブランディング」の決裁が通りやすいタイミングとは、おおむね下記の通りだ。

コーポレートブランディングの機運を捉える-1:社長交代のタイミング

社長が交代すると、ほぼ例外なく新しい方針が示される。とくに創業社長が2代目社長にバトンタッチするタイミングでは、若い2代目社長が新方針の一つとして「コーポレートブランディング」が掲げられることが多い。

しかし2代目社長の場合「うちの会社は目立ってないから」などミーハーな気持ちの場合もあるので、入念に背景や真意を確認しておきたい。

コーポレートブランディングの機運を捉える-2:新中期経営計画策定のタイミング

新中計策定のタイミングで「自社の課題」と向き合った際に、課題の解決策の一つとして「コーポレートブランディング」が検討されることが多い。

コーポレートブランディングの機運を捉える-3:周年のタイミング

企業が周年を迎える場合「過去のご愛顧への感謝」と「未来に向けての宣言」が検討される。その節目として「コーポレートブランディング」が検討されるケースがある。

コーポレートブランディングの機運を捉える-4:上場のタイミング

上場をきっかけに「社会の公器」として広く「社会」や「ステークホルダー」に対して「コーポレートブランディング」が検討されるケースがある。

コーポレートブランディングの機運を捉える-5:企業合併のタイミング

企業合併の場合、異なる組織文化が一つになり、そもそも社名自体を変える必要が生じるので、必然的に「コーポレートブランディング」が検討されることが多い。

コーポレートブランディングの機運を捉える-6:業容拡大時のタイミング

業容拡大やM&Aなどで人材が急増した結果、組織内で創業時の使命や志が希薄化してきたケース。急拡大したベンチャー企業に多い。

コーポレートブランディングの機運を捉える-7:ターンアラウンド(事業再生)のタイミング

業績不振により大掛かりなリストラを実施した後に、残った従業員の士気を高めるために「コーポレートブランディング」が検討されるケースがある。

コーポレートブランディングの機運を捉える-8:社名と事業実態のギャップが大きくなったタイミング

創業時は単一事業だったものの、その後に業容の幅が広がり、社名と事業実態とのギャップが大きくなってしまった結果「コーポレートブランディング」が検討されるケースがある。

コーポレートブランディングの機運を捉える-9:企業名や企業ロゴが時代に合わなくなってきたタイミング

創業の時代から、いわゆる「屋号」として企業名や企業ロゴを使い続けてきたものの、誰が見ても「古臭い」ものとなり「VI:ビジュアルアイデンティティ」の再構築の一環として「コーポレートブランディング」が検討されるケース。

コーポレートブランディングの機運を捉える-10:国際化のタイミング

国際化を検討するタイミングで「社名」や「企業ロゴ」に商標の壁が立ちはだかり「VI:ビジュアルアイデンティティ」の再構築の一環として「コーポレートブランディング」が検討されるケース。

コーポレートブランディングの機運を捉える-11:人材採用が難しくなったタイミング

年々、人材採用が難しくなり「採用ブランディング」の一貫として「コーポレートブランディング」が検討されるケースがある。特にBtoB企業に多い。

コーポレートブランディングは、多くのビジネス課題を解決する上で非常に有益な手法だ。しかし「全社的な気運」を外したタイミングで「コーポレートブランディング」を起案しても、日の目を見ないことは自明の理だ。

更に、一度起案したコーポレートブランディングが否決されてしまったら、その後に蒸し返すのは相当のエネルギーを要する。よって「コーポレートブランディング」を起案する際には上記のようなタイミングを見計らって「全社的な気運」を味方につけよう。

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コーポレート(企業)ブランディングの進め方と全手法-2:部門横断型のプロジェクトチームを編成する

コーポレート(企業)ブランディングの進め方と全手法-2:部門横断型のプロジェクトチームを編成する

無事に決裁が下りたら、あなたは部門横断型のプロジェクトを編成することになる。プロジェクト編成で押さえておきたい手順は以下の通りだ。

  • プロジェクトチームを編成する
  • プロジェクトキックオフを行う
  • ノーミング・セッションを行う
  • コーポレートブランディング勉強会を開催する

以下、ポイントを解説しよう。

コーポレートブランディングのプロジェクトチームを編成する

コーポレートブランディングは企業全体の取り組みとなることから、部門を横断したプロジェクトチームの編成が必要となる。もし「コーポレートブランディング」の実行について決裁が降りたら、早速プロジェクトチームの編成に着手しよう。

プロジェクトチームを編成する際によく尋ねられるのが「どんな人を」「どんな手法で」集めるべきか?だ。k_birdの見解を示すと以下の通りとなる。

■コーポレートブランディングではどのような人材を集めるべきか?

1つ目の条件は「部門代表にならずに、企業全体の視点に立てる人材かどうか」だ。

コーポレートブランディングのプロジェクトは「あなたの企業が存在する社会目的」や「そこに向かう一貫した姿勢」など「全体最適」の色彩を帯びる。そして「全体最適」とは、時に「部分」を犠牲にする意思決定を伴う。

特に複数事業を展開しているコングロマリット企業に顕著だが「社会目的」や「それに向かう一貫した姿勢」の議論になると「自部門に当てはまる、当てはまらない」などの議論となりやすい。その結果、議論が平行線を辿って炎上してしまうのは「あるある」だ。

よって、プロジェクトメンバーを招集する際には「必ず」「全体最適の視点を持った人材」を条件に入れよう。

続いて2つ目の条件は「中長期的な視点に立てる人材かどうか」だ。

残念ながら企業には「目の前の具体的な話」でしか物事を捉えられない人と「中長期かつ大局的に」物事を捉えられる人の2種類が存在する。

そしてコーポレートブランディングは、今日明日の話ではなく、5年後10年後を見据えたプロジェクトなのだから「足元の売上」「目先の利益」に終始するのではなく中長期を見通す「目線の高さ」が求められる。

更に3つ目の条件は「企業の在り方に対する問題意識が高い人材かどうか」だ。

「問題意識が高い人材」は、ともすれば組織の中で「不満分子」「批判分子」として煙たがられがちだ。しかし「不満がある」「批判がある」ということは、裏を返せば「本来ならこう在って欲しい」という期待や願望の表れであり、コーポレートブランディングのようなプロジェクトで光を当てると強い使命感を感じ、大きな活躍をしてくれることが多い。

大企業になればなるほど、組織の中では「調整能力」に長けた人材が重宝されがちだ。

しかし「コーポレートブランディング」が目指すのは「全社的な変化」であり、人の意見をただ器用にまとめるだけの調整能力だけでは務まらない。

変化を嫌う社内の抵抗も出てくる中で、コーポレートブランディングを骨抜きにしないためは「強い問題意識」と「固い信念」を持った人材が必要不可欠だ。

また、以下のようなタイプもコーポレートブランディングプロジェクトに向いている人材だ。

  • 混沌とした状況自体が苦にならず、むしろそれを楽しみ、自分で自分を盛り上げ、その時々でベストだと思うことを自分で選び取って進められる人材
  • 自分たちの会社・組織・ビジネスについて、時には一歩引いて分析し「良いところは良い」「改めるべきところは改める」と冷静に判断できる人材

しかし人材は常に不足気味なのだから、現実にはプロジェクトを通して「企業全体をリードできる人材」を育てることになる。今はあまり知識を持っていなくても、ガッツがあって前向きな人材が望ましい

逆に、すべてが整理整頓されていないと不安だったり、指示してくれないと仕事ができないような人材は、いくら知識や能力が豊富でも戦力にはなりにくい。

■コーポレートブランディングではどのような手法で人材を集めるべきか?

規模が大きくない企業であれば、プロジェクトメンバーの招集は経営層が「これぞ!」と見込んだ人材の一本釣りが望ましい。なぜなら「全体最適の視点を持ち」「中長期を見通し」「問題意識の高い人材」は優秀な人材であることが多く、各事業のリーダーは「穴が空く」ことを恐れて人材を出したがらないからだ。

ここまで読めば、「部門長推薦」はお薦めできない悪手であることがわかるはずだ。

なぜなら「部門長推薦」となれば、各部門長は自部門に影響を与えない「余剰人員」を差し出してくるからだ。結果、プロジェクトメンバーは「言われたから来ましたけど、何やればいいですか?」という人材のみとなり「コーポレートブランディングを真剣に考えているのはあなたのみ」という状態に陥ってしまう。

また、企業規模が大きく「経営層の一本釣り」が難しい場合には「公募」を行った上で、必ず「面談による決定」というプロセスを加えよう。

「公募」となるとそれなりに志の高い人材が集まることが想定されるが、中には「プロジェクトを通して勉強させてください」という応募者も混じってくる。しかしコーポレートブランディングプロジェクトは「勉強させてもらう」という受け身の場ではなく「自分たちの手で変化を創る」主体的な場だ。

「勉強意欲」そのものは素晴らしい心構えだが、コーポレートブランディングプロジェクトを完遂させるには、プロジェクトメンバー1人1人に「使命感」と「主体性」が求められる。「公募」の後に「面談」というプロセスが必要な理由は、応募者の「主体性」を見極めるためだ。

k_birdは、概ね以下の適性を確認するようにしている。

  • このプロジェクトは、現在のあなたの業務と兼務して進めていくことになる。体力的に精神的にもタフな仕事だが耐えられるか?
  • このプロジェクトは「あなたが勉強をする場」ではなく「あなたが主体的に貢献する場」だ。知識は後からついてくる。重要なのは主体性だが「主体的に貢献する」意欲はあるか?
  • このプロジェクトに決まり切った進め方はない。よって「進め方自体」を自分たちで考え決めていくことになるので紆余曲折は避けられない。それでも参加する覚悟はあるか?
  • 非常にタフなプロジェクトになるが、完遂できた際には、あなたは飛躍的に成長しているはずだ。

更にプロジェクトメンバーの出身部門は、ブランド浸透までの展開を見据えて、部門横断的な人選が望ましい。

仕事で成長するマインドセットとは

仕事ができる人に変わる16のビジネスマインドセット 

コーポレートブランディングのプロジェクトキックオフを行う

プロジェクトメンバーの人選を終えたら、プロジェクトメンバーを一同に集め、プロジェクトキックオフを行う。プロジェクトキックオフのアジェンダは、おおむね以下の通りだ。

  • プロジェクトオーナー(経営トップが望ましい)の挨拶と意気込み
  • コーポレートブランディングプロジェクトの背景・役割・ゴールの説明
  • ゴールに辿り着くまでのアプローチ・タスク・スケジュールの説明
  • プロジェクト体制の説明
  • 今後のミーティングの日時確認

プロジェクトキックオフにおいては、プロジェクトオーナー(経営トップ)の参画は必要不可欠だ。その理由は2つある。

1つ目は、ご想像通りプロジェクトメンバーに奮起を促すためだ。

プロジェクトキックオフ時に、経営トップが「頼む」と1人1人の肩を叩いていけば、プロジェクトメンバーからしてみれば「雲の上の存在だった経営トップが、自分に託してくれている」という実感を持つ。この効果は、実は経営トップご本人が考えている以上に大きい。「経営トップから期待される」という経験が、プロジェクト推進の大きな原動力となる。

続いて2つ目は「プロジェクトメンバーの直属の上司」へのけん制効果だ。

残念ながら自部門から送りだしたメンバーが優秀であればあるほど、その上司から見れば「現場に大きな穴が空く」状態となる。そのため、内心ではプロジェクトを快く思わない上司も存在する。

しかし経営トップ直下の「肝いりプロジェクト」となれば、直属の上司も表立った不満は言いづらくなる。むしろ「積極的に応援したほうが得かも」という計算すら働く。

こうして「プロジェクトメンバーのモチベーションが高まり」「現業の上司も応援している」という構図を創り出せれば、コーポレートブランディングプロジェクトはスタートから弾みがつく。これが、プロジェクトキックオフ時に「経営トップの参画が不可欠」な理由だ。

コーポレートブランディングのノーミングセッションを開催する

「ノーミングセッション」とは聞きなれない言葉かもしれないが「短期間でチームビルディングを行い、チームの一体感を高めるための仕掛け」の事を指す。

大企業になると、コーポレートブランディングプロジェクトに集まったメンバー同士が「互いに初顔合わせ」であることも多い。いわば「周り全員が見知らぬ人」という状態だ。

そして「互いに見知らぬ人」から「一体感を持ったチーム」になるには、以下のようなプロセスを辿るとされる。

  1. Forming(形成期):様子見段階
    お互いの「人となり」を十分に理解できていない状態。「こんなことを言ったら悪いかな?」と、まずは遠慮が先に立つ。リーダーは「任命されたリーダー」であり、メンバーは指示待ちとなる。
  2. Storming(混乱期):主張段階
    場の空気に慣れ、それぞれのメンバーの主張が出始める。「私はこう思う」「そうじゃないと思う」などの発言が頻発し、意見がまとまらず、プロジェクトの生産性は大きく低下する。
  3. Norming(標準期):規範段階
    互いの価値観やキャラクター、あるいは事情を理解し、暗黙のうちにチームのルールが築かれる。「了解、やっとく」など「あ・うんの呼吸」が成立し始め、メンバーが自律的に動き始める。
  4. Transforming(達成期):結束段階
    プロジェクトチーム内に「文化」と「連帯」が生まれ始める。
    この段階になると「うちのチームは…」「私たちのやり方は…」など暗黙のうちに「チームへの帰属」を前提とした発言がなされ始める。

鋭いあなたならもうお気づきかもしれないが「Forming(形成期):様子見段階」や「Storming(混乱期):主張段階」が長引けば長引くほど、プロジェクトの生産性は低下していくことになる。

「ノーミングセッション」は、なるべく「Forming(形成期)」「Storming(混乱期)」を短くし「Norming(標準期)」への移行を目指す取り組みだ。

「ノーミングセッション」の肝は、いかにそれぞれのメンバーに自己開示させるかに尽きる。よってプロジェクトキックオフ後、なるべく早い段階で「カジュアルな、本音ベースのコミュニケーションの場」を設けることが多い。

その場では「プロジェクトに賭ける思い」や「自分が得意なこと(頼ってもらいたいこと)」だけでなく「自分の弱点(みんなにフォローしてほしいこと)」なども率直に話してもらい「あえて弱みを見せ合う」ように仕向けるのが効果的だ。

コーポレートブランディングのノーミングセッションを開催する

コーポレートブランディング勉強会を開催する

「コーポレートブランディング」は商品ブランディングと異なり、5年後10年後を見据えた取り組みだ。だとすると、別の見方をすれば「5年10年に1度」の全社的な取り組みとなる。

いわば、日々の「日常業務」では扱わない性質の業務であるため、多くの場合、プロジェクトメンバーは「コーポレートブランディング」の知識やノウハウが乏しいまま参画することになる。

しかし冒頭でも解説した通り、プロジェクトメンバー間で「そもそもの立脚点」や「目的」が揃わなければ、決してプロジェクトの足並みは揃わない。そこでまずは「立脚点」を合わせるために行われるのが「コーポレートブランディング勉強会」だ。

「コーポレートブランディング勉強会」を実施する際のポイントは2つある。

1つはもちろん「コーポレートブランディングとは何か」「コーポレートブランディングの意義とは?」など知識的なことだが、真に重要なのは2つ目のポイントだ。

2つ目のポイントは「このプロジェクトが、前向きな何かにつながっている」という感覚をいかに創り出すかだ。

  • 「このプロジェクトに参加していると勉強になる」
  • 「このプロジェクトで得たことが、自分のスキルとして生かせそう」
  • 「このプロジェクトなら、自社のビジネスや社会をより良く変えるはずだ」

などの実感を持ってもらうことこそが「コーポレートブランディング勉強会」の重要な役割となる。

コーポレート(企業)ブランディングの進め方と全手法-3:コーポレートブランドの現状を把握する

コーポレート(企業)ブランディングの進め方と全手法-3:コーポレートブランドの現状を把握する

続いて、いよいよ本格的にコーポレートブランディングプロジェクトの実務がスタートする。「コーポレートブランドの現状把握」のステップで押さえておきたい手順は下記の通りだ。

  • 既存の社内資料の収集と理解
  • 経営トップへのインタビュー
  • ステークホルダー調査
  • 自社/他社のブランドデザイン関連資料の収集

以下、簡単に解説していこう。

コーポレートブランドの現状を把握する-1:既存の社内資料の収集と理解

まず手始めに行うのは、社内に散在している社内資料の収集と理解だ。一般に、以下の資料を収集することが多い。

  1. 企業関連の資料:
    1-1.会社案内
    1-2.アニュアルレポート
    1-3.ディスクロージャー資料
    1-4.社内報
    1-5.社史
    1-6.プレスクリッピング
    1-7.経営トップの発言録・インタビュー記事等
    1-8.各事業ごとのクレデンシャル資料
  2. 市場:ブランド関連の資料:
    2-1.マーケティング調査資料
    2-2.ブランド調査資料
    2-3.市場動向資料
    2-4.ブランドブック
    2-5.VIマニュアル
    2-6.広告表現等

つい見過ごしがちなことだが、プロジェクトメンバーは各部門から招集されているため、自分が所属する部門については理解していても「企業全体」を俯瞰で捉えていないことが多い。

企業に長く勤めていても、意外と会社の歴史や戦略について理解できていなかったり、誤解していたりするものだ。そのため、非常に優秀で「取引先の資料を熟読するようなタイプ」でも、いざ自社の資料となると「あれ?こんな資料があったんだ」という声を耳にすることがある。

既存資料の収集・整理を通して共有したいのは、あなたの企業に通底している組織文化やDNAだ。経営もブランドも複雑系で、相互に様々な要素が影響を与え合って成立している。そしてその背景を理解するには、独自の思想や視点の読み解きが必要不可欠となる。

冒頭で「立脚点を揃えることが重要だ」と述べたが、このステップはコーポレートアイデンティティを開発する際の「立脚点」となる。

コーポレートブランドの現状を把握する-2:トップマネジメントインタビュー

あなたが所属する企業の「全体像」や、通底する「独自の思想・視点」が得られたら、次に行うのはトップマネジメントへのインタビューだ。トップマネジメントインタビューを行う目的は3つある。

1つ目の目的は、最高意志決定者である経営トップが描いている未来像を理解し、コーポレートブランディングプロジェクトに対する方針と助言を得ることだ。このインタビューで「明示的」あるいは「暗示的」に示された方向性は、コーポレートブランディングを推進するにあたっての貴重なインプットとなる。

しかし現実問題を言えば、経営トップから「明確な方針」を聞けることは、実は稀であることは心得て置きたい。なぜなら、コーポレートブランディングプロジェクトは、経営トップにから見れば「数多くの仕事の一つ」に過ぎないからだ。

そのため、漫然と話を聞きに行っても、一般論に近い漠然とした話で終わってしまい「後から途方に暮れる」という状態が起きやすい。そこで重要となるのが「漠然とした話」を「コーポレートブランディング」の文脈で捉え直し「真意を拾う」ための質問テクニックだ。

経営トップにインタビューする際には、いきなり「コーポレートブランディングはどうしたらいいですか?」と直球で尋ねるのではなく、まずは改めて「全社戦略」を聞くことをお勧めする。全社戦略は、いわば経営トップの本業であり、雄弁に語ってくれるはずだ。

そして経営トップが考える全社戦略を「コーポレートブランディングの文脈」で捉えなおしながら質問を重ねていく。すると徐々に経営トップの頭の中で「コーポレートブランディング」の輪郭がクリアになっていく。

経営トップは、さすがにトップに昇り詰めているだけに勘が鋭く、学習能力が高い。結果、インタビュープロセスの中で方針が明確になっていくはずだ。

続いて2番目の目的は「制約条件」を確認することだ。

コーポレートブランディングのプロジェクトを進めていくと「本当にここまでやっちゃっていいの?」という局面が出てくる。いわば「どの範囲までなら冒険できて」「どの一線を越えたらNGなのか?」という判断がつかなくなる瞬間だ。しかし、あらかじめ経営トップが想定している「制約条件」を理解しておけば、無駄な検討に時間を割かなくてもよくなる。

そして「制約条件」を聞き出す際にも「制約条件は何ですか?」と直球で尋ねるよりは「●●は、会社としてアリですか?」などのクローズドな質問をした方が有意義な解答を引き出せることが多い。

これは逆を言えば、あなたがあらかじめ「きわどいライン」を探り、適切な質問を準備しておかなければならないことを意味する。その際に有益なのが、1つ前のステップである「既存の社内資料の収集と理解」だ。

ぜひ「既存の社内資料の収集と理解」のステップで「自社がやれるギリギリの範囲」を想定し、経営トップを唸らせる質問を用意しておこう。

続いてトップマネジメントインタビューの3つ目の目的は「経営トップのバックアップを取り付ける」ことだ。

コーポレートブランディングは全社的なプロジェクトなのだから「部門をまたぐテーマの調整」や「どの部門にも属さないテーマの調整」などが頻繁に起こる。部門をまたいだり、どの部門にも属さない問題は、最後は経営トップが判断するしかない。

極論を言えば、経営トップはあなたのようなミドルでは調整がつかない困った事態を何とかするためにいるようなものなのだから、積極的に支援をしていただける関係は構築しておきたい。

プロジェクトの初期であるトップマネジメントインタビューの段階で、やりたいことや情熱をわかっていただき意見を聞いておけば、今後困ったときにも相談に行きやすくなる。

そしてうまくインタビューを終えれば、経営トップはそれを機に「コーポレートブランディング」というテーマに対して特別な関心を持って過ごしていただけることになる。

コーポレートブランドの現状を把握する-3:ステークホルダー調査

ステークホルダー調査とは、生活者や従業員、あるいは取引先に対して、定量アンケートやインタビューを行うことだ。

ステークホルダー調査の目的とは、コーポレートブランドの現状について調査し、コーポレートブランドが抱える課題と機会を見出す材料を集めることだ。

さらにステークホルダー調査は、本来の目的である「コーポレートブランドの現状を把握する」だけでなく、プロジェクトを円滑に推進する上での大きな武器にもなる。

「どこが問題なのか?」「何を直せばもっと良くなるのか?」について、単なる勘や憶測ではなく事実をベースに分析することができれば、プロジェクトメンバーの意識統一は図りやすくなる。

さらには、事実に基づいて課題を示せれば「なぜこのプロジェクトをやり遂げなければならないのか?」を周囲に示せることになり、プロジェクトに対する錦の御旗につながる。

加えて、プロジェクトが進捗し施策が具体的になってくると、必ず批判や抵抗をする人が現れる。しかし数値を使って定量的に示す分析を行っておけば、つかみどころがない推測や感情論が入り込む余地を小さくすることができる。

ステークホルダー調査はコーポレートブランディング的にもプロジェクト推進的にも非常に重要なステップとなるので、充分な予算と時間をかけよう。

コーポレートブランドの現状を把握する-4:ブランドデザイン関連資料の収集・整理

このステップで行うのが、あなたの企業や競合他社のデザイン関連資料の収集だ。一般的には「過去数年分の広告」や「WEBサイト」「屋外サイン・看板」などを収集することが多い。

コーポレートブランディングプロジェクトは「企業が存在する社会目的」や「そこに向かう一貫した姿勢」を開発していくことになるが、最終的にはそれらを「デザイン」に象徴させ、目に見えるシンボルに落とし込むプロセスを辿る。

その際に「他社とデザインが似ている」あるいは「他社よりデザインが劣っている」とならないように必要なステップだ。

更に、このステップでよく起きがちなのが以下の2つだ。

  • 競合企業が先にコーポレートブランディングを展開しており、訴求力の違いに圧倒される
  • 競合企業と比べ自社のデザインのデザインポリシーがバラバラで唖然とする

k_birdの経験でいえば、多くのご担当者はこの段階で現実を突き付けられ、本格的に「このままでマズい」と実感することが多いようだ。また、経営トップも「明らかな視覚的な違い」が露呈するため、危機感を持つことが多い。

そしてさらに、このステップはコーポレートブランディングプロジェクトの推進上も、大きな意味を持つ。

繰り返しとなるが、コーポレートブランディングプロジェクトは最終的には「社会目的」や「企業姿勢」を「デザイン」に象徴させ、目に見えるシンボルに落とし込むプロセスを辿る。その際によく起きる現象が「揺り戻し」だ。

多くの従業員は、シンボル変更の必要性を理解してはいても、心情的にはこれまでのシンボルに愛着を感じている。そのため、新たなシンボル案が提示された際には、必ずといっていいほど「果たしてシンボルを新しくする必要があるのか」という意見が出てくる。これが「揺り戻し」現象だ。

しかし、常に「いかにこれまでのシンボルがバラバラだったか」「いかに競合企業より訴求力で劣っているか」を理解しておけば、揺り戻し現象を防止することができる。

さらに、プロジェクトメンバーが1度このステップを体験しておけば、社会目的・企業姿勢などの「概念」と、デザインという「目に見える形」を重ねて理解する思考が身に付き、その後のプロジェクト進行もスムースになる。

コーポレート(企業)ブランディングの進め方と手法-4:コーポレートアイデンティティ(CI)を形創る

コーポレート(企業)ブランディングの進め方と手法-4:コーポレートアイデンティティ(CI)を形創る

「コーポレートブランドの現状把握」を終えたら、次のステップは「企業が存在する社会目的」や「そこに向かう一貫した姿勢」を明確化するステップだ。一般には「コーポレートアイデンティティ(CI)」と呼ばれる。

コーポレートアイデンティティ(CI)を策定するにあたって必要な手順は下記の通りだ。

  • 収集した情報・調査結果の全体分析
  • コーポレートアイデンティティ(CI)の開発

以下、解説しよう。

コーポレートアイデンティティ(CI)を形創る-1:収集した情報・調査結果を全体分析する

これまでのステップを通して、コーポレートアイデンティティを検討する際の情報は出揃っているはずだ。

そしてこれらの情報を元に「企業に対する認識」を多角的に捉え、今後のブランドのあるべき方向性を探るのがこのステップだ。

しかしこのステップでありがちなのが「大量の情報に溺れてしまい、何をどう分析すればいいのかわからなくなる」という状態だ。

もし、プロジェクトチームがこのような「迷子」に陥った際には「そもそも、コーポレートブランディングとは何か?」という原点に立ち戻る習慣をつけておこう。

コーポレート(企業)ブランディングとは何か?

コーポレートブランディングとは「企業が存在する社会目的」や「そこに向かう一貫した姿勢」を示すことで、社会やステークホルダーからの感情移入を促し、味方につける取り組みを指す。

コーポレートブランディングとは、突き詰めれば「社会から必要とされ、社会を味方につけている状態」を創り上げていく取り組みだ。このように「コーポレートブランディングの原点」に立ち戻って考えると全体分析に必要な「分析視点」が見えてくる。

k_birdが必要だと考える「分析視点」は以下の通りだ。

  1. 現在のコーポレートブランドが抱えている課題とは何か?
    1-1.社会(生活者)の視点から見た課題は何か?
    1-2.従業員の視点から見た課題は何か?
    1-3.投資家や取引先の視点から見た課題は何か?
  2. 将来に向けて、コーポレートブランドとして期待されていることは何か?
    2-1.社会(生活者)から期待されていることは何か?
    2-2.従業員から期待されていることは何か?
    2-3.投資家や取引先から期待されていることは何か?

「コーポレートブランディング」に限らず、あらゆる課題解決は「課題の特定」から始まる。なぜなら課題と向き合わない解決策などありえないからだ。

一方で、どのようなビジネス活動も未来に向けてなされる。そうである以上「将来に向けて、どのような期待をされているのか?」も欠かせない視点となる。

プロジェクト実務的にも「課題解決型アプローチ」だけでは、つい「犯人探し」が始まったり「仲間を悪者にしたくない」などの意識から後ろ向きになりがちだ。

しかし「将来への期待」という視点を加えれば「現状課題」も「将来に向けて乗り越えるべきもの」「これから変えていけるもの」と前向きに捉えることが可能になり、議論にも明るさが出てくることが多い。

コーポレートアイデンティティ(CI)を形創る-2:コーポレートアイデンティティ(CI)を開発する

全体分析を終えたら「社会(生活者)」「従業員」「投資家・取引先」の真ん中に位置する「課題」と「期待」が見えてくるはずだ。それらをもとに、ワークショップなどを通してコーポレートアイデンティティを開発していくことになる。

重要なので繰り返すが、コーポレートアイデンティティとは「企業が存在する社会目的」や「そこに向かう一貫した姿勢」を明確にすることだ。その結果、社会から必要とされ、社会を味方につけている状態が最終ゴールとなる。

よって、実現を目指すコーポレートブランドの将来像は「市場」ではなく「社会」に位置づけなければならない。

そして、もしあなたの企業がグローバル企業ないしグローバル化を目指す企業なら「インテグリティ」という概念は理解しておいてほしい。

この「インテグリティ(integrity)」は日本語に訳しずらい概念だが「人としての一貫性」のようなニュアンスの概念だ。いわば「好き嫌いは別にして、公正で一貫した企業姿勢は尊敬に値する」という状態を指す。英英辞典を引くと以下の通りだ。

「インテグリティ(integrity)」とは何か?

the quality of being honest and having strong moral principles
(誠実であるとともに強固な倫理原則を維持できている状態)

多くの日本企業は「好感度」や「親しみやすさ」を重視する傾向にあるが、それをそのまま「コーポレートアイデンティティ」として海外に持ち込むには注意が必要だ。

海外のネイティブから見ると、多くの日本企業が目指す「好感」や「親しみやすさ」は「幼稚」「幼い」という印象を持たれることが多い。日本と異なり、海外のほとんどの国には宗教や信仰があるため、日本企業が目指す「好感度」や「親しみやすさ」は「企業の根本にある哲学」とは程遠い「表層的なイメージ」と感じ取るようだ。

しかし、この解説を通してk_birdが提唱している「ブランドを社会に位置づけ」「ブランドを通して社会をより良く変える」という考え方は、そのままインテグリティ(integrity)という考え方に通じる。

「コーポレートブランドを社会に位置づける」あるいは「インテグリティという考え方を取り入れる」ことは非常に難易度の高い取り組みだが、ぜひチャレンジして欲しい。

コーポレート(企業)ブランディングの進め方と手法-5:ビジュアルアイデンティティ(VI)を形創る

コーポレート(企業)ブランディングの進め方と手法-5:ビジュアルアイデンティティ(VI)を形創る

「コーポレートアイデンティティ(CI)」の開発を終えたら、次のステップは「コーポレートアイデンティティ」を視覚化するステップだ。一般には「ビジュアルアイデンティティ(VI)」と呼ばれる。

「コーポレートアイデンティティ(CI)」とは「企業が存在する社会目的」や「そこに向かう一貫した姿勢」のことであることはすでに述べた。しかしそのままでは「概念」や「考え方」の域に留まるため形がなく、認識や共有がしずらいのが難点だ。

したがって多くのステークホルダーが認識しやすく、共有しやすいように「形」を与えることが必要となるが、その方法論が「ビジュアルアイデンティティ」だ。

人は物事を認識する際に、その90%以上を視覚に頼っているといわれる。従って人の「視覚」を捉えようとする「ビジュアルアイデンティティ」は、人の認識や印象、あるいは記憶への残りやすさを高める上で非常に重要な要素となる。

また、どんなに優れたコーポレートアイデンティティ(CI)も、それを視覚化したビジュアルアイデンティティの質が低ければ、その対象であるコーポレートアイデンティティも「質の低いもの」として認識される。そのため、決して手が抜けないステップだ。

このステップからは、論理性を重視するあなたと、感性を重視するデザイナーとの共同作業が増えることになる。

戦略や、それらを踏まえたコーポレートアイデンティティ(CI)は多分に理屈をベースにした世界だが、ビジュアルアイデンティティは数値化できないイメージの世界だ。そのため感覚的な言葉が多用されるようになり、あなたのチームが戸惑う機会は増えていくはずだ。

しかし「デザインはデザイナーの仕事であって、自分は門外漢だからよくわからない。」などと傍観者に徹するには間違いだ。なぜなら、今からあなたのチームがやろうとしていることは「あなたの企業そのものをデザインする」こと同義だからだ。

ぜひ、デザイナーを「単なる外注業者」として扱わず「ビジネスパートナー」としてひざ詰めの議論をしてほしい。

ビジュアルアイデンティティ(VI)を策定するにあたって必要な手順は下記の通りとなる。

  • ブランドシンボルの開発
  • ブランドシンボルの実用性の検証
  • 商標調査・ネイティブチェック

以下、解説しよう。

ビジュアルアイデンティティ(VI)を形創る-1:ブランドシンボルの開発

一般に、ブランドシンボルとは大きくわけると以下の3つを指す。

  • 企業名+コーポレートタグライン
  • ブランドロゴマーク
  • コーポレートブランドステートメント

1つ目の「企業名+コーポレートタグライン」とは、企業名と企業名とセットで表記する「企業スローガン」のことを指す。

「お口の恋人-ロッテ」や「お、ねだん以上-ニトリ」などが代表事例だ。そして当たり前のことだが「コーポレートブランディングの進め方-4」で開発したコーポレートアイデンティティを端的に言い当てたものでなくてはならない。

そして2つ目の「ブランドロゴマーク」とは、コーポレートアイデンティティを象徴したロゴマークのことを指す。

ブランドロゴマークを開発する際のポイントは「時代を越えて耐えうる飽きられない普遍性」と、マークにしたときの「造形美としての完成度」だ。

ブランドロゴマークの策定はデザイナーとの協働作業となるが、恐らくあなたもチームメンバーも、初めて「新しいブランドロゴマーク案」を見せられた時には、何らかの「違和感」を覚えるはずだ。

なぜならコーポレートブランディングの本質は「未来に向かって変化を創る」ことであり、デザイナーは「未来」を見通して「変化」を創るためにブランドロゴマークをデザインしている。

一方であなたを含むチームメンバーは長い間「これまで使ってきたブランドロゴマーク」に無意識に親しんでおり、愛着すら抱いている。つまり、見ているのは「未来」ではなく「過去」であり「現在」だ。

この「時間軸の視点の違い」「現状維持vs変化という目的の違い」が、最初にブランドロゴマーク案を見たときの「違和感」となりやすい。

逆を言えば、もしあなたやチームメンバーが「違和感を感じない」ブランドロゴマーク案が挙がってきたら「本当に未来に向かって変化を創れるシンボルなのか?」と疑ってみるべきだ。

ビジュアルアイデンティティは「ブランドロゴマーク」そのものの良し悪しだけでは「好き嫌い」の感覚論に陥りやすい。よって、デザイナーとひざ詰めの議論を戦わせながら「コーポレートアイデンティティを視覚化していく流れそのもの」を理解する努力をしよう。

最後に、ブランドシンボルの3つ目は「コーポレートブランドステートメント」だ。

「コーポレートブランドステートメント」とは「コーポレートアイデンティティ」を、その意味合いや文脈がわかるように文章化したものを指す。いわば「企業が存在する社会目的」や「そこに向かう一貫した姿勢」を社会やステークホルダーに宣言するための文章だ。これからコーポレートブランドを形作っていくための「憲法」であり「基本方針」を表した文章といっても良い。

人には「理性」「感性」「感情」の3つがあるといわれる。ブランドシンボルの中でも「人の理性」に関与していくのが「コーポレートスローガン」であり「人の感性」に関与していくのが「ブランドロゴマーク」だ。そして「人の感情」に関与し、共鳴感情を得ていくためには「あなたの企業が存在する社会目的や、そこに向かう一貫した姿勢」を示す「物語」が必要となる。

ここで鋭いあなたならお気づきかもしれないが、コーポレートブランドステートメントとは「社会やステークホルダーからの感情移入を促し、味方につける」ための物語そのものだ。

ビジュアルアイデンティティ(VI)を形創る-1:ブランドシンボルの開発

ビジュアルアイデンティティ(VI)を形創る-2:ブランドシンボルの実用性の検証

ブランドシンボルは、A4用紙で単体で見せられた時は素晴らしく思えたのに「会社案内」や「ホームページ」あるいは「企業の受付空間」に反映させてみたら「いまいちだった」ということがよく起こる。

これらの「実際に反映させたらいまいち」という状態を防ぐために行われるのが「ブランドシンボルの実用性の検証」だ。

ブランドシンボルは、単体として機能するだけでなく、様々な表現物に展開したときの展開性能が求められる。そのため、有望5案程度について「様々な表現物に展開されたときにどう見えるのか?」を検証するため、以下の表現物についてプロトタイプを作成し、検証することが多い。

  • 名刺
  • 会社案内
  • 商品やサービスのパンフレット
  • ホームページデザイン
  • 受付の空間
ビジュアルアイデンティティ(VI)を形創る-3:ネイティブチェック&商標調査

ブランドシンボルの実用性の検証を終えたら、次に行うのが「ネイティブチェック」「商標調査」だ。

ネイティブチェックとは、企業活動を展開している対象国において、ブランドシンボルが「思わぬメッセージ性」を帯びないかどうかをチェックすることを指す。

ブランドシンボルが意図せずに「宗教的」「政治的」あるいは「性的」メッセージを帯びてしまった場合、本来ビジネスの後押しをするはずのコーポレートブランディングが、逆にブレーキ要因となってしまうので、入念なチェックが必要だ。

また、近年重要度を増しているのが商標調査だ。

東京オリンピックのエンブレム問題は記憶に新しいが、商標調査を経ていないブランドシンボルは、思わぬ風評リスクや訴訟リスクにつながる。もし有望なブランドシンボル案が絞られてきたら「必ず」特許事務所(国際企業なら国際特許事務所)」に相談しよう。

コーポレート(企業)ブランディングの進め方と手法-6:コーポレートブランディングの一貫性を保つルールを決める

コーポレート(企業)ブランディングの進め方と手法-6:コーポレートブランディングの一貫性を保つルールを決める

「ブランディングには、一貫性が必要だ」と言われる。しかし、なぜブランディングに一貫性が必要かを、あなたは周囲に説明できるだろうか?

生理学に「パブロフの犬の実験」という有名な実験がある。あなたもどこかで聞いたことがあると思うが、端的に言えば「鐘をならしながら犬に餌を出し続けると、やがてその犬は鐘を鳴らすだけで(たとえ目の前に餌がなくても)唾液を出すようなる」ことが証明された実験だ。

この実験が示すのは「一貫性が強い連想を創る」という重要な示唆だ。

これをコーポレートブランディングに当てはめると「鐘=ビジュアルアイデンティティ(VI)」であり「餌=コーポレートアイデンティティ(BI)」だ。この双方を一貫させることができれば、あなたの企業は「強い連想」を形創ることができるようになる。そして「強い連想」を形創れない限り「あなたの企業の価値」が伝わることはなく「感情移入」がなされることもない。

また「一貫性」は「信頼」を形創る上でも重要な要素となる。なぜなら「信頼」とは「将来への予見可能性」のことであり、将来の予見可能性は「一貫性」が創るからだ。

「企業の信頼性向上」がテーマになったとき、よく話に上るのが「実績」だが、実績が信頼性を創るのは「これだけの実績があるなら、将来も同じような実績を上げてくれるに違いない」という予見可能性を高めるからだ。

一方で、コーポレートブランディングとは「企業が存在する社会目的」や「そこに向かう姿勢」と述べたが、これらを一貫させることもまた「これだけ姿勢が一貫しているのだから、将来も同じような姿勢を貫くに違いない」いう予見可能性を高める。つまり「企業の信頼性向上」につながりやすくなる。

特にベンチャー企業や中小企業など、まだ「実績」が豊富でない場合には「社会目的や姿勢の一貫性」は信頼を形創る上で極めて重要なカギになる。

しかし、企業活動は多くの部門や人材が絡むため、放置しておくと思惑がバラバラになり「遠心力」が働きやすい。それらを防ぐためには「コーポレートブランディングの一貫性を保つためのルール」が必要となる。

コーポレートブランディングの一貫性を保つための手順は、大きくわけて以下の通りだ。

  • ビジュアルアイデンティティのデザインシステムを開発する
  • デザインの適用事例を開発する
  • マニュアル化する(VIマニュアルの開発)

以下、解説しよう。

ビジュアルアイデンティティのデザインシステムを開発する

「システム」というと大げさに聞こえるが、要はブランドロゴ・シンボルカラー・その他のデザイン要素の「使用ルール」や「組み合わせルール」を決めることだ。

デザイン適用事例の開発

「デザイン適用事例」とは、上記の「デザインシステム」を名刺や社封筒などの表現物に落とした場合の「サンプル事例」のことを指す。

ビジュアルアイデンティティは、主に社内外のデザイナーが運用していくことになるが、デザイナー側から見れば「ルール」だけ示されてもイメージがわきにくい。その結果「意訳」がはびこり、ルールから逸脱したデザインが氾濫してしまえば、コーポレートブランディングは有効に機能しなくなる。

よって「デザインシステム」を補完し、わかりやすく示すために15-30程度の「デザインシステム適用サンプル」を作成しておくことが多い。

マニュアル化(VIマニュアルの開発)

最後に、デザインシステムやデザイン適用事例をマニュアルに落とし込むステップだ。

マニュアル化(VIマニュアルの開発)でのポイントは「なぜこのようなブランドシンボルになり、デザインシステムになったのか?」という「コーポレートアイデンティティ」についてしっかり記載しておくことだ。

VIマニュアルの作成は労力を伴うステップだが、その目的は「VIマニュアルを完成させること」ではない。その背景にある思想である「コーポレートアイデンティティ」を1人1人に浸透させることだ。

コーポレートアイデンティティは、目に見えないものだけに希薄化しやすい。そしてビジュアルアイデンティティも、しばらくすると飽きてきて「ここらでちょっと新工夫を」という誘惑にかられやすい。

よってVIマニュアルの初めには「コーポレートアイデンティティ」や「ビジュアルアイデンティティ」に対する経営トップの意気込みやコミットメントが記載されていることが望ましい。いわば「このマニュアルに記載されている内容は、会社が公式に認めているものだから粗末にするな。守らないと容赦しないぞ」という「強面の言葉」くらいがちょうどよい塩梅だ。

コーポレートブランディングとリーダーシップは比例している。ぜひ「VIマニュアルの開発」では、経営トップの強いコミットメントを引き出そう。

コーポレート(企業)ブランディングの進め方と手法-7:インナー(従業員)及びアウター(社会)に浸透させる

コーポレート(企業)ブランディングの進め方と手法-7:インナー(従業員)及びアウター(社会)に浸透させる

突然だが、あなたは「インナーブランディング(インターナルブランディング)とは何か?」と聞かれて、なんと答えるだろうか?k_birdの経験では以下のような答えが返ってくることが多い。

インナーブランディングとは?-よくある答え

インナーブランディングとは、コーポレートアイデンティティやビジュアルアイデンティティを従業員に理解させ、それに基づいた行動をとらせること。

これまでコーポレートブランディングプロジェクトを推進してきたあなたからすれば、多大な労力をかけて創り上げてきたのだから、当然の回答といえる。

しかし大多数の従業員の側からすれば、コーポレートブランディングプロジェクトに直接携わっていない以上「コーポレートブランディングとは何か?」「守ることで何が起こるのか?」がわからず、コーポレートブランディングの意義や期待が希薄なままでいることが多い。

そのような状態の中「コーポレートブランディング」を「やらなければいけないこと」というスタンスで「覚えなさい」「理解しなさい」「基づいて行動しなさい」では効果が限定的で終わることは容易に想像がつくはずだ。

鋭いあなたならもうお気づきのことと思うが、コーポレートブランディングに対する信頼や期待が充分でないうちは「理解させよう」「行動させよう」とする前に、まずはコーポレートブランディングに対して「期待できる」「その方向なら誇りに思える」という状況を作り出す必要がある。

これらを踏まえ、k_birdが考える「インナーブランディングとは?」は以下の通りだ。

インナーブランディングとは?-k_bird

コーポレートブランディングに対する「期待」と「誇り」を生み出し、自発的な気持ちで「目指したい」と思える状態を創ること。

そのためには「理解させる」「行動させる」前に「やりたくなること」として従業員が前向きになれる心理的な素地を創ることが必要になる。

インナーブランディングを展開するにあたって必要な手法は下記の通りとなる。

  • 期待を創る
  • 理解を促す
  • 主体化を促す
  • 職場行動を促す
  • 定着化を促す

以下、解説しよう。

インナーブランディングの手法-1:期待を創る

インナーブランディングの手法-1:期待を創る

まずは社内で強いブランド体験を形創ることで、社内の期待感を醸成するステップだ。このステップで重要となるポイントは2つある。

1つ目は、冒頭でも解説したように「コーポレートブランドを社会に位置づける」という姿勢を貫くことだ。

コーポレートブランドを社会に位置づけることができれば、従業員はあなたの企業がどのように社会をより良い場所に変えていくのか、一貫したストーリーを理解するようになる。

加えて、自分達が働いている企業の「社会目的」や「それに向かった一貫した姿勢」に誇りを感じるようになる。

自分がしている仕事が例え「コピー取り」であっても、それが「社会をより良く変えることにつながっている」と信じることができれば、一つ一つの仕事は今よりも意義あるものに変わる。

ビジネスの世界では、ともすれば「数値」や「ロジック」が優先しがちだが、本当に人を動かすのは「使命」と「連帯」であることを認識しておこう。

続いて重要なポイントの2つ目は「社内で期待を創るための、ちょっとした演出の工夫」だ。

k_birdがこれまで手掛けた中で、印象深い事例がある。

その企業はこれまで、社内報や社内ポスター、あるいは社内イントラネットなど、それなりのコストと労力をかけてインナーブランディングを実践してきたが、結果は芳しいものではなかった。

しかし、社員食堂で使われる紙ナプキンや、飲料自販機の紙コップにデザインを施しコーポレートブランディングのメッセージを発信したところ社内で大きな話題となり、一週間も経たないうちに管轄部門に激励の言葉が殺到した。

普段は全く気を留めない「紙ナプキン」や「紙コップ」だが、そこにいきなりブランドメッセージが現れるという「ブランド体験」をしたことが、大きく話題化した理由だ、

インナーブランディングとなると、その手法は通り一辺倒になりがちだが「ちょっとした演出の工夫」が大きな成果をもたらす場合があるので、ぜひ知恵を絞ってみて欲しい。

インナーブランディングの手法-2:理解を促す

インナーブランディングの手法-2:理解を促す

続いて「理解を促す」ステップだ。このステップで行う代表的な手法が、ブランドバイブルの作成と配布だ。

ブランドバイブルとは、あなたの企業が掲げる「ブランドライフビジョン」「ブランドアイデンティティ」が記載され、従業員としての価値観や誇り、あるいは連帯を表現したものだ。

いわば「もうちょっと頑張ってみよう」と自分を鼓舞したいとき、あるいは従業員としての誇りと連帯感を再確認したいとき、さらには、自社の従業員らしい判断や振る舞いを再確認したいときに、常に立ち返ることができるバイブルとしての位置づけだ。

あなたの企業は、コーポレートブランドを通して、どのように社会をより良い場所に変えていくのか。ぜひ、その一貫したストーリーを描こう。

インナーブランディングの手法-3:主体化を促す

インナーブランディングの手法-3:主体化を促す

「1.期待を創る」「2.理解を促す」は、いわばコーポレートブランディングプロジェクト側からの一方的な発信だ。しかし次に行う「3.主体化を促す」のステップは、コーポレートブランディングに対して従業員からの主体的な参加を促すステップとなる。

具体的には「ブランドバイブル」配布後に、従業員参加型のインナーブランディングキャンペーンを行うことが多い。キャンペーンへの参加を通して「コーポレートブランディング」へのさらなる理解を促し、自分事化を促すことが目的だ。

事例を挙げればコーポレートブランドが掲げたブランドアイデンティティを反映した「個人スローガンの募集」や「部門スローガンの募集」あるいは従業員を鼓舞する「格言の募集」などが典型だ。

更に「審査委員長に経営トップを据える」「部門間の競争意識を利用する」などの工夫を取り入れることが多い。

インナーブランディングの手法-4:職場行動を促す

インナーブランディングの手法-4:職場行動を促す

主体化や自分事化が促進できたら、次に行うのは「職場行動を促す」ためのステップだ。その手法は「ブランド研修」と「ブランド報奨制度」の2つにわけることができる。

「ブランド研修」とは、主に管理職に対して「コーポレートブランディングを職場行動に落としていく手法」を考えてもらうワークショップ型の研修を指す。

  • コーポレートブランディングを各部署の役割と目標に落としていくには?
  • 担当する部署が実施すべきコーポレートブランディング貢献施策とは?

などをワークショップ形式で考えてもらうことが多い。

さらにブランド報奨制度では、職場の上司が四半期に一回、コーポレートアイデンティティを象徴する行動をとった部下を表彰する仕組みなどが典型だ。

この仕組みの利点は以下の通りだ。

  • そもそも職場の上司は「コーポレートブランディング」を理解できていない限り、表彰する部下を選べない。よって、上司は「コーポレートブランドが目指していることは何か?」を理解するために、自発的に「ブランドバイブル」を読み込むことになる
  • 部下の側も、表彰を通して「どのような行動が、コーポレートブランドに貢献する行動なのか?」がわかるようになり、自発的に「ブランド貢献行動」をとるようになる
インナーブランディングの手法-5:定着化を促す

インナーブランディングの手法-5:定着化を促す

最後は「ブランド行動」の定着化を促すステップだ。

もし、目標管理制度に「コーポレートブランドへの貢献行動」がセットできれば、一人ひとりの「コーポレートブランディングへの貢献」と「評価」が直結し、コーポレートブランディングのための職場行動は定着に向かう。

目標管理制度や評価制度への組み込みは人事部も絡むためハードルは高いが、ぜひチャレンジしてほしい。

企業ブランディングの事例

企業ブランディングの事例-1:ヤンマーの企業事例

あなたは「ヤンマー」と聞いて、どのような印象を思い浮かべるだろうか?

もしあなたが40代以上なら「ヤン坊・マー坊」のテレビCMを思い浮かべた方も多いはずだ。「ヤン坊・マー坊」のテレビCMは1959年以来放映されていた天気予報CMであり、その歴史は50年以上になる。

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1912年に創業したヤンマーは、世界で初めてディーゼルエンジンの小型・実用化に成功した企業だ。以降100年にわたって「農家の方たちを楽にしてさしあげたい」という創業者の思いのもと、田植機・コンバイン・トラクターなど、様々な稲作用農業機械を開発し提供している。

農家に対して稲作用農業機械を提供するヤンマーにとって「明日の天気」が重要な関心ごとである農業従事者に対して天気予報CMを流すことは、一定の合理性があったといえる。

しかしそんな「ヤン坊・マー坊」のテレビCMだが、2014年3月31日、ヤンマーはその歴史に幕を閉じる決断を下す。そして並行して立ち上げたのが「ヤンマープレミアムブランドプロジェクト」だ。

100年もの間、最先端の技術に農業に貢献してきたヤンマーだが、現在では農業だけでなくマリンインダストリー、建設機械、さらにはエネルギーへと広がっている。

これらを踏まえて、次の100年を見据えたコーポレートブランディングプロジェクトが「ヤンマープレミアムブランドプロジェクト」だ。

コーポレートブランディングプロジェクトの舵取り役にクリエイティブディレクターの佐藤可士和氏を迎え、掲げられたブランドステートメントは「A SUSTAINABLE FUTURE ─テクノロジーで、新しい豊かさへ。─」。最大の豊かさを最小の資源で実現し、次の100年に向けて持続可能な資源循環型社会の実現を目指すという「ブランドの約束」だ。

ビジュアルアイデンティティは「FLYING-Y」に統一。これは豊作の象徴であるトンボの王様「オニヤンマ」から派生する社名の由来にもなっている「羽」のモチーフに、次の100年へと飛躍するブランドの意志を反映。革新とモノづくりへの情熱をコーポレートカラーの赤で表現している。

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さらヤンマーの事例の秀逸な点は、コーポレートブランディングを商品ブランディングにまで落とし込むことで徹底的に一貫性にこだわったことだ。

庶民的なイメージの強かった同社を「エルメスのような会社」に変えるべく、ヤンマーの重要な商品のプロダクトデザインを、かつてフェラーリやマセラッティなどのデザインを手掛けた奥山清行を起用。さらに農作業のためのウエアデザインは、イッセイミヤケのデザインを手掛けた経験のある滝沢直己氏を起用している。

さらに2016年3月には、ヤンマーの新ブランドステートメントを伝えるテレビCMや新聞広告を集中的に投下することで、ヤンマーは確実にイメージを変えつつある。

事実「ヤンマーさん本当に変わったね!」など、新規・既存顧客を問わず、社外から多くのポジティブな反応が得られ、社内においても会社の求心力は確実に上がってきているという。

ヤンマーの事例は「ブランドアイデンティティ」「ビジュアルアイデンティティ」「商品ブランディング」を一貫させることでコーポレートブランディングを成功させた秀逸な事例だ。

企業ブランディングの事例-2:ジョンソンエンドジョンソンの企業事例

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企業ブランディングは、プロジェクトが終了したら終わりではない。「ブランドマネジメント」という言葉があるように、プロジェクト終了後も一貫した姿勢を取り続けることができるかどうかが、強いブランドになれるかどうかの分水嶺となる。

ジョンソンエンドジョンソンは、消費者向け製品、医療機器・診断薬、医薬品の3つの事業分野を通じて業績を伸ばしてきたヘルスケアカンパニーだ。日本で事業活動を開始したのは1961年のことだ。

ジョンソンエンドジョンソンといえば有名なのが、ブランドのミッション・行動指針ともなっている「我が信条(Our Credo)」だ。

ジョンソンエンドジョンソンの「我が信条(Our Credo)」には、有名な逸話がある。

1982年9月と86年2月、ジョンソンエンドジョンソンの主力製品である鎮痛剤「タイレノール」に何者かが青酸化合物を混入したことにより、死亡事件へと発展する。

ジョンソンエンドジョンソン自身も被害者としてふるまうことが可能な状況であるにもかかわらず「我が信条(Our Credo)」において最優先とされる顧客の安全を第一と考え、必要な情報は全て開示し十分な対応体制を整備した上で、現役の従業員はもちろん、退職した元従業員の協力も得て、全ての製品を店舗から回収した。

その勇気と行動は今なお高い評価を受け、当時ジョンソンエンドジョンソンの経営トップが拠りどころとした「我が信条(Our Credo)」は今でも従業員に信奉され続けている。

企業ブランド(コーポレートブランド)は、経営者の意思決定や組織風土・価値観が色濃く反映される。そのため、欧米の卓越したブランドカンパニーは前述したように「インテグリティ」という概念を掲げ、インテグリティに則した企業行動を重視していることが多い。

「インテグリティ」とは日本語では「高潔さ」と訳されることが多いが、そのニュアンスは英語で理解したほうがわかりやすい。

Integrity=

the quality of being honest and strong about what you believe to be right.

(自分達が正しいと信じている事柄について正直であり、強くあること)

「インテグリティ」とは、企業ブランド(コーポレートブランド)として公正さや誠実さ、あるいは社会的使命に則して一貫した姿勢や行動を取り続けることだ。

そのためジョンソンエンドジョンソンでは「我が信条」の浸透に莫大な時間とエネルギーを費やしている。

その代表例が「クレドサーベイ」だ。これは全世界のジョンソンエンドジョンソングループで年に1回、無記名で行われる「我が信条」の実践に関する調査だ。

多くの企業で「従業員満足度調査」や「インナーブランディング調査」は行われているが「クレドサーベイ」が秀逸なのは「全社員がリーダー層を評価する」調査である点だ。

クレドサーベイは、ジョンソンエンドジョンソングループのマネジメントやリーダーが「我が信条」の価値観をどれだけ実践しているかについて、全社員の認識を調査する。

さらに、クレドサーベイの集計を外部の事業者に委託することで客観性や公平性を保ちつつ、結果は各部門にフィードバックされる。これを受け、各部門は課題を発見したうえで、アクションプランを策定・実施し、改善を図っていくのだ。

インテグリティを伴った行動は、信頼や敬意という感情移入を生みだす。

ジョンソンエンドジョンソンの企業ブランディング事例は「我が信条(Our Credo)」という「インテグリティ」によって成功したブランディング事例と言えるだろう。

ブランドコンサルティング会社が執筆するコーポレートブランディング本一覧

最後に、ブランドコンサルティングを提供している企業の本を紹介しよう。

冒頭でもお伝えした通り、コーポレートブランディングは5年10年に一度の取り組みとなるため、社内にノウハウが残っていないことが多い。

一方で、この解説を最後までお読み頂いたあなたならお分かりだと思うが、コーポレートブランディングには「優れたコーポレートブランディングを形創るノウハウ」と「コーポレートブランディングプロジェクトを円滑に推進するためのノウハウ」の2つが存在する。

もし「自前でやり切るのは難しそうだ」と感じたなら、ぜひブランドコンサルティング会社の起用を検討しよう。

今回紹介する書籍は、どれも実績のあるブランドコンサルティング会社が執筆している書籍だ。そのため、それぞれのブランドコンサルティング会社の「考え方」や「ノウハウ」が理解できるはずだ。

もしあなたが「より深くコーポレートブランディングのことを知りたい」あるいは「主要なブランドコンサルティング会社の特徴や考え方が知りたい」と考えるなら、一読をお薦めする。

1.ブランディング 7つの原則【改訂版】 成長企業の世界標準ノウハウ:インターブランド社

本書は「世界のブランド価値ランキング」でも名高いグローバルブランディングファームである、インターブランド社による書籍だ。

ブランディングに長けているといわれるグローバルブランドは、いったいどのようなフレームワークでブランディングの支援を行っているのだろうか?

本書は「グローバルブランドは何を重視しているのか?」「BtoB企業のブランディング成功の秘訣は何か?」など、グローバルで活躍するブランディングファームのリアルなノウハウが解き明かされている。

「ブランド力分析の10指標」や「ブランドガイドラインで網羅すべき内容一覧」など、実務的なフレームワークも豊富に記載されているため、ブランディングを一から検討する際の手引としても大いに役立つはずだ。

さらに、ブランド価値を金額価値として評価する方法論にも触れられており、ブランディングROI を考える上で参考にできる点も多い。

本書は、世界レベルで活躍するグローバルブランディングファームの視点を伺い知ることができる良書だ。

2.奈落の底からはい上がるブランド再生ストーリー:ブラビスインターナショナル社

ブランディングに関する多くの知識を蓄えたところで、具体的な実戦手順がわからなければ躓いてしまう。

本書は、架空の生活用品メーカー「クリンビュー」の窮地から物語が始まり、ストーリー仕立てでブランディングのステップが展開されていく。そのためブランド理論だけでなく「実践局面」での方法論が、リアリティを伴ってイメージしやすいのが特徴だ。

本書の著者は、世界的ブランドデザイン会社である「ランドー・アソシエイツ」を経て、日本で「ブラビス・インターナショナル」を立ち上げたフミ・ササダ氏だ。
「明治ブルガリアヨーグルト」「キリン氷結」などブラビス・インターナショナルが手掛けたヒット商品は数多い。

フミ・ササダ氏本人が「ビジネス本としては面白く、小説としては勉強になりすぎる本を目指した」と語っている通り、楽しみながらブランディングを学べる一冊だ。

3.選ばれ続ける必然 誰でもできる「ブランディング」のはじめ方:トッパンブランドコンサルティング

あなたは、自社のコーポレートブランディングが、うまくいっていると言い切れるだろうか?

本書はブランドコンサルティングの第一人者が、ブランドを通した「選ばれ続ける会社の作り方」を、その手順も含めて解説したコーポレートブランディングの書籍だ。

「コーポレートブランディング」は、つい企業ロゴやスローガンに視点が向きがちだが、その結果「何を伝えるべきか」「伝えたいことは何か」がおろそかになりがちだ。

しかし、本書を読めば企業理念・ビジョン策定など「何を伝えるべきか」「伝えたいことは何か」などの重要性を改めて再認識させてくれる。

さらに、それらを構築していく手順についても、一通り学べる一冊だ。

このブログから書籍化した本4冊

ブランディングの理論と実践をつなぐ「ブランディングの教科書」

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冒頭でも紹介したが、再度こちらでも紹介させていただこう。

ブランディングは、ややもすれば「デザインの話」「広告の話」「世界観の話」など、掴みどころのない抽象論に陥りがちだ。

しかしブランディングは「ブランド戦略」という言葉があるように、企業の成否を大きく左右する戦略のひとつだ。そして投資が伴う以上、一定の合理性と説明責任が求められる。決して、売上や利益から逃げてはならないのだ。

本書は、つい「感覚論」に陥りがちな「ブランディング」に対して「論理的な納得性」と「直感的な腹落ち感」の両面を追求した書籍だ。

「論理」が理解できなければ、ブランディングを体系的に理解することできず、再現性を生むことができない。

そして「直感的な腹落ち感」がなければ、ブランディングを実務に落とせず、成果をもたらすことができない。

本書は、広告代理店&外資系コンサルティングファームで培った「生の知見」と「体系的な解説」を通して、ブランディングの理論を実践へとつなげて解説している。

おかげさまで、本書はAmazon kindle売れ筋ランキング「消費者主義」ジャンルでベストセラー1位を獲得し、Amazonレビューでも、

  • 「ふわっとしたブランディングの本が多い中で、異彩を放っている」
  • 「事例も多いので実践のイメージが湧きやすい」
  • 「海外企業の事例ばかりが紹介されている輸入本だとピンとこない、という方にお薦め」

など、ありがたい言葉を頂いている。

もし本書を手にとって頂ければ、ブランディングの専門用語はもちろん、実践の手順や実務の勘所が、一通り学べるはずだ。

kindle Unlimitedを契約されている方は無償で手に入れることができるので、気軽に手に取っていただきたい。

シャープな仮説を生み出す頭の使い方」を徹底解説

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あらゆるビジネスは「仮説」こそが成否を握る。

なぜなら、仮説を生み出せなければ次の一手を見出しようがなく、検証のしようもなくなるからだ。つまり、ビジネスの成長は止まってしまうことになる。

しかし仮説思考の書籍の多くは、仮説思考のメリットは説くものの、肝心の「仮説思考のマスターの仕方」になると、

  • 「センスが必要」
  • 「経験の積み重ねが物を言う」

など「それを言ったらお終いよ」という結論で終わらせているものが多い。

一方で、本書は「仮説思考に必要な推論の手順」を、豊富な事例とともに解説している。よって、その手順通りに推論を重ねれば「センス」や「長年の経験」に頼ることなく、誰でも優れた仮説を導き出せるようになる。

おかげさまで本書は5版を重ね「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」にノミネートいただいた。NewsPicksやNIKKEI STYLE、lifehackerなど多くのメディアで取り上げていただき、中国や台湾、香港でも出版が決定している。

さらにAmazonレビューでも、

  • 「ここ数年の仮説思考系の書籍で久々のヒット」
  • 「自分オリジナルの武器にしていけそうな良書」
  • 「一生もののスキルになるのは間違いない」

など有難い言葉を頂戴しており、5刷を重ねている。

もしあなたがシャープな仮説を導き出せるようになりたいなら、ぜひ本書を手にとってみて欲しい。

ロジカルシンキングでは学べない「視点力」と「法則力」を身につける※無料のオーディオブック特典付

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例え同じ本を読んだとしても、そこから得られる「学びの量」は、人によって何倍も変わる。そして、人は学びを通してしか成長できない以上、その差はやがて、あなたの職業人生すら大きく変えてしまうことになる。

同じ本を読んでいるはずなのに、人によって「得られる学びの量」が何倍も変わってしまう。この差は、いったい何から生まれるのだろうか?

それは、1冊の本から「知識」を得ようとするか「知識の"運用能力"」を得ようとするかの差だ。

多くの読書術の本は「多読」「速読」など「いかに効率的に知識を得るか?」をテーマにしている。しかし、どんなに効率的に知識を得たとしても、ただそれだけでは「知識の暗記」止まりになる。得られる学びはごくわずかだ。

一方で、読書を通して「知識の"運用能力"」を身につけることができれば「たった1つの知識」を複数の分野に応用し、何倍もの成果を生み出すことが可能になる。

本書「読書の方程式」は、ビジネス書を通して「どう知識の"運用能力"を身につけるか?」を解説した書籍だ。そのポイントは、ビジネス書から学び取る「視点」「法則」そして「抽象化」にある。

おかげさまで、本書は日経やThe21、STUDY HACKERなど多くのメディアに取り上げていただき、発売3か月で海外の翻訳出版も決定した。Amazonレビューでも、

  • 「こんな風に自分を成長させる読み方があったのか!」
  • 「読書術の本では、これまでで最も良い本」
  • 「読書の概念が変わった」

など、ありがたい言葉を頂戴している。

もしあなたが「知識の"運用能力"」を身につけ、1つの事実から得られる「学びの量」を何倍にもしたいなら、ぜひ本書で紹介する読書法を実践して欲しい。

※無料のオーディオブック特典付

8ジャンル57個の仕事術で「実践力」を身につける

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どのようなビジネスも、実践が伴わなければ成果は出ない。しかし、いざ「実践力」を身につけようとしても、その分野は、

  1. 時間管理術
  2. 段取り術
  3. コミュニケーション術
  4. 資料作成術
  5. 会議術
  6. 学び術
  7. 思考術
  8. 発想術

など多分野に渡り、最低8冊分の読書時間と書籍代がかかってしまうのが難点だ。

しかし、本書「超効率ハック」は、8つの分野の仕事術の「重要ポイントだけ」を抜き出し、ギュッと1冊に凝縮した書籍だ。

さらに、本書は「訓練や習慣化が必要な作業テクニック」ではなく「行動を変えるための頭の使い方」の解説に力を入れているため「頭のスイッチを切り替える」だけですぐに実践できるのも特色だ。

おかげさまで、本書を題材にしたSchooのオンライン授業では「思考法ジャンル」で人気ランキング1位を頂いた(139講座中)。また、lifehackerやOggiなど数多くのメディアで取り上げていただき、Kindleでは「オペレーションズ部門」でベストセラー1位を獲得している。

Amazonレビューでも、

  • 「思考と行動の質を上げるヒントが盛りだくさん」
  • 「読んでみると、頑張りどころを間違えてたことに気付かされる」
  • 「仕事が速い人はこれをやってたんだな、ということがよくわかった」

など、ありがたい言葉を頂戴しており嬉しい限りだ。

もしあなたが「短時間で網羅的に仕事術を学びたい」「根本から仕事の生産性を高めたい」と感じているのなら、ぜひ手に取ってみて欲しい。

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終わりに

今後も、折に触れて「ロジカルで、かつ、直感的にわかる解説」を続けていくつもりだ。 

しかし多忙につき、このブログは不定期の更新となる。

それでも、このブログに主旨に共感し、何かしらのヒントを得たいと思ってもらえるなら、ぜひこのブログに読者登録Twitterfacebook登録をしてほしい。

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