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ブランドアイデンティティとは?ソーシャル時代の【BI事例】を徹底解説

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あなたは「ブランディング」に対して、以下のような認識を持ってはいないだろうか?

  • 「良い製品を作ってさえいれば、それらの製品はおのずとブランドに育つはず」
  • 「ブランドとは、ちゃんとしたマーケティング活動を続けていれば、自然に形作られていくもの」

特に歴史の長い日本企業の間には、上記のような誤解をしているマーケティング担当者は多い。共通しているのは「ブランドが確立できるかどうかは、様々な努力を経た上での結果論にすぎない」という暗黙の了解だ。

もちろん「良い製品を作ること」「適切なマーケティング活動を行うこと」は重要であることは論を待たない。しかしそれらはブランディングの必要条件ではあっても、十分条件ではない。

これまで多くのマーケティング担当者が学んできたであろうマーケティング理論は、市場セグメンテーションを行った後、ターゲットを決め、適切なポジショニングを考えた上で、4P(マーケティングミックス)に展開する、というプロセスを辿る。

しかしブランド戦略に長けた欧米の企業では「ブランディング」はマーケティングの上位に位置付けられ、マーケティング活動そのものを規定するための「上位戦略」とされる。

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安易な欧米礼賛は慎むべきだが、一般に日本の企業は欧米トップレベル企業に比べてブランディングが弱いとされる。その理由は「ブランディング」が戦略論として位置付けられておらず「マーケティング活動の結果として自然に生まれるもの」と誤解されているからだ。

もしブランディングが「単なる結果論」なら、そもそも「ブランド論」や「ブランド戦略」あるいは「ブランドマネジメント」などの概念は存在しえない。そのことを、冒頭のマーケティング担当者は誤解している。

しかし一方で、「モノづくり」や「マーケティング理論」に慣れた日本のマーケティング担当者にとって、ブランディング理論はいまいち抽象的でわかりにくいのも事実だ。

極めて合理的に構築されているマーケティング理論とは異なり、ブランディングの理論には「ブランドアイデンティティ」「ブランドパーソナリティ」「ブランド知覚品質」「ブランドロイヤリティ」など、抽象的な横文字言葉が居並ぶ。

しかし、ブランディングは結果論ではなく「戦略論」であり、強いブランドは成り行き任せでは創れない。洞察と戦略性、そして創造性をもって、戦略的に創り上げていくものだ。

今回の解説では、ブランディングの理論の中でも「最も重要」であるにも関わらず、最も難解である「ブランドアイデンティティ(BI)」について取り上げる。

まず初めに「ブランドアイデンティティの教科書的な定義」を解説した上で、現状の「ブランドアイデンティティ」の欠点を浮き彫りにする。その後に、これからの価値共創時代に求められる新たなブランドアイデンティティの進化形についてk_birdなりの見解を紹介する。

繰り返すが「ブランドアイデンティティ」はブランディングを行っている上で「最も」重要な考え方だ。

もしこの解説を最後までお読みになれば、あなたは「ブランドアイデンティティ」について「周囲に説明できるレベル」で理解できるようになる。そして「ブランディングはマーケティング活動の結果論にすぎない」というあなたの誤解は解けるはずだ。

そしてマーケティングを越えた「ブランドアイデンティティの重要性」や「ブランドアイデンティティの意味」について理解できるようになる。

そしてさらには、今後の価値共創時代に求められる「あるべきブランドアイデンティティの進化形」についても理解が深まる。

その結果、ブランディングに対するあなたの見方は大きく変わるはずだ。そして「ブランドアイデンティティ」をビジネスに組み込むことで、成り行き任せではない「戦略的な」ブランディング活動が実現できるようになるだろう。

 

 

ブランドアイデンティティとは?教科書的な意味と定義

教科書的に言えば、ブランディングの第一歩は、ブランド戦略の基盤となる「ブランドアイデンティティ」を規定することだ。

しかしブランドアイデンティティは、ブランド論の中でも最も抽象的で捉えずらい概念の一つだ。その結果、いまだ多くの企業で浸透しているとはいいがたい状況だ。

よって、まずはブランドアイデンティティを理解するために「ブランドアイデンティティの教科書的な意味と定義」について見てみよう。

アーカー教授によるブランドアイデンティティの定義とは?

以下は、ブランド戦略の大家と言われるD.A.アーカー教授によるブランドアイデンティティの定義だ。

 

「ブランドアイデンティティ」とは、ブランド資産の構築と活用の戦略的主導要因であり、企業などの組織が創造し維持しようとするブランド連想の集合である。この連想は、ブランドが何を表しているかを示し、顧客に与える約束を意味する。

-D.A.アーカー

 

さて、あなたは上記を読んで「ブランドアイデンティティ」を理解し「実務に落とせそうだ」と感じただろうか?

残念ながら、当初k_birdも「さっぱり」だった。しかし深く読み解くうちに「戦略的主導要因」「企業が創造し維持しようとする…」「連想」などの文言から「企業側の意思で創り上げるもの」や「顧客にとって価値ある連想」であることは理解できた。

さらに「約束」という文言から「企業側が一貫して守るべきもの」だということもわかる。しかし、いまいち「ピンとこない」というのが偽らざる実感だ。

実は、ブランドアイデンティティの解説にはさらに続きがある。さっそく見てみよう。

 

「ブランドアイデンティティ」は、送り手である企業側の意図であり、企業側がそのブランドから連想して欲しい願うものであるのに対して、ブランドイメージは受け手である消費者側の認識である。

-D.A.アーカー

 

上記の意味はわかりやすい。ブランドアイデンティティはブランドイメージとは異なり「企業側の意図する連想」であることが説明されている。しかし、あなたも含む多くの実務家にとっての最大の関心は「どんなブランド連想なら、優れたブランディングが実現するのか?」だろう。

ブランドアイデンティティの4つの構成要素:ブランドアイデンティティシステムとは?

D.A.アーカーは、著書の中でブランドアイデンティティの構成要素(ブランドアイデンティティシステム)を解説している。その構成要素をk_birdなりに解説すると、以下の通りとなる。

ブランドアイデンティティの4つの構成要素-1:製品としてのブランド

製品分野、製品属性、品質/価値、用途、ユーザー、原産国などの連想を、ブランドアイデンティティの源泉としているブランドを指す。

事例で言えば、ダイソンが挙げられる。ダイソンは「サイクロンテクノロジー」に代表される「先進的なテクノロジー」という「製品属性」をブランドアイデンティティの源泉としている。

また、高級車メーカーのメルセデス・ベンツは「ドイツのこだわりと伝統」という「原産国」をブランドアイデンティティの源泉としているブランドと見なすことができる。

ブランドアイデンティティの4つの構成要素-2:組織としてのブランド

組織属性をブランドアイデンティティの源泉としているブランドを指す。

事例で言えば、リクルートは「自由闊達な起業家精神」という組織文化をブランドアイデンティティの源泉としているブランドだ。

また、検索エンジンのグーグルは「優秀な頭脳と革新性」という組織文化や人材イメージをブランドアイデンティティの源泉としている。

ブランドアイデンティティの4つの構成要素-3:人としてのブランド

ブランドの利用者のパーソナリティや、ブランドと顧客との関係をブランドアイデンティティの源泉としているブランドのことを指す。

事例で言えば、ハーレーダビッドソンは「一匹狼の生き様に憧れる人」というオーナーのパーソナリティをブランドアイデンティティの源泉としているブランドだ。

ブランドパーソナリティに関しては、以下の記事で詳しく解説しているので、興味がある方は参照して欲しい。

www.missiondrivenbrand.jp

 

ブランドアイデンティティの4つの構成要素-4:シンボルとしてのブランド

なんらかのビジュアル・イメージとメタファー、ブランドの伝統などをブランドアイデンティティの源泉としているブランドを指す。

事例で言えば、コカ・コーラは「アメリカ文化の象徴」というメタファーをブランドアイデンティティの源泉としているパワーブランドだ。

また、ディズニーも「魔法の国」というメタファーをブランドアイデンティティの源泉とした強いブランドといえるだろう。

しかし読み進めていくと

さらにD.A.アーカー教授による解説を読み進めてみよう。D.A.アーカーは最終的に、ブランドアイデンティティに対して以下のように綴っている。

 

ブランドは、製品としての物理的属性や機能だけでなく、ブランドパーソナリティ、組織連想、シンボル、原産国、ユーザーイメージ、情緒的価値、自己表現価値、顧客との関係性などの多様な意味や価値を含んでいる。

 

-D.A.アーカー

 

k_birdがD.A.アーカー教授の書籍を読んだのは、もうかれこれ10年以上前になる。

今でも鮮明に覚えているが「ブランドは多様な意味や価値を含んでいる」という最後のくだりを読んで、ずいぶんがっかりしたものだ。なぜなら、これまでの文章を要約すると、ブランドアイデンティティの定義とは、以下のようなものになってしまうからだ。

 

ブランドアイデンティティとは、企業側の意図により戦略的に創り上げるブランド連想の集合だ。しかし創り上げるべきブランド連想とは、製品や組織・人・シンボルなどがあるが、結局は「何でもあり」である。

-ブランドアイデンティティに対するk_birdの解釈

 

数々のお叱りを承知の上で曲解したが、このブログをお読みになっているあなたは研究者ではなくマーケティングの実務家のはずだ。そしてマーケティングの実務家であれば、上記の「ブランドアイデンティティの定義」は曖昧でわかりずらく、かつ、ほとんど役に立たないことはわかるはずだ。

抽象的でわかりずらい概念であるにも関わらず、それに輪をかけて「結局は何でもあり」となってしまえば「ブランディングはマーケティング活動の結果論にすぎないのでは?」という誤解につながってしまうのも無理はない。

上記の「ブランドアイデンティティの定義」は、残念ながら多くの欠点が残されている。実務家であるk_birdが感じた問題意識は以下の通りだ。

  1. ブランドアイデンティティが「企業側の意図した連想」だとしたら、企業側はどのような「意図」や「連想」を持つべきなのか?
  2. ブランドアイデンティティは、本当に「企業側の意図」という一方通行で良いのか?
  3. ブランドアイデンティティは、結局のところビジネスの成果にどう直結するのか?

もしあなたが実務家なら、ここまでお読みになって同じような疑問を抱いたはずだ。これらの問題が解けない限り「ブランディングは、しょせんはマーケティングの結果論」という誤解はいつまでも付きまとう。

上記を踏まえて、以降では「価値共創時代に求められるブランドアイデンティティの進化」について解説していこう。

 

ソーシャル時代に必要なブランドアイデンティティと具体例

ブランディングを取り巻く環境の変化

あなたもご存じの通り、ブランディングを取り巻く環境は大きく変化している。まずはk_birdが感じている環境変化について解説しよう。

行き過ぎた利益主義への反省

リーマンショックを機に、持続可能性を無視した市場競争や、株価至上主義を引き起こした資本主義の限界が明らかとなった。

金融危機以降、資本主義の暴走を止められなかったことへの社会的な反省が巻き起こり、今では多くの生活者が「行き過ぎた自由の弊害」を認識し、市場が万能でないことも理解している。

欧米では「経済的利得」より「社会的幸福」を重視する機運が巻き起こり、イギリスではEU離脱、米国ではトランプ現象という形となって大きな社会変化をもたらした。

日本国内でも、ソーシャルメディア上では「営利企業は悪」といった極端な風潮が広がり「利益一辺倒」が透けて見えるブランドは一気に叩かれ、窮地に追い込まれる時代だ。

ブランドは、もはや市場に位置付けるだけでなく、社会にも位置付けることが求められる時代だ。

ソーシャルグッド意識の高まり

近年、SDGsやCSV経営、あるいはマーケティング3.0など「政治・経済・社会の分野を越えて、社会をより良く変える」という考え方が浸透しつつある。

足元を見ても、企業から市民へ力がシフトした結果、持続可能な経済や社会、人間性の尊重がより重視され「社会をより良く変える」ためのソーシャルイノベーションの取り組みは活発化している。

これからのブランディングは、社会課題を見据えて、その解決に最大限の知恵を絞らなければならなくなる。

ソーシャルイノベーションが求められる今日では、顧客志向マーケティングよりもさらに踏み込んだ、社会との共創によるブランディングが求められている。

イノベーションの民主化

現在は、モノや情報、知識はシェアされ、新たな消費の形が次々に生まれている。これまでとは異なり、これからは個人がイノベーションを生み出し、新しい価値を生み出していく時代だ。

メディア環境を見ても、マス広告のカバー範囲は狭くなり、ブランド側は情報を一方的にコントロールできなくなっている。その一方で、手の平の上のおしゃべりがボタン一つでソーシャルメディアに溢れ出し、一夜にして大きな世論を作り出す時代だ。

個人がイノベーションを生み出し、クチコミが重要なブランド接点となりつつある現在では、ブランディングは心理的共感や共鳴によって、生活者を味方につけることが重要となる。

これまでのブランドアイデンティティの限界

ここまで「行き過ぎた利益主義への反省」「ソーシャルグッド意識の高まり」「イノベーションの民主化」を解説してきた。

そして賢明なあなたなら、ここまでお読みになって「従来型のブランドアイデンティティ」が限界に来ていることは、お気づきになったのではないだろうか?

ブランドアイデンティティとは「企業側の意図により戦略的に創り上げるブランド連想の集合」だ。しかし今日では「企業側の意図」でブランドアイデンティティを規定し、一方的に生活者側の「連想」を創り上げる手法は、もはやブランディングとして機能しないばかりか、時に「炎上」という名の反発すら招く。

2010年のGAPのロゴ変更撤回事件は、その象徴的な出来事だ。

TwitterやFacebookを通じたネット上のクチコミで顧客からの抗議が殺到したために、新ロゴ発表のわずか一週間後に変更を撤回し、元のロゴマークに戻した。

GAPの例はソーシャルメディアの時代では社会や生活者の想いを無視した「一方的なブランディング」はもはや通用しなくなっていることを示唆している。

ブランドアイデンティティとは?ソーシャル時代のBIと具体例を解説

ブランド論の世界では、ブランディングをする上で最も重要なのは「ブランドアイデンティティ」だとされる。しかしこれまでのブランドアイデンティティの定義は「企業側の意図により戦略的に創り上げるブランド連想の集合」という、いわば「ブランド側=一方的に決める君主」という思想の上に成り立っている。

企業側から見れば「どのようなブランド連想を創るか?」は重要な関心事ではあるが、生活者側の関心事は「そのブランドは、自分や社会をどうより良く変えてくれるのか?」であり「君主型のブランドアイデンティティ」では、生活者は置き去りになる。

残念ながらこれまでの「君主型のブランドアイデンティティ」は「企業側が目指すゴール」を示していただけで「生活者や社会が目指すゴール」を示していない。

これからの時代、ブランドアイデンティティは「君主型」から「民主型」へシフトしていくべきだ。

社会が変化し、生活者との向き合い方も大きく変化している以上「企業側のゴール」しか示してこなかったこれまでの「君主型ブランドアイデンティティ」を越えて「民主型のブランドアイデンティティ」が必要だ。

ソーシャル時代に求められるブランドアイデンティティと具体例

価値共創時代に必要なブランドアイデンティティとは、企業側が一方的に放つ「君主型のブランドアイデンティティ」ではなく、ブランド、生活者、そして社会が同じゴールを共有できる「民主型のブランドアイデンティティ」だ。

それでは「民主型のブランドアイデンティティ」とは、いったいどのようなものだろうか?まずは理解の助けとして、以下の有名な文章をお読みいただきたい。


私の夢。それはいつの日か国民が立ち上がり「すべての人間は、平等に生まれている。この真実は自明のことだ」と、信念を真に貫くことである。

私の夢。それは、いつかジョージアの赤土の丘で、かつて奴隷と主人の関係にあった者たちの子孫が、互いに同胞として同じ食卓につくことである。

私の夢。それは不正と抑圧という熱にあえぐ不毛の州、ミシシッピーさえも、いつか自由と正義のオアシスに変えることである。

私の夢。それは私の四人の子供たちが暮らすこの国を、将来、肌の色でなく、個性で判断されるような国にすることである。私は今日も夢を抱く…。

-キング牧師

 

ご存知の通り上記の文章は、アフリカ系アメリカ人公民権運動の指導者であるキング牧師の有名なスピーチの一節だ。

この一節を読むだけでも、感覚的につかめ、感情に働きかけるものであることに気づく。さらにここで強調しておきたいのは、キング牧師は「我々はどうなりたいか?」を語っているわけではなく、実現すべき「社会の」姿・イメージを示している点だ。

ブランドと生活者、社会を結びつけるのは「我々はこうなりたい」という企業都合のブランドアイデンティティではなく「我々は何を実現していくべきか」という「社会視点」や「生活者視点」を内包した「民主型のブランドアイデンティティ」だ。

そして社会や生活者に示した「民主型のブランドアイデンティティ」が共感・共鳴されたとき、多くの人たちから感情移入が促され、商品や企業はブランドに変わる。

目指すべき姿を「企業・ブランド側」に置くのではなく「ブランドを通した、より良い社会・ライフスタイル」に置くことができれば、そのゴールは生活者に限らず、多くのステークホルダーとの共有・共創が可能になる。

k_birdは、このような「ターゲットとブランドの両方が望む、社会やライフスタイルの未来像」のことを「ブランドライフビジョン」と呼んでいる。

ブランドライフビジョン

「生活者とブランドの両方が望む、社会やライフスタイルの未来像」

 

「ブランドライフビジョン」という考え方の元では、ブランドは市場に位置付けるだけではなく「社会」にも位置付けることになる。

そうすればブランドと生活者、そして社会が同じゴールを共有し「ブランドを通した、より良い社会・ライフスタイルの実現」に向けて、生活者に限らず、多くのステークホルダーとの共有・共創が可能になる。

以下「ブランドライフビジョン」がもたらす変化について、簡単に示そう。

ブランド・ライフビジョンがもたらす変化-1:ブランドの在り方の変化

ブランディングは、単なる「企業側の目標」ではなく、多くのステークホルダーと共有する「社会目的」になる。そしてこれは、そのブランドの存在理由そのものになる。

ブランドが、生活者や社会に対して「ライフビジョン」を掲げれば、ブランディングの中核をなす価値観や信念が、生活者はもちろんのこと、その企業で働く一人ひとりの大切な価値観を反映したものとなる。その結果、ビジネスの本当の存在目的が明確になる。

例えば、食品メーカーの「ブランドライフビジョン(言い換えれば本当の存在理由)」は「世界で一番たくさん食品を売ること」ではない。

「わが子の健康で幸せな成長を望む母親たちが、何の不満もなく、何の不自由もなく子供に食事をさせられる社会の実現」であり、そんな母親たちに力を与えるためにブランドは存在している。

「ブランドライフビジョン」を広く社会で共有できれば、そのブランドは商品と生活者の壁を越え、社会において果たすべき役割を持ち、生活者からの共鳴感情を引き出すことが可能になる。

ブランド・ライフビジョンがもたらす変化-2:ブランディング(ブランド)戦略の変化

「ブランドライフビジョン」は、突き詰めて考えることで生活者とブランドの両方をより深く理解する助けとなる。

「どういう生活者を最良の見込み客と位置づけるのか?」「その見込み客との間で、ブランドはどのようなライフビジョン・価値観を共有するのか?」ブランドライフビジョンを突き詰めれば、そういった問いに対して、競合ブランドとは異なる独自の答えを導き出せるようになる。

さらに、掲げた「ブランドライフビジョン」がどのように社会や市場を変革し、どのような顧客体験を生み出すかについて、一貫したストーリーを語れるようになる。

結果、ブランドの未来にとって最も重要な人たちを味方につけ、応援されるブランドに変わる。

ブランド・ライフビジョンがもたらす変化-3:ブランドと生活者の関係性の変化

「生活者とブランドの両方が望む、社会やライフスタイルの未来像」であるブランドライフビジョンは、その企業で働く社員はもちろん生活者に至るまで、そのブランドに関わるすべての人々を味方につけ、時に社内外の壁を越えた連帯を生みだす。

そしてブランドに関わる多くの人々に自信を持たせ、自己表現や自己実現を後押しし「ブランドライフビジョン」の実現に向けた情熱を呼び覚ます。

企業は「ブランドライフビジョン」の実現に向けて後押しとなる商品や場を提供し、生活者自身が社会やライフスタイルを変革できるよう背中を押す。

そしていつしかブランドに関わる多くの人々は、ブランドライフビジョンを共創していく自分達(=コミュニティ)に対して誇りを抱くようになる。

ブランド・ライフビジョンがもたらす変化-4:ブランドチームの変化

人は誰でも、自分のためだけに生きるのではなく、もっと大きなものの一部でありたいと思うものだ。

「ブランドライフビジョン」を掲げたブランドに携わる社員達は、生活者や社会とともに、ライフビジョンを実現するという使命に意義と誇りを感じるようになる。

そして、売り上げや利益のためだけでなく「人々の生活をより良く変えるために働いているのだ」と思えれば、仕事は今よりも意義あるものに変わり、もっと多くの知恵を生み出せるようになる。

社員それぞれが互いに勇気づけ、励まし合いながら自ら変革を起こし、自分達の成長を実感できるようになる。

ブランド・ライフビジョンがもたらす変化-5:ビジネス成果の変化

一般にブランドと生活者の関係は「ブランドリレーションシップ」「ブランドロイヤルティ」「ブランドコミットメント」「心理的絆」といった概念を用いて説明される。

しかし「ブランドライフビジョン」の下では、生活者やステークホルダーの積極的な参加を伴う「ブランドエンゲージメント」という関係性が重要となる。

生活者は、その組織が掲げる「ブランドライフビジョン」に共鳴感情を抱き、いつかそのブランドが実現するであろうライフビジョンと自分のライフイメージを重ねながら、そのブランドに期待を抱くようになる。

結果、そのブランドは「世界をよりよい場所に変えようとしている」信頼できるブランドとみなされるようになり、生活者にとってかけがえのない存在になっていく。

その成果は、多くの生活者やステークホルダーが「このブランドだけは特別」と感じる感情移入だ。

そしてその感情移入は、指名買いで売れ続けるロングセラーブランドを形創ってくれるはずだ。

ブランディングによるその他のビジネスメリットについては、以下の解説を参照して欲しい。より理解が深まるはずだ。

www.missiondrivenbrand.jp

 

 ライフビジョン×ブランドアイデンティティの具体例

最後に、これまでの解説を踏まえた、k_bird流の「新・ブランドアイデンティティの定義」を紹介し、それに近いとk_birdが判断した事例をピックアップして締めくくろう。

ブランドアイデンティティ(BI)とは?

「ブランドライフビジョンの実現に向けて、
そのブランドが守るべき一貫した姿勢」

 

ライフビジョン×ブランドアイデンティティの具体例①グーグル
グーグル

世界中のあらゆる情報を整理し、アクセス可能な社会を実現する。
ライフビジョン×ブランドアイデンティティの具体例②アップル
アップル

異端な人たちが、自由に創造性を発揮できる世の中に変える。
ライフビジョン×ブランドアイデンティティの具体例③コカコーラ
コカコーラ

世界中どこにいても、人々が体と心、そして精神をリフレッシュできる
社会を実現する。
ライフビジョン×ブランドアイデンティティの具体例④ユニクロ
ユニクロ

服を変え、常識を変え、貧富の差なく誰もが気軽にカジュアルウェアを
楽しめる環境を創る。
ライフビジョン×ブランドアイデンティティの具体例⑤Dove
Dove

外見に悩むことなく「飾らない素の自分」を誇りに思える社会を創る。

 

ブランドアイデンティティを学ぶおすすめ書籍2冊

最後に、締めくくりとして「ブランドアイデンティティを学ぶおすすめ書籍」を2冊紹介しよう。

ブランド論---無形の差別化を作る20の基本原則

本書は「ブランドアイデンティティ」という概念を初めて提唱したD.A.アーカーによる書籍だ。

D.A.アーカーが著したブランド関連本は過去に4冊存在するが、全てを手に入れようとすると高額になる上で、訳がわかりずらいという批判もあった。

本書は過去の4冊のエッセンスがコンパクトにまとめられている上、訳もこなれている。

「ブランドアイデンティティ」はもちろん、ブランドパーソナリティやブランドエクイティなど、ブランディングに関する様々な概念を一通り頭に入れておくのに適した書籍だ。

本当のブランド理念について語ろう 「志の高さ」を成長に変えた世界のトップ企業50

本書は、元P&Gのグローバル・マーケティング責任者によるブランディングの解説本はだ。

本書は、ブランドを社員の価値観や顧客に向けたストーリーなどを統合した「理念」と、その実現のためのプロセスについて、徹底的に、かつ具体的に語っている。

本書内で描かれていることは、この記事で紹介した「ブランド・ライフビジョン」と非常に近い考え方だ。

もし、新たな時代のブランドアイデンティティをより深く理解するなら、本書は最もおすすめの書籍となる。

終わりに

今回は「ブランドアイデンティティとは?ソーシャル時代のBIと具体例」と題して、ブランドアイデンティティの定義と、その進化形である「ブランドライフビジョン」について解説した。

ここまでお読みいただければ「ブランディングは、適切なマーケティング活動を行った上での結果論」ではないことが、ご理解いただけたのではないだろうか?

強いブランドを形創っていくために重要なことは、マネジメント層やブランドマネージャー、そしてあなた自身が強いブランドライフビジョンやブランドアイデンティティを掲げ、それを信念として信じ、日々の意思決定に活かせるかどうかだ。

守れない信念で策定したブランドライフビジョンやブランドアイデンティティでは、いつか現場はその本音は見抜き、形骸化することになる。

しかし一方で、ブランドを「市場」だけでなく「社会」に位置づけることが重要となりつつ今、生活者の想いに共鳴し、世界をよりよい場所にしようする信頼できるブランドは、大きな競争力になり得る。

日本人は伝統的に「お互いに分かち合う」という価値観を培ってきた。突出した富豪を1人作るよりも、1人の餓死者も出さずに皆で力を合わせ、社会を成立させることができるのが日本の良さだとk_birdは強く思う。

ブランドアイデンティティの真ん中に「ブランドライフビジョン(生活者とブランドの両方が望む、社会やライフスタイルの未来像)」を置く考え方は、互いに信頼し思いやることができる日本の文化とマッチするはずだ。

一方で、企業は営利団体である以上、利益を出し続けない限り存続することはできない。利益とトレードオフに捉えられたブランドアイデンティティは、会社が苦しくなったり利益確保の誘惑にかられた際に、あっさり破られることになる。

だとすると、本当に持続性のあるブランドアイデンティティとは、生活者とゴールを共有するブランドライフビジョンを掲げ、かつ、それを貫いたほうが結果的に利益につながると信じられるブランドアイデンティティだ。

イノベーションとは、何も製品技術の革新だけではなない。個人ですらユーザーイノベーションを起こせる今、ブランドが社会に対してイノベーションをを起こすこともできる。ぜひ、あなたのブランド戦略に、生活者とゴールを共有する「ブランドライフビジョン」を考えを据えてみて欲しい。

それこそが、新たな時代のブランドアイデンティティとなるはずだ。

今回の解説が、あなたのチームのブランディング実務において、有益な示唆となれば幸いだ。

今後も、折に触れて「ロジカルで、かつ、直感的にわかるブランディングの解説」を続けていくつもりだ。( 過去記事と今後の掲載予定はこちら

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