Mission Driven Brand

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ブランディングの戦略家が【ブランド戦略の全て】を解説するブログ

消費者インサイトとは|インサイトを得る方法とインサイト事例

インサイトとは|消費者インサイトの意味と見抜く方法を10事例で解説

このページに辿り着いたあなたなら「消費者インサイトとは何か?」あるいは「消費者インサイトを見抜く方法」について関心があることだろう。

このブログ「Mission Driven Brand」は、外資系コンサルティングと広告代理店のキャリアを持つ筆者が、ブランディングやマーケティングの「できない、わからない」を解決するブログだ。

あなたがマーケティング担当者なら、毎日のように「消費者ニーズ」に想いを馳せているはずだ。ブランディングやマーケティングで最も重要なのが「消費者ニーズの把握」であることに、あなたも異論はないだろう。

しかし一方で、日本ではすでにモノに対する欲求が満たされ「モノ余りの時代」を迎えている。多くの市場は飽和し「品質の向上」や「機能の追加」だけでは生活者の購買意欲を刺激できず、差別化や感情移入は難しくなってきている。

このような厳しい状況の中で求められるのは、生活者自身も自覚していない「思い」を汲み取った上で、ブランディングやマーケティングを展開していくことだ。

マーケティング担当者なら、だれもが新市場を創るような革新的な商品やブランドを生み出したいと願うはずだ。それには「生活者の言葉に表れてこない視点」を読み解き、生活者自身も気づいていない「消費者インサイト」を見極めることが重要となる。

よって、今回は優れたマーケティングには必須となる「消費者インサイト」について解説する。内容は以下の通りだ。

  • 「消費者インサイト」の意味とは?
  • 消費者インサイトとニーズの違いとは?
  • 直感的にわかる10個の消費者インサイト事例
  • 消費者インサイトを得るための方法とは
  • 消費者インサイトを得るために身につけるべき思考法とは

今回の解説を最後までお読みになれば「消費者インサイト」に対するあなたの理解は劇的に深まる。その結果、あなたは「消費者インサイトの意味」や「消費者インサイトを得るための方法」を周囲に説明できるようにもなるはずだ。

「生活者が見えなくなった」

あなたがそう感じているのなら、ぜひ今回の解説をじっくりと読み込んで頂きたい。 

ブランドマーケティングを学びたい方へ。このブログから書籍化した「ブランディングの教科書」

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本論に入る前に、僭越ながら拙著を紹介させていただこう。

「ブランディング」は捉えどころがなく、なかなか一歩を踏み出せない。あなたはこのような状況に陥ってはいないだろうか?

本書の執筆陣は、ある時は広告代理店のストラテジックプランナーとして、ある時は、外資系コンサルティングファームのコンサルタントとして、クライアントの実務担当者が悪戦苦闘する姿を見てきた。

「ブランディング」は、その本質を理解しないまま実行に移そうとすると、的を射ない小手先の手法を延々と繰り出すことになりがちだ。結果、やみくもに予算を消化したまま、成果が出ない事態に陥ってしまう…。

そのような事態を1件でも減らしたい。そう考えたのが本書を執筆した理由だ。

ブランディングの本は、どれも「ブランドのらしさ」「ブランドの世界観」など「ふわっと」した話になりがちだ。そして「ふわっ」とした話になればなるほど抽象的かつ曖昧な概念論になってしまい、企業組織の中で通すことが難しくなる。

本書は、外資系コンサルティングファームと広告会社で培った「生の知見」をふんだんに盛り込みつつ、つい「抽象論」に陥りがちな「ブランディング」に対して「論理的な納得性」と「直感的な腹落ち感」の両面を追求した書籍だ。

もちろん、セグメンテーションやターゲティング、ポジショニングに関しても、事例を交えながら徹底解説している。

「理論」が理解できなければ、ブランディングを体系化できず、ビジネスに再現性を生むことができない。そして「実践」が理解できなければ、ビジネスに成果をもたらすことができない。

本書は、ブランディングの理論と実践をつなぐ「ブランディングの教科書」として、ブランド戦略の再現性と成果を目指した書籍だ。

おかげさまで、本書はAmazon kindle売れ筋ランキング「消費者主義」ジャンルでベストセラー1位を獲得し、Amazonレビューでも、

  • 「ふわっとしたブランディングの本が多い中で、異彩を放っている」
  • 「事例も多いので実践のイメージが湧きやすい」
  • 「海外企業の事例ばかりが紹介されている輸入本だとピンとこない、という方にお薦め」

など、ありがたい言葉を頂いている。

  • クッキー規制によりデジタルマーケティングでCTRやCVRが頭打ち。CPAは下がるどころか、少しずつ上昇傾向ですらある。
  • 矢継ぎ早に新商品を繰り出してもすぐに競合に追い付かれ、差別化ができない。商品開発サイクルは更に早まり、自転車操業状態になっている。
  • 「自社にはブランディングが必要だ」と理解はしているが、概念が抽象的過ぎて、どう周囲を巻き込んでいいかがわからない。

もし、あなたがこれらに当てはまるなら、ぜひAmazonのページで本書の目次をチェックしていただきたい。つい感覚論になりがちな「ブランディング」に対して、

  • なぜ、そうなのか?
  • どう、ビジネスに役立つのか?
  • 何をすればいいのか?
  • 具体的な日本のブランドの事例は?

を徹底して解説しているので、あなたのお役に立てるはずだ。

kindle Unlimitedを契約されている方は無償で手に入れることができるので、気軽に手に取っていただきたい。

消費者インサイトとは?消費者インサイトの意味を定義する

インサイトの辞書的な意味とは

まずは「インサイト」の意味を確認しておこう。インサイトとは、辞書的な意味は以下の通りだ。

 

インサイトとは=


「洞察力」「見抜く力」「眼識」「物事の実態を見抜く力」「見識」

 

様々な言葉が居並ぶが、要するに「インサイト」とは「表面的な事象から、その奥底にある本質を見抜く(=洞察する)」ことを意味する。ブランディングやマーケティングの世界では「消費者インサイト」「コンシューマーインサイト」あるいは「ターゲットインサイト」などとも呼ばれ「生活者の無意識の本音を発見すること」といった意味で語られることが多い。

しかし一方で「無意識の本音を発見する」という文脈こそが、消費者インサイトを巡る多くの誤解を生んでしまっている。

消費者インサイトとは発見するもの?

辞書的な「インサイト」の意味からもわかるように、本来消費者インサイトは「探したり、発見したりする」という受け身の姿勢ではなく、生活者の態度や言動から「主体的に新たな視点を得る(=洞察)」という姿勢が求められる。

よくクライアント担当者から「消費者インサイトを発見するためのユニークなインサイト調査はないですか?」と聞かれることが多いが、消費者インサイトは本来「ユニークなインサイト調査を実施すれば発見できる」という「生活者任せ」ではなく、マーケティング担当者自身が「様々な視点を巡らせながら見出す」という主体的な態度が求められるものだ。

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もちろんインサイト調査に対する様々な工夫は必要不可欠となるが、どのように工夫されたインサイト調査も、結局は「様々な視点を巡らせながら見抜く」ときの「触媒」として機能するに過ぎない。重要なのはマーケティング担当者であるあなた自身の「見出す態度」だ。

消費者インサイトの真の意味とは

これらを踏まえ、k_birdは「消費者インサイト」の意味を以下のように定義している。

「消費者インサイト」の意味とは?

生活者自身が気付いていない「動機に結び付く新たな視点」。
マーケティング担当者自身が洞察し、見抜くべきもの。

もしあなたが「消費者インサイトの意味=無意識の本音の発見」という間違った捉え方をしていたのなら、これを機にその認識を改めよう。

「消費者インサイト」とは「発見するもの」ではなく「あなた自身が主体的に洞察するもの」を指す。そして「無意識の本音」ではなく「生活者自身が自覚していない、動機に結び付く新たな視点」のことだ。

消費者インサイトとニーズの違い

よく「消費者インサイト」と混同されやすい言葉に「ニーズ」がある。あなたは「消費者インサイトとニーズの違い」を周囲に説明できるだろうか?

ニーズとは、あなたもご存じの通り「必要性」のことを指す。端的に言えば「必要だから欲しい」という状態だ。しかし冒頭でも解説した通り「ニーズ」はすでに生活者が自覚しており、リサーチをすれば誰でもすぐに発見できるものだ。

だとすると「ニーズ」はあなただけでなく、あなたの競合ブランドもリサーチを通してすぐに把握できてしまうことになる。そのため、多くのライバルがそのニーズを目がけて施策を展開してくるため、過当競争の消耗戦になりやすい。その結果、競争に生き残れるのは体力のあるリーダーブランドだけだ。

消費者インサイトと潜在ニーズとの違い

「消費者インサイト」と「潜在ニーズ」も、混同されがちな概念だ。

消費者インサイトと潜在ニーズとの違いは、端的に言えばブランディングやマーケティングに対して「役に立つか、立たないか」の違いとなる。

潜在ニーズとは「生活者自身が自覚していない無意識のニーズ」を指すが、必ずしもブランドに向かうとは限らないのが特徴だ。

例を取って解説しよう。

例えば、ガラケー利用者の「スマートフォンに対するニーズ」について考えてみよう。ガラケー利用者は、スマートフォンに対して以下のようなニーズを抱いている。

ガラケー利用者の「スマートフォン」に対するニーズ

「スマートフォンは機能が多すぎて使いづらそう。もっと使いやすくして欲しい」

ここまでお読みになったあなたなら、もう理解できるはずだ。

上記の例はスマートフォンに対して生活者が自覚しているニーズ、つまり「顕在ニーズ」だ。ニーズとしてはっきり見えているものの、スマートフォンメーカーが凌ぎを削って競争しているレッドオーシャンの領域だ。

続いて、ガラケー利用者のスマートフォンに対する「潜在ニーズ」を見てみよう。

ガラケー利用者のスマートフォンに対する潜在ニーズ

スマートフォンは便利すぎて、趣がない気がする。時代の流れはしかたないけど、人としての“感性”や“感受性”が失われていきそう。

ガラケー利用者は「みんなが街中でスマホ画面を見ていると淋しく思う」「誰もが下を向きながら歩いている姿は気持ち悪い」「どんどん人間の個性が無くなっていく感じがして怖い」などの感覚を抱いている。

その奥底にあるのは「スマホに買い替えると、人としての“感性”や“感受性”が失われていきそうで怖い」という潜在心理だ。

しかし、この潜在心理を「発見」できたとして、あなたがスマートフォンメーカーのマーケティング担当者だった場合、何ができるだろうか?

残念ながら上記の例は「生活者自身が自覚していない無意識のニーズ」ではあるが「動機に結び付く新たな視点」が入っていない。

つまり「潜在ニーズ」と「消費者インサイト」の決定的な違いは「ブランドに結び付く視点」が入っているかどうかだ。消費者インサイトは、時に「心のホットボタン」や「購入のスイッチ」と表現されることがあるが、これらは「ブランドに結び付く」ことをより強調した言いまわしに他ならない。

消費者インサイトを得るのであれば「潜在ニーズの発見」に加えて、ブランドに向かう動機に結び付く「新しい視点」がなければならない。

 

 消費者インサイトの10の事例

一般に、消費者インサイトを語る際には「意識上の建前」と「無意識の本音」を比較して語られることが多い。「生活者の建前でなく、無意識の本音を発見しよう」という文脈だ。

しかしここまでお読みになったあなたなら「消費者インサイト=無意識の本音の発見」だけでは足りないことがご理解いただけていることだろう。念のため「無意識の本音」と「消費者インサイト」の関係を整理すると、以下の図のようになる。

 インサイト(消費者インサイト)の10の事例

ここまで「消費者インサイト」について詳しく解説してきたが、マーケティング担当者であるあなたにとってより重要なのは「どうすれば消費者インサイトを得ることができるのか?」という「消費者インサイトを得るための方法論」だ。

重要なので何度も強調するが、消費者インサイトとは「無意識の本音の発見」ではなく「生活者自身が自覚していない、動機に結び付く新たな視点」だ。そして「動機に結び付く新たな視点」を見出す場合に「無意識の本音」と「意識上の建前」という対比で思考を巡らせても「潜在ニーズ」は得られるかもしれないが「消費者インサイト」は得られない。

そこでk_birdがお薦めしているのが「先入観(本音)」→「消費者インサイト(視点)」という思考法だ。

消費者インサイトの事例

「消費者インサイトを得るための思考法」について直感的に理解していただくために、今回「10個の消費者インサイト事例」を画像で用意した。

次々にリスト形式で紹介していくので、10個の消費者インサイト事例をざっと流し読みしていただきたい。「先入観(本音)」→「消費者インサイト(視点)」という思考法を「感覚的に」理解できるはずだ。

消費者インサイトの事例-1:スキンケアブランドの消費者インサイト
消費者インサイトの事例:スキンケアブランド

  • ブランド:スキンケアブランド
  • ターゲット:50代女性
  • 先入観(本音):「女性にとって、歳をとることは、女でなくなるということ」
  • インサイト(視点):女性は歳をとるごとに、むしろ内面は磨かれていく。
  • ブランドからの提案:サクセスフル・エイジング
消費者インサイトの事例-2:サプリメントブランドの消費者インサイト
消費者インサイトの事例:サプリメントブランド

  • ブランド:サプリメント
  • ターゲット:50代男性
  • 先入観(本音):「高齢化社会は、日本経済にとってマイナスだ」
  • インサイト(視点):いつか、自分も高齢者になる
  • ブランドからの提案:私たちは、高齢化社会を日本の誇りに変える
消費者インサイトの事例-3:ビジネススクールの消費者インサイト
消費者インサイトの事例:ビジネススクール

  • ブランド:ビジネススクール
  • ターゲット:30代前半のビジネスパーソン
  • 先入観(本音):「会社の中で高い評価を受ける人材でありたい」
  • インサイト(視点):これからの時代、会社のブランドには頼れない
  • ブランドからの提案:あなた自身がブランドになる
消費者インサイトの事例-4:ジュエリーブランドの消費者インサイト
消費者インサイトの事例:ジュエリーブランド

  • ブランド:ジュエリー
  • ターゲット:50代の専業主婦
  • 先入観(本音):「子育ては、母親である自分の責任だ」
  • インサイト(視点):子育てを終えたら「母」としての役割は終わる
  • ブランドからの提案:子育てを終えたら、あなたは自分らしく自由に輝いていい
消費者インサイトの事例-5:専門学校の消費者インサイト
消費者インサイトの事例:専門学校

  • ブランド:専門学校
  • ターゲット:専門学校に進学を志望する高校生
  • 先入観(本音):「専門学校は、クラスの中でも落ちこぼれが行くところ」
  • インサイト(視点):専門学校と大学は、本来上下の関係じゃない。
  • ブランドからの提案:私たちは、偏差値だけでなくセンスやスキルが認められる社会を創る
消費者インサイトの事例-6:郊外型マンションの消費者インサイト
消費者インサイトの事例:郊外型マンション

  • ブランド:郊外型マンション
  • ターゲット:20代後半の夫婦と子供
  • 先入観(本音):「マンションを買うなら、都心に近い便利な場所を選びたい」
  • インサイト(視点):住む場所を選ぶことは、自分の子供の故郷を選ぶこと
  • ブランドからの提案:自然が多い環境を選ぼう
消費者インサイトの事例-7:オーガニックスキンケアの消費者インサイト
消費者インサイトの事例:オーガニックスキンケア

  • ブランド:オーガニックスキンケア
  • ターゲット:40代女性
  • 先入観(本音):「もっと高機能で高価なスキンケアが欲しい」
  • インサイト(視点):肌の衰えとエイジングケアは、結局はラットレース
  • ブランドからの提案:素の自分でいることこそが、最も美しい
消費者インサイトの事例-8:合わせ調味料の消費者インサイト
消費者インサイトの事例:合わせ調味料

  • ブランド:合わせ調味料
  • ターゲット:主婦
  • 先入観(本音):「毎日の料理の支度はめんどう」
  • インサイト(視点):面倒なのは、実は食事後の皿洗い
  • ブランドからの提案:この合わせ調味料なら、大皿料理が作れて洗い物が減る
消費者インサイトの事例-9:即席ラーメンの消費者インサイト
消費者インサイトの事例:即席ラーメン

  • ブランド:即席ラーメン
  • ターゲット:主婦
  • 先入観(本音):「即席ラーメンを家族に出す私は、手抜きをしている悪い妻」
  • インサイト(視点):大切なのは「手抜きかどうか」ではなく「家族が喜ぶかどうか」
  • ブランドからの提案:あなたの家族が喜んでくれる即席ラーメン
消費者インサイトの事例-10:旅行商品の消費者インサイト
消費者インサイトの事例:旅行商品

  • ブランド:旅行商品
  • ターゲット:失恋中の若い女性
  • 先入観(本音):「失恋すると、自分の何もかもがいやになる」
  • インサイト(視点):過去をリセットすれば、人は変われる
  • ブランドからの提案:旅に出て、過去の自分をリセットしよう

いかがだっただろうか?

ここまでお読みになれば「消費者インサイト」とは生活者の意識や行動を深く掘り下げ、ターゲットが自覚していない「動機に結び付く新たな視点を見出すこと」だということが、感覚的にもご理解いただけたのではないだろうか?

そして「消費者インサイトはインサイト調査を通して発見するもの」という受け身の姿勢ではなく「主体的に新たな視点を探り、見出す」という態度が必要であることもまた、ご理解いただけたはずだ。

加えて「先入観(本音)→消費者インサイト(視点)」というフレームで思考を巡らせれば、時に「生活者の先入観を根底からひっくり返す新たな視点(=消費者インサイト)」が得られることも、ご理解いただけたと思う。

消費者インサイトを得る方法

ここまで「消費者インサイトとは何か?」及び「消費者インサイトを見抜くための思考法」について解説してきたが、続いて重要となるのが「消費者インサイトを得るための方法」だ。

消費者インサイトを得るためには、大きくわけて以下のステップが必要となる。

  1. 生活者の本音(先入観)を特定する
  2. 生活者の本音(先入観)に対して思考を巡らす

それぞれ解説しよう。

消費者インサイトを得る方法-1:生活者の本音(先入観)を特定する

ブランディングやマーケティングの世界では、消費者インサイトを得るために有用なのは「定性調査」であるといわれる。もしあなたがマーケティング担当者なら、日々フォーカスグループインタビューやデプスインタビューを行っているはずだ。

しかし一方で、ただ漫然とフォーカスグループインタビューやデプスインタビューを行ったとしても、調査対象者は簡単には本音を明かさない。あなたも「なんとなく」や「隣の人と同じです」という発言に、何度も泣かされた経験がお有りだろう。

生活者の本音を探る上でマーケティングリサーチは必要不可欠だ。そして世の中には数々のマーケティングリサーチ会社が「インサイト調査」をラインナップしている。

しかしそもそも「なぜ調査対象者は本音を明かしてくれないのか?」という原因を理解していない限り、適切なマーケティングリサーチ手法を選ぶことはできず、適切な工夫をすることもできない。

結果「ユニークな」インサイト調査はしてみたものの本音が見えず、調査対象者の「なんとなく」に悩まされ続けることになりかねない。

調査対象者が本音を明かさない原因は、大きく4つ存在する。これらの原因を事前知識として知っておけば、適切にインサイト調査の工夫ができるはずだ。

本音を自覚しているが言いたくない状態

調査対象者が簡単に本音を明かさない原因の1つは、人間が持つ「見栄」や「恥」の意識だ。

多くの調査対象者は、多かれ少なかれ「自分を良く見せたい」「ちょっとだけ見栄を張りたい」と思う一方で「本音を見せるのは恥ずかしい」などの意識も働く。その結果、自分が目立ったり、悪く思われない程度の無難な回答にまとめようとする。

特に日本人は他人との意見の違いを避け、相手を尊重することが文化として息づいているため、本音と建て前の2つの顔を使い分けがちだ。

「自覚しているが言いたくない」という気持ちをやわらげて本音を探り当てるためには、モデレーター(司会者)の力量とテクニックが決定的に重要となる。

もう引退してしまったが、k_birdの経験ではグループインタビューの開始15分で、妻にも打ち明けていない身の上話を引き出すような「すご腕」のモデレーターも存在した。モデレーター選定の重要性を物語るエピソードだ。

また、MROC(マーケティングリサーチ・オンライン・コミュニティ)のように「匿名」とすることで「見栄」や「恥」から解放された場で本音を探り当てていくことも有効だ。

本音を自覚しているが言えない状態

調査対象者が本音を明かさない原因の2つ目は「感覚」や「イメージ」で物事を捉えており「感じていることを言葉にできない」状態の時だ。

例えば、女性の「かわいい!」は、本人としては確かにそう感じているが「どんな風に?」と聞かれても、なかなか言語化できない典型だ。

このような状態が想定されるときは、表現しにくい感覚やイメージの抽出に写真やビジュアルを用いるなどの工夫が必要になる。

本音を自覚しているが思い出せない状態

調査対象者が本音を明かさない原因の3つ目は、日々の日常生活では自覚しているものの、インタビュールームでは「思い出せない」状態の時だ。

このような事態が事前に予想されるときは、普段の生活の様子や態度、実際に使っている動作や反応を現場で観察させてもらう必要がある。

よって、グループインタビューやデプスインタビューではなく、こちらからお宅に出向く「ホームビジット」や、実際に日常生活の行動をとってもらって観察する「行動観察」が有効だ。

そもそも本音を自覚していない状態

調査対象者が本音を明かさない原因の4つ目は「そもそも調査対象者本人すら、自分の本音を自覚していない」状態の時だ。

人間が言語化できる領域はわずかだと言われる。生活者の行動の95%は、無意識のうちに起こっているという研究結果も存在する。

最も本音の把握が難しいケースだが、以下のような工夫を凝らすと本音が現れることが多い。

  • 何らかの刺激や触媒(カードや写真など)を用意して、無意識の心理を顕在化させる工夫を行う。
  • エスノグラフィー手法を用いて、発言や行動の背景にあるコンテクストや感情と照らして解釈する。
  • 投影法(抑圧されている潜在心理を人や物に託して表現してもらう手法)を実施した上で解釈する

これらはかなり高度で用意周到なインタビューテクニックが求められる。よって、ぜひモデレーターと綿密に打ち合わせを重ねよう。

また、通常のインターネットリサーチでも「自覚していない本音」を探る方法は存在する。その方法とは、インターネットリサーチの質問の大半をフリーアンサーとし「調査対象者が質問に答えながら内省を深めていく」質問設計にする方法だ。

インターネットリサーチは、グループインタビューやデプスインタビューと異なり匿名性が高く、調査回答者は誰に気兼ねすることなく本音を書きやすい。

また、内省を促す質問設計にすれば「リサーチに答える時間=調査対象者が1人で自分と向き合う時間」となるため、調査対象者自身がこれまで気付けていなかった本音に気付くことがある。

実際にこの方法でリサーチを行うと、フリーコメント欄の最後には「このアンケートを通して、自分を振り返ることができました」「新しい自分に気付けたような気がします」など「感謝の言葉」をいただいたりする。

ぜひ、機会があれば工夫してお試しいただきたい。

それ以外の簡易的な方法

ついでに、生活者の本音を把握するための「簡易的な方法」も紹介しておこう。k_birdがクイックに生活者の本音を把握したいとき、実務上よく使うのはグーグル検索やツイッター検索だ。

例えば「缶コーヒーといえば」で検索してみよう。当然ながら検索結果には「缶コーヒーといえば…」という検索結果が表示されるはずだ。この「缶コーヒーといえば…」に続く文章は「缶コーヒーといえば、こういうものである」という生活者の常識感・先入観であり、そこから「缶コーヒーとはこういうもの」という本音を見極めることができる。

また「缶コーヒーなのに」で検索してみることも有効だ。この「缶コーヒーなのに」に続く文章は「本来、缶コーヒーはこうあって欲しい」「しかし実際は(良くも悪くも)こうだった」という文脈の文章が描かれているはずだ。

こちらも「こうあって欲しいが、こうだった」という対比構造を見極めることで「缶コーヒーに対する本音」を推し量ることができる。

消費者インサイトを得る方法-2:生活者の本音(先入観)に対して思考を巡らす

続いて紹介するのは「生活者の本音(先入観)」に対して思考を巡らし、消費者インサイトを得るための「思考方法のコツ」だ。

何度も繰り返しになるが「消費者インサイト」とは生活者が自覚していない「動機に結び付く新たな視点」を得ることだ。単に「無意識の本音を発見する」だけでは消費者インサイトに至らない。

また「インサイト調査を通して本音を発見」するだけでなく「主体的に新たな視点を見出す」という能動的な態度が必要であることも、既に解説した通りだ。

当たり前のことだが、生活者はブランディングやマーケティングのプロではない。「動機に結び付く新たな視点」を見出すのは生活者の仕事ではなく、プロのマーケティング担当者であるあなた自身の仕事だ。

以下、k_birdが現場で実践している「思考の巡らせ方」を、こちらも簡単に10個ほどリスト形式で紹介しよう。ポイントは「自由自在に視点をスライドさせる」感覚だ。

「目的と手段」の視点をスライドさせる

インサイト調査を実施した際には、調査対象者の発言が「目的」のことを指して言っているのか、それとも「手段」のことを言っているのかについて、思考を巡らそう。

もし「手段のことを言っている」と感じた場合は「その目的は何だろうか?」に思考を巡らし、逆に「目的のことを言っている」と感じた場合は「その手段は何だろうか?」という思考を巡らせてみる。

例えばこの記事で紹介した以下の例は「目的と手段」の視点をスライドさせる思考法の典型だ。

即席ラーメンの消費者インサイト事例

  • 手段の視点:即席ラーメンを家族に出す私は、手抜きをしている悪い妻
  • 目的の視点:大切なのは「手抜きかどうか」ではなく「家族が喜ぶかどうか」
  • ブランドからの提案:あなたの家族が喜んでくれる即席ラーメン

このように「目的と手段の視点」をスライドする思考習慣が身に付けば、マーケティング担当者であるあなたは「調査対象者の発言の枠を越えた視点」を得ることができる。そこに「生活者自身が気付かない、動機に結び付く新たな視点」が潜んでいるかもしれない。

「原因と現象の視点」をスライドさせる

一般に、調査対象者は「現象」のことは多くを語るが、その「原因」のことは語らない。そこでぜひ、生活者が「現象」の話をしている際には、その「原因」についても思考を巡らせてみよう。

また、ごく稀に生活者は「原因」を語ることもある。しかしその際には「その原因が引き起こしている現象のうち、生活者が自覚しているもの以外に起きうる現象はないか?」に思いを馳せてみよう。

例えばこの記事で紹介した以下の例は「原因と現象の視点」をスライドさせる思考法の典型だ。

合わせ調味料の消費者インサイト事例

  • 現象の視点:毎日の料理の支度はめんどう
  • 原因の視点:面倒なのは、実は食事後の皿洗い
  • ブランドからの提案:この合わせ調味料なら、大皿料理が作れて洗い物が減る

「原因」も、そこから引き起こされる「現象」も、それぞれ複数存在することは稀ではない。「原因」から起きうる「複数の現象」や、あるいは「現象」を引き起こす複数の「原因」を類推する思考習慣が身に付けば「生活者自身が気付かない、動機に結び付く新たな視点」を見出せる可能性は、ぐっと高まる。

「理性と感情の視点」をスライドさせる

一般に、人間には「理性的な計算」と「揺れ動く感情」の両面が存在する。しかし調査対象者の多くは「理性的な発言」に終始しがちだ。

そこでぜひ「その発言の裏側に動いている感情は何か?」に思考を巡らせよう。そのコツは、理路整然と話している調査対象者の発言の矛盾を見極めることだ。矛盾した言動の背景には、そうさせる何らかの動機や感情が隠されていることが多い。

その感情を見抜くことができれば、それがそのまま「生活者自身が気付かない、動機に結び付く新たな視点」になることも有りうる。

「事実と意味性の視点」をスライドさせる

ある事実に、生活者自身の記憶や感情が伴うことで意味性を帯びることがある。

例えば、単なる紙も「便箋」になれば「人に何かを伝えるもの」という意味性を帯び「紙幣」になれば別の意味性を帯びる。

しかし調査対象者はなるべく「正解」を答えようとするため、その発言は「事実」のみになりがちだ。そこでぜひ「調査対象者の発言の裏には、どのような意味性が隠れているのか?」について思考を巡せる習慣をつけよう。

また、調査対象者が何らかの「意味性」や「価値観」に触れる発言をした場合は、逆に「意味性→事実」に思考をスライドさせて、その意味性や価値観を裏付けている象徴的な事実や行動に思いを馳せてみよう。

あなたにとっては「取るに足らない事実・行動」でも、調査対象者本人にとっては「かけがえのない意味があること」である場合がある。

その意味性を見抜くことができれば「動機に結び付く新たな視点」が得られることも有りうる。

「メリットとデメリットの視点」をスライドさせる

人間が取る行動は、良い方向に作用することもあれば、悪い方向に作用することもある。あなたも「良かれ」と思って取った行動が、思わぬところで悪い結果を生んでいた、ということはないだろうか?

調査対象者は物事の「メリット」に着目するがあまり、そこから発生する「隠されたデメリット」に気付いていない場合がある。あるいは「デメリット」ばかりに目が行き「隠れたメリット」のありがたみに気付いていない場合もある。

しかしどのような物事も「メリットだけ」「デメリットだけ」ということは稀であり、必ずどちらも共存する。

もしあなたに「メリット-デメリットを複眼でとらえる」思考習慣が身に付けば「生活者自身が気付かない、動機に結び付く新たな視点」を見出せる可能性は高まるはずだ。

「ポジティブとネガティブの視点」をスライドさせる

何事も、物事にはポジティブな側面とネガティブな側面が存在する。

しかし調査対象者は基本的に「聞かれたことに答える」というスタンスでリサーチに臨んでいるため、調査対象者自身の「思考を巡らせた上での解釈」は期待できない。

「ネガティブな要素も、見方や解釈次第でポジティブな要素に変わる」ことや、あるいはその逆を解釈し消費者インサイトを見出すのはマーケティング担当者であるあなたの仕事だ。

例えばこの記事で紹介した以下の例は「ネガティブな視点」から「ポジティブな視点」に思考をスライドさせた典型だ。

スキンケアの消費者インサイト事例

  • ネガティブな視点:女性にとって、歳をとることは、女でなくなること
  • ポジティブな視点:女性は歳をとるごとに、むしろ内面は磨かれていく
  • ブランドからの提案:サクセスフル・エイジング

もし「今まで気付かなかったけど、言われてみれば確かにそうかも」という反応が得られれば、それはそのまま「生活者自身が気付かない、動機に結び付く新たな視点」だ。

「自分と関係性の視点」をスライドさせる

基本的に調査対象者は「自分」を中心に「自分のこと」を語りがちだ。

しかし調査対象者を取り巻く環境には「自分と親との関係」「自分と子供との関係」「自分と恋人との関係」「自分と友達との関係」など、様々な「関係」が存在する。

調査対象者の発言も、様々な「関係性」の文脈に照らして思考を巡らせてみることで、「本人のことだけ」では得られなかった新たな視点を見出せることがある。

例えばこの記事で紹介した以下の例は「自分達」という視点に対して「自分達の子供」との関係性にスライドした思考方法の典型だ。

郊外型マンションの消費者インサイト事例

  • 自分達の視点:マンションを買うなら、都心に近い便利な場所を選びたい
  • 関係性の視点:住む場所を選ぶことは、自分の子供の故郷を選ぶこと
  • ブランドからの提案:自然が多い環境を選ぼう
「俯瞰とズームの視点」をスライドさせる

調査対象者はビジョナリストではないのだから、自分の周辺のささやかな出来事に対する発言はできても、社会全体を見通した「ビジョナリーな」発言をすることはない。

しかし一方で、多くの生活者が社会動向や社会文脈に影響を受けていることも事実だ。

そこであなたが「社会を広く見通した俯瞰的な視点」を持ち、調査対象者に投げかけることができれば「社会文脈を見通した思わぬ視点」を得ることが可能になる。

例えばこの記事で紹介した以下の例は「俯瞰とズームの視点」をスライドさせる思考方法の典型だ。

サプリメントの消費者インサイト事例

  • 俯瞰視点:高齢化社会は、日本経済にとってマイナスだ
  • ズーム視点:いつか、自分も高齢者になる
  • ブランドからの提案:私たちは、高齢化社会を日本の誇りに変える
専門学校の消費者インサイト事例

  • ズーム視点:専門学校は、クラスの中でも落ちこぼれが行くところ
  • 俯瞰視点:専門学校と大学は、本来上下の関係じゃない
  • ブランドからの提案:私たちは、偏差値だけでなくセンスやスキルが認められる社会を創る
「過去と未来の視点」をスライドさせる

調査対象者は、現在進行中のことは話しても、過去や将来について自発的に語ることは少ない。

しかしどのような人も、過去に得た知識や経験、あるいは記憶をもとに今を考え、未来を見通そうとする。今現在の判断や行動も、その背景にある「過去から培われてきた価値観」や「これから実現したい自分や未来」の文脈に照らして位置付けることで、新たな視点を見出しやすくなる。

例えばこの記事で紹介した以下の例は「過去の視点」と「未来の視点」をスライドさせて考えた典型だ。

ジュエリーブランドの消費者インサイト事例

  • 過去の視点:子育ては、母親である自分の役割だ
  • 未来の視点:子育てを終えたら「母」としての役割は終わる
  • ブランドからの提案:子育てを終えたら、あなたは自分らしく自由に輝いていい
「作用と反作用の視点」をスライドさせる

物事には、時に何らかの「作用」に対して、それに反しようとする「反作用」の力学が働くことがある。

例えば近年、データに基づいてビジネスを行おうとする「データドリブン」が喧伝されているが、それに反作用するかのように「人間のリアル」をとことん追求する「ヒューマンセントリック」や「デザイン思考」という考え方もクローズアップされている。

人間心理には、物事が大きく片方に振れたときに、無意識の不安感から均衡やバランスを取ろうとする反作用の気持ちが働く。

インサイト調査においても、調査対象者の意見の中にはその意見とは裏腹に「反作用する不安心理」が隠されている場合がある。

例えばこの記事で紹介した以下の例は「作用の視点」と「反作用の視点」をスライドさせて考えた典型だ。

オーガニックスキンケアブランドの消費者インサイト事例

  • 作用の視点:もっと高機能で高価なスキンケアが欲しい
  • 反作用の視点:肌の衰えとエイジングケアは、結局はラットレース
  • ブランドからの提案:素の自分でいることこそが、最も美しい

多くの女性は、加齢が進めば進むほど、スキンケアに対して「もっと高機能なもの」「もっと多くの美容成分が入っているもの」を求める。しかし一方でスキンケアはどんどん高価なものになり、使うアイテムも増え「どんどんエスカレートして大丈夫なのか?」という「反作用の気持ち」も内在している。

ブランドからの提案である「素の自分でいることこそが、実は最も美しい」は、そんな「反作用の気持ち」を捉えた例だ。

消費者インサイトを得る方法-3:まとめ

ここまで「消費者インサイトを得る方法」を解説してきたが、いかがだっただろうか?

生活者の本音を見極めるために様々なマーケティングリサーチは必須だが、そこから「消費者インサイトを得る」ためには、マーケティング担当者であるあなたの洞察力に大きく依存することが、ご理解いただけたのではないだろうか?

消費者インサイトは「ユニークなインサイト調査を実施すれば発見できる」という「生活者任せ」ではなく、マーケティング担当者側が「様々な視点を巡らせながら見出す」という主体的な態度が求められるものだ。

k_birdはこれまで、何人か「消費者インサイトの洞察」に長けたマーケティング担当者と出会ってきたが、その人たちは例外なく、生活者の本音をベースにしながらも、自由自在に視点をスライドさせていた。

例えていえば「抽象から具体へ」「理想から現実へ」「近くから遠くへ」「過去・現在・そして未来へ」と、常に視点を巡らせている印象だ。

そして「視点」とはモノの見方であり「生活者より広く深いモノの見方」ができれば、生活者自身が自覚できていない視点や、生活者より先回りした視点が持てるようになる。

消費者インサイトを得るために最も重要なことは「インサイト調査の工夫」でも「無意識の本音を発見こと」でもなく「様々な思考を巡らせながら、新たな視点を見出す」という、マーケティング担当者自身の主体的な態度と洞察力だ。

消費者インサイト・消費者心理の知識を身に付けるマーケティング本4冊

締めくくりに、マーケティング・ブランディング担当者へのお薦めのインサイト本を紹介しよう。選定した基準は下記の通りだ。以下のどれかに当てはまるものをピックアップした。

  • k_birdが実際に読み、単純に「素晴らしかった」と思えるインサイト関連本。
  • 実際に「インサイト調査の手法」あるいは「インサイトを見出す上で視点を広げる」ことに役立っているインサイト関連本。
  • 長年に渡って読み継がれており、時代を越えても変わらない「本質」や「原理」が見出せるインサイト関連本。

もちろん、すべて「なぜ読むべきなのか?」という解説付きだ。

インサイト本おすすめ書籍-1:インサイト 消費者が思わず動く 心のホット ボタン

もしあなたがマーケティング担当者なら、毎日のように「生活者ニーズ」に想いを馳せているはずだ。

本書は「生活者ニーズ」よりもう一歩深くにある「消費者インサイト」の重要性を説いた一冊だ。

人は、論理的に頭で考えて商品を買うだけでなく、直感や感情に従って商品を買うことも多い。

もし「本人すら自覚していない」直感や感情を捉えることができれば、あなたは顕在化したニーズしか見えていない競合ブランドに対して競争優位を築くことができる。

もしあなたが「生活者が見えなくなった」とお感じなら、これまでのリサーチやブランディングを再考する上で、必須の一冊だ。

インサイト本おすすめ書籍-2:「思わず買ってしまう」心のスイッチを見つけるための インサイト実践トレーニング

「インサイト」の重要性は理解したとしても「インサイトを見出すための方法論」がわからなければ、インサイトを捉えることはできない。

本書は先に紹介した「インサイト」から一歩踏み込んで「インサイトの見出し方」を解説した書籍だ。

「言われてみればなるほどと思えるものの、なかなか思い付きずらいインサイト」をどう発見するのかを、まさに実践トレーニングというにふさわしい具体的な形で提示してくれている。

多くのマーケティング担当者にとって「インサイトの発見」は必須のスキルであるだけでなく、時にブランディングの命運すら左右する。

全てのマーケティング担当者が一読して欲しい書籍だ。

インサイト本おすすめ書籍-3:半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法 

「行動観察」は、マーケティングの世界ではホットワードだ。

行動観察とは、その名の通り、観察者がフィールド(現場)に入り、そこにいる人たちの行動を観察して分析することだ。

もしあなたが「行動観察によるインサイト」から生み出された成功事例を知りたければ、本書はお勧めだ。

本書は「妖怪ウォッチ」や「瞬足」「DAKARA」など、行動観察によって開発された具体的な成功事例が多数紹介されており、行動観察やインサイトの活かし方を理解するのに役立つ。

また、定量調査では抜け落ちてしまう「極端なユーザー」の行動にこそ、ヒット商品を生むための重要なヒントが見え隠れしていることが、具体的な事例を通して理解できるのも特徴だ

氷山と同じように、生活者ニーズは本人自身が無自覚で顕在化していないニーズが大半を占めている。
本書は「行動観察」の重要性やインサイトの見いだし方を理解する上で、お勧めの一冊だ。

インサイト本おすすめ書籍-4:買い物客はそのキーワードで手を伸ばす

商品開発においては、生活者の無意識の部分、つまり深層心理レベルまで踏み込んで理解する必要があることは、あなたも切実に感じているはずだ。

本書の特筆すべき点は、生活者の深層心理から商品に対するインサイトを探ることで、安売りに頼らずとも小売店頭での販売数を高める手法を解説している点だ。

本書では「ハウス食品」と「エバラ食品」でのテスト事例が紹介されており、インサイトを発見するためのインタビューフローなど「ここまで開示して大丈夫?」というレベルで、その手法や手順を余すところなく紹介してくれている。そのまま丸パクリしようとすれば、できてしまうレベルだ。

多くのマーケティング担当者が「もはや特売でしか売れる気がしない」と感じているように、価格競争は熾烈を極める。

そのような中、本書が提案している「インサイトから導く価値創造プロモーション」は、多くのマーケティング担当者にとって大いに参考になるだろう。

このブログから書籍化した本4冊

ブランディングの理論と実践をつなぐ「ブランディングの教科書」

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冒頭でも紹介したが、再度ここでも紹介させていただこう。

ブランディングは、ややもすれば「デザインの話」「広告の話」「世界観の話」など、掴みどころのない抽象論に陥りがちだ。

しかしブランディングは「ブランド戦略」という言葉があるように、企業の成否を大きく左右する戦略のひとつだ。そして投資が伴う以上、一定の合理性と説明責任が求められる。決して、売上や利益から逃げてはならないのだ。

本書は、つい「感覚論」に陥りがちな「ブランディング」に対して「論理的な納得性」と「直感的な腹落ち感」の両面を追求した書籍だ。

「論理」が理解できなければ、ブランディングを体系的に理解することできず、再現性を生むことができない。

そして「直感的な腹落ち感」がなければ、ブランディングを実務に落とせず、成果をもたらすことができない。

本書は、広告代理店&外資系コンサルティングファームで培った「生の知見」と「体系的な解説」を通して、ブランディングの理論を実践へとつなげて解説している。

おかげさまで、本書はAmazon kindle売れ筋ランキング「消費者主義」ジャンルでベストセラー1位を獲得し、Amazonレビューでも、

  • 「ふわっとしたブランディングの本が多い中で、異彩を放っている」
  • 「事例も多いので実践のイメージが湧きやすい」
  • 「海外企業の事例ばかりが紹介されている輸入本だとピンとこない、という方にお薦め」

など、ありがたい言葉を頂いている。

もし本書を手にとって頂ければ、ブランディングの専門用語はもちろん、実践の手順や実務の勘所が、一通り学べるはずだ。

kindle Unlimitedを契約されている方は無償で手に入れることができるので、気軽に手に取っていただきたい。

シャープな仮説を生み出す頭の使い方」を徹底解説

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あらゆるビジネスは「仮説」こそが成否を握る。

なぜなら、仮説を生み出せなければ次の一手を見出しようがなく、検証のしようもなくなるからだ。つまり、ビジネスの成長は止まってしまうことになる。

しかし仮説思考の書籍の多くは、仮説思考のメリットは説くものの、肝心の「仮説思考のマスターの仕方」になると、

  • 「センスが必要」
  • 「経験の積み重ねが物を言う」

など「それを言ったらお終いよ」という結論で終わらせているものが多い。

一方で、本書は「仮説思考に必要な推論の手順」を、豊富な事例とともに解説している。よって、その手順通りに推論を重ねれば「センス」や「長年の経験」に頼ることなく、誰でも優れた仮説を導き出せるようになる。

おかげさまで本書は5版を重ね「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」にノミネートいただいた。NewsPicksやNIKKEI STYLE、lifehackerなど多くのメディアで取り上げていただき、中国や台湾、香港でも出版が決定している。

さらにAmazonレビューでも、

  • 「ここ数年の仮説思考系の書籍で久々のヒット」
  • 「自分オリジナルの武器にしていけそうな良書」
  • 「一生もののスキルになるのは間違いない」

など有難い言葉を頂戴しており、増刷(四刷)を重ねている。

もしあなたがシャープな仮説を導き出せるようになりたいなら、ぜひ本書を手にとってみて欲しい。

ロジカルシンキングでは学べない「視点力」と「法則力」を身につける※無料のオーディオブック特典付

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人は誰しも「視点」を通してしか物事を考えることができない。別の言い方をすれば、「何を考えるか?」は視点が支配してしまうともいえる。

 人の思考は必ず、

  1. 視点:まずは何らかの「視点」を置き
  2. 法則:その「視点」を元に「ああなれば→こうなるだろう」という「法則性」に当てはめ
  3. 結論:結論を出す

というステップを辿る。

つまり、どんなにロジカルシンキングに長けていても、論理の前提となる「視点を置き方」を間違えれば結論は間違ったものになる。

また、どんなに適切な視点を置いたとしても「ああなれば→こうなるだろう」という「法則」のストックがなければ、再現性の高い仮説を導き出すことはできない。

本書はビジネス書から「隠れた視点」と「隠れた法則」を発見し、思考の質とスピードを上げていく方法を解説した書籍だ。

もしあなたが自由自在に「視点」を操ることができるようになれば、物事の多様な側面に気づき、次々と「別の選択肢」「別の可能性」を生み出すことができるようになる。

さらに、数多くの「法則」をストックしていけば、様々な現象に「法則」を当てはめることで「的を射た」仮説を瞬時に導き出すことが可能になるはずだ。

おかげさまで、本書はThe21やNIKKEI STYLE、STUDY HACKERなど多くのメディアに取り上げていただき、発売3か月で海外の翻訳出版も決定した。Amazonレビューでも、

  • これまでの読書術の常識を次々と塗り替えている目からウロコの本
  • 読書を通して、視点力や仮説思考、抽象化スキルが身に付く良書
  • まさに「モノの見方を変える方程式」

など、ありがたい言葉を頂戴している。

もしあなたが「ロジカルシンキング本」では学べない「視点力」や「法則力」を身につけたいなら、ぜひ本書で紹介する読書法を実践して欲しい。

※無料のオーディオブック特典付

8ジャンル57個の仕事術で「実践力」を身につける

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どのようなビジネスも、実践が伴わなければ成果は出ない。しかし、いざ「実践力」を身につけようとしても、その分野は、

  1. 時間管理術
  2. 段取り術
  3. コミュニケーション術
  4. 資料作成術
  5. 会議術
  6. 学び術
  7. 思考術
  8. 発想術

など多分野に渡り、最低8冊分の読書時間と書籍代がかかってしまうのが難点だ。

しかし、本書「超効率ハック」は、8つの分野の仕事術の「重要ポイントだけ」を抜き出し、ギュッと1冊に凝縮した書籍だ。

さらに、本書は「訓練や習慣化が必要な作業テクニック」ではなく「行動を変えるための頭の使い方」の解説に力を入れているため「頭のスイッチを切り替える」だけですぐに実践できるのも特色だ。

おかげさまで、本書を題材にしたSchooのオンライン授業では「思考法ジャンル」で人気ランキング1位を頂いた(139講座中)。また、lifehackerやOggiなど数多くのメディアで取り上げていただき、Kindleでは「オペレーションズ部門」でベストセラー1位を獲得している。

Amazonレビューでも、

  • 「思考と行動の質を上げるヒントが盛りだくさん」
  • 「読んでみると、頑張りどころを間違えてたことに気付かされる」
  • 「仕事が速い人はこれをやってたんだな、ということがよくわかった」

など、ありがたい言葉を頂戴しており嬉しい限りだ。

もしあなたが「短時間で網羅的に仕事術を学びたい」「根本から仕事の生産性を高めたい」と感じているのなら、ぜひ手に取ってみて欲しい。

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終わりに

今後も、折に触れて「ロジカルで、かつ、直感的にわかる解説」を続けていくつもりだ。 

しかし多忙につき、このブログは不定期の更新となる。

それでも、このブログに主旨に共感し、何かしらのヒントを得たいと思ってもらえるなら、ぜひこのブログに読者登録Twitterfacebook登録をしてほしい。

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