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ブランディング・マーケティングを徹底解説

ペルソナデザインとは|強いブランドを創るペルソナ設定項目と手法

ペルソナとは?ブランドマーケティングを成功に導くペルソナ設定手法

あなたがマーケティング担当者なら、自社ブランドのターゲット、つまり「買っていただきたい顧客」について、何らかの想定イメージをお持ちのことだろう。

しかし一方で、ブランディングやマーケティングは、マーケティング部門のほかにも商品開発部門、営業・販売部門、デジタル部門など、多くの部門を横断しながら進めていくことが多い。

日々の会議の中でも「ターゲットはこんなものは買わないのでは?」とか「このメッセージはターゲットには理解できないのでは?」など、ターゲットに関わる様々な意見が百花繚乱になることは日常茶飯事のはずだ。

しかしここでぜひ原点に立ち戻り、あらためてチームメンバー1人1人に「自社ブランドのターゲット"像"とは?」を問いかけてみて欲しい。

性別・年齢はもちろん、ライフステージや価値観、これまで人生経験や悩み、何にこだわりを持ち、何を一番大切だと感じ、何を実現したいと考えているのか…。

k_birdの経験からすると、多くのチームメンバーは「ターゲット」は答えられても「ターゲット”像”」は答えることができない。あるいは答えられたとしても、それぞれのメンバーが異なる「ターゲット"像"」をイメージしており、あなたは驚くことになるはずだ。

多くの企業では、入念に市場環境分析を行った後、セグメンテーションを行い、様々な検討を経た上で有望なターゲットを設定している。

しかしk_birdの外資系コンサルティングファームでのコンサルティング経験、及び広告代理店の戦略プランナーとしての経験を踏まえると「20代後半の女性・大企業勤めの独身OL」などのターゲット設定はなされていても、その後の掘り下げが甘く「ターゲット像(=ペルソナ)」が共有されていないケースが多い。

その結果、チームメンバーそれぞれが異なるターゲット像を思い浮かべ、各自が「勝手に」決めたターゲット像に向けて戦略や施策を立案することになる。

しかし、考えてみて欲しい。

「ターゲット像が異なる」ということは、ブランディングやマーケティングを考える上での「そもそもの立脚点が異なる」ことを意味する。

結果、チームメンバーは初めの段階から同床異夢の状態となるため、ブランディングやマーケティングは一貫性が失われていく。戦略はストーリーがなく、施策は散発的なものとなり、成果は乏しくなる。

重要なので繰り返すが、ターゲットとはあなたのブランドを選んでくれる顧客のことであり、あらゆる戦略・施策の立脚点のことだ。

ターゲットを設定したらすぐさまポジショニングに移るのではなく「まずはターゲットの掘り下げてターゲット像を描き切る」ことこそが、ブランディングやマーケティングの成否を決するといっても過言ではない。

よって今回は「ターゲットを掘り下げる」手法の一つである「ペルソナデザイン」について解説する。内容は以下の通りだ。

  1. マーケティングにおけるペルソナとは何か?
  2. ブランディングにおけるペルソナとは何か?
  3. ペルソナとターゲットと違いとは?
  4. ペルソナをデザインするメリットと具体例
  5. 強いブランドを創る2つのペルソナ設定項目
  6. ペルソナデザインの手順

すでに「ペルソナデザイン」については、多くの解説が書籍やWEBサイトでなされている。

しかしそれらはUX(ユーザーエクスペリエンス)やコンテンツマーケティングをテーマにしたものが多く「ブランディングやマーケティングを成功に導くためのペルソナデザイン」を解説している書籍・WEBサイトは少ない。

本ブログでは、過去に「ブランドとは生活者の感情移入が伴ったモノやサービスの事」と定義し「ブランディングとは、できるだけ多くの人に、できるだけ強い感情移入を形創っていく取り組みを指す」と解説した。

 

その成果は「衝動買い頼み」を越えた「指名買い」によるロングセラーブランドとなるが、そのカギを握るのが「生活者からの感情移入」だ。そのため、ブランディングを成果に結びつけるためには「企業目線からの脱却」と「ターゲットからの逆算視点」は欠かせなくなる。

「ターゲット」は机上の空論ではなく生身の人間であり、多様なライフスタイルや価値観を持っている。そしてそのコンテキスト(背景)を深く理解した上で、そこから逆算して考える思考スキルを持たない限り、ターゲットの感情移入を勝ち取ることはできない。つまりブランディングは成功しないのだ。

もしあなたが「感情移入を伴った、強いブランドを構築したい」と考えるなら、ぜひ今回の「ペルソナデザイン」の解説を最後までお読み頂きたい。

もし、今回の解説を最後までお読みになれば、ブランディングやマーケティングを成功に導くための立脚点である「ペルソナデザイン」について、あなたの理解は劇的に深まるはずだ。

その結果、あなたは「ペルソナデザインの必要性」や「ペルソナデザインを取り入れるメリット」を周囲に説明できるようになる。

また、以下の参考記事では「ペルソナデザイン」の前に明確にしておくべき「セグメンテーション」や「ターゲティング」について解説している。

更には「ペルソナデザイン」後の次のステップとなる「消費者インサイト」や「ポジショニング」について解説しているので、ぜひ合わせてご覧いただきたい。

 

ペルソナとは?

ペルソナの意味とは?

まずは、そもそもマーケティングやブランディングにおける「ペルソナとは?」について、その意味を解説しよう。

ビジネスにおける「ペルソナ」とは「企業が提供する製品・サービスにとって、もっとも重要で象徴的なユーザーモデル」の意味で使われることが多い。

一方でマーケティングやブランディングにおける「ペルソナ」とは「ブランドに対して感情移入を促し、長期的なファンになってくれる象徴的な顧客像」のことを指す。そしてその「顧客像」を描くことをペルソナデザインという。

ペルソナとは何か?

  1. ペルソナとは?
    ブランドに対して感情移入を促し、長期的なファンになってくれることが期待できる「象徴的な顧客像」のこと
  2. ペルソナデザインとは?
    その「象徴的な顧客像」を描くこと
 

ペルソナは、日本語に直訳すれば「仮面」となる。心理学の世界では、人間の外的側面を指す言葉として使われている。

ペルソナの起源とは?

現在では様々なビジネスで応用されている「ペルソナ」だが、この「ペルソナ」がビジネスに使われる発端となったのは「プロダクトデザイン」の領域だ。

象徴的な顧客像の設定としてのペルソナは、マイクロソフトでVisual BASICを開発したアラン・クーパーの著書「The Inmates are Running the Asylum」の中で、ソフトウェアの開発手法として提唱されたのが始まりだ。

また、ペルソナマーケティング手法として一般化したのはジョン・S.プルーイットの著書「ペルソナ戦略―マーケティング、製品開発、デザインを顧客志向にする」がきっかけだ。

「ペルソナ」と「ターゲット」との違いとは?

ブランディングやマーケティングでは、よく「ターゲット」という言葉が使われる。

しかし「ターゲット」とは、そのままでは「ひと塊の消費者群」に過ぎない。冒頭で解説した「20代後半の女性・大企業勤めの独身OL」などが典型だ。

しかし、単にターゲットを「群」あるいは「市場」として捉えているだけでは、ターゲットの根底にある価値観や行動特性などを把握することはできない。つまり、ターゲットからの逆算発想ができない。

一方で「ペルソナ」とは、セグメンテーション&ターゲティングを活かしつつ、そのターゲットの「性別・年齢/ライフステージ/価値観/これまで人生経験/悩み/こだわり/何を一番大切だと感じているのか/何を実現したいと考えているのか」などを把握・類推し、あたかも「目の前に現れて話し始めるかのように」詳しく人物像を描き出すことに重点が置かれる。

いわば 「ターゲット(という塊)」から更に踏み込んで「生身の人間」として描き出し、ターゲットを深く、ひとつの物語として理解することと言える。

「ターゲット」と「ペルソナ」の違いを端的に表したのが、以下の図だ。

ターゲットとペルソナの違い:ターゲットとは

ターゲットとペルソナの違い:ペルソナとは

ペルソナデザインの世界では、よく「Good story has right details」といわれる。

 ペルソナデザインでは、価値観やパーソナリティにまで踏み込んだ「人物像」を作っていくため「その人が何に感動するのか」「どういった状況で使うのか」など、ペルソナからの逆算視点で物事を考えることができるようになる。

そのペルソナが「なぜ」「どんな気持ちで」「誰と」などを元に、ブランド体験や様々な個別施策に生かしていくこともできるようになる。

 

ブランディング・マーケティングにおけるペルソナデザインのメリット

ブランディングやマーケティングにペルソナデザインを導入することで、あなたにもたらされるメリットは、大きくわけて以下の3つとなる。

  1. 企業視点からターゲット逆算視点へ
  2. 論理+感情・ストーリーへ
  3. 個別最適から全体最適へ

以下、順番に解説しよう。

ペルソナデザインのメリット-1:企業視点からターゲット逆算視点へ

ブランディングやマーケティングにおいて重要なのは「STP戦略」であるとされる。

STP戦略の「S」とは「セグメンテーション」の事を指す。セグメンテーションには「区分けする」や「区分する」などの意味があり、マーケティングの世界では何らかの切り口によって市場を分類することを指す。

そしてSTP戦略の「T」とは「ターゲティング」のことだ。つまり「S:セグメンテーション」で分類したセグメントのうちのどれかを「ターゲット」として設定することを指す。

さらにSTP戦略の「P」とは「ポジショニング」のことであり、ターゲットから見て「そのブランドならではの独自の役割」を見出し、築き上げていく取り組みを指す。

こうしてみると「STP戦略」のうち「S:セグメンテーション」「T:ターゲティング」は、いわば「企業側の都合で決める」取り組みであり、実は生活者目線に立っていないことがわかる。

そしてこれまで解説した通り「ターゲット」を「群」として捉えたまま「ポジショニング」のフェーズに移ってしまうと、いわば「企業都合のまま」ブランディングやマーケティングの戦略が決まってしまうことになる。

ことブランディングやマーケティングにおいて「顧客志向が重要だ」という考えにあなたは異論を挟まないだろうが、残念ながら「STP戦略」のフレームワークをそのまま辿ってしまうと「企業都合を貫いた」戦略に陥りがちだ。

そこでk_birdが提唱しているのが「STP戦略」を進化させた「STPIP戦略」だ。

STP戦略の進化形:STPIP戦略

最初の「S:セグメンテーション」「T:ターゲティング」はそのままだが「P:ポジショニング」の前に「P:ペルソナデザイン」「I:インサイトの発見」というステップを加える考え方だ。

「P:ペルソナデザイン」「I:インサイトの発見」というステップを加えれば「S:セグメンテーション」「T:ターゲティング」という「企業都合の取り組み」の後に、なかば強制的に「ターゲットから逆算する視点」を持つことができるようになる。

「ターゲットが本当に喜ぶこと」と「ターゲットが喜ぶだろうと企業が思っていること」は必ずしも一致しない。

あなたを含め、あなたの同僚は業界で経験を積めば積むほど、作り手や売り手としての専門知識を得て、その業界の「プロ」になっていく。しかしそれは、少しづつ素人であるターゲットの気持ちから離れ、真逆の感覚に進んでいくことを意味する。

しかしペルソナデザインをうまく生かせば、企業側の「プロ」の目線からいったん離れ「このペルソナの、どんな感情に関与していけばいいだろうか?」 という「ターゲットからの逆算視点」に立つことができる。そして時に、社会に変化を生むイノベーションすら生み出すことも可能だ。

そのことをよりリアルにご理解いただくために「マルチビタミンサプリメント」を題材に解説を進めよう。

ペルソナデザインの例

現在、マルチビタミンサプリメントは大塚製薬やDHC、ファンケルやアサヒフードヘルスケアなどから発売されている。しかし残念ながら、今やマルチビタミンサプリメントはグルコサミンやDHA、ブルーベリーなど、より特化したニーズに対応したサプリメントが台頭したため、生活者の関心は低い状態にある、いわば、完全にコモディティ化した商材だ。

ペルソナデザインの事例:マルチビタミンサプリメント

もしあなたが「企業目線の」マーケティング担当者なら、おそらく以下のような発想をするはずだ。

  • 新たな成分を加えたら、より付加価値が付くはずだ…。
  • 一つ一つの成分の含有量を増やしたら、ライバル商品より売れるようになるかもしれない…。
  • いや、やっぱり価格を下げるしか、売れるようにする道はないのかもしれない…。

賢明なあなたならお気づきかもしれないが、これでは「機能をどうするか?」「成分をどうするか?」という商品起点の発想に陥っており「ターゲットから逆算する」視点が完全に抜けている。

結果「新たな成分を加える」「含有量を増やす」など小手先の改善策しか思い浮かべることができないため、今の状況を劇的に変えることはできない。

ここで全く発想を変えて「徹底的に」ターゲット逆算視点に立ってみよう。そのために必要なのが「ターゲット設定+ペルソナデザイン」だ。

ペルソナサンプル(ペルソナ設定シート)の具体例

まず数々の調査結果から、すでにコモディティ化しているとはいえ「30代半ばの女性」がターゲットとして有望だと仮定しよう。そして、ペルソナデザインは以下の通りだったとする。

ペルソナ設定シートの事例

ここで、スマートフォン読者のために、設定したペルソナの概要を文字でも記載しておこう。

マルチビタミン・サプリメントのペルソナ例

  1. 性別:
    女性
  2. 年齢:
    36才
  3. 家族構成:
    夫1人(37才)/息子1人(3才)
  4. 居住地:
    江戸川区
  5. 職業:
    働く主婦
  6. 価値観:
    毎日、家事・仕事・育児に忙しい。
    夫は最近管理職になったばかりで忙しく、帰りが終電間際になることも多い。
    子供がいなかった頃と比べて、夫と一緒に食卓につく頻度は劇的に減った。
    なんとなく、家事や育児を自分に押し付けられているような気がして、イライラが募る。
    夫も子供も悪くないのに、つい八つ当たりしてしまい、後から罪悪感で落ち込むことも。
    もしかしたら私が、家族の雰囲気を悪くしちゃってるのかもしれない。

 

ここで重要なポイントは、ペルソナをデザインをする際に、以下の発想の順番を「守りきる」ことだ。

  1. まずは商品のことは頭から切り離して(無視して)、ペルソナを取り巻く環境や気持ち、感情を徹底的に考え、類推する
  2. そして、ペルソナのどのような感情に関与していけば、商品(この場合はマルチビタミンサプリメント)が役に立てるかを考える

つまり「ペルソナが抱いている気持ち・感情を類推することが先」「それらの気持ち・感情に、商品はどう関与していくべきか?が後」という順番を徹底するのだ。

ペルソナである36才のこの女性は、毎日忙しくてイラだっている。そして夫との時間を取れないことにもまた、イラ立ちを募らせている。しかし、夫も忙しいことは理解している。つい八つ当たりをしてしまう自分に罪悪感も感じている…。

そんなペルソナに対して、マルチビタミンサプリメントは、どんな役立ち方ができるだろうか?

k_birdが考えた一例は以下の通りだ。

これが、k_bird流の「ブランドとは何か?ブランディングとは何か?」に対する答えだ。

マルチビタミンサプリメント=
「忙しい夫をいたわり、夫に感謝の気持ちを伝えるための
コミュニケーションツール」

  1. 関与していく感情
    夫への罪悪感
    いつも夜遅い夫へのいたわり・感謝の気持ち
    夫に対していたわりや感謝を直接伝えることの気恥ずかしさ
  2. 促したい行動
    普段は気恥ずかしくて言えない「夫へのいたわり」「夫への感謝」をマルチビタミンサプリメントに託して伝える
    夜の作り置きの食事にマルチビタミンサプリメントと手紙を添えて
  3. 創り上げるべきブランド連想
    「マルチビタミンサプリメントを差し出すこと=相手へのいたわり、感謝・愛情を表現すること」
  4. ブランドライフビジョン
    「1人で頑張る健康」ではなく「互いをいたわり合いながら健康になれる」社会を創り上げる

いかがだろうか?

このケースの場合、まずは商品のことを「徹底的に」忘れて「ターゲットの感情」や「ターゲットと夫との関係性」などを類推し「後から商品に結びつける」という思考プロセスを辿っている。

ここでぜひ、先ほどの「企業目線の」マーケティング担当者のくだりと比べてみて欲しい。再掲すると以下の通りだ。

  • 新たな成分を加えたら、より付加価値が付くはずだ…。
  • 一つ一つの成分の含有量を増やしたら、ライバル商品より売れるようになるかもしれない…。
  • いや、やっぱり価格を下げるしか、売れるようにする道はないのかもしれない…。

企業目線とターゲット逆算目線という「立脚点の違い」で、大きく結論が変わることがご理解頂けたはずだ。

このように、ペルソナデザインをうまく生かせば企業側の目線である「商品」からいったん離れることができる。そして「このペルソナの、どんな感情に関与していけばいいだろうか?」 というターゲット逆算目線に立つことも可能となる。

そしてターゲット逆算目線に立つことができれば、上記のマルチビタミンサプリメントの例の通り、これまでとは全く異なる発想で感情移入をもたらすブランドマーケティングが実現できるはずだ。

ペルソナデザインのメリット-2:論理+感情・ストーリーへ

ビジネスの世界では「論理的であることは良いこと」だとされる。しかし、ことブランディングやマーケティングにおいては「論理的」であることが、必ずしも正しいことであるとは限らない。なぜならあなたのブランドを購入してくれる顧客は、必ずしも「論理」だけで買うとは限らないからだ。

一般に、物事を判断する上での基準は、以下の4つとされる。

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上記の図をみれば、ターゲットがあなたのブランドを選ぶ判断基準は、必ずしも「合理」だけでないことがわかるはずだ。むしろ、一部でしかない。

 また、多くの企業は「信頼」や「安心」を重視するが、これらも突き詰めれば「(理屈抜きに)信じられる=信頼」「(つぶさに確かめなくても)大丈夫だと思う=安心」であり、合理というよりは「感情」「価値観」の話であることがわかる。

そして、ブランディングとは「ブランドに対して感情移入を創っていくこと」である以上、多くマーケティング担当者に求められるのは、ターゲットの感情や価値観に対する「共感能力」だ。そして、多くのマーケティング担当者が持つべき「共感能力」に対して大いに助けとなるのが「ペルソナ設定」となる。

その根拠となるのが「顔のある犠牲者効果」だ。

「顔のある犠牲者効果」とは「人は大勢の苦しみより、特定の1人の苦しみの方に心を動かされる」とされる社会科学の理論だ。

人は「心理的に近い存在」や「鮮明な出来事」の方に感情が動き、人助けの行動を促すといわれる。あなたがマーケティング担当者なら「1,000人の定量調査の結果」より「たった1人のフォーカスグループの発言」の方にリアリティを感じた、という経験はおありだろう。

ロジックやデータはもちろん重要だが「顔のある犠牲者効果」に従えば、人間の記憶に残り、感情を動かすのは「目の前で繰り広げられるリアルな物語」の方だ。

そしてターゲットを数字だけで語らずに、物語で語ることのそもそもの意義とは、数字で実態を語るよりも物語の方が人間の記憶に残り、共感しやすいからだ。

ペルソナデザインによって、ターゲットの性別・年齢はもちろん、ライフステージや価値観、これまで人生経験や悩み、何を一番大切だと感じ、何を実現したいと考えているのかなどを鮮明に、そしてリアルに描き込むことができれば、あなたやあなたのチームメンバーは、よりターゲットの感性や感情・価値観に感情移入できるようになる。

そしてターゲットへの感情移入がしやすくなればなるほど、問題解決への糸口が発見しやすくなるはずだ。

ペルソナデザインのメリット-3:個別最適から全体最適へ

あなたがマーケティング担当者なら、近年「CX(カスタマーエキスペリエンス)」や「カスタマージャーニー」の重要性が叫ばれて久しいことは、よくご存じのはずだ。

しかし一方で「CX(カスタマーエキスペリエンス)」や「カスタマージャーニー」は多くの部門を巻き込んで串刺しにする取り組みであるため、チームとしてまとめる難しさを感じてはいないだろうか?

例えマーケティング部門が「ターゲット逆算発想」に立てていたとしても、技術開発部門は差別化を信じ、ターゲットの感覚から乖離を生む場合がある。あるいは自分の得意な技術に力を入れ、学術的評価が高いとされる分野に偏る傾向もある。

また、営業部門は流通事業者に対する販売目標が課せられていることもあり、ついバイヤーの思惑に追従しがちだ。

宣伝部門は日々広告代理店を相手にしているため「ターゲット」よりも「世の中」や「広告賞」になびき、話題性や拡散を追求しがちとなる。

デジタル部門はターゲットに想いを馳せないまま、ひたすら行動データの即応を追求していく…。

結果、すべての部門が集まる会議ではそれぞれの立脚点が異なるため、意見が噴出して合意に至らない。会議が続けば続くほどターゲットの意識から離れ、玉虫色の結論に陥っていく…。

各部門がバラバラの個別最適に陥ってしまう最大の要因は、それぞれの部門が「ターゲット逆算発想」に立てておらず、それぞれがターゲット像を持っていないか、あるいは異なるターゲット像をイメージしているためだ。

もし、優れたペルソナをデザインし共有できれば、各部門がペルソナをあたかも実在の人間のように受け入れ、ペルソナの視点で世界を見られるようになる。

また、各部門が戦略・戦術決定で迷った際に立ち戻るべき「立脚点」も明確となる。

結果、各部門を串刺しにした判断基準が明確となる。すると製品やサービス、その他様々なブランディング施策の一貫性が保てるようになり、必要でないものを見極められるようにもなるはずだ。 

 

ペルソナデザインの方法:強いブランドを創る2つのペルソナ設定項目とペルソナ設定手順

ここからは、ブランディングを成功に導くためのペルソナデザイン手法について解説していこう。ペルソナを設定する上で考えるべき要素は、大きく2つに分解できる。

  1. どのようなペルソナデザイン項目を設定するか?
  2. どのような手順でペルソナを設定していくか?

一つずつ解説していこう。

どのようなペルソナデザイン項目を設定するか?

k_birdが実際に携わったものに加え、一般に流布しているペルソナ設定項目を網羅すると下記の通りとなる。

一般的なペルソナ設定項目

スマホ読者のために、テキストでも記載しておく。

ペルソナ設定項目一覧
  1. 属性:
    氏名/性別/年齢/職業/家族構成/居住地/住居形態/年収
  2. パーソナリティ:
    個性/性格/価値観/こだわり/誇り/自負/不安/不満
  3. ライフスタイル:
    ファッション意識・実態/食意識・実態/住意識・実態/働き方意識・実態/遊び意識・実態/休息&癒し意識・実態/学び意識・実態/美意識・実態/子育て&教育意識・実態/健康意識・実態
  4. 周囲との関係性:
    コミュニティ/メディア・情報源/デジタルリテラシー/ソーシャルメディア/好きな著名人/情報感度
  5. ブランドとの関係性:
    カテゴリーに対する態度/競合ブランドに対する態度/自社ブランドに対する態度

ペルソナ設定項目は数え上がればきりがないため、目的やブランドに応じて取捨選択することになる。

しかし、ことブランドマーケティングの場合、その目的は「ブランドに対する感情移入を創る」ことであり「指名買い」によるロングセラーブランドの実現だ。

これらの目的を念頭に置いた場合、上記のペルソナ設定項目以外に設定しておきたい項目が2つある。その2つとは、ペルソナの「ライフヒストリー」と「ライフビジョン」だ。

強いブランドを創るペルソナ設定項目-1:ライフヒストリー

「ライフヒストリー」とは、ペルソナのこれまでの人生体験のことを指す。

ブランドマーケティングの目的が、ブランドに対する「感情移入」であることはすでに述べた。そしてブランドに対する感情移入を形創るためには、ターゲットのこれまでの人生体験によって培われた価値観や、感情を揺さぶるポイントを見極めなければならない。

具体例を出して解説しよう。

今ここに、敏感肌用のスキンケアブランドがあると仮定しよう。ターゲットの「ライフヒストリー(=人生体験)」をペルソナに設定することで、何が変わるだろうか?

以下、実際にk_birdがインタビューで把握した「敏感肌用スキンケア利用者」のライフヒストリーを抜粋して紹介しよう。

敏感肌用スキンケア利用者の
「ライフヒストリー(=人生体験)」

  1. ライフヒストリー:

    小学校の頃は、真夏なのにいつも長袖の服を着ていた。荒れている肌を好きな男の子に見られるのが嫌だったから。

    高校生の頃、ふとした時に肌を見られ、クラスの男の子から「きもい」「不潔」「爬虫類」「うつりそう」などと言われたことがある。

    大学生になって、顔や皮膚の荒れは相変わらずだったが、それらをカバーするようにお洒落を頑張るようになった。

    しかし飲み会で片思いしていた男の子に「ほっぺがリンゴみたい」と笑われ、その日は夜通しで泣いた。

    今でもひどい肌荒れをしている時は朝から憂鬱で、顔を洗う度、お化粧をする度、悲しい気持ちになる。

    職場ランチの時、化粧品の見せ合いっこをするときがあるが、自分はポーチから化粧品を出せない。

    なぜなら「敏感肌用の化粧品」はパッケージが薬っぽくてキラキラ感やわくわく感がないので会話を盛り下げてしまうから。

  2. 人生体験を踏まえて感じていること

    スキンケアは本来楽しいものなのかもしれないけれど、私にはそうは思えない。

    敏感肌に気を使う人生は、女性としての何かを失ってしまっていると感じる。

    肌が弱いと、自分に自信が持てなくなる。

ここまでお読みになって、あなたはどう感じただろうか?

敏感肌用スキンケアと言えば「皮膚科学」や「肌の補修成分」など、いわゆる「薬感」を打ち出しているブランドが多い。しかし上記の「ライフヒストリー」に照らして考えた場合、果たして彼女(=設定したペルソナ)はブランドに対して感情移入してくれると思えるだろうか?

彼女が本当に欲しいのは「薬」ではなく「自信」であり「普通なら当たり前にできる、女性らしい生き方」だ。

ライフヒストリー(=人生体験)は、時にターゲットの価値観の奥底にある心象風景を描き出す。そしてその心象風景をチーム内で共有し、共感できれば、あなたのブランドはまた一歩「感情移入を伴った強いブランド」に近づくはずだ。

強いブランドを創るペルソナ設定項目-2:ライフビジョン

「ライフビジョン」とは「ペルソナ」が誰かに実現して欲しい「社会や自分の理想像」ことを指す。

上記の敏感肌用スキンケアを例にとれば「ライフビジョン」は以下の通りとなる。

  1. 例え敏感肌の自分でも、スキンケアを楽しめる社会
  2. 例え敏感肌の自分でも、友達や同僚の前で、堂々と自分の化粧品を見せられること
  3. 例え敏感肌の自分でも、素の自分を見せ、自分に自信が持てること
  4. 例え敏感肌の自分でも、肌も心も解放し、好きな人との距離を近づけられること

いかがだろうか?ペルソナの「ライフヒストリー」と「ライフビジョン」が明確になれば「ブランドを通して実現していくべき社会の姿」や「これから形創るべき顧客体験」が明確になる。そしてもちろん、各部門一人一人が果たすべき使命と役割も明確になるはずだ。

ブランドマーケティングとは、感情移入を創ることだ。

もしあなたのチームがペルソナの「ライフヒストリー」と「ライフビジョン」を明確に設定することができれば、あなたのブランドに「共鳴感情」という感情移入がもたらされるはずだ。

どのような手順でペルソナをデザインしていくか?:ペルソナ設定の手順

ここからは、ペルソナをデザインしていくための手順を簡単に紹介しよう。

ペルソナ設定の手順-1:市場&消費者セグメンテーションを行う

当たり前のことだが、ペルソナをデザインするためには、ターゲットが特定されていなければならない。そして有望なターゲットを設定するためには、市場や消費者に対するセグメンテーション(=分類すること)が必要となる。

下記の解説では、マーケットセグメンテーションや消費者セグメンテーションについて詳しく解説しているので、ぜひ参考にして欲しい。

www.missiondrivenbrand.jp

ペルソナ設定の手順-2:ターゲットを設定する

ペルソナをデザインするためには、明確にターゲットが絞られていなければならない。

しかし一方で「ターゲットを絞る=販売機会が減る」という間違った認識と恐怖感からか、ターゲットを絞ることに二の足を踏む企業は多い。

以下の解説では「なぜターゲットを絞るべきなのか?」に加え「ターゲットを設定する方法」についても解説している。

ペルソナをデザインするとき、まず初めに壁となるのが、ターゲットを絞ることに対するアレルギーだ。

ぜひ下記の解説をお読みになりチーム内で共有することで「ターゲットを絞る」ことに対する恐怖感を取り除いてほしい。

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ペルソナ設定の手順-3:ターゲットを交えたワークショップを実施する

ターゲットが絞れたら、そのターゲットを交えたワークショップを行おう。

一般に、ペルソナをデザインする際には「デプスインタビューが良い」とされるが、この解説にある「ライフヒストリー」や「ライフビジョン」を明らかにする場合、インタビュールームで面接のように行われるデプスインタビューは不向きだ。

ターゲットに「ライフヒストリー」や「ライフビジョン」を本音で語ってもらうにはテクニックがいるが、気の置けない友達同士をペアにした「ペア・インタビュー」や「カードエクササイズ」、あるいは「ポストイットワーク」や「プロトタイピング」など、ターゲットが心を許しながら能動的に参加できる環境が創れるワークショップ形式の方がお勧めだ。

ペルソナ設定の手順-4:グループ化エクササイズ

続いて「手順3」のワークショップの結果を元に、今度はチームメンバーのみでワークショップを行い、気になったキーワードをポストイットで並べていこう。

その後、KJ法の要領で、共通する項目をグループ化していく。

ペルソナ設定の手順-5:類推エクササイズ

次は類推エクササイズだ。グルーピング後に「ライフヒストリー」や「ライフビジョン」に基づいて(あるいは類推して)ペルソナを肉付けしていく。

ペルソナ設定の手順-6:構造化エクササイズ

類推した項目を加えた後、関連する項目を線でつないだり、他のグループに影響を与えている部分を矢印で表す。その後「ライフヒストリー」と「ライフビジョン」を中心に、どのグループピング項目をペルソナデザインに含めていくか優先順位を決めていく。

ここまでで完成するのが、ペルソナの骨格となる「ペルソナスケルトン」だ。

ペルソナ設定の手順-7:ペルソナ設定シートを作成する

チームメンバー全員でペルソナスケルトンを作成した後は、チーム内の誰かを担当につけて(あるいは外注して)、ペルソナ設定シート(=ペルソナ基本文書)に仕上げていく。

この段階になるとペルソナ設定は細部に入っていくため「誰か一人を担当につけて後でみんなでチェックする」という段取りを組んだ方がスムースなことが多い。

さらにこの段階では、ペルソナに物語的な要素を盛り込むことになる。

いわば「正しいデータや観察、現実の世界」から「主観的で最も妥当と思われる類推や物語」の世界へ移行していく段階だ。この段階で重要となるのが、チームメンバーからの納得感や共感感情だ。

先にも解説した通り、ブランディングとは「ブランドに対して感情移入を創っていくこと」だ。そうである以上、多くマーケティング担当者に求められるのは、ターゲットの感情や価値観に対する「共感能力」だ。

ぜひ、チームメンバー全員が納得し、ターゲットの感情や価値観に共感できる「物語」を形創ろう。

また、ペルソナ設定シート(=ペルソナ基本文書)には、ペルソナを象徴する写真が必要不可欠となるが、その写真もこの段階で決めることになる。

ペルソナ設定の手順:その他の留意事項

その他、留意事項を簡単に解説しておこう。

ワークショップやデプスインタビューに参加いただく「最適な人数は何人か?」を尋ねられることが多いが、おおよそ10名程度で大丈夫だ。

なぜ10名なのかという根拠は、あるテーマに関する質的調査を被験者に対して行う際に、新しい発見(findings)が10名を超えたあたりから急激に減少するという調査結果があるからだ。

ペルソナデザインの知識を身に付けるペルソナマーケティング本を紹介

締めくくりに、マーケティング・ブランディング担当者へのお薦めのペルソナマーケティング本を紹介しよう。選定した基準は下記の通りだ。以下のどれかに当てはまるものをピックアップした。

  1. k_birdが実際に読み、単純に「素晴らしかった」と思えるペルソナマーケティング本。
  2. 実際に「ペルソナデザインの手法」あるい「実用性」の観点から役立っているペルソナマーケティング本。
  3. 長年に渡って読み継がれており、時代を越えても変わらない「本質」や「原理」が見出せるペルソナマーケティング本。

もちろん「なぜ読むべきなのか?」という解説付きだ。

実践 ペルソナマーケティング 製品・サービス開発の新しい常識

ペルソナマーケティングの実務知識を身につけたい場合、お薦めできる本は本書の一択となる。

ペルソナ関連の本には、ほかにもペルソナ戦略―マーケティング、製品開発、デザインを顧客志向にするペルソナ作って、それからどうするの? ユーザー中心デザインで作るWebサイトが存在するが、前者は海外の翻訳書であるため日本国内の実情とはそぐわない点が見られる。また、後者は主にWEBサイト構築におけるペルソナデザインにフォーカスしている点が難点だ。

一方で本書は「マーケティング」におけるペルソナデザインを扱った書籍であり、かつ、事例も国内企業が中心だ。

また著者はもともと三菱総合研究所にて経営コンサルティングに従事されていた方であり、手順の解説も含め、実用性が高い。

ぜひ、あなたのブランディングやマーケティングにペルソナデザインを取り入れたいなら一読して欲しい一冊だ。

 

終わりに

今回は「ペルソナデザインとは|強いブランドを創るペルソナ設定項目と手法」と題してペルソナデザインについて解説した。ぜひ、あなたのチームのブランドマーケティングにおいて、有益な示唆となれば幸いだ。

今後も、折に触れて「ロジカルで、かつ、直感的にわかるブランディングの解説」を続けていくつもりだ。(過去記事と今後の掲載予定はこちら

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