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市場&消費者セグメンテーションの【具体手法】を事例付で徹底解説

市場&消費者セグメンテーションの【具体手法】を事例付で徹底解説

あなたがブランディングやマーケティングの担当者なら「セグメンテーション」という言葉はどこかで見聞きしたことがあるはずだ。

このブログの執筆者であるk_birdは、ある時期は外資系コンサルティングファームのコンサルタントとして、そしてある時期は広告代理店の戦略ディレクターとして、長年ブランディングやマーケティングの現場を歩いてきた。

これまで多くのマーケティング担当者と出会ったが「セグメンテーション」に対する認識のされ方は、下記のようなものが多い。

  • セグメンテーションとは「男女」や「年代別」などに生活者を分けることだ。

しかし一方で「セグメンテーション」の「そもそもの目的は何か?」や「用途は?」に対する深い見識がないまま「なんとなくセグメンテーションを行っている」という現場にもよく遭遇する。

しかしここではっきりお伝えしておこう。

セグメンテーションは、あなたのブランディングやマーケティングの成否を決定的に左右する極めて重要な考え方だ。

もしあなたがブランディングやマーケティングの担当者なら、どこかで「STP戦略」という言葉を聞いたことがおありだろう。マーケティングの根幹をなす考え方だと言って良い。

そしてSTP戦略の「S」こそが、まさに今回の記事で徹底解説する「セグメンテーション」のことを指す。

あらゆる物事は「前提」→「プロセス」→「成果」という筋道を辿るが「S:セグメンテーション」は、STP戦略の「前提」となる。そしてその「前提」が狂えば、その後の「プロセス」も間違ったものとなり、結果、そこから得られる「成果」はおぼつかなくなる。

もしあなたがこの解説を最後までお読みになれば、本来あるべき「セグメンテーションの目的」や「用途」が理解できるようになる。そしてこれまでの「ただ漫然と消費者を性・年代別でわけていた」という浅はかなセグメンテーションを終わらせることができる。

ただ単に「生活者を性年代別に分けてみた」だけでは、それは一時の「作業」に過ぎない。しかしもしあなたが「セグメンテーションの本質」や「方法論」を理解できれば、それらは「いつ何時でも応用可能な」一生モノのスキルとなる。

もしあなたが「一生もののスキル」を手に入れたいなら、ぜひ最後までお付き合い頂きたい。

 

セグメンテーションとは何か?-セグメンテーションの意味とは?

セグメンテーションとは「STP戦略」の中でも最初に取り組む事柄であり、その後のブランディングやマーケティングの成否を決定づけるものと言ってよい。

STP戦略の一つである「S:セグメンテーション」には「区分けする」や「区分する」などの意味があり、マーケティングの世界では何らかの切り口によって市場を分類することを指す。

そしてSTP戦略の「T」とは「ターゲティング」のことを指す。つまり「S:セグメンテーション」で分類したセグメントのうちのどれかを「ターゲット」として設定することだ。

さらにSTP戦略の「P」とは「ポジショニング」のことであり、そのターゲットから見て「そのブランドならではの独自の役割」を見出し、築き上げていく取り組みを指す。

そしてここまでお読みになれば、賢明なあなたならもうお気づきのはずだ。

「S:セグメンテーション」は、ターゲティングやポジショニングを有効に機能させる上での「前提」だ。そして「前提」である以上、あなたのブランディングやマーケティングの成否を決定的に左右する、極めて重要な概念となる。

そして、巷のマーケティング本やWEB記事にはあまり語られていないことだが「セグメンテーション」には目的別に2種類の手法が存在する。「2種類のセグメンテーション手法」とは、以下の通りだ。

  1. 市場機会を発見するための「市場セグメンテーション」
  2. ターゲットを決めるための「消費者セグメンテーション」

今回の解説では、これら「2種類のセグメンテーション手法」を事例付きで徹底解説しよう。

市場セグメンテーションとは?

冒頭で、セグメンテーションには大きくわけて2つあることを解説した。

  1. 市場機会を発見するための「市場セグメンテーション」
  2. ターゲットを決めるための「消費者セグメンテーション」

上記2つのうち、まず一つ目に解説するのは「市場セグメンテーション」だ。k_bird流に「市場セグメンテーション」を定義すると、下記の通りとなる。

「市場セグメンテーション」とは

「隠れた市場機会を発見する」ことを目的に「市場」を「細分化」して捉えること。

 「市場セグメンテーション」は、主に商品開発の局面やリブランディングの局面で用いられることが多い。以下、解説しよう。

市場セグメンテーションの4つの活用例

「市場セグメンテーション」は、大きく4つの手法にわけることができる。その4つの手法とは、以下の通りだ。

  1. 市場を細分化する
  2. プロセスに割り込む
  3. 市場を拡張する
  4. 市場をリフレーミングする

市場セグメンテーションの手法と事例-1:市場細分化

まずは最もオーソドックスな「市場細分化」について解説しよう。ここからは分かりやすさを重視し「コーヒー市場」を例にとって解説する。

コーヒー市場の市場細分化の例:

まずは下記の図をご覧いただきたい。

市場セグメンテーション&市場細分化の事例001

「コーヒー市場」は大きく2つに市場細分化できる。「家庭用」と「アウトドア(家庭外)用」だ。

家庭用市場において代表的なブランドは、40代以上にとっては「ダバダー♪」のTVCMでもおなじみの「ネスカフェ・エクセラ」や「ネスカフェ・ゴールドブレンド」だろう。

一方で「アウトドア(屋外)用市場」では、スターバックスやドトールコーヒーなどが思い浮かぶ。こちらも説明の必要はないだろう。

家庭用市場における市場細分化の例:AGFの事例

まずは家庭用市場を細分化していこう。家庭用コーヒー市場のガリバーは「ネスカフェ・エクセラ」や「ネスカフェ・ゴールドブレンド」を擁する「ネスレ」だ。

しかし「家庭用市場」を市場細分化していくことで市場機会を見出し、ネスレに対して果敢に切り込んでいったブランドがある。AGF(味の素ゼネラルフーズ)だ。

市場セグメンテーション&市場細分化の事例002

AGFは「家庭用市場」を「自分達用市場vsギフト用市場」に市場細分化し、ギフト用市場に市場機会を見出した。

そして徹底的にギフト市場にマーケティング資源を集中させ、大きな成功を築く。あなたも「コーヒーギフトはAGF~♪」というサウンドをどこかで見聞きしたことがあるはずだ。

結果、現在ではコーヒーギフト市場のガリバーはネスレではなくAGFだ。AGFのコーヒーギフト市場の攻略は「市場細分化の教科書」といってもいいくらいの好事例と言えるだろう。

自分用市場における市場細分化の例①:AGFの事例

しかし、AGFの市場細分化は留まらない。続いて下図をご覧いただきたい。

市場セグメンテーション&市場細分化の事例003

お中元やお歳暮の低迷を受けて、コーヒーギフト市場は衰退しつつある。そこでAGFは視点を変えた市場細分化を実施した。その際に見出した市場機会が「家庭用アイスコーヒー市場」だ。

あなたも原田知世さんのTVCMとともに流れる「ボトルコーヒー~♪ブレンディ♪」というサウンドが耳残りしていることだろう。ボトルコーヒー市場でもまた、AGFはトップブランドとなっている。

自分用市場における市場細分化の例②:AGFの事例

更にAGFは市場細分化の手を緩めない。AGFが次に実施した細分化は「ファミリー世帯vs少人数世帯」という市場細分化だ。

市場セグメンテーション&市場細分化の事例004

AGFは「少人数世帯向け」に市場機会を見出した。そして打ち出したブランドが「ブレンディ・スティック」だ。

こちらも「スティック!スティック!スティック!ブレンディ・スティック♪」というサウンドを、どこかで耳にしたことはないだろうか?

AGFは「家庭用市場」を「ファミリー用市場+少人数世帯用市場」に細分化し、少人数世帯に市場機会を見出した。そして少人数世帯向けに小分け包装で飲める「スティックコーヒー」を提案、こちらも高いシェアを誇っている。

コーヒー市場といえば、ついイノベーティブなマーケティングを展開しているネスレに目を奪われがちだが、AGFもまた、市場細分化を巧みに利用して独自のポジションを築き上げた、優れたブランドだと言えるだろう。

アウトドア(屋外)用市場の市場細分化の例:ジョージア・ボスの事例

さらに、次は「アウトドア(屋外)用市場」にも目を向けてみよう。以下の図をご覧いただきたい。

市場セグメンテーション&市場細分化の事例005

「アウトドアコーヒー市場」は、大きく分けて「プライベート用市場」と「仕事用市場」が存在する。上図を見れば、プライベート用市場はカフェチェーン、仕事用市場は缶コーヒーブランドで住み分けていることがわかるはずだ。

仕事用市場の市場細分化の例①:マウントレーニア・カフェラッテの事例

しかし仕事用市場を「労務作業場用」と「オフィス用」に市場細分化して成功を納めたブランドがある。それが森永乳業の「マウントレーニア・カフェラッテ」だ。

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「マウントレーニア・カフェラッテ」のブランドコンセプトは「手軽におしゃれに、本格カフェラッテ」だ。あなたもOLがランチ時に手にしている姿をご覧になったことがあるのではないだろうか?

仕事用市場の市場細分化の例②:ネスカフェ・アンバサダーの事例

ここから更に、オフィス用市場を市場細分化して登場したのが、あなたもご存じの「ネスカフェ・アンバサダー」だ。

市場セグメンテーション&市場細分化の事例006

ネスレが行ったのは「オフィス用市場」の更なる市場細分化だ。

ネスカフェ・アンバサダーはオフィス用市場を「自分用市場」と「同僚用市場」に細分化し「同僚用市場」に対してサブスクリプションモデルで攻略を図った。

結果「ネスカフェ・アンバサダー」は多くのオフィスで支持を得て収益を伸ばしている。

仕事用市場の市場細分化の例③:クラフト・ボスの事例

しかし、アウトドア用市場の市場細分化はまだ終わりを見せない。

今度はオフィス用市場を「女性社員用」と「男性社員用」に市場細分化し「男性社員用」に向けて登場したブランドがある。最近サントリーから発売された「クラフト・ボス」だ。

市場セグメンテーション&市場細分化の事例007

クラフトボスが掲げているのは「WORK&PEACE」というコンセプトだ。昨今の「働き方改革」の風潮を味方につけながら「デスクワーク時にゆっくり、時間をかけて飲んでも味が落ちない」ことを特徴としている。

あまりの人気のために、一時期出荷停止騒ぎにもなったが、その人気はうまく「市場細分化」が機能した証だ。

市場細分化に有効な「切り口」とは?

ここまで「コーヒー市場」を例にとって「市場細分化」を解説してきたが「市場セグメンテーション」は、STP戦略のそもそもの前提となる。

そしてここまでお読みになれば、いかに市場細分化による「市場機会の発見」が、ブランディングやマーケティングの成果を左右するか、もうご理解いただけたはずだ。

市場細分化には、大きく分けて以下のような切り口が存在する。

  1. シチュエーション
  2. 時間・タイミング
  3. 人の気持ちや価値観
  4. 人と人との間柄

もし、現在あなたのブランドが低迷しているのなら、ぜひ様々な切り口で市場細分化を行ってみて欲しい。思わぬ市場機会が発見できるはずだ。

 

市場セグメンテーションの活用例-2:プロセスに割り込む

続いて2つ目の方法論である「プロセスに割り込む」という考え方を紹介しよう。

あなたはJTBD(Jobs-To-Be-Done)という言葉をご存じだろうか?日本語に意訳すれば「生活者が済ませたがっている事柄」のことを指す。

人はモノやサービスを購入するとき、モノやサービスそのものが欲しいわけではない。そこには「済ませたい(あるいは実現したい)何か」が存在し「それをやり遂げるために必要だから」モノやサービスを欲しがる。

そして、何か物事を済ませたり、やり遂げたりするためには必ず「プロセス」が存在する。その「プロセス」に着目して行う市場セグメンテーションが「プロセスに割り込む」だ。

プロセスに割り込む-1:ブースター(導入美容液)の事例

「プロセスに割り込む」の秀逸な例を紹介しよう。まずは以下の図をご覧いただきたい。

ブースター(導入美容液)の市場セグメンテーション事例

男性諸氏からすれば馴染みがないかもしれないが、女性が日々行うスキンケアは一般に「化粧を落とす」「洗顔する」「保湿する」「(潤いが逃げないように)肌にフタをする」「美容成分を取り入れる」というプロセスを辿る。そしてそれぞれのステップには、対応した商品カテゴリーが存在している。

しかしこのプロセスに「割り込んだ」のが、近年成長著しい「ブースター(導入美容液)」というカテゴリーだ。

女性のスキンケアステップにおけるブースター(導入美容液)の役割は「洗顔後、化粧水をつける前に、肌の吸水性を高めておく」ことだ。

これまで、多くの女性は洗顔後、保湿のために化粧水をつけることが一般的だった。そのステップの間に「肌の吸水性を高める」というステップで「割り込んだ」のがブースター(導入美容液)だ。

k_birdの記憶が正しければ、このブースター(導入美容液)を初めて発売したのはランコムのジェニフィックだ。また、男性諸氏もご存じであろう、松田聖子や松たか子がTVCMを行っていたフジフィルムのアスタリフト・ジェリーアクアリスタ(赤いジェルのもの)もまた、ブースター(導入美容液)だ。

洗顔と化粧水の間に割り込んだブースター(導入美容液)は、今や多くの女性の支持を得て200億円を越える市場に成長している。

プロセスに割り込む-2:アウトバス・トリートメントの事例

さらに、ヘアケア市場でも「プロセス」に着目した市場セグメンテーションで成長している市場がある。「アウトバス・トリートメント市場」だ。

アウトバス・トリートメントの市場セグメンテーション事例

アウトバス・トリートメントは、一般には「洗い流さないトリートメント」とも言われる。

こちらも男性諸氏には馴染みが薄いかもしれないが、女性のヘアケアには「髪の汚れを落とす:シャンプー」「髪に潤いを出す:トリートメント」というステップがある。ここまでなら男性諸氏にも馴染み深いかもしれないが、最近現れたステップが「髪にツヤを出す:アウトバス・トリートメント」というステップだ。

アウトバス・トリートメントの特徴は「入浴の後に(なのでアウトバスと呼ばれる)」「髪にツヤを与える」というステップが加わったことだ。いわば、これまでのヘアケアステップの後に「割り込んだ」とも言える。

その結果、アウトバス・トリートメント市場もまた、多くの女性から支持され200億円を越える市場に成長している。

 

市場セグメンテーションの活用例-3:市場を拡張する

続いて市場セグメンテーションの3つ目の方法論である「市場を拡張する」について解説しよう。

前述の「市場細分化」の解説をご覧になればわかる通り、市場細分化において重要なファクターは「市場細分化をする際の、細分化の切り口」だ。

しかし「細分化の切り口」を探すにあたって拠り所となるのは、そもそもの「市場の定義」だ。

論理学の考え方の一つに「因果推論」という考え方がある。

3C分析とは【使える3C分析のやり方】を徹底解説【無料テンプレート付】でも解説したが、因果推論といえば「AだからB」「BだからC」「CだからE」…と因果関係を結びながら結論を導き出す考え方だ。

しかしどれだけ「AだからB」「BだからC」「CだからE」というロジックが正確だったとしても、そもそもの前提である「A」が間違っていれば、その後の因果関係や結論も間違ったものとなる。

これを市場細分化をセグメンテーションに置き換えれば「そもそもの前提」とは「市場の定義」のことを指す。

市場の定義が変われば、当然「市場細分化の切り口」も変わる。そして「市場細分化の切り口」が変われば、狙うべき「細分化された市場」の定義も変わる。

「市場の定義」はあらゆるブランディング&マーケティング戦略の前提となる。そのため何度も吟味し、思考を巡らせながら決めていくべき最も重要な要素となる。

そして「市場を拡張する」とは、市場を細分化する前に「市場の定義」そのものを変え「市場の定義を拡張してしまおう」という考え方だ。

市場を拡張する-1:JINSの事例

例えば、眼鏡チェーンの例で解説しよう。以下の図をご覧いただきたい。

JINSの市場セグメンテーション事例

普通に考えれば、眼鏡チェーンにおける市場の定義とは「視力が悪い人達」となる。事実、多くの眼鏡チェーンでは市場を「視力が悪い人達全体」と定義し、各社がしのぎを削っている。

しかしそれぞれの眼鏡チェーンが同じ市場で戦っていたら消耗戦になることは想像に難くない。そのような中、それを見越して「視力が正常な人達」に市場を拡張し、フォーカスしたのがJINSだ。

「市場=視力が正常な人達」と定義した結果、JINSが発売にこぎ着けたのがPCのブルーライトをカットするJINS PCだ。

JINS PCは「視力が正常な人達用の眼鏡」であることから「視力が悪い人達」をターゲットとしている眼鏡チェーンとは競合にならない。その結果、JINSはほぼ独占的にブルーオーシャンを開拓していき、眼鏡市場を席巻したことはあなたもご存じの通りだ。

もしJINSが市場の定義を「視力が悪い人達」と定義したままであれば、JINSPCは誕生すらしなかったはずだ。

市場を拡張する-2:ハーゲンダッツの事例

また、アイスクリームブランドであるハーゲンダッツも「市場を拡張する」戦略で成功したブランドだ。

ハーゲンダッツの市場セグメンテーション事例

ハーゲンダッツが市販のアイスクリームを発売したのは1990年に遡る。日本でアイスクリームの輸入が自由化された年だ。

当時「アイスクリーム」といえば「子供のおやつ」という認識が主流だった中、市場の定義を「大人」に拡張したのがハーゲンダッツだ。

「市場=大人」と定義すれば、ロッテやグリコ、森永乳業など「子供向け」に提供されていたアイスクリームブランドは競合でなくなる。

その結果「大人用市場」はほぼハーゲンダッツが独占し、独自のポジションを確立していることは、あなたもご存じの通りだ。

市場を拡張する-3:キリンフリーの事例

さらに「キリンフリー」もまた「市場を拡張する」の事例に当たる。

キリンフリーの市場セグメンテーション事例

こちらも、普通に考えればビールブランドにおける市場の定義は「アルコールが飲める人達」となる。しかしキリンはあえて市場の定義を「アルコールを飲めない(あるいは飲めないシチュエーションにいる)人達」に拡張して成功した例だ。

キリンフリーが発売されたのは2009年の4月だ。

アルコール度数を「0.00%」として「アルコールを飲めない人」に市場を拡張した上で、海ほたるパーキングエリアでイベントを行った。その結果、ブランドの認知度が上がりドライバーや妊婦の支持を得たと言われる。

「市場=ビールが飲めない人」と定義すれば、それまで存在したあらゆるビールブランドは競合でなくなる。結果、キリンフリーは2009年当時、350万ケース強の販売数量を記録している。

 

市場セグメンテーションの活用例-4:市場をリフレーミングする

市場セグメンテーションの手法の最後は「市場をリフレーミングする」だ。

「市場を拡張する」のくだりでも解説した通り、市場セグメンテーションにおいて最も重要なのは「市場そのものの定義」だ。そして「市場を定義し直す」方法論の一つに「市場のリフレーミング」がある。

市場をリフレーミングする-1:クイックルワイパーの事例

「市場のリフレーミング」で大成功を納めたブランドの一つが、花王のクイックルワイパーだ。まずは以下の図をご覧いただこう。

クイックルワイパーの市場セグメンテーション事例

花王のクイックルワイパーが発売される前は、家庭の主婦の掃除は「掃除機でごみを取る」「ぞうきんで床を磨く」の2つに分かれていた。

しかし花王は主婦の行動をリフレーミングし「掃除機とぞうきんの役割を一つにまとめて一度にできる商品」としてクイックルワイパーを発売した。その結果、クイックルワイパーは大ヒットし、今ではどのご家庭でも必ずある定番のブランドとなっている。

もし花王が「掃除機はごみをとるもの」「ぞうきんは床を磨くもの」と「別物」として捉えていれば、クイックルワイパーのような発想は出てこなかったことだろう。

市場をリフレーミングする-2:ファブリーズの事例

さらに、P&Gの「ファブリーズ」もまた、クイックルワイパーと同様に「市場のリフレーミング」を通して大ヒットしたブランドだ。

ファブリーズの市場セグメンテーション事例

P&Gが行ったのは「除菌スプレー市場」と「消臭剤市場」を一つにまとめた「市場のリフレーミング」だ。こういった「市場のリフレーミング」が功を奏すると、例えばファブリーズの場合「除菌スプレー市場」と「消臭剤市場」の両方から顧客が流れ込んでくるため、大ヒットにつながりやすい。

さらに「市場と市場の間」に「これまでなかった」市場が出現することになるため、当然競合となるブランドが存在しない。結果、必然的に自社ブランドがトップシェアとなる。

市場をリフレーミングする-3:ドクターシーラボの事例

更に、3つの市場を「リフレーミング」することで大ヒットした事例も簡単に紹介しよう。

ドクターシーラボの市場セグメンテーション事例

ドクターシーラボの「アクアコラーゲンジェル」は「化粧水」「乳液」「美容液」の3つの用途が一つになったスキンケアブランドだ。スキンケア業界の中では「オールインワンジェル」と呼ばれる。

こちらは「化粧水市場」「乳液市場」「美容液市場」の3つの市場を一つにまとめる「市場のリフレーミング」を行い、大ヒットした事例だ。

消費者セグメンテーションとは?

ここまで解説してきた「市場セグメンテーション」は「隠れた市場機会を発見する」ことを目的としたセグメンテーション手法だ。

しかしセグメンテーションにはもう一つ「ターゲットを決めるためのセグメンテーション」が存在する。それが「消費者セグメンテーション」だ。多くのマーケティング担当者にとっては「市場セグメンテーション」よりも「消費者セグメンテーション」の方が馴染みが深いのではないだろうか?

しかし冒頭でもお伝えした通り、多くの企業は消費者セグメンテーションを深く考えることなく、なんとなく「性・年代別」でセグメンテーションを行っていることが多い。

「性・年代別」の消費者セグメンテーションとは、例えば生活者を「男女別」かつ「20代/30代/40代/50代/60代別」などに分け、その中の「20-30代/女性」などをターゲットに据える、という方法だ。

しかしその方法は、必ずしも正しいとは言えない。

消費者セグメンテーションは、ターゲットを決める上で重要な基盤となる。そして、もし消費者セグメンテーションが不適切だったとしたら、狙うべきターゲットもまた不適切なものとなる。

その結果、あなたのブランディング活動は初めから躓くことになり、どんなに良い商品を開発しても、そしてどれだけ多くの広告宣伝費をかけたとしても、ブランディングの成果はおぼつかない。

また、現在ブランディングやマーケティング活動を行ってはいるものの、その成果が芳しくないのなら「消費者セグメンテーション」の再考が必要だ。

なぜなら不適切な消費者セグメンテーションが、その後の「ターゲティング」や「ポジショニング」を狂わせてる可能性もあるからだ。

 

消費者セグメンテーションとは何か?消費者セグメンテーションの意味

あなたは「消費者セグメンテーションの目的は何か?」と聞かれて、周囲の人達に説明できるだろうか?

k_birdのこれまでの実務経験からすると「なぜその軸で消費者セグメンテーションを行ったのか?」と尋ねると、とまどうマーケティング担当者は意外に多い。

特に、漫然と「性・年代別」で消費者セグメンテーションを行っているマーケティング担当者の場合「言われてみれば何でだろう…」としばらく考え込んでしまうこともしばしばだ。

k_bird流に「消費者セグメンテーション」を定義すると、下記の通りとなる。

「消費者セグメンテーション」とは

自社ブランドに感情移入してもらいやすく、購入してもらいやすい人達を発見することを目的に、生活者を分類すること。

 

上記の定義には「そもそも消費者セグメンテーションとは何か?」という視点に加えて「消費者セグメンテーションの目的は何か?」という2つの疑問に対する答えが含まれている。

上記の定義の通り、消費者セグメンテーションとは「生活者を分類すること」であり、その目的は「自社ブランドに感情移入してもらいやすく、購入してもらいやすい人達を発見すること」ことだ。

あなたのブランドも含めて、多くのブランドはブランディング投資予算を無限に持っているわけではない。そして限りあるブランディング投資は、できるだけ効果的かつ効率的に運用し、成果を生み出す必要がある。

そのためには、薄く広く「国民全員」を対象とするのではなく「ニーズがありそうな人達」を見極め、その人達を対象にブランディングやマーケティングの資源を集中させるのは自明の理だ。

そのために、国民全員の中から「ニーズがありそうな人達」を塊(セグメント)として見つけ出し、更にその塊(セグメント)に狙いを定められるように消費者を分類するのが消費者セグメンテーションの目的だ。

ここでぜひ立ち戻って頂きたい。先ほど紹介した「性・年代別」の消費者セグメンテーションは、果たして「ニーズがありそうな人達」を塊として「見える化」できるセグメンテーション軸だろうか?

消費者セグメンテーションは、ただ単に消費者を分類すれば良いというものではない。

どのような軸で分類すれば、ニーズの塊が「見える化」できるのか?かつ、どのような軸で分類すれば、あなたのブランドにとって意味がある分類になるのか?を念頭に置きながら、消費者セグメンテーションの軸を探すことが重要だ。

そのために、様々な消費者セグメンテーションの軸について説明を加えていこう。

 

セグメンテーション変数の例

消費者セグメンテーションには、大きくわけて4つのセグメンテーション変数が存在する。

  1. 地理による消費者セグメンテーション
  2. デモグラフィックによる消費者セグメンテーション
  3. サイコグラフィックによる消費者セグメンテーション
  4. 行動による消費者セグメンテーション

以下、一つ一つ解説していこう。

セグメンテーション軸-1:ジオグラフィック変数

まずは消費者を「地理」という視点で細分化するセグメンテーション軸を紹介しよう。マーケティングやブランディングの世界では「地理的変数」とか「ジオグラフィック変数」などと呼ばれる。

この「地理による消費者セグメンテーション」は、小売業界や飲食業界、不動産業界など「エリアマーケティング」が重要となる業界でよく使われるセグメンテーションだ。

例えばコンビニエンスストアの場合、市場を「オフィス街」と「住宅街」に分け、それぞれのセグメントによって品揃えを変えているのは有名な話だ。

また消費財マーケティングでも、k_birdが携わった「穀物由来のアルコール飲料(ウイスキーなど)」の市場導入の際には、日本の北側の寒い地域で飲まれることが多いため、日本を大きく「北側」と「南側」に分類し、ブランディング投資予算を日本の「北側」の地域に多く配分して成功させたことがある。

一方で「果物由来のアルコール飲料(ワインなど)」は日本の「南側」の暖かい地域で飲まれることが多いため、ブランディング投資を日本の南側の地域に多く配分した。

このように「地理」による消費者セグメンテーションは、その地域に住んでいる人達の特性や可処分所得、あるいは文化や気候など念頭に置いた上でセグメンテーションを行うことが肝要となる。

セグメンテーション変数-2:デモグラフィック変数

デモグラフィック変数による消費者セグメンテーションとは、人や家庭の属性を切り口にしたセグメンテーションのことだ。

具体的には「年齢」「世帯規模」「性別」「職業」「所得」などが切り口となる。マーケティングやブランディングの世界では「人口動態変数」と呼ばれる。

冒頭で紹介した「性・年代別」も「デモグラフィックによる消費者セグメンテーション」の一つであり、現在、日本企業で最も使われているセグメンテーション軸だ。

しかしこのセグメンテーション軸は安易に採用されやすい。

冒頭でも説明した通り、消費者セグメンテーションの目的は「ニーズの塊の見える化」であって「分けることそのもの」ではない。

もしあなたのブランドが「デモグラフィックによる消費者セグメンテーション」を採用しているなら、ぜひ「このセグメンテーション軸で、ニーズの塊は見える化できているのか?」を再考してみて欲しい。

セグメンテーション軸-3:サイコグラフィック変数

続いては「サイコグラフィック変数による消費者セグメンテーション」だ。

サイコグラフィックによる消費者セグメンテーションは、生活者の心理や価値観、ライフスタイルなどを切り口にしたセグメンテーションだ。マーケティングやブランディングの世界では「心理的変数」や「サイコグラフィック変数」と呼ばれる。

例えば日本国内の女性の「スキンケア商品に対する価値観」で分類すると、以下の通りとなる。

  • 高級志向派…「高級なもの=良いもの」という価値観を持つセグメント
  • 流行志向派…「今流行っているもの=良いもの」という価値観を持つセグメント
  • 機能志向派…「美容メカニズムや美容成分が明確なもの=良いもの」という価値観を持つセグメント
  • 自然志向派…「オーガニックなもの=良いもの」という価値観を持つセグメント
  • 無関心派…スキンケアの手入れよりメークアップで「隠す」ことを重視するセグメント

この「サイコグラフィックによる消費者セグメンテーション」は「地理的変数」や「人口動態変数」と異なり、一般に公表されている人口統計資料に基づけないことから、各セグメントの市場規模(人口)の推計が難しい。

そのため、市場調査に基づく「クラスター分析」という手法でセグメンテーションが行われることが多い。

近年、多くの市場で市場が成熟化が進んでいる。市場の成熟化が進むと、人々の好みや価値観は細分化&多様化していくことが多い。よって「ニーズの塊を見える化する」意味で、この「サイコグラフィックによる消費者セグメンテーション」の重要性は日に日に増してきている。

セグメンテーション軸-4:行動変数

最後に「行動変数による消費者セグメンテーション」だ。

行動による消費者セグメンテーションは、商品の利用用途や利用頻度などを切り口にした市場セグメンテーションだ。マーケティングやブランディングの世界では「行動変数」と呼ばれる。

この行動変数で最も多く使われるのが「ノンユーザー」「ライトユーザー」「ヘビーユーザー」など、利用頻度による分類だ。

このセグメンテーションの切り口は、主にCRM戦略やグループインタビューの際に用いられることが多い。ほとんどの企業は、顧客を「ノンユーザーからライトユーザーへ」「ライトユーザーからヘビーユーザーへ」育てたいと思っているはずだ。

そのような時には「行動変数」を用いる。例えば顧客を「ライトユーザー」と「ヘビーユーザー」に分け「自社ブランドのライトユーザーとヘビーユーザーの違いは何か?」という視点で顧客を眺めてみるのだ。

この違いをグループインタビューなどで明らかにすることで、例えば「ヘビーユーザーには認識されているものの、ライトユーザーには認識されていなかった利用用途」が明らかになれば、その利用用途を「ライトユーザー」に提案することで「ライトユーザー」の利用頻度を上げ、ヘビーユーザーに育て上げる、といったことが可能になる。

 

終わりに

今回は「市場&消費者セグメンテーションの具体手法を【事例付き】で徹底解説」と題してセグメンテーションについて解説した。ぜひ、あなたのチームのブランドマーケティングにおいて、有益な示唆となれば幸いだ。

今後も、折に触れて「ロジカルで、かつ、直感的にわかるブランディングの解説」を続けていくつもりだ。(過去記事と今後の掲載予定はこちら

しかし、多忙につき、このブログは不定期の更新となる。

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