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ポジショニングとは?強いポジショニングの設定手法を事例付で解説

ブランディングの解体新書

ポジショニング戦略は、ブランドを成功に導く上で決定的に重要だ。

このブログに辿り着いたあなたなら、どこかで「STP」という考え方を目にしたことがあるはずだ。

STP戦略の「S」とは、以前このブログで解説した「セグメンテーション」のことだ。セグメンテーションには「区分けする」や「区分する」などの意味があり、マーケティングの世界では何らかの切り口によって市場を細分化することを指す。

そしてSTP戦略の「T」とは「ターゲティング」のことを指す。つまり「S:セグメンテーション」で細分化したセグメントのうちのどれかを「ターゲット」として設定することだ。

「セグメンテーション」や「ターゲティング」は、比較的わかりやすい概念だ。あなたがマーケティング担当者なら「どう市場を細分化して、誰をターゲットにするべきか?」は、無意識にでも念頭に置いているはずだ。例えば「スキンケア市場における独身OL層」「軽自動車市場の専業主婦層」といった具合だ。

一方で「ポジショニング」は「セグメンテーション」や「ターゲティング」に比べると直感的に理解しずらい概念だ。

しかし、重要なことなので繰り返そう。「ポジショニング」はブランディングやマーケティングの成否を決定づける、極めて重要な考え方だ。

にもかかわらず「ポジショニング」が正確に理解されておらず、軽視されたままマーケティングミックス(マーケティングの4P)に展開してしまう実務現場が後を絶たない。

あるいは一面的な理解に留まっており、生活者を置き去りにしたブランディングやマーケティングを展開してしまった結果、当初の目的である「ブランディング=感情移入による指名買い」とは逆に、価格競争に巻き込まれてしまっているブランドも多く見かける。

今回はブランディングやマーケティングを成功に導く上で「最も」重要だと断言していい「ポジショニング」について解説する。内容は以下の通りだ。

  1. ポジショニング戦略とは何か?
  2. ポジショニングマップの弊害とは何か?
  3. マーケティングにおいてポジショニングはなぜ重要なのか?
  4. ブランディングやマーケティングを成功に導くポジショニング設定手法と事例
  5. ブランドポジショニングステートメントとは何か?

ポジショニングの意味や設定方法を体系的に理解できていなければ、あなたが持っているマーケティング知識は曖昧で、かつ断片的なままとなる。そして断片的な理解のままでは、チームメンバーや上層部に対して論理的に伝えることも、動いてもらうこともままならない。

もしこの解説を最後までお読みいただければ、あなたは「ポジショニング」の意味や「ポジショニングの軸の決め方」などが体系的に理解できるようなる。その結果、周りのチームメンバーに対しても理路整然と説明できるようになるはずだ。

 

 

ポジショニングとは?ポジショニング戦略の意味とは?

教科書的な「ポジショニング戦略の定義」とは?

あなたは「ポジショニング」に対して、どのような認識をお持ちだろうか?まずは一般的なポジショニングの定義を確認しよう。


ポジショニングとは、ターゲット顧客の頭の中に、自社製品について独自のポジションを築き、ユニークな差別化イメージを植えつけるための活動。

顧客に自社製品のユニークな価値を認めてもらうことで、競合製品に対して優位に立つことを目的にしている。

-グロービス・マネジメント・スクール|MBA用語集

上記の定義は極めて正しい。

しかし実務の現場で語られているポジショニングは「ポジショニング戦略=差別化」として「競合ブランドとの違い」に力点が置かれている。

事実、k_birdの外資系コンサルティングファームでの経験及び広告代理店での戦略プランナーでの経験と照らしても、クライアントの実務者の中では「ポジショニング戦略=競合ブランドとの差別化」という文脈で認識されていることが大半だ。

しかし「ポジショニング戦略=差別化」と短絡的に捉えたままでは、ブランディングやマーケティングの成果はおぼつかないどころか、時に弊害を引き起こす。まずはその理由を解説しよう。

「ポジショニングマップ」とは?ポジショニングマップがもたらす弊害

この記事をご覧になっているあなたなら、既にどこかで「ポジショニングマップ」をご覧になったことがあるはずだ。

一般にポジショニングマップとは「自社ブランドの位置づけを2つの軸を用いて視覚化したもの」とされる。以下がポジショニングマップの事例だ。

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しかし「ポジショニング戦略=ポジショニングマップを創ること」という短絡的な理解では、あなたはチームをミスリードしてしまうことになる。

もう一度、ポジショニングマップをじっくり眺めてみて欲しい。

鋭いあなたならもうお気づきかもしれないが、ポジショニングマップは、単に「競合ブランドとの違い」を2つの軸で視覚化しているに過ぎない。つまり「競合ブランドとの差別化」に力点が置かれるがあまり、本来最も重要なはずの「生活者の感情」が置き去りになってしまうのだ。

さらに、過度な「差別化の追求」は、扱いを誤ると悲惨な結果を生む。なぜなら、差別化には以下のような前提が内在しているからだ。

差別化とは?

  1. 他の競合ブランドとの「比較」が前提
  2. 比較した上で「競争優位」を築くことが前提


差別化とは「競合ブランドと比較」し「競争優位に立つ」ことが前提になっている。その観点から見れば、実務の現場でよく使われるポジショニングマップはわかりやすく、非常に有用なツールだ。

しかし「ポジショニング戦略=差別化の追求」と曲解すると、本来付加価値を生み出すためのブランディングやマーケティングが、逆に価格競争を助長することになる。

ではなぜ「ポジショニング戦略=差別化の追求」が価格競争を助長することになるのだろうか?

「ポジショニング戦略=差別化」が価格競争を助長する

日本企業は、欧米企業と比べるとブランドマーケティングが不得意だといわれる。その理由としてよく挙げられるのが、以下の2点だ。

  • 伝統的に日本人は、曖昧で抽象的な概念やコンセプトをビジネスに組み込むことが苦手だから。
  • 日本の戦後の経済発展は「科学技術」がけん引してきたため「目に見える物理的な側面」を重視しがちだから。

現に経済産業省の調査では、日本企業の無形資産投資はハイテク技術など研究開発が中心となっている。IT投資と合わせると、無形資産投資の70%が、いわゆる「ハイテク投資」だ。

しかし一方で、米英やオーストラリアなどの欧米企業は、無形資産投資のうち「ハイテク投資」は約50%だ。残りの50%はブランドや人材への投資に向けられている。つまり無形資産への投資姿勢に対して、日本と欧米では約20%もの違いがあるのだ。

過度な欧米礼賛は慎むべきだが、日本の企業は「商品の価値」=「機能的な価値」と捉えがちだ。ここに「ポジショニング=差別化」と考え方が組み込まれた時、いったい何が起きるだろうか?

「ポジショニング戦略=差別化の追求」と曲解すると、以下のようなことが起こる。

  1. 競合ブランドとの差別化に邁進し、どんどん素材が高価になったり、機能を追加したり、品質レベルを向上させていく。
  2. そしてこれらが「競合ブランドとの比較」の中で繰り返されるため「ラットレース」状態となる。
  3. そしていつか、物質的な機能や性能の向上が、生活者が必要としている臨界点を超え始める
  4. この時、差別化競争によってもたらされた機能や性能は「過剰価値」となり、生活者から見たら「どうでもよい違い」として差別性は持たなくなる。
  5. 結果、日本製品は「多機能で高品質なのに」価格競争に陥ってしまう。

上記のことからもわかるように「ポジショニング戦略=差別化の追求」と短絡的に考えてしまうのは、とても危険であることがおわかりいただけたはずだ。

ポジショニング戦略の真の意味とは?

それでは、本来のポジショニング戦略はどうあるべきだろうか?k_bird流のポジショニングの定義はシンプルだ。

ポジショニングの定義とは?
「生活者がそのブランドに対して認識している独自の役割」


上記の「ポジショニングの定義」の背景は、以下の通りだ。

  1. ブランディングの目的は、競合ブランドと比較して優位に立つことではなく、生活者から見て「ほかに替えられない」独自の存在になることだ。
  2. ブランディングにおける賢い勝ち方は「競争に勝つ」ことではなく「競争をしないで勝つ」ことだ。
  3. 「物体としての製品や商品」は企業が創るものだが「ブランド」は生活者の「認識」の内側で作られるものだ。

ブランディングとは、自社ブランドに対する感情移入を形創り、ほかに替えられない独自の存在として「指名買いし続けてもらえる状況」を創り出すことだ。

 これらを踏まえれば、ブランディングにおいては「比較」という考え方自体がそぐわないことがおわかりになるはずだ。なぜならブランディングの目的とは「そもそも比較しないで選んでもらう」ことだからだ。

そしてこれは「競争に勝つ」のではなく「競争しないで勝つ」ことにも通じる。

「競争をする」ということは、既存の競争ルールの中で、常に比較をされながら体力勝負の消耗戦に挑むことを指す。しかし「ポジショニング戦略」には「競争をしないでも勝てる領域」を見つけたり、あるいは「生活者ニーズを先回りして捉え、市場創造型の賢い戦い方をする」という考え方が背景にある。

加えて重要なポイントは、ブランディングに求められることが「競合ブランドと、スペック的にどう違うのか?」という「企業側から見たモノの目線」ではなく「私たち生活者にどのような喜びをもたらしてくれるのか?」という「顧客側が感じ取る価値の目線」であることだ。

多少乱暴に言ってしまえば、ブランディングは「物質的な機能競争」だけでなく「顧客の認識の奪い合い」という側面がある。

例えば、スマートフォン業界が典型だ。

「機能」や「スペック」だけで言えば、iPhoneより国産スマートフォンの方が上であることは、多くの識者が指摘している。つまり「スペック的な差別化競争」で言えば、国産スマートフォンが優れているということになる。

しかし「イノベーティブでユーザーフレンドリーなスマートフォン」という「認識」ではiPhoneの独り勝ちだ。どんなに国産スマートフォンメーカーが「うちの製品の方がイノベーティブ!」「これは事実だ!」と叫んでみたところで、生活者から見れば物体的な事実はどうあれ「iPhone=イノベーティブ&ユーザーフレンドリー」という認識がすべてだ。そしてそれが生活者がiPhoneを選ぶ基準となる。

これらを踏まえると、ポジショニング戦略の本質は「差別化」ではなく「独自の価値化」だ。

そして「他に替えられない独自の役割」を決め、それにふさわしい「認識」を創り上げていくことが重要であることがお分かりいただけるだろう。

ブランディング・マーケティングにおける「ポジショニング」の重要性

ブランドのポジショニングとは、自社ブランドの役割を明確にし、他社ブランドとは異なる「独自の役割」を定義することだ。そしてポジショニング戦略は商品戦略・価格戦略・流通戦略・プロモーション戦略などマーケティングミックス(4P)の方針を最終的に決定づける重要な役割を果たす。

時々「作る商品が決まってからポジショニングを考える」というプロセスを踏む企業も散見されるが、本来ポジショニングという作業は、商品開発の初期段階から決めておく必要がある。

なぜなら、企業の中で商品開発が進むと、様々な部門がプロジェクトに関与してくるため、それらを統率していく方針が必要となるからだ。

ブランドマーケティングに長けた外資系のグローバル企業では、ブランドポジショニングはすべての役員が出席する会議で合意されることが多い。

もし様々な理由でブランドポジショニングの変更が生じた際には、再び全役員の合意が求められる。これは商品開発にかかわるすべての部門へ方針変更を指示し直さなければならないからだ。

このように、ポジショニング戦略は、その後のマーケティングミックス(4P)の有りようを決定づける、極めて重要な意思決定であることが、ご理解いただけたはずだ。

 

ブランディング・マーケティングを成功に導く「ポジショニングの設定手法」

続いて、いよいよブランディングやマーケティングを成功に導く「ポジショニングの設定手法」について解説しよう。

優れたポジショニングを設定し、築き上げていくためには、大きく分けて2つの要素の検討が必要となる。

  1. ポジショニングの軸の取り方:優れたポジショニングを捉える「視点」の置き方
    いわゆる「ポジショニングの切り口」だ。実務の現場では「ポジショニングの軸」などと呼ばれる。いわゆるポジショニングマップ上の2軸をイメージするとわかりやすい。
  2. ポジショニングの軸の決め方:ポジショニングの「選択基準」
    ポジショニングは「生活者の認識の内側」で築かれる以上、その切り口は無数に存在する。それらのどの切り口が「戦略上」有効なのかを選び取るには、選び取る際の選択基準が必要となる

以下、それぞれ事例を交えながら解説していこう。

 

ポジショニングの軸の取り方:ポジショニングマップの事例で解説

ポジショニングを考えるに当たっては、ブランドを「どのような視点で」ポジショニングするのか?という「軸の設定」が必要不可欠だ。

しかし重要なことなので繰り返すが、ポジショニングマップの軸を設定する際に「競合ブランドとの違い」だけでなく「生活者にとっての役割」を強く意識することが求められる。

以下、11個の「ポジショニングマップの軸の取り方」を事例付きで簡単に紹介していこう。ざっとお読みいただければ、あなたの中に「ポジショニング感覚」が身に付くはずだ。

ポジショニングの軸の取り方-1:ブランドの属性に基づいたポジショニングの事例

ポジショニングの軸を考える上で1つ目の視点は「ブランドの属性」に基づいたポジショニングだ。「属性」とは、そのブランドが持っている性質や特徴を指す。

例えばホテルチェーン業界の場合、リッツカールトンホテルは「大都市圏」において「優雅で贅沢なホテル」というポジショニングを築いている。一方で「東横イン」は「中規模都市圏」で「リーズナブルに泊まれるホテル」という役割でポジショニングしている事例だ。

この2社は、同じ「ホテルチェーン業界」の中に存在するブランドだが、互いにすみ分けたポジショニングがなされていることがお分かりいただけるはずだ。

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ポジショニングの軸の取り方-2:ブランド提供価値に基づいたポジショニングの事例

2つ目の視点は「ブランド提供価値」に基づいたポジショニングだ。「ブランド提供価値」とは、ブランドが生活者に提供できる「喜び」を指す。


例えばカフェチェーン業界でいえば、スターバックスは「おしゃれでくつろぎのある場所」というブランド提供価値で独自のポジショニングを築いている。これに対しドトールコーヒーは「気軽に立ち寄れる一時のオアシス」というブランド提供価値でポジショニングしている事例だ。

この2ブランドはよく「満足度順位」などで比較され、議論されがちだが「ポジショニング」という視点で見た場合「それぞれが別のポジションのブランド」であることから、そもそも比較すること自体が間違っていることに気が付けるはずだ。

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ポジショニングの軸の取り方-3:ブランドパーソナリティに基づいたポジショニングの事例

3つ目の視点は「ブランドパーソナリティ」に基づいたポジショニングだ。「ブランドパーソナリティ」とは、そのブランドならでは際立った「個性」を指す。


例えば二輪車業界でいえば、ホンダやスズキ、カワサキなど日本勢は「高品質でリーズナブルな中型バイク」というポジショニングだ。それに対しハーレーダビッドソンは「自由で解放の象徴となる大型バイク」というブランドパーソナリティでポジショニングしている事例だ。

物理的な品質や機能での差別化が難しくなった現在では、戦略的にブランドパーソナリティを創り上げることによって「強いポジショニング」を築くことが可能だ。

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ポジショニングの軸の取り方-4:ブランドアイデンティティに基づいたポジショニングの事例

4つ目の視点は「ブランドアイデンティティ」に基づいたポジショニングだ。「ブランドアイデンティティ」とは「そのブランドならではの一貫した姿勢」を指す。


例えばスマートフォン業界でいえば、国産スマホは「多機能&高品質を追求する」というブランドアイデンティティでポジショニングしているのに対し、アップルのiPhoneは「革新性とデザイン性を追求する」というブランドアイデンティティでポジショニングしている事例だ。

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ポジショニングの軸の取り方-5:ブランドが使用される「用途」に基づいたポジショニングの事例

5つ目の視点は「ブランドが使用される用途」に基づいたポジショニングだ。

例えば家庭用コーヒー業界でいえば「ネスカフェエクセラ」や「ネスカフェゴールドブレンド」は「家庭で気軽に飲めるインスタントコーヒー」としてポジショニングを築き上げている。

一方でAGFは「コーヒーギフト」という役割で定番化している事例だ。あなたも「コーヒーギフトはAGF♪」というサウンドロゴは、どこかで耳にしたことがあるはずだ。

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ポジショニングの軸の取り方-6:ブランドが使用される「時間」に基づいたポジショニングの事例

6つ目の視点は「ブランドが使用される時間」に基づいたポジショニングだ。

マーケティングに詳しい方ならご存じかもしれないが「ブランドが使用される時間」に基づいて成功したのが、アサヒ飲料の缶コーヒーブランドである「ワンダ・モーニングショット」だ。

「ワンダ モーニングショット」は明確に「朝専用」という役割でポジショニングすることで「目覚めの一杯」「仕事の始業前の気合い入れ」などのニーズに応え、当時缶コーヒー市場で5位に甘んじていた「ワンダ」を業界3位に押し上げている。ポジショニングの重要性を物語る事例だ。

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ポジショニングの軸の取り方-7:ブランドが使用される「空間」に基づいたポジショニングの事例

7つ目の視点は「ブランドが使用される空間」に基づいたポジショニングだ。

例えば屋外用コーヒー業界でいえば、缶コーヒーの「ジョージア」や「BOSS」は「屋外で気軽に飲めるコーヒー」というポジショニングだ。それに対し森永乳業の「マウントレーニア・カフェラッテ」は「オフィス内で気軽に飲めるカップコーヒー」という役割で定番化している事例だ。

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ポジショニングの軸の取り方-8:ブランドが選択される「プロセス」に基づいたポジショニングの事例

8つ目の視点は少し変わり種だが「ブランドが選択されるプロセス」に基づいたポジショニングだ。

例えば、かつて生命保険業界では系列の保険代理店が保険商品を販売するのが主流だった。しかしそこに現れたのが「各生命保険会社の保険を横断して選べる窓口」というポジショニングをとった「保険の窓口」だ。

いわば、生活者が生命保険を検討するプロセスの中で「異なる会社の生命保険を比較する」という考え方を持ち込み、その「窓口」というポジションを確立することで急成長を遂げた事例だ。

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ポジショニングの軸の取り方-9:競合ブランドの「逆張り」を行くポジショニングの事例

9つ目の視点は「競合ブランドの逆張りを行く」ポジショニングだ。

例えば、インターネット検索では「高度な検索技術と徹底的にシンプルなUI」で目的の情報に辿り着かせようとするGoogleと「多くの情報を集約して、情報ポータルの利便性を武器に自社に囲い込もうとする」Yahoo!は、完全に逆張りの戦略をとっている事例といえる。

また「リベラルを追求する」朝日新聞と「保守を追求する」読売新聞も、互いに逆張りを行くポジショニング戦略の典型事例だ。

また「売れ筋商品の提案と見つけやすい売り場環境」を追求する多くの量販店に対して逆張りを行っているのが「奇妙なモノが並んでるからこそ、時間を忘れて探す楽しさがある」ドン・キホーテだ。

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ポジショニングの軸の取り方-10:オケージョン別のマルチポジショニングのj例

10個目の視点は「オケージョン別のマルチポジショニング」だ。

例えばお菓子ブランドである「ポッキー」のポジショニングのベースは「子供が喜ぶチおやつ」だ。

しかし一方でオフィスというオケージョンでは「手を汚さずに食べられるチョコレートビスケット」としてポジショニングされている。また、二次会バーというオケージョンでは「おつまみにもなるマドラー」としてポジショニングされている。

市場が成熟し新たな市場を開拓していく必要がある局面では、メイン市場以外のサブ市場を発見した上で「マルチポジショニング」戦略をとることが有効だ。

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ポジショニングの軸の取り方-11:ブランドの「ターゲット」に基づいたポジショニングの事例

最後の視点は「ブランドのターゲット」に基づいた視点だ。

例えばプレミアムアイスクリームブランドである「ハーゲンダッツ」は、それまで「子供のおやつ用」とされていたアイスクリームに「大人の贅沢用」という役割を持ち込み、強いポジショニングを築いた事例だ。

また「レッドブル」も「滋養強壮剤といえは中年のおじさん用」が定番だった市場に「冒険好きな若者用」という役割を持ち込み、一定の地位を確立しているのは、あなたもご存じの通りだ。

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ポジショニングの軸の決め方:ポジショニングの選択基準

続いて、優れたポジショニングの軸を決める選択基準を解説しよう。これまで解説したように、優れたポジショニングを実現する視点(軸の取り方)は様々あるが、その中からより実効性の高い視点を選び取るためには、優れたポジショニングを実現するための「選択基準」が必要だ。

以下、ポジショニングの成功確率を劇的に高めるための「4つの選択基準」について解説しよう。

ポジショニングの軸の決め方-1:細分化された市場でNo.1になれるか

1つ目の選択基準は「細分化された市場でNo.1になれるかどうか」だ。

市場細分化と言えば、STP戦略の中の「S:セグメンテーション」のことでは?と思ったかもしれないが、その通りだ。ポジショニングとセグメンテーションは、実は密接な関係がある。

「ポジショニング=生活者から見た独自の役割」であることはすでに述べたが「独自の役割」という認識を創る上で重要となるのが市場細分化だ。

例えば、あなたは「新聞」と聞いて、何新聞を思い浮かべるだろうか?恐らく大都市にお住いの方なら「朝日新聞」や「読売新聞」と答える方が多いだろう。地方の方なら地方紙だろうか?

では「ビジネスシーンで役に立つ新聞は?」と細分化してみよう。あなたはどのように答えるだろうか?恐らくあなたの答えは変わり「日経新聞」と答えるはずだ。

これは「新聞を活用するシーン」の中でも、細分化された「ビジネスシーン」の中で、日経新聞は「他にない独自の役割」を担っていることを意味する。そしてその結果「ビジネスシーンに新聞を役立てたい」と思うビジネスパーソンは、朝日新聞や読売新聞と比較することなく、日経新聞を選ぶのだ。

更に別の例を紹介しよう。

あなたは「家庭用コーヒー」と聞いて、どのようなブランドを思い浮かべるだろうか?恐らくは「ネスカフェ」ではないだろうか?

では「家庭用ボトルコーヒーでは?」と細分化してみよう。あなたはどのように答えるだろうか?恐らくは「ブレンディ(味の素ゼネラルフーズ)」と答えるはずだ。

これは「家庭用コーヒー市場」の中でも細分化された「ボトルで飲むアイスコーヒー」というシーンで、ブレンディが「ほかにない独自の役割」を担っていることを意味する。そして恐らくあなたは「家庭用ボトルコーヒー」と聞いて「ブレンディ」以外のブランド名を思い浮かべることはできないはずだ。

結果「ブレンディ」は他のブランドとは比較されずに選ばれることになる。

米国での事例になるが、ある調査では1923年当時に25の異なる商品カテゴリーの中でリーダーだった25ブランドのうち、20ブランドが今日なおリーダーであり続けているという。数十年間のうちにリーダーの位置を失ったのはわずかに5ブランドにすぎない。

それぐらい「カテゴリーリーダー(=ある役割のトップブランド)」という地位は、ブランドの生存率を劇的に高める。

強いポジショニングを創るためには、まずは徹底的に「細分化された市場でNo.1になりえるか?」を検討しよう。そして「差別化」ではなく「独自化」を意識しながらそのカテゴリーでトップブランドを目指そう。

さらにトップブランドになれた暁には、そのカテゴリー自体のパイを広げるブランド戦略を推進すべきだ。

ポジショニングの軸の決め方-2:新しいカテゴリーが創造できるか?

2つ目の選択基準は「新しいカテゴリーを創造できるか?」という視点だ。

新しいカテゴリーを創造し、いち早く生活者の認識の内側に入り込めれば、あなたのブランドは「そのカテゴリーを牽引するリーダーブランド」として認識されやすくなる。

どのようなカテゴリーであれ、市場をリードするブランドはほとんどと言っていいくらい、生活者の認識の内側に最初に入り込んだブランドだ。

例えば、かつて世界の自動車業界では「車と言えばGM&フォード」という時代があった。しかしそこに「高級」というカテゴリーを創造し、そのカテゴリーで生活者認識の内側にいち早く入り込み、トップブランドとなったのがメルセデスだ。

さらに今度は「高級」というカテゴリーの中に「スポーティ」というカテゴリーを創造し、そのカテゴリーでトップブランドとなったのがBMWだ。

また、眼鏡業界でも「目が悪くない人のPC作業用」というカテゴリーを創造し躍進したのがJINSだ。

「独自の役割が担える、新たなカテゴリーが創造できるか?」は、優れたポジショニングを実現する上で重要な選択基準となる。

ポジショニングの軸の決め方-3:競合ブランドをジレンマに追いやれるか?

あなたのブランドは、業界のトップブランドだろうか?

恐らくそうではないだろう。なぜなら業界トップブランドは各業界に1つしかなく、その他はすべて2番手以下のブランドだからだ。

もし、あなたのブランドが業界の2番手以下のブランドなら、競合ブランドをジレンマに追いやるポジショニングは有効だ。ジレンマに追いやるポジショニングとは、リーダーブランドにジレンマを引き起こすようなポジションを取ることで、リーダーブランドがあなたのブランドと競合できない状況を作り出すことだ。

例えば、アメリカにおけるコカ・コーラとペプシの例が有名だ。

コカ・コーラは、長年の伝統と歴史を誇るパワーブランドだ。世界中の隅々にブランドが浸透し、熱狂的なファンも多い。しかし歴史と伝統があるがゆえに、熱狂的なファンは齢を重ね、年配者になりがちだ。

そこに目をつけたのがペプシだ。ペプシは若い世代にターゲットを絞り「若々しさ」や「新しい世代のコーラ」を打ち出すことによって「コカ・コーラ=古臭い世代のコーラ」というポジションに追いやること成功した。

コカ・コーラ側としては、わかってはいるものの今のファン層を形創っているのは年配の世代のため、新しい世代に特化できない。結果「ニューコーク」という若い世代向けのブランドを新たに出しては見たものの、案の定それまでのコカ・コーラファンから猛批判を浴び、わずか数か月で撤退した歴史がある。

結果、その間にペプシは躍進。今ではコカ・コーラを脅かす2番手ブランドに成長し、「若い世代向けの新しいコーラ」という独自の役割を担っている。

さらに別の例では、インターネット自動車保険企業も、トップブランドをジレンマに追いやるポジショニング戦略を推進している。

インターネット自動車保険企業の中には「保険料は走った分だけ」と謳っている企業がインターネット自動車保険No.1として躍進している。

一方の国内自動車損保大手からすれば「保険料を走った分だけ」にしてしまうと、現在の契約者にも適用せざるを得なくなる。結果「あまり自動車に乗らない人たちの保険料を安く」せざるを得なくなり既存契約者の売り上げが大きく落ち込むことになる。

結果、このジレンマにより国内自動車損保大手は簡単に追随できないまま時間だけが過ぎ、子会社を作って参入したのはつい最近のことだ。しかし残念ながら「認識の奪い合い」で後れを取ったために、未だに強いポジショニングを確立するにはいたっていない。

これらのように、もしあなたが2番手以降のブランドを扱っているのなら、競合ブランドをジレンマに追いやるポジショニングを取ることで、トップブランドに追随されない独自の役割を築くことができる。

このジレンマ戦略の重要な視点は「リーダーブランドの強みの中に、弱みを見出す」視点だ。

リーダーブランドの「強み」としてあきらめていたものを一転して「弱み」にすることを考え、逆に「弱み」としてあきらめていた自社ブランドの特徴を「強み」に変えていく視点を持てれば、競合ブランドをジレンマに追いやるポジショニング戦略を見出せる可能性がある。

ポジショニングの軸の決め方-4:生活者との関係性が明確か?

4つ目の選択基準は「生活者との関係性が明確か?」という評価基準だ。

冒頭でも説明した通り、ポジショニングにおいて重要なのは「生活者のライフスタイルの中で、ほかにない独自の役割を担うこと」だ。

ポジショニングといえば、つい「差別化」を思い浮べがちだが、一方で「役割」という「生活者との関係性」の概念は極めて重要だ。

なぜならどれだけ独自のものであったとしても、生活者から見た役割が明確で強い関係性を創れなければ、強いポジショニングとは言えないからだ。

 

ポジショニングマップとポジショニングステートメント:ポジショニングの思考ツール

ポジショニングを考える際に、実務上多く使われるのは「ポジショニングマップ」だ。

ポジショニングマップを描く際の注意点は以下の通りとなる。

  1. 縦軸と横軸は、互いに独立性の高い軸を設定する
  2. 企業目線ではなく、生活者目線から見た「役割」を意識して軸を設定する

しかし冒頭で解説した通り、ポジショニングマップは「2つの軸上で、自社ブランドと競合ブランドの立場の違いを表現する」という性質上「差別化」の視点しか提供してくれない。

よってブランディングの実務では「ポジショニングマップ」と並行して「ブランドポジショニング・ステートメント」というツールを活用することが有効だ。

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「ブランドポジショニングステートメント」とは、ターゲットにおけるブランドの役割を文章で記述した記述書のことを指す。

ポジショニングマップでは「どう独自化するのか?」という「独自性」を明確にする。一方でブランドポジショニングステートメントでは「ターゲットから見たブランドの役割」を文章化ことで「生活者から見たブランドの役割」を明確化するのだ。

以下、簡単な「ブランドポジショニングステートメント」の例を記載しておこう。

ブランドポジショニングステートメントの例

(--ペルソナ--)は建前ではともかく本音では
(--インサイト--)という気持ちを抱えています。

よって(--あなたのブランド--)は
他にない(--独自の特徴--)という強みを生かして
(--ポジショニングの軸--)という役割を担い
(--ブランド提供価値--)という喜びを提供します。

その結果(--ペルソナ--)は(--あなたのブランド--)を通して、
(--ブランドライフビジョン--)を実現するという
ユニークな体験ができます。
これは、ほかのブランドでは体験できません。


ポジショニングマップと並行して、こちらの文章がすらすらと記述できるようであれば、あなたが描くポジショニングは「より独自で」「生活者からの役割が伴った」ブランドへと成長していく可能性を秘めている。

ぜひポジショニングの軸を評価する際には、整合性を持った形で「ブランドポジショニングステートメントを描き切れるか」をチェックしてみよう。

またブランドポジショニングステートメントの中で出てくる「インサイト」「ブランド提供価値」「ブランドライフビジョン」などの意味については、下記の解説を参照いただきたい。

www.missiondrivenbrand.jp

www.missiondrivenbrand.jp

www.missiondrivenbrand.jp

終わりに

今回は「ポジショニングとは?強いポジショニングの設定手法を事例付で解説」と題してポジショニングについて解説した。ぜひ、あなたのチームのブランドマーケティングにおいて、有益な示唆となれば幸いだ。

今後も、折に触れて「ロジカルで、かつ、直感的にわかるブランディングの解説」を続けていくつもりだ。(過去記事と今後の掲載予定はこちら

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