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ブランディング・マーケティングを徹底解説

ブランド体験デザイン|優れたブランドエクスペリエンスを創る8要素

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あなたがマーケティングの担当者なら「ブランド体験(ブランドエクスペリエンス)」や「カスタマージャーニー」という言葉はどこかで耳にしたことがあるはずだ。しかし一方で「なぜこれからはブランド体験やカスタマージャーニーが重要なのか?」について、あなたは社内に説明できるだろうか?

「ブランド体験」や「カスタマージャーニー」はこれまでの「4Pマーケティング」とは異なり発想転換が必要となる。また、優れた「ブランド体験」や「カスタマージャーニー」を実現するには多くの関連部門を巻き込む必要があるため「なぜ、これからはブランド体験やカスタマージャーニーが必要なのか?」という関連部門からの質問に対して「ロジカルに納得させるレベルの」説明力が必要となる。

組織を大きく動かすことの難しさは、あなたも痛感しているはずだ。しかし「ブランド体験」や「カスタマージャーニー」は、これからの時代に強いブランドを形創っていく上で必要不可欠な考え方だ。

今回は優れた「ブランド体験」や「カスタマージャーニー」を形創る上で必要な発想転換と8つの視点について解説する。今回の解説を最後までお読みになれば、あなたは「ブランド体験とは何か?」「カスタマージャーニーを形創る上でで押さえておくべき勘所は?」などが理解できるはずだ。

もし、あなたが「ブランド体験」や「カスタマージャーニー」の必要性を痛感し、組織を大きく動かしていきたいなら、ぜひ今回の解説を最後まで読み進めて欲しい。

あなたのブランディング業務の一助となれば幸いだ。

 

ブランド体験(ブランドエクスペリエンス)とは何か?

当たり前のことだが、そもそも「ブランド体験とは何か」が正確に理解できていなければ、あなたは「ブランド体験」や「カスタマージャーニー」の必要性を周囲に説明することはできない。よって、まずは「そもそもの話」として「ブランド体験とは何か?」について解説しよう。

「マーケティングの4P」から「ブランド体験(ブランドエクスペリエンス)」へ

これまでブランディングやマーケティングの実行戦略は、Product(商品)・Price(価格)・Place(流通チャネル)・Promotion(販売促進)の4つとされてきた。

いわばマーケティングの実行戦略を4の機能に分解した上で、それぞれの相乗効果を踏まえながら展開していこうとする考え方だ。マーケティングの教科書では「マーケティングの4P」と解説されている。

しかし「マーケティングの4P」が提唱されたのがいつか、あなたはご存じだろうか?

「マーケティングの4P」が提唱されたのは、なんと今から50年以上前の1960年代のことだ。そして当たり前のことだが、半世紀前と現在とでは、あなたのブランドが置かれているマーケティング環境は大きく異なる。

例えば「商品(Product)」でいえば、大量生産・大量消費の時代だった1960年代と比べて、現在では生活者ニーズや価値観が多様化している。そしてニーズや価値観が多様化している以上「画一的なモノを、画一的な方法で、画一的な人達に売る」という1960年代のマーケティングモデルは機能しにくくなっているのは自明の理だ。

さらに「価格(Price)」でいえば、1960代は未だ「系列販売店政策」が主流であり、価格の主導権はメーカー側にあった時代だ。

しかしその後チェーンストアの台頭によって小売側からの値引き圧力が厳しくなり、さらに現在ではインターネットの普及により「ワンクリックで価格比較」されるのが当たり前の時代だ。

また「流通(Place)」では、かつて「メーカーの系列販売店」が主流だったチャネル環境は「チェーンストアによる大量販売」の時代を経て、インターネット販売に移行しつつある。

そしてインターネット上では「価格.com」や「amazon.com」などにみられる通り、小売側がユーザーレビューを用意し、生活者はユーザーレビューを参考にしながらモノを買っている。

つまり、いまや小売業は「売る側の味方」ではなく「買う側の味方」として、生活者側の「購買代理店」へと変化している。もはや「商品を棚に並べたら、小売業者が頑張って売ってくれる」という時代ではなくなってきているのだ。

最後に「販売促進(Promotion)」では、インターネットの普及に伴い、年々マスメディアの影響力が落ちつつあることは、あなたもご存じのはずだ。そしてそれと反比例するように、Twitterやfacebook、Instagramなどのソーシャルメディアやブログ、あるいはレビューサイトといった生活者主導型メディアが日増しに存在感を増している。

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このように、1960年代とは大きく異なる環境の中で、近年「マーケティングの4P」の代わりにクローズアップされているのが「ブランド体験」であり「カスタマージャーニー」だ。

ブランド体験(ブランドエクスペリエンス)とは?

k_birdが定義している「ブランド体験」とは、以下の通りだ。

ブランド体験(ブランドエクスペリエンス)とは何か

生活者がニーズを感じ始め、あなたのブランドを認知し、
ブランドへの感情移入を経てロイヤル顧客に至るまでの
一連の体験プロセス

 

「ブランド体験」のベースとなっているのは、1999年にB・J・バインⅡとJ・H・ギルモアが著書「経験経済」の中で提唱した、以下のような考え方だ。

 

生活者は単に商品やサービスを消費するのではなく、その消費から得られる体験そのものに価値を見出す。

-B・J・バインⅡ/J・H・ギルモア

 

本書では、生活者が価値を感じる対象が「素材」から、それらを加工した「製品」に移り、さらに製品を消費する際の「サービス」から、それら全体を通して得る「包括的な経験」に向かっている、という考え方が示されている。

またマーケティングの世界で「経験価値マーケティング」の流れを決定づけたのが、米コロンビア大学ビジネススクール教授、バーンド・H・シュミット氏の著書「経験価値マーケティング」だ。

本書では、抽象的で捉えずらい「経験価値」を以下のフレームワークにわけて紹介している。

  1. SENSE:感覚的経験価値
  2. FEEL:感情的経験価値
  3. THINK:創造的・思考的経験価値
  4. ACT:ライフスタイル的経験価値
  5. RELATE:コミュニティ的経験価値

そしてこれらの考え方は、2004年にマーケティング研究者であるロバート・F・ラッシュとステファン・L・バーゴによって提唱された「サービス・ドミナント・ロジック」という考え方で決定づけられることになる。

「サービス・ドミナント・ロジック」とは、単純化すれば「モノ」と「サービス」を区別することなく「企業がいかにして顧客とともに価値を創造するか」という「価値共創」の観点からマーケティングを捉え直そうとする考え方だ。

その本質は「商品を販売すること=商品価値」だけでなく「商品を利用してもらうこと(=サービス価値)」も積極的に提供していこう、という考え方だ。

この「サービス・ドミナント・ロジック」という考え方は、製品やサービスを所有することから「利用する体験」に価値の中心が移っているという点で、先の「経験経済」と通じる考え方だ。

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ブランド体験(ブランドエクスペリエンス)が求められる4つの背景

続いては「ブランド体験が求められる背景」の解説に移ろう。多くの関連部門から問われる「なぜ今、ブランド体験という考え方が必要なのか?」に対する答えの部分だ。ぜひ、あなたの商品やサービスに引き寄せながら読み進めて欲しい。

ブランド体験が求められる背景-1:モノ消費からコト消費への変化

近年、世の中の消費を語る文脈が「モノからコトへ」変わったと言われる。

「モノ」を所有するという豊かさよりも「個のつながり」や「体験の豊かさ」あるいは「人の役に立つ何かを創造すること」など、自分の時間の中で起きる「コト」の充実に価値を求める人が増えている。

また、モノを所有しないことをスマートな判断とし、なるべく物は持たずシェアやレンタルで賄いたいという価値観も台頭している。

消費の形が「モノ消費」から「コト消費」へ移り変わっていく現状では、例えモノづくりであっても、モノの価値をベースとした価値設計ではなく、生活者のブランド体験をベースとした価値設計が求められる。今や売らなければいけないのは製品単体ではなく、購入前から利用後までのブランド体験そのものだ。

ブランド体験が求められる背景-2:「認知&購入モデル」から「プロセスモデル」への変化

これまでマーケティングコミュニケーションの実務では、マスメディアが絶大な存在感を発揮していた。その結果、多くの企業では「マス広告(認知)」と「売り場(購入)」の2つを押さえておけば、マーケティング活動は機能していたのが過去の時代だ。

広告業界でも長らく、マス広告はAbove the line、売り場施策はBelow the lineと呼ばれ、この二つを主軸に発展してきた歴史がある。しかしマスメディアの影響力が低下し、インターネットやソーシャルメディアの台頭によって生活者が自由に意見を発信できるようになった今では、Above the lineとBelow the lineの間にある「サーチ(検索)」や「レビュー」「シェア(共有)」などの影響力が増している。

そしてこれらの動きは、企業側で直接コントロールできない。よって、生活者側の「サーチ」や「レビュー」「シェア」などを見越した上でブランド体験を形創る重要性が高まっている。

ブランド体験が求められる背景-3:ソーシャルメディアの普及

ソーシャルメディアは、ことブランディングにおいてはもろ刃の剣だ。

もし企業が生活者に対して極めて誠実な対応を取れば、それはいわゆる「神対応」として瞬時にソーシャルメディア上に「評判」として広がっていく。

一方で企業が生活者に対して不誠実な対応を取れば「炎上」として謝罪や操業停止の憂き目にあい、積み上げてきたブランドはあっという間に毀損する。

今や「企業都合の売り込み型マーケティング」は成功するどころか大きなブランド毀損リスクすらもたらす時代だ。

ソーシャルメディアは、生活者側が主導するタッチポイントだ。そして生活者からポジティブな発信をしてもらうためには、ブランドに対する好意的な感情移入をもたらすブランド体験が必要となる。

ブランド体験が求められる背景-4:社会価値の共創

近年、SDGsやCSV経営、あるいはマーケティング4.0など「政治・経済・社会の分野を越えて、社会をより良く変える」という考え方が浸透しつつある。

 これからのブランディングは、社会課題を見据えて、その解決に最大限の知恵を絞らなければならなくなる。ソーシャルイノベーションが求められる今日では、顧客志向マーケティングよりもさらに踏み込んだ「社会との共創によるブランディング」が求められている。

 そしてこの「共創」こそが、そのまま「ブランド体験」となる。

ブランド体験は、時にその企業で働く社員はもちろん生活者に至るまで、そのブランドに関わるすべての人々を味方につけ、時に社内外の壁を越えた連帯を生みだす。

 更には、ブランドに関わる多くの人々に自信を持たせ、自己表現や自己実現を後押しし「ブランドが創り上げようとするよい良い社会」の実現に向けた情熱を呼び覚ます。

企業は「ブランドが創り上げようとするより良い社会」の実現に向けて後押しとなる商品や場を提供し、生活者自身が社会やライフスタイルを変革できるよう背中を押す。

そしてそのようなブランド体験をした人々は「そのブランドを利用している自分(達)」に対して、誇りと連帯を抱くようになる。

「社会をより良く変える」という機運が高まりつつある現在では、生活者と共に価値共創を行う「ブランド体験」は、ブランディング上の大きな競争力となる。

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ブランド体験デザイン(ブランドエクスペリエンスデザイン)に必要な3つの発想転換

当たり前のことだが、例え「ブランド体験の重要性」を理解したとしても「何を、どう変える必要があるのか?」が理解できていなければ単なる「お題目」で終わってしまう。

ブランディングやマーケティングの方法論を大きく変えるということは、これまでの「立脚点」を大きく変えることを意味する。しかし「これまで置いていた立脚点」が組織に残ったままでは「いままでのやり方・感覚」が邪魔をし、大きな摩擦や抵抗につながりやすい。

よって、続いては「ブランド体験をデザインする」という考え方を取り入れることで「そもそもの立脚点がどう変わるのか」について解説しよう。

ブランド体験デザインに必要な発想転換-1:「生活者の捉え方」の発想転換

これまで多くの企業は、商品価値は企業が決め、生活者に販売したらそれで終わり、という考え方を取ってきた。そして多くのマーケティング担当者は「商品を販売すること=マーケティングのゴール」と捉えがちだ。

しかし、生活者が求めるものが「所有」から「利用」へ移っている現在では「商品を販売して終わり」では、ブランドは生活者に対して価値を生み出していないことになる。生活者側にとってみれば「商品を利用すること=ブランドがもたらしてくれる新しい毎日のスタート」であり、それこそが価値だからだ。

これらを踏まえれば「生活者の捉え方」は「商品やサービスを購入する人」ではなく「商品を利用する人」に変わる。そして「生活者=ブランドを利用する人」という発想転換ができれば、商品の在り方も大きく変わることになる。

例えば、あなたが「やかん」を製造販売するメーカーのマーケティング担当者だったとしよう。生活者を「商品を購入する人」と捉えた場合、あなたは以下のような発想をするはずだ。

  • 「どんな機能を持ったやかんを作れば、買ってもらえるのか?」
  • 「どんなデザインのやかんを作れば、買ってもらえるのか?」

しかしを生活者を「商品を利用する人」と捉えた場合、あなたは以下の要素にも目を向けるようになるはずだ。

  • 生活者がやかんを利用する際の行為
  • 生活者がやかんを利用する際の周辺環境

すると、あなたの発想は以下のうに広がる。

  • 「やかんでお湯を注ぐという行為を、もっと楽しいものに変えるには?」
  • 「周辺に小さな子供がいても、母親が安心できるやかんの在り方とは?」

重要なので繰り返すが、生活者は「商品を買う人」ではなく「商品を利用することで、新しい毎日をスタートしたい人」だ。

このように、生活者の捉え方を「買う人」から「利用する人」へと発想転換することができれば、あなたは「ブランド体験」を軸に商品の在り方を発想できるようになるはずだ。

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ブランド体験デザインに必要な発想転換-2:「ブランド提供価値」の発想転換

多くの誤解を恐れずに言えば、今やあらゆる商品は同質化している。

車を購入すれば、大した問題もなく走る(近年は不具合や不正も多いが)。どの航空会社の飛行機も、あなたをA地点からB地点へ連れて行ってくれる。どのメーカーから発売されているパソコンも、それなりに動作する。

年々、機能や性能で差別化をすることが難しくなっていることは、あなたも痛感していることと思う。

所有より利用が重視されつつある現在では、企業は「商品」という「モノ単体」を販売するのではなく、ブランド体験そのものを「一連のサービス」として生活者に提供していく必要がある。

すると、必然的に企業のマーケティングプロセスや、ひいてはビジネスモデルすら変わっていく可能性を秘める。

なぜなら「ブランド体験そのもの」がひとつのパッケージとなれば、担当の商品は「一連のブランド体験」というサービスの中の「パーツの1つ」でしかなくなるからだ。

その良い例が「ネスカフェ・アンバサダー」だ。

「ネスカフェ・アンバサダー」は「オフィス内で同僚と語り合いながら出来立てのコーヒーを飲む」というブランド体験(=サービス)を提供している。コーヒーという「商品」はそれらのブランド体験の「パーツ」でしかない。

もちろん、コーヒーそのものにも「おいしさ」などの価値はあるだろうが、ネスカフェ・アンバサダーはそれに加えて「社内のIT化で失いがちな語らいのひととき」という「利用価値」を提供している。

ネスカフェ・アンバサダーの例に見られるように「商品価値」から「利用価値」への発想転換は、時にマーケティングプロセスやビジネスモデルを変える大きな可能性を秘めている。

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ブランド体験デザインに必要な発想転換-3:「役割分担」から「部門横断」への発想転換

これまでマーケティング実行戦略の主流だった「マーケティングの4P」は、マーケティングの実行を「商品」「価格」「流通チャネル」「販売促進」に「分解」し、部門ごとに「役割分担」して「販売する」という考え方だ。

しかし「ブランド体験」とは生活者がニーズを感じ始め、あなたのブランドを認知し、
ブランドへの感情移入を経てロイヤル顧客に至るまでの一連の「体験プロセス」であり、その目的は新しいブランド体験を通して感情移入を創り、ひいては指名買いされるブランドを築くことだ。

そのためには、ブランド体験は生活者が辿る「一本の軸」の上で構成されなければならない。ここに、発想転換が必要となる。

「生活者のブランド体験を一本の軸で考える」には「組織横断」が必要となる。つまり組織の力学は「機能分化×効率性」ではなく「統合×ブランド体験」に変わる。

そして「統合×ブランド体験」を実現するには、シンプルなアイデアから時間軸に沿って立体的な展開を構成する「組織的な編集力」が必要だ。

事実を時間でつないで感情を注入すれば、ブランドにストーリーが生まれる。そしてロジカルな戦略の骨格に人間的なエモーションの血を通わせれば、生活者が動く原動力になる。

非常に難しいチャレンジだが、それはあなたの競合ブランドも同様だ。そして難しいがゆえに一度実現すれば、それはあなたのブランドにとって大きな競争力となるはずだ。

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ブランド体験(ブランドエクスペリエンス)デザインの方法論:ブランド体験デザインのフレームワーク

 

ここからは、k_birdがブランド体験を考える際に重宝している「ブランド体験デザインのフレームワーク」を紹介しよう。「Brand」「Experience」「6つのC」のそれぞれの文字を取って「B-E-Cフレームワーク」と呼んでいる。

ぜひ、ブランド体験デザイン策定の際の参考にしてほしい。

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ブランド体験デザインのフレームワーク-1:Brand

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ブランド体験デザインの起点となるのが「ブランド戦略」だ。

ブランディングとは何か|強いブランドを創る20のブランド戦略手法でも解説している通り、k_bird流のブランディングの定義とは以下の通りだ。

ブランディングとは何か?

  1. ブランドとは「生活者の感情移入」が伴ったモノやサービス。
  2. ブランディングとは「できるだけ多くの人に」「できるだけ強い」感情移入を形創っていく取り組みを指す。
  3. その成果は「衝動買い頼み」を越えた「指名買い」によるロングセラーブランドだ。

逆説的になるが、優れたブランド体験やカスタマージャーニーを実現する上で最も重要なのは、実は「ブランド体験デザイン」や「カスタマージャーニー設計」そのものではない。最も重要なのは「ブランドアイデンティティ」や「ブランド提供価値」「ビジュアルアイデンティティ」などの「自社ブランドの定義」だ。

例えば、あなたが「ヤマサ醤油」のマーケティング担当者だったと仮定しよう。ライバルは、同じ千葉県銚子市出身の醤油ブランドである「ヒゲタ醤油」だ。どちらも、メインのターゲットは家庭の主婦とする。

もし、あなたがヤマサ醤油の「ブランドアイデンティティ」や「ブランド提供価値」あるいは「ビジュアルアイデンティティ」を曖昧にしたまま「ブランド体験デザイン」や「カスタマージャーニー設計」に着手したとしたら、いったい何が起きるだろうか?

残念ながら、あなたが多くの部門を巻き込んで描いた「ブランド体験」や「カスタマージャーニー」は、ライバルである「ヒゲタ醤油」と全く同じものになる。なぜなら「同じカテゴリーの商品」で「同じターゲット」なら、生活者が辿るブランド体験やカスタマージャーニーは似たようなものになるからだ。

結果、多大な労力とコストをかけて実現した「ブランド体験デザイン」や「カスタマージャーニー設計」は、ライバルのヒゲタ醤油と同質化し「代り映えがしない」ものとなる。

しかしもし仮に、事前に「ヤマサ醤油らしさ(=ブランドアイデンティティ)」や「ヤマサ醤油らしいブランド提供価値」が定義されていれば、カスタマージャーニー上で「ヤマサ醤油らしい」「独自の」ブランド体験機会を創出することが可能になる。

重要なことなので繰り返すが「ブランド体験デザイン」や「カスタマージャーニー設計」において「最も」重要なのは、実はその前工程である「自社ブランドの定義」だ。

しかし「ブランド」は「Product」とは異なり抽象的で取っつきづらく感じるマーケティング担当者も多いはずだ。そんな方のために、このブログでは過去に様々な形で「ブランド」や「ブランディング」を「徹底」解説している。

何度も繰り返すが、優れたブランド体験を形創る上で最も重要なのは、ブランド体験デザインの立脚点となる「そもそものブランドの定義」だ。

まだ過去記事を読んでいない方は、ぜひ過去記事から遡って読んでみて欲しい。「ブランド」や「ブランディング」に対する理解が劇的に深まるはずだ。

ブランディング解体新書 カテゴリーの記事一覧 - Mission Driven Brand

ブランド体験デザインのフレームワーク-2:Experience

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ブランド体験デザインフレームワークの2つ目は「Experience(経験)」だ。

高度にデジタル化が進んだ現在では、マスメディアの影響力が低下している反面、PC・スマートフォン・タブレットといったデバイスの多様化が進んでいる。

更に「サーチ(検索)」や「レビュー」「シェア(共有)」など、顧客主導型のブランド接点が存在感を増していることから、生活者がどのような経験を経てロイヤル顧客に至るか?を分析する必要が生じている。

そのような中、近年よく使われるツールが「カスタマージャーニーマップ」だ。

カスタマージャーニーマップとは、ブランドと生活者のあらゆる接点において「どのようにしてブランドと接触し」「どのような体験をし」「どのような感情や行動に至るのか?」を見える化し、更に「その時々でのインサイトは何か?」「最終的に何がトリガーになってブランドへの感情移入や購入に至ったのか?」などを可視化していくためのツールだ。

その起源は、外資系コンサルティング会社であるマッキンゼー&カンパニーが提唱した「The consumer decision journey」であるとされる。

www.mckinsey.com

現在ブームの様相を呈している「カスタマージャーニーマップ」だが、k_birdから見て実務上、陥りがちな罠が4つある。1つずつ紹介しよう。

カスタマージャーニーマップで陥りがちな罠-1:カスタマージャーニーのスタートを「認知」にしてしまう

ぜひこの解説をお読みになったあとに「カスタマージャーニーマップ 」で画像検索してみて欲しい。インターネット上で紹介されている「カスタマージャーニーマップ」の大半は「認知」からスタートしていることがわかるはずだ。

確かに企業側から見れば「ブランド体験」や「カスタマージャーニー」のスタートは「認知」となる。しかし一方で生活者側から見たときの「スタート」は本当に「認知」だろうか?

生活者は、その人なりのライフスタイルの中で、日々様々な「困りごと」や「願望」を抱えながら生活をしている。そして何らかの形で「どうしても実現したいこと」が生じたときに初めて情報を探したりアクションを起こしたりして、ブランドと出会う。

企業側から見ればブランド体験やカスタマージャーニーのスタートは「認知」かもしれないが、生活者側から見ればスタートは「困りごと」であり「何かを実現したい願望」だ。

あなたがマーケティング担当者なら、ことブランディングやマーケティングにおいて「生活者ニーズが最も重要だ」ということに異論は挟まないだろう。しかし「認知」からスタートする「ブランド体験デザイン」や「カスタマージャーニー設計」は、生活者側の「困りごと」や「実現したい何か」という「ニーズが発生する局面」がすっぽりと抜け落ちる。

ぜひ、インターネット上に転がる「カスタマージャーニーマップ」をうのみにせずに、ブランド体験やカスタマージャーニーのスタートは「生活者のニーズが発生する局面」に据えてみて欲しい。より血肉の通ったカスタマージャーニーを描くことができるはずだ。

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カスタマージャーニーマップで陥りがちな罠-2:カスタマージャーニーのゴールを「購入」にしてしまう

あなたは、冒頭で解説した「サービス・ドミナント・ロジック」を覚えておいでだろうか?

再度簡単に解説すると、サービス・ドミナント・ロジックとは「商品を販売すること=商品価値」だけでなく「商品を利用してもらうこと(=サービス価値)」も積極的に提供していこう、という考え方だ。

企業視点で発想すると「ブランド体験」や「カスタマージャーニー」のゴールは「購入」に置きがちだ。しかし生活者視点でいえば「ブランドの購入」は「新たな毎日のスタート」だ。

近年ではインターネット上にレビューサイトが乱立し「利用した結果、満足したか?」というレビューは瞬く間にインターネット上に出回り、共有される。

「ブランド体験」では、もはやマーケティングのゴールは「購入」ではない。「利用」を通してブランドへの感情移入を形創り、ロイヤル顧客を生み出すことがゴールだ。そしてブランドに感情移入したロイヤル顧客のレビューが、新たな顧客の購入動機を創る。

先ほど紹介したマッキンゼーの「The consumer decision journey」だが、その提言レポートには、以下の図が示されている。

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この図をご覧になれば、実はカスタマージャーニーは「マップ」ではなく「ループ状」になっており「購入」がゴールではないことがお分かりいただけるはずだ。

ぜひ、あなたがカスタマージャーニーマップを策定する際には、ゴールを「購入」に置かず「ロイヤル顧客からの推奨」を置いてみて欲しい。

カスタマージャーニーマップで陥りがちな罠-3:「競争優位」の視点が抜け落ちる

実務上、カスタマージャーニーマップを策定する際に頻発するのが「競合の視点が抜け落ちる」という現象だ。

カスタマージャーニーマップを策定しようとすると「現状のブランド体験の見える化」や「ボトルネックの改善」など「悪い所」に目が行きがちだ。しかし「ボトルネックの改善」だけでは、単に「マイナスの状態」を「ゼロの状態」にしたに過ぎず、競合ブランドに対する競争優位には繋がらない。

ブランド体験やカスタマージャーニーを競争優位につなげるためには、カスタマージャーニー上で「新たなブランド体験の機会」を発見し、そこに「感情移入をもたらす体験」を加えていく「クリエーション」が必要となる。

これらを踏まえれば「競争優位を発揮できる」カスタマージャーニーを形創るには、以下の3つのカスタマージャーニーマップを「意識的にわけて」策定することが有効だ。

  1. カスタマージャーニーマップ1.0:
    現状のカスタマージャーニーを見える化したカスタマージャーニーマップ。このカスタマージャーニーマップでボトルネックを発見・改善策を見出していく。
  2. カスタマージャーニーマップ2.0:
    ボトルネックを発見し、改善された状態のカスタマージャーニーマップ。このカスタマージャーニーマップで、新たなブランド体験の機会を見出していく。
  3. カスタマージャーニーマップ3.0:
    どのようなアイデアがあればブランドに対する感情移入が起こせるのか?というクリエーションが加えられたカスタマージャーニーマップ。これが実現すべきブランド体験となる。

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現在では、インターネットやスマートフォンの普及で、従来は難しかった新しい手法で「ブランド体験」を提供することが可能になりつつある。その結果、様々なブランド体験の局面で、感情移入を促す取り組みも加速していくはずだ。

カスタマージャーニーマップで陥りがちな罠-4:「体験」の視点が抜け落ちる

カスタマージャーニーマップを策定する目的は「競合ブランドと異なる優れたブランド体験」を形創ることだ。

しかし「ブランド体験デザイン」は「認知(マス広告)」と「購入(売り場)」を押さえておけばOK」という考え方とは異なり「生活者のブランド体験を緻密に追っていく」という考え方だ。そのため実務の量が飛躍的に増大する。

その結果「優れたブランド体験を形創る」という本来の目的を見失い「カスタマージャーニーのこの局面では、この施策を"当てよう"」など「施策を当てる」こと自体が目的となってしまう現象が頻発する。

現在k_birdは広告代理店に勤務しているが、周囲ではやはり「キャンペーン認知の局面ではツイッターの●●広告を”当てよう”」「ファン創りの局面ではフェースブックの××広告を"当てよう”」など「当てよう」の言葉が頻繁に飛び交う。

これは自戒を込めて言うが、そのたびに「施策を当てる」のではなく「何を目的に、どのようなブランド経験を形創るべきなのか?」を考えるようにしている。

ブランド体験やカスタマージャーニーは非常に守備範囲が広いために、細部の詰めがおろそかになりがちだ。しかし企業側からすれば「細部」でも、生活者から見ればあなたのブランドの良し悪しを判断する重要な「体験」となる。

ぜひ社内で「当てる」「見せる」などの言葉が出てきたら、それは「生活者のどのようなブランド体験を創るのか」に立ち戻って考える習慣をつけよう。

 

ブランド体験デザインのフレームワーク-3:Co-Worker

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ブランド体験デザインフレームワーク3つ目は「Co-Worker(同僚)」だ。

ブランドは、決してその企業の組織能力を越えることはない。優れたブランド体験を形創る上で重要なのは「ブランドの定義」や「ブランド体験」に対するチームメンバーの「理解」や「共通認識」だ。ブランドに対する理解や共通認識がなければ、それぞれのメンバーは統一感のない散発的な施策を繰り出すことになる。

更に「接客対応」が必要な人的サービス業の場合、接客スタッフがどの程度「ブランド」を理解しているかどうかで、その振る舞いは大きく変わる。そして振る舞いが変われば、ブランドに対する「生活者の感情移入の度合い」は大きく左右され、競争力になりうる反面、致命傷にもなりうる。

また「セールス」の観点から見ても「接客対応」は重要な局面だ。なぜなら、接客対応はブランド体験上では購入直前の「比較検討段階」で行われることが多く、購入につなげる上で重要なコンバージョンポイントとなるからだ。

近年は、ソーシャルメディアに普及により「神対応の評判」も「炎上」も瞬時に拡大していく時代だ。しかし「神対応」も「炎上」もつぶさに観察してみると「商品の良し悪し」というよりは「誠実に対応してもらえたか?/もらえなかったか?」という「接客スタッフの態度」であることが多い。

しかし接客対応はその時々で相手にする顧客のタイプが異なり、接客スタッフのスキルも多様であることから、サービス品質の標準化が難しい。

そうである一方で、東京ディズニーリゾートやスターバックスコーヒーなどスタッフ間でブランドに対する共通認識が創られている企業は、例えアルバイトであったとしても「そのブランドらしい」臨機応変なブランド体験を提供している。

冒頭でも述べた通り、ブランドは、決してその企業の組織能力を越えることはない。

優れた「ブランド体験」を通して強いブランドを築いていくためには、まずは身内である「Co-Worker(同僚)」との間で、ブランドに関する知識や価値観の共有が欠かせない。

ブランディングの世界では、いわば身内を対象とした「インナーブランディング」という取り組みがある。「ブランド体験」の重要性が増している現在においては、ブランドチーム内での「インナーブランディング」は、ますます重要性が増してきている。

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ブランド体験デザインのフレームワーク-4:Collaborater

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ブランド体験デザインフレームワーク4つ目は「Collaborater(協働者)」だ。

先ほど紹介した「ネスカフェ・アンバサダー」は、オフィスの中にいるOLを「ネスカフェ・アンバサダー」として「Collaborater(協働者)」にした典型事例だ。

あなたもご存じの通り、総合スーパーや百貨店、家電量販店など、いわゆる既存のチェーンストア業態は苦境に喘いでいる状況だ。

このような状況の中で、既存流通のみを「Place=モノの供給ルート」と短絡的に捉えてしまうと、ブランド体験の視野は大きく狭まる。

デジタル化が進んだ現在では、Amazonや楽天あるいは多くの通信販売企業が、物流事業者を「Collaborater(協働者)」と捉えて「当日配送」という顧客体験を実現している。

あるいはインターネット上ではアフィリエイトプログラムなど個人のブロガーを「Collaborater(協働者)」として味方につけた販売方法も一般的になっている。

あなたの目的はブランド価値(=ブランドが提供できる喜び)を生活者に届け、指名買いを勝ち取ることであって、そのためのブランド体験の場は、既存流通はだけとは限らない。

既存流通が一手段にすぎない以上、既存流通の枠組みだけに囚われず、市場の参加者を味方に付ける「Collaborater(協働者)」という視点で、広くブランド体験を捉え直してみることも必要だ。

ブランド体験デザインのフレームワーク-5:Communication

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ブランド体験デザインフレームワーク5つ目は「Communication」だ。

近年、インターネットやソーシャルメディアの普及に伴い、コミュニケーション環境は大きく変化している。そのような中、生活者に対する働きかけを通しブランド体験を創り上げていくのがコミュニケーションの役割だ。

コミュニケーションに関しては「マーケティングミックスとは|4P・7P・4Cの各手法と事例を全て解説」で紹介しているので、一部を引用しよう。

コミュニケーションは、大きく分けて5つに分類できる。

 
生活ニーズを創造する「戦略PR」

マスコミやインフルエンサーへの働きかけを通して「生活ニーズ」を顕在化させていくのが戦略PRの役割だ。

例えば「赤ちゃんの睡眠が脳の発達に影響する」という情報をマスコミやインフルエンサーを通して広く社会に提供していくことで「自分の赤ちゃんの睡眠を守りたい」という生活ニーズを創造する、などが典型だ。

情報ニーズを満たす「コンテンツマーケティング」

インターネット上の自社コンテンツサイトなどを通して生活者の情報ニーズを満たし、そこからブランドのセールスに結び付けていくのが「コンテンツマーケティング」という手法だ。

例えば「自分の赤ちゃんの睡眠を守りたい」という生活ニーズの次には「具体的に何をすれば赤ちゃんの睡眠を守れるの?」という情報ニーズが生まれる。

インターネット上の自社コンテンツサイトなどを通してその情報ニーズを満たすコンテンツを提供しながら、赤ちゃんの睡眠を守る有力な方法として自社のオムツ商品を紹介すれば、優れたブランディングとセールスにつながるはずだ。

ブランドを有名にする「マス広告」

インターネットの普及に伴い、マス広告の影響力は低下しているといわれる。確かに影響力の低下は否めない事実だが「腐っても鯛」という言葉があるように、未だ様々な面で「おいしい鯛」であることは事実だ。

k_birdの実務経験からしても、インターネット上の施策だけでは、どんなに頑張ってもブランド認知率の引き上げは30%を越えない。一方でマス広告(特にTVCM)であれば、ブランド認知の閾値とされる60%を越えることも可能だ。

マス広告は強制視認性を伴うため批判は多いが、裏を返せば「知らないブランドを知ってもらう」ことにかけては、未だ絶大な力を発揮する。費用は高額となるが、ぜひ、ここぞというときに活用して欲しい。

広告で衝動買いを促す「ダイレクトマーケティング」

広告を見たその瞬間に購買衝動を創り、購入に結び付けていく手法がダイレクトマーケティングだ。近年ではインターネット広告のA/BテストやPDCAサイクルを通して、購入直結させるための様々なノウハウが開発されている。

ダイレクトマーケティングの分野では、そのノウハウが公開されていることも多いため、知りたい方はぜひググってみよう。様々なノウハウが見つかるはずだ。

売り場で衝動買いを促す「セールスプロモーション」

スーパーで買い物をする主婦は、その80%が非計画購買、つまり買うものを決めずに訪れているという。残りの20%の指名買いの内側に入るのがブランディングの目的だが、とはいえ短期的なセールスの最大化には80%の非計画購買層へのアプローチも欠かせない。

セールスプロモーションは、売り場における様々な施策を通して、他社ブランドとの比較で迷っている非計画購買層の背中を後押しする取り組みだ。

セールスプロモーションの手法は、大きくは「ノベルティの提供」「特別な体験の提供」「値引き」の3つのパターン別に分けられる。更にそこから細かい手法に分類すると、優に20パターンを越えるほど奥が深い手法だ。いずれこのブログ上で、細かい手法を解説していく予定だ。

 

 

ブランド体験デザインのフレームワーク-6:CRM

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ブランド体験デザインフレームワーク6つ目は「CRM」だ。

CRMとは「Customer Relationship Management」の略で、日本語では「顧客関係管理」と訳されることが多い。いわば既存顧客との関係を良好に保つことで、一度購入してくれた顧客をリピート顧客やロイヤル顧客に育てようとする考え方だ。

過去、高度成長期にはどの業界も市場が拡大していたことから、マーケティングやブランディングは「新規顧客を獲得」が目的の中心に置かれていた。

しかし少子高齢化による人口減少時代を迎えた今、新規の顧客を獲得するのは年々難しくなっている。

そのような状況の中で重要性を増しているのCRMだ。

既存顧客は一度ブランドを購入している顧客であることから、再度ブランドを購入する可能性が高い存在だ。そのため、中長期的に継続してブランドを指名買いし続けてくれる可能性も高く、ブランディングの成否を左右する重要な存在となる。

こちらも「ブランドロイヤリティとは【8つのロイヤリティ向上手法】を徹底解説 」で詳しく紹介しているが、その一部を引用しよう。

 
ブランド価値を向上させる

一つ目は、もちろんブランド構築によるブランド価値の向上だ。ブランドに対する感情移入を形創ることができれば、顧客はブランドに対して愛着や思い入れを感じるようなり、指名買いを続けるロイヤル顧客になってくれやすい。

アフィニティ(親近感)を向上させる

個人的な話で恐縮だが、k_birdはかなり頻繁にスターバックスの銀座マロニエ通り店に通っている。店員さんにも顔を覚えてもらっているほどだ。

ご存じの通り、スターバックスの店員さんはフレンドリーさで知られており「いつもありがとうございます!」などと気軽に声を掛けてもらえると「常連」と認められた気がして嬉しい気持ちになる。

また、接客対応が必要な業態に限らず「自分との距離が近い感じ(=アフィニティ)」の向上は、他人事だったブランドを自分事化にしていく役割を果たすため、ロイヤル顧客になってくれやすい。

ユーザーエデュケーションを行う

あなたは、iPhoneユーザーだろうか?それともAndroidユーザーだろうか?

k_birdはAndroidユーザーだが、Androidの使い勝手に慣れてくると、iPhoneを手にしたとき、非常に使い辛く感じる。おそらく、逆もしかりではないだろうか?

人は、モノやサービスを使えば使うほど「慣れ」が生じ、他のブランドにスイッチしにくくなる。いわゆる「スイッチングコストが上がる」という現象だ。その結果、あなたのブランドを使い続けてもらいやすくなる。このような状況を意図的に創るためには「様々な用途を提案する」「丁寧に使い方を教える」など、エデュケーションアプローチが有効だ。

ファンコミュニティを運営する

コミュニティの形成も、CRMやブランドロイヤリティの向上に有効だ。
ブランドのファンコミュニティを形創ると、そのコミュニティに参加した顧客同士が同類意識を持ちやすい。そして同類意識を持つファン同志のコミュニケーションが始まると、ブランドの背景や歴史、使い方など、ブランドに対する知識の共有が活発化する。その結果、ブランドロイヤリティが強化されやすいのだ。

さらに、高いブランドロイヤリティを持った顧客はエバンジェリスト(=伝道師化)として、まだそのブランドに関心を持たない人たちに対して、ブランドの良さを広めてくれることも多い。

近年のソーシャルメディアの普及により、過去と比べファンコミュニティの導入ハードルが下がっている。その結果、ソーシャル拡散による推奨効果も得やすくなっているのだ。

シリーズ化する

雑誌や新聞では、その時々の特集やニュースに加え、連載記事が掲載されているのは、あなたもご存じのはずだ。

この「連載」という手法は「続きが気になる」「続きが読みたい」という気持ちを引き出すことを通して既存顧客との接触頻度を保ち、ブランドロイヤリティの向上を促すことを意図している。

また、あるパンのメーカーが「春のパン祭り」と称して、何十年もの間、様々な白いお皿をプレゼントするキャンペーンを展開しているのも「シリーズ化」を通してコレクション意識を掻き立てることを通して、ブランドロイヤリティの維持・向上を意図したものだ。

心理学に「単純接触効果」という理論がある。人間は単純に接触頻度が多いだけで、それらのものを好きになりやすいとする理論だ。

あなたのブランドは、商品やノベルティ、あるいは情報やコンテンツを通して、シリーズ化できる要素はないだろうか?

ぜひ、探してみて欲しい。

利便性を向上させる

このブログを読んでいるあなたなら、Amazonの利用経験は、一度や二度ではないはずだ。近くの本屋に行けば当日に手に入る本でさえAmazonで注文した、という経験もあるはずだ。

Amazonは検索を通して瞬時に探している本を見つけてくれる。更にレコメンド機能を通して自分の興味がありそうな本をおすすめしてくれるのも便利が機能だ。

このように、利便性はブランドロイヤリティの向上に寄与する。

ついマーケティングとなると商品やサービスの機能や品質面に目が向きがちだが、一度「利便性」についても深く考えてみよう。ブランドロイヤリティを向上させるヒントが見つかるはずだ。

ゲーミフィケーションを取り入れる

このブログをご覧のあなたなら、既にスマートウォッチは購入済かもしれない。

スマートウォッチは腕時計とITが融合したウェアラブル端末だが、スマートウォッチのユーザーは、搭載されている歩数計などをうまく活用して健康管理をしている人も多い。

一方で、スマートウォッチの歩数計はクラウドと連携しており「友達と歩数を競える」「歩数を積み重ねることで日本全国を制覇できる」など、ゲーミフィケーションを取り入れたサービスを展開している。

ゲーミフィケーションの本質は、ブランドにまつわるストーリーを構築し、そこに顧客を巻き込むことでブランドへの参加意識と感情移入を創ることにある。

近年、ストーリーテリングの重要性が叫ばれていることからもわかる通り、ストーリーと感情移入の相性は抜群だ。

あなたのブランドも、オウンドメディアやキャンペーンなどを通してゲーミフィケーションを取り入れる余地はないだろうか?

ポイント制を取り入れる

CRMを機能させるに当たって、最も伝統的な手法と言えるのがポイント制の導入だ。使い古された手法に思えるが、一方で顧客にとってはメリットがわかりやすい手法であるため、未だに根強い人気がある。

しかし最も良くないのは「気が付いたらポイントが貯まっていた」という状態を創り出してしまうことだ。これではリピート購入やクロスセル、あるいはアップセルを促すインセンティブになっておらず、単なる「放置と値引き」になってしまう。

ポイント制を有効に機能させるコツは、常に目標達成ポイントと顧客の持ちポイントの差がわかるような状態を創り上げておくことだ。

「あともう少しで何かがもらえる」「あともう少しで値引きが受けられる」など「あともう少し」という感情が、リピート購入やクロスセル、アップセルのインセンティブとなるからだ。

 

 

ブランド体験デザインのフレームワーク-7:Cash-Point

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ブランド体験デザインフレームワーク7つ目は「Cash-Point」だ。

Cash-Pointとは、生活者からお金をもらう局面のことを指す。例えばネスカフェ・アンバサダーの例でいえば、コーヒーマシンそのものは無償貸与しており、キャッシュポイントをコーヒーの購入に置くことで、息の長い継続的な課金を実現している。

「マーケティングの4P」とは異なり「ブランド体験」は「プロセス」に着目した考え方だ。そして「プロセス」である以上、プロセス上に様々なCash-Pointが生まれやすく、ブランド体験のどこに「Cash-Point」を置くか?は、非常に重要な戦略となる。

以下、ブランド体験時代の主要な「Cash-Point」を紹介しよう。

前払い課金型

1.保険型

前払い課金型の1つ目は「保険型」だ。生命保険や自動車保険はもちろん「ケータイ修理保証」や「警備保障サービス」も保険型にあたる。共通するのは、将来のリスクや不安を見越した上での「先払い型」の定額課金モデルという点だ。

単なる物販も「保険型」と組み合わせれば「Cash-Point」を増やすことができる。CRMの重要性が増している現在において、物販に加えて「保険」や「保障」を組み合わせられないか?は、ぜひ検討したいポイントだ。

2.プリペイド型

更に前払い型の2つ目はiTunes CardやGoogle Playギフトカード、あるいはスターバックスカードなどの「プリペイド型」だ。

「プリペイド」の利点は「モノを提供するタイミング」と「Cash-Point」を切り離すことができる点だ。そのため、ギフト需要やプレゼント需要を生み出すことが可能となる。

利用時課金型

利用時課金型の典型はカーシェアリングだ。

通常、自動車の購入には数百万円単位の費用が伴う。しかしカーシェアリングは「車を他人とシェアする」ことと「Cash-Pointを利用時に置く」という2つのアイデアによって「車を買えない(あるいは買わない)」生活者を捉え、市場を拡大させている。

継続課金型

1.重量課金型

継続課金型の1つ目は「従量課金型」だ。

従量課金といえば電気・ガス・水道などが思い浮かぶが、前述したネスカフェ・アンバサダーも従量課金型に分類できる。また、オフィスグリコも、オフィスに置いたグリコのお菓子を食べた分だけ支払うことから、従量課金型と言えるだろう。

2.定額課金型

さらに、継続課金型の2つ目は「定額課金型」だ。

こちらはアマゾンプライムが典型だ。「定額」は生活者に対して「それ以上は払わなくていい」という安心感や「使い放題で得だ」などのお得感を与えやすい。とくに配信量の増加に応じた追加コストがかかりずらいデジタルサービスなどに親和性が高い課金形態だ。

3.会費特典型

また、継続課金型の3つ目は「会費特典型」だ。

こちらはコストコが代表例だ。コストコは破格の低価格を実現し、多くの主婦層に支持されている。なぜそこまで破格の低価格を実現できるのかというと、商品をほぼ原価か、それに近い価格で販売しているからだ。しかしそれでも利益が出せているのは、会費収入に負うところが大きい。

コストコは、一般には外資系のスーパーと認識されている。しかしそのビジネスの実態は「会費ビジネス」だ。収益元を商品販売ではなく会費収入に置き、商品そのものは原価すれすれで販売することで「破格の安さ」を演出し、その評判で主婦の心をつかむというビジネスモデルは「Cash-Point」の工夫があったからと言えるだろう。

4.定期お届け型

継続課金型の最後は「定期お届け型」だ。

多くの通販会社では、いったん購入した商品を定期的に届ける「定期お届けサービス」を展開している。

この「定期お届けサービス」は、継続的に購入したい顧客側から見たら毎回購入手続きをしなければいけない手間が省け、企業側からするとリピート購入に結びつきやすいことがメリットだ。

後払い型

後払い型の典型はクレジットカードだ。

また、話題となったZOZO TOWNの「ツケ払い」も「後払い型」の範疇に入る。ZOZO TOWNの「ツケ払い」とは、例えクレジットカードを持っていなくても、商品購入の支払いを2か月先に延長できるサービスだ。

ZOZO TOWNは、この「ツケ払い」によって数十億円単位の売上増効果があったとされる。「ツケ払い」は様々な社会的な議論を巻き起こしたが、数十億円単位の売上増効果があったということは、それだけ「便利だ」と感じた人が多かったということであり、利用者にとってみれば優れたブランド体験となりうる。

「後払い型」は財務上「運転資本」に直結していくが、資金繰りに余裕があるなら「ブランド体験の観点」及び「売上向上の観点」から、検討の余地があるCash-Pointだ。

ブランド体験デザインのフレームワーク-8:Customer-Cost

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ブランド体験デザインフレームワークの最後となる8つ目は「Customer-Cost」だ。

この「Customer-Cost」は「マーケティングの4P」で言えば「Price:価格」に当たる。しかし「ブランド体験」という文脈でとらえた時に検討すべきは「金銭的なコスト」だけではない。

生活者は、モノやサービスを購入する時、実は様々な「コスト」を念頭に置いている。そしてあらかじめ「生活者が感じるコスト」を認識しておけば、ブランド体験上のボトルネック改善につながるはずだ。

金銭的コスト

「Customer-Cost」の筆頭は、もちろん金銭的なコスト、つまり「価格」だ。

しかしこの金銭的なコストは、商品の価格だけでなく配送料や郵送料も含まれる。特に価格に敏感な女性は、どんなに良いと思えるブランドも「配送料」をネックに感じて購入を諦める人も多い。

時間的コスト

時間的コストは、例えば「納期までのコストの長さ」「商談時間の長さ」あるいは「商品の使い方に慣れるまでの時間の長さ」なども含まれる。

生活者は「時間がかかりそうだ」と感じると、消費意欲は大きく減退する。特に最近の若者が言う「コスパ」には、この「時間的コスト」込みで語られていることが多い。

ぜひ「自社ブランドの時間的コストとはいったい何か?」「自社ブランドはライバルブランドと比べて、時間的コストのコスパはどれだけ優れているか」という視点からもブランド体験を検証してみて欲しい。思わぬボトルネックが見つかるはずだ。

労力的コスト

労力的コストは、例えば「商品を探し回る労力」や「購入手続きの手間」あるいは「商品を持って帰る労力」などが含まれる。この「労力的コスト」を徹底的に削減しようとしているのがAmazonだ。

「新しいECサイトで魅力的な商品を見つけた」ものの、結局は「すでに個人情報が登録されていて、フォーム入力の手間がかからない馴染みのECサイトで購入した」という経験は、あなたにもあるはずだ。

「労力的コスト」は「ブランド体験」に直結していく考え方だ。ぜひ、あなたのブランドのブランド体験を見直し、各プロセスごとの「労力的コスト」を洗い出し、改善に努めて欲しい。

心理的コスト

心理的コストとは、モノやサービスを購入するときの「引け目」や「心理的なブレーキ」を指す。例えば「メルセデス・ベンツを買いたいけど、自分には身分不相応かもしれない」と感じている場合などだ。

この心理的コストを下げる工夫として、よく使われるのが「自分へのご褒美」アプローチだ。「心理的コストが高い状態」とは、言い換えれば「自分への言い訳が欲しい状態」でもある。

もし、あなたが携わるブランドが高額商品だったりコンプレックス解消商材だった場合、生活者から見れば「心理的コスト」が高い状態であることが多い。

もしそうなら、ぜひ「心理的コスト」という視点を持ち、それを下げるためのチャレンジをしてみよう。

 

終わりに

今回は「ブランド体験とは|優れたブランド体験を創る発想転換とフレームワーク」と題して、ブランド体験デザインについて解説した。

今後も、折に触れて「ロジカルで、かつ、直感的にわかるブランディングの解説」を続けていくつもりだ。(過去記事と今後の掲載予定はこちら

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