Mission Driven Brand

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ブランディングの戦略家が【ブランド戦略の全て】を解説するブログ

ブランド資産とは|ブランドエクイティピラミッドの要素を図解解説

ブランドエクイティの意味とは|ブランドエクイティの構成要素と事例を徹底解説

このブログに辿り着いたあなたなら「ブランド資産とは?」あるいは「ブランドエクイティピラミッド」に関心をお持ちのはずだ。

このブログ「Mission Driven Brand」は、外資系コンサルティングと広告代理店のキャリアを持つ筆者が、ブランディングやマーケティングの「できない、わからない」を解決するブログだ。

ブランド資産は目に見えない。そうであるにも関わらず多くのマーケティング担当者にとって「重要な概念」という共通認識が持たれているのは、それだけの理由がある。

今回の記事では「ブランド資産(ブランドエクイティ)」について詳しく解説する。その内容は以下の通りだ。

  • そもそも「資産」とは何を指すのか?
  • 「ブランド資産」とは何か?
  • ブランド資産の5つの構成要素とは?
  • ブランドエクイティピラミッドとは何か
  • ブランドエクイティピラミッドの具体事例

この解説を最後までお読みいただければ「ブランド資産とは何か?」「ブランド資産は、なぜ重要なのか?」「ブランドエクイティピラミッドの構成要素」が理解できるようになるはずだ。

ブランド戦略を学びたい方へ。このブログから書籍化した「ブランディングの教科書」。

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まずは冒頭に、僭越ながら拙著を紹介させていただこう。

「ブランディング」は捉えどころがなく、なかなか一歩を踏み出せない。あなたはこのような状況に陥ってはいないだろうか?

本書の執筆陣は、ある時は広告代理店のストラテジックプランナーとして、ある時は、外資系コンサルティングファームのコンサルタントとして、クライアントの実務担当者が悪戦苦闘する姿を見てきた。

「ブランディング」は、その本質を理解しないまま実行に移そうとすると、的を射ない小手先の手法を延々と繰り出すことになりがちだ。結果、やみくもに予算を消化したまま、成果が出ない事態に陥ってしまう…。

そのような事態を1件でも減らしたい。そう考えたのが本書を執筆した理由だ。

ブランディングの本は、どれも「ブランドのらしさ」「ブランドの世界観」など「ふわっと」した話になりがちだ。そして「ふわっ」とした話になればなるほど抽象的かつ曖昧な概念論になってしまい、企業組織の中で通すことが難しくなる。

本書は、外資系コンサルティングファームと広告会社で培った「生の知見」をふんだんに盛り込みつつ、つい「抽象論」に陥りがちな「ブランディング」に対して「論理的な納得性」と「直感的な腹落ち感」の両面を追求した書籍だ。

ブランドエクイティはもちろん、ブランドアイデンティティやブランド提供価値など、ブランディングに関する事柄を幅広く解説している。

「理論」が理解できなければ、ブランディングを体系化できず、ビジネスに再現性を生むことができない。そして「実践」が理解できなければ、ビジネスに成果をもたらすことができない。

本書は、ブランディングの理論と実践をつなぐ「ブランディングの教科書」として、ブランド戦略の再現性と成果を目指した書籍だ。

おかげさまで、本書はAmazon kindle売れ筋ランキング「消費者主義」ジャンルでベストセラー1位を獲得し、Amazonレビューでも、

  • 「ふわっとしたブランディングの本が多い中で、異彩を放っている」
  • 「事例も多いので実践のイメージが湧きやすい」
  • 「海外企業の事例ばかりが紹介されている輸入本だとピンとこない、という方にお薦め」

など、ありがたい言葉を頂いている。

  • クッキー規制によりデジタルマーケティングでCTRやCVRが頭打ち。CPAは下がるどころか、少しずつ上昇傾向ですらある。
  • 矢継ぎ早に新商品を繰り出してもすぐに競合に追い付かれ、差別化ができない。商品開発サイクルは更に早まり、自転車操業状態になっている。
  • 「自社にはブランディングが必要だ」と理解はしているが、概念が抽象的過ぎて、どう周囲を巻き込んでいいかがわからない。

もし、あなたがこれらに当てはまるなら、ぜひAmazonのページで本書の目次をチェックしていただきたい。つい感覚論になりがちな「ブランディング」に対して、

  • なぜ、そうなのか?
  • どう、ビジネスに役立つのか?
  • 何をすればいいのか?
  • 具体的な日本のブランドの事例は?

を徹底して解説しているので、あなたのお役に立てるはずだ。

kindle Unlimitedを契約されている方は無償で手に入れることができるので、気軽に手に取っていただきたい。

ブランド資産(ブランドエクイティ)とは?ブランド資産の意味と定義

ブランド資産(ブランドエクイティ)という考え方を提唱したのは、ブランド論の大家と言われる、カリフォルニア大学バークレー校のデービッド・A・アーカー(David A. Aaker)教授だ。

デービッド・A・アーカーは1991年に著した「ブランド・エクイティ戦略-Managing Brand Equity」で、ブランドエクイティを以下のように定義している。

ブランド資産(ブランドエクイティ)の定義

ブランドの名前やシンボルと結びついたブランドの資産(あるいは負債)の集合であり、製品やサービスの価値を増大させるもの。

相変わらず(?)D.A.アーカーの定義はわかりにくいが「ブランド資産」とは無形で目に見えない「ブランド」を、不動産や有価証券といった他の資産と同じように「企業が保有する資産」として評価しようという考え方だ。

しかしここで重要になってくるのが「資産」に対する本質的な理解だ。果たしてあなたは「資産」に対して、どのような認識をお持ちだろうか?

ブランド資産の「資産(Equity)」とは何か

「資産」に対する一般的な認識は、土地・家屋・金銭などの「財産」だろう。また、ビジネスの文脈で言えば、貸借対照表に記載させる不動産や建物、有価証券あたりが思い浮かぶのではないだろうか?

しかし、ビジネスにおける「資産」とは、以下のものを指す。

「資産」とは何か?

将来、利益を生み出すことが見込まれるが、まだ利益を生み出す前の状態のもの。

この定義に従えば、例えば「経営者のリーダーシップ」や「革新的な組織カルチャー」あるいは「卓越したオペレーション能力」など「形がないもの」も「資産」に含まれる。

そして「ブランド」もまた「将来利益を生み出すことが見込まれるが、まだ利益を生み出す前の状態のもの」であるから、企業経営上の「資産」に当たる。

そして、ブランドは「資産」である以上、当然他の資産と同様に「資産価値」を高めていくための育成と投資が必要となる。ブランディングが、時に「ブランド構築」あるいは「ブランドビルディング」とも呼ばれるのも、背景には「ブランド=資産」として「積み上げていくべきもの」という認識があるためだ。

「フォーチュン誌」による世界ランキングトップ500社の市場価値の70%以上は、特許・知識・顧客関係・ブランドなどの「数値として計上されない」資産が占めているといわれる。

ブランド力の優劣は、生活者が商品やサービスの購入を決める際に大きな影響を及ぼしている。その中核である「ブランドエクイティ」とは、ブランドが持つ知名度や信頼感といった無形の価値を、企業価値を左右する「資産」捉えて積極的にマネジメントするべきという考え方だ。

ブランド資産の5つの構成要素

D.A.アーカーによると、ブランド資産は大きくわけて5つの構成要素で成り立つと解説している。その5つの構成要素とは以下の通りだ。

  • ブランド認知(Brand Visibility)
  • 知覚品質(Trust & Perceived Quality)
  • ブランドロイヤリティ(Brand Loyalty)
  • ブランド連想(Brand Associations)
  • その他のブランド資産

ブランド資産の5つの構成要素-1:ブランド認知(Brand Visibility)とは?

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ブランド認知とは、簡単に言えば「ブランドが認識されている度合い」のことを指す。

しかしあまり知られていないことだが、D.A.アーカーが初期に提唱していたブランド認知(Brand Awareness)とは異なり、現在ではその概念に大きな変更が加わり、英語ではBrand Visibilityと呼ばれるようになってきている。

Brand Visibilityの「Visibility」とは「見通しがきく度合い」「視界がクリア度合い」といったニュアンスの英語だが、その真意は「単に生活者がブランド名を知っている」だけに留まらず「商品やサービスのカテゴリーが正しく認識されているかどうか」「生活者から見て自分との関わりが認識されているかどうか」といったニュアンスを含む。

例えば「スターバックス」の場合、そのブランド名を知っているだけでなく「カフェチェーンであること」「リラックスしたいときに訪れる場所」なども含み「認知」というよりは「認識」に近いニュアンスだ。

もしこの「認識度」が高ければ 生活者が「カフェでコーヒーを飲みたい」というニーズが生じた場合、検討する選択肢(専門用語では考慮集合)に入りやすくなる。

実務的には、ブランド認知は消費者調査によって、以下の尺度で測定することが多い。

ブランド認知の測定-1:ブランド助成想起率

「ブランド助成想起率」とは、競合ブランドを含め複数のブランド名をあらかじめ提示した上で、見聞きしたことがあるブランド名を答えた人の割合を指す。人によっては「ブランド再認知名率」と呼ぶこともある。

ブランド認知の「深さ」としては頼りないが、生活者は見聞きしたことがないブランドよりも知っているブランドを好みやすい(心理学でいうザイアンス効果)ことから、店頭消費財など「商品棚に置かれている数あるブランドの中から自社ブランドを選んでもらいやすくする」ためには重要な要素となる。

ブランド認知の測定-2:ブランド純粋想起率

「ブランド純粋想起率」とは、商品のカテゴリーを提示した上で、生活者に何も提示しないまま知っているブランドを次々に思い出してもらい、自社ブランドの名前が挙がった割合を指す。別名「ブランド再生認知率」だ。

「ブランド純粋想起率」が高いと、生活者のカテゴリーニーズが生じた瞬間に「その場で」思い出してもらいやすくなる。

特にインターネットサービスなど「自社ブランドの指名検索」によってホームページに誘導するタイプのビジネスモデルの場合「ニーズが生じたときにその場で思い出してもらう」ことは、顧客獲得の生命線となる。

ブランド認知の測定-3:ブランド第一想起率

「ブランド第一想起率」とは、カテゴリーを提示した上で、生活者に何も提示しないまま知っているブランドを次々に思い出してもらった上で「一番最初に」自社ブランドの名前が挙がった割合を指す。

ブランド第一想起率は、別名「トップ・オブ・マインド」とも呼ばれ、ニーズが生じたときに一番最初に思い浮かべるブランドであることから、市場シェアとの相関関係が高い指標とされる。

ブランド認知の測定-4:ブランド支配想起率

「ブランド支配想起率」とは、カテゴリーを提示した上で、生活者に何も提示しないまま知っているブランドを思い出してもらう。その際に「一番最初に」自社ブランドの名前が挙がるところまでは「ブランド第一想起率」と同じだが、さらに「自社ブランド以外は思い浮かべることができない」状態の人の割合を指す。

生活者から見れば、ニーズが生じた際に「そのブランド以外は思い浮かばない」状態であり、ブランド認知において最も理想的な姿となる。

事例を挙げれば「カゴメのトマトケチャップ」「ミツカンのお酢」「オンライン書店のアマゾン」などがブランド支配想起率の高いブランドの典型だ。

ブランド資産の5つの構成要素-2:知覚品質(Trust & Perceived Quality)とは?

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知覚品質とは、簡単に言えば「そのブランドに対して、生活者側が認識している品質」のことを指す。

こちらも注意したいのは、D.A.アーカーが初期に提唱していた知覚品質(Perceived Quality)とは異なり「Trust & Perceived Quality」として、その概念が大きく広がっている点だ。

知覚品質は、企業側が設定した「事実としての品質」とは異なり「生活者側が認識している品質」のことを指す。そのため、単に製品の機能・性能だけでなく、信頼性やサービス、雰囲気など、その範囲は多岐に渡る。

経営学者のR・バゼルとB・ゲイルらによる研究によれば、知覚品質で下位20%に属するビジネスは平均して約17%のROIしかないのに比べて、知覚品質が上位20%に属するビジネスでは、ほぼ2倍のROIが得られているという。

知覚品質は事業収益への貢献度が高く、ブランド資産の中で特に重要な管理要素となる。

ブランド資産の5つの構成要素-3:ブランドロイヤリティ(Brand Loyalty)とは?

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ブランドロイヤリティとは、ブランドに対して感じる「愛着の度合い」であり、ブランドロイヤリティが向上すると、ブランドの継続購入率は高まる。

D.A.アーカーも、ブランドロイヤリティは「ブランド資産の中でも特別なもの」として明確に位置づけており、とりわけ重要な要素となる。

実務的には「とても買ってみたい」「買ってみたい」「どちらでもない」「あまり買いたくない」「買いたくない」という5段階のDWB(Definitely Would Buy)指標やNPS指標で測定することが多い。

店頭消費財においては、適切なマーケティング投資を行えば、DMB(「とても買ってみたい」)のスコアは、初年度トライアル率あるいは1年購入経験値に近づくといわれている。

ブランドロイヤリティについては、詳しくは下記の記事をご参考いただきたい。より理解が深まるはずだ。

ブランド資産の5つの構成要素-4:ブランド連想(Brand Associations)とは?

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ブランド連想とは「生活者がブランドについて解釈し、想起する一連の連想」のことを指す。

強いブランドは、そのブランドを思い浮かべた際に何かしらの連想が頭の中に思い浮かぶことが多い。

もし好ましいブランド連想が一つも思い浮かばなければ、生活者はそのブランドに価値を感じることはなく、感情移入されることもない。結果、指名で購入されることもない。

また、ブランド連想は感情移入や指名買いを形創るだけでなく、強く個性的なブランド連想を築くことによって、競合との差別化を行う上での重要な基盤にもなる。

更には、ブランド連想はその範囲を広げることで「ブランド拡張」や「リブランディング」という事業機会をもたらすことも特徴の1つだ。

ブランド連想は、実務的には消費者調査のプリコード(選択肢回答)と、自由回答のテキストマイニングの両面で見ていくことが多い。その際にチェックしておきたい視点は下記の通りだ。

  • 競合ブランドと比べた、ブランド連想の独自性・オリジナリティ
  • ブランド連想の豊かさ、広がりの度合い
  • ブランド連想の質・好意さ
  • ブランド連想の強さ
  • ブランド連想の段階(名詞的・形容詞的・5W1H的など)

詳しくは下記で解説しているので、興味がある方は参考にして欲しい。

ブランド資産の5つの構成要素-5:その他のブランド資産とは?

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その他のブランド資産とは、ブランド以外の知的所有権のある無形資産(特許、商標など)や取引先との強固な関係性などを指す。

ブランドエクイティピラミッドとは?

ここまでは、主にD.Aアーカーが提唱している「ブランド資産の5つの構成要素」に沿った形で、実務的な視点を交えながら解説してきた。

しかし実はブランド資産には、アーカー以外のもう一つのフレームワークがあることを、あなたはご存じだっただろうか?

そのフレームワークとは、ダートマス大学のケビン.L.ケラー教授が開発した「顧客ベースのブランドエクイティピラミッド」だ。別名「ブランドビルディングピラミッド」あるいは「ブランドレゾナンスピラミッド」とも呼ばれる。

ケラーは、ブランド資産をマーケティング活動によって高めるブランドマネジメントの全体プロセスをまとめている。D.A.アーカーのモデルと比べて知名度は劣るものの、実用性が高いのはむしろこちらのほうだろう。

以下、図解を交えながら簡単に解説しよう。

ブランドエクイティピラミッドの構成要素

ブランドエクイティピラミッドの構成要素-1:ブランドのセイリエンス(Brand Salience)

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まずは、ピラミッドの底辺に位置する「ブランドのセイリエンス」だ。

「salience」とは聞きなれない英語だが、そのまま日本語に訳すと「突出性」となる。ブランドエクイティピラミッドの文脈でいえば「簡単にブランドを想起させる、ブランドの突出性」といった意味合いになる。いわば「知名度」と「ポジショニング」をあわせ持ったような概念だ。

実務的には「ブランドに対する認識の深さ度合い」と解釈すればOKだ。

「ブランドのセイリエンス」の調査測定例としては、ブランド助成想起率・ブランド純粋想起率・ブランド第一想起率…など、先ほど挙げた要素が挙げられる。

ブランドエクイティピラミッドの構成要素-2:ブランドのパフォーマンス(Brand Performance)

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 「ブランドのパフォーマンス」とは「どの程度ブランドが実用的な顧客ニーズを満たしているのか」という尺度を指す。

こちらも、実務的には「ブランドの実利価値が理解されている度合い」と考えておけばOKだ。

「ブランドのパフォーマンス」の調査測定例としては、例えば「品質が高そうな」「多機能な」「頑丈そうな」「コンパクト」な…などが挙げられるだろう。

ブランドエクイティピラミッドの構成要素-3:ブランドのイメージ(Brand Imagery)

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 いわゆる、マーケティングの実務家の中で言われる「ブランドイメージ」のことを指す。こちらは多くのマーケティング担当者にとって馴染みやすいはずだ。

「ブランドのイメージ」の調査測定例としては「親しみやすい」「洗練された」「現代的な」「知的な」…などブランドを表現する際の形容詞的要素が挙げられる。

ブランドエクイティピラミッドの構成要素-4:生活者のジャッジメント(Judgments)

ジャッジメント

 「生活者のジャッジメント」とは「ブランドの機能や品質に対する、生活者からの評価度合い」を指す。

先ほどの「ブランドのパフォーマンス」が、単に「実利価値が理解されている度合い」という「どこか他人事の印象」であったのに比べて「ブランドのジャッジメント」は実利価値に対して「理性的な評価・判断」という「態度」が伴っているのが特徴だ。

いわば「自分事として理性的な判断の遡上に乗せている」状態とも言える。

「生活者のジャッジメント」の調査測定例としては「実用的な」「便利そうな」「役に立つ」「安全そうな」「実績のある」…などが挙げられる。

ブランドエクイティピラミッドの構成要素-5:生活者のフィーリング(Feelings)

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 「生活者のフィーリング」とは「ブランドに対する生活者からの感情的な反応・評価」のことを指す。

「ブランドのイメージ」が単なる「印象」であったのに比べて「ブランドのフィーリング」は「感覚・感性面での評価・判断」という「態度」が伴うのが特徴だ。

「生活者のフィーリング」の調査測定例としては「誠実な」「信頼できる」「期待できる」「好感が持てる」…などが挙げられる。

ブランドエクイティピラミッドの構成要素-6:ブランドレゾナンス(Resonance)

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 「ブランドレゾナンス」とは、ブランドと顧客の心理的な絆の強さや感情移入の度合いを指す。

ことブランディングにおいては、この「ブランドレゾナンス」を持つ顧客をいかに増やしていくかがブランドエクイティに直結していく。D.A.アーカーのいう「ブランドロイヤリティ」がこれにあたる。

「ブランドと生活者のレゾナンス」の調査測定例としては「自分の価値観と合う」「自分の好みに合う」「愛着を感じる」「家族や友人に薦めたい」「他に代えられない」…などが挙げられる。

ブランドエクイティピラミッドの構造

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ブランドエクイティピラミッドの構造に対する解釈は上図の通りだ。

ピラミッドの左側は、主に生活者が持つ「理性評価」となり、ピラミッドの右側は「感性・感情評価」となる。

この「左右の構造」からわかる通り、ブランディングには「品質・機能一辺倒」の理性評価ではなく「感性・感情的な価値(=喜び)の提供」も必須であることがわかる。

またピラミッドの下から上へ縦方向の構造を見ると、いわば「ブランド認知からロイヤリティへ」という流れとなり、多くのマーケティング担当者の実感と大きな齟齬はないはずだ。

そして「ブランドエクイティピラミッド」とD.A.アーカーの「ブランドエクイティ要素」との関係は、以下の図の通りとなる。

以下の図を御覧になれば、D.A.アーカーもケビン.L.ケラーも、言っていることは大きく違わないことがご理解いただけるはずだ。

そして2人の大御所が見出した要素の共通点こそが、多くの実務家にとって見逃してはならないブランディングの本質となる。

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ブランドエクイティピラミッドの事例:スターバックス

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締めくくりに、よりブランドエクイティの理解を深めるために、スターバックスを事例に、簡単にブランドエクイティ要素を当てはめてみよう。

ブランドエクイティピラミッドの事例-1:ブランドのセイリエンス(Brand Salience)

ブランドセイリエンスは「簡単にブランドを想起させる、ブランドの突出性」といった、いわば「知名度」と「ポジショニング」をあわせ持ったような概念だ。

スターバックスに当てはめれば以下の通りとなる。

ブランドエクイティの事例
ブランドのセイリエンス×スターバックス

シアトルコーヒーを提供するカフェチェーン

ブランドエクイティピラミッドの事例-2:ブランドのパフォーマンス(Brand Performance)

「ブランドのパフォーマンス」とは「どの程度ブランドが実用的な顧客ニーズを満たしているのか」という意味合いを指す。いわば「ブランドの実利価値が理解されている度合い」だ。

スターバックスに当てはめると以下の通りとなる。

ブランドエクイティの事例
ブランドのパフォーマンス×スターバックス

スペシャリティコーヒー・ユーザーフレンドリー・クリーンネス

ブランドエクイティピラミッドの事例-3:ブランドのジャッジメント(Brand Judgments)

「ブランドのジャッジメント」とは「機能や品質に対する、生活者からの評価度合い」のことだ。

スターバックスに当てはめると以下の通りとなる。

ブランドエクイティの事例
ブランドのジャッジメント×スターバックス

おいしい・誠実な・信頼できる・安心できる

ブランドエクイティの事例-3:ブランドのイメージ(Brand Imagery)

いわゆる、マーケティングの実務家の中で言われる「ブランドイメージ」のことを指す。スターバックスに当てはめると以下の通りとなる。

ブランドエクイティの事例
ブランドのイメージ×スターバックス

お洒落な・洗練された・社交的な・都会的な

ブランドエクイティピラミッドの事例-4:ブランドのフィーリング(Brand Feelings)

「フィーリング」とは「ブランドに対する生活者からの感情的な反応・評価」のことをだ。いわば感覚・感性面での「評価・判断」が伴う。

スターバックスに当てはめると以下の通りとなる。

ブランドエクイティの事例
ブランドのフィーリング×スターバックス

心地よいコーヒー経験を体験できる・
自宅や職場で味わえない解放感やくつろぎ感が得られる

ブランドエクイティピラミッドの事例-5:ブランドのレゾナンス(Brand Resonance)

「ブランドのレゾナンス」とは、ブランドと顧客の心理的な絆の強さや感情移入の度合いを指す。D.A.アーカーのいう「ブランドロイヤリティ」がこれにあたる。

スターバックスに当てはめると以下の通りとなる。

ブランドエクイティの事例
ブランドのレゾナンス×スターバックス

都会的で洗練された自分にふさわしいカフェチェーン

ブランドエクイティピラミッドの事例-6:ブランドエクイティの事例まとめ

これまでのスターバックスの事例をまとめると、以下の図の通りとなる。

本来ブランディングの実務では、より詳細かつ精緻にブランドエクイティ項目を検討するが、上記のスターバックスの例を通して、感覚を掴んでいただければ幸いだ。

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最後に:ブランドエクイティとブランドマネジメントの必要性

ブランドは「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」とならぶ第5の経営資産と言われる通り、企業にとっては競争力の源泉となる重要な資産だ。その理由は、以下の4点に集約される。

ブランドエクイティは企業と顧客を直接つなぐ資産

企業は数々の資産を保有している。例えば、不動産や工場、有価証券、知的財産権などだ。そのような資産の中でも、企業の収益の源泉となる「顧客」と直接かかわる企業資産は「ブランド」のみとなる。

例え企業がどんなに多くの不動産を所有し、立派な工場を建てたとしても、顧客から選ばれ続けなければそれらは不良資産となる。

全ての企業にとって、成長に欠かせないのが顧客である以上「ブランド」は企業経営上、最優先でマネジメントされるべき資産だ。

ブランドエクイティは希少性の高い資産

独自のブランドアイデンティティやブランドパーソナリティを伴って個性化されたブランドは、企業側だけでなく、生活者にとっても唯一無二の希少な存在となる。これが他の資産との大きな違いだ。

さらに、生活者が同一カテゴリで想起することのできるブランド名は最大でも7つ前後といわれる。もしあなたのブランドがその7つの内側に入ることができれば、それだけで希少性の高い競合優位性を発揮することが可能になる。

ブランドエクイティは長期に渡る資産

ブランドを資産としてとらえた場合、その特徴は生活者の認識の内側で積み上げられていく資産であるという点だ。

形のある資産はいずれ老朽化していく。これだけインターネットが普及した現在においては、情報の優位性も驚くべき速度で陳腐化していく。しかし、ブランドという資産は、企業側ではなく消費者の認識の内側に存在しているため、企業側が適切なブランドマネジメントを行えば、長期にわたって競争力を発揮する資産であり続ける。

一度、生活者の認識に記憶されたブランドエクイティは、そう簡単に失われることはない。多くの企業がブランドエクイティの構築を目指す背景には、ブランドが長期に渡って競争力を発揮できる資産であるという特徴があるからだ。

ブランドエクイティは組織のコア・コンピタンスとなる資産

ブランドエクイティは、適切にマネジメントすれば、企業組織のコア・コンピタンスとなり得る。

例えば「スターバックス」や「ディズニーランド」を思い浮かべてほしい。

この2つのブランドの組織上の共通点は、2つのブランドともに、正社員ではないアルバイトスタッフが「そのブランドらしさ」を体現した働きを自発的にする点だ。

スターバックスやディズニーランドで働くアルバイトスタッフは、ブランドのファンであるがゆえに「そのブランドらしさ」を誰よりも深く理解している。

さらに、そのブランドが好きでアルバイトに応募し働いているため、アルバイトスタッフであるにもかかわらずブランドに対する帰属心や貢献意欲が高く「そのブランドの役に立ちたい」というモチベーションが高い。

結果、内側からブランドを強くしていく「組織文化」が形成・強化され、その組織文化がその企業のコア・コンピタンスとなっていく。

つまり、一度確立されたブランドエクイティは、組織の中に好循環を生み出ながらコア・コンピタンスという競争力を形創っていくのだ。

特に「人材」が競争力の源泉となる企業の場合、ブランドエクイティの確立は、極めて大きなメリットとなるはずだ。

このブログから書籍化した本4冊

ブランディングの理論と実践をつなぐ「ブランディングの教科書」

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冒頭でも紹介させていただいたが、再度紹介させていただこう。

本書は、筆者の専門である「ブランディング」について解説した書籍だ。

ブランディングは、ややもすれば「デザインの話」「広告の話」「世界観の話」など、掴みどころのない抽象論に陥りがちだ。

しかしブランディングは「ブランド戦略」という言葉があるように、企業の成否を大きく左右する戦略のひとつだ。そして投資が伴う以上、一定の合理性と説明責任が求められる。決して、売上や利益から逃げてはならないのだ。

本書は、つい「感覚論」に陥りがちな「ブランディング」に対して「論理的な納得性」と「直感的な腹落ち感」の両面を追求した書籍だ。

「論理」が理解できなければ、ブランディングを体系的に理解することできず、再現性を生むことができない。

そして「直感的な腹落ち感」がなければ、ブランディングを実務に落とせず、成果をもたらすことができない。

本書は、広告代理店&外資系コンサルティングファームで培った「生の知見」と「体系的な解説」を通して、ブランディングの理論を実践へとつなげて解説している。

おかげさまで、本書はAmazon kindle売れ筋ランキング「消費者主義」ジャンルでベストセラー1位を獲得し、Amazonレビューでも、

  • 「ふわっとしたブランディングの本が多い中で、異彩を放っている」
  • 「事例も多いので実践のイメージが湧きやすい」
  • 「海外企業の事例ばかりが紹介されている輸入本だとピンとこない、という方にお薦め」

など、ありがたい言葉を頂いている。

もし本書を手にとって頂ければ、ブランディングの専門用語はもちろん、実践の手順や実務の勘所が、一通り学べるはずだ。

kindle Unlimitedを契約されている方は無償で手に入れることができるので、気軽に手に取っていただきたい。

シャープな仮説を生み出す頭の使い方」を徹底解説

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あらゆるビジネスは「仮説」こそが成否を握る。

なぜなら、仮説を生み出せなければ次の一手を見出しようがなく、検証のしようもなくなるからだ。つまり、ビジネスの成長は止まってしまうことになる。

しかし仮説思考の書籍の多くは、仮説思考のメリットは説くものの、肝心の「仮説思考のマスターの仕方」になると、

  • 「センスが必要」
  • 「経験の積み重ねが物を言う」

など「それを言ったらお終いよ」という結論で終わらせているものが多い。

一方で、本書は「仮説思考に必要な推論の手順」を、豊富な事例とともに解説している。よって、その手順通りに推論を重ねれば「センス」や「長年の経験」に頼ることなく、誰でも優れた仮説を導き出せるようになる。

おかげさまで本書は5版を重ね「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」にノミネートいただいた。NewsPicksやNIKKEI STYLE、lifehackerなど多くのメディアで取り上げていただき、中国や台湾、香港でも出版が決定している。

さらにAmazonレビューでも、

  • 「ここ数年の仮説思考系の書籍で久々のヒット」
  • 「自分オリジナルの武器にしていけそうな良書」
  • 「一生もののスキルになるのは間違いない」

など有難い言葉を頂戴しており、5刷を重ねている。

もしあなたがシャープな仮説を導き出せるようになりたいなら、ぜひ本書を手にとってみて欲しい。

ロジカルシンキングでは学べない「視点力」と「法則力」を身につける※無料のオーディオブック特典付

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人は誰しも「視点」を通してしか物事を考えることができない。別の言い方をすれば、「何を考えるか?」は視点が支配してしまうともいえる。

 人の思考は必ず、

  1. 視点:まずは何らかの「視点」を置き
  2. 法則:その「視点」を元に「ああなれば→こうなるだろう」という「法則性」に当てはめ
  3. 結論:結論を出す

というステップを辿る。

つまり、どんなにロジカルシンキングに長けていても、論理の前提となる「視点を置き方」を間違えれば結論は間違ったものになる。

また、どんなに適切な視点を置いたとしても「ああなれば→こうなるだろう」という「法則」のストックがなければ、再現性の高い仮説を導き出すことはできない。

本書はビジネス書から「隠れた視点」と「隠れた法則」を発見し、思考の質とスピードを上げていく方法を解説した書籍だ。

もしあなたが自由自在に「視点」を操ることができるようになれば、物事の多様な側面に気づき、次々と「別の選択肢」「別の可能性」を生み出すことができるようになる。

さらに、数多くの「法則」をストックしていけば、様々な現象に「法則」を当てはめることで「的を射た」仮説を瞬時に導き出すことが可能になるはずだ。

おかげさまで、本書はThe21やNIKKEI STYLE、STUDY HACKERなど多くのメディアで取り上げていただいた。Amazonレビューでも、

  • これまでの読書術の常識を次々と塗り替えている目からウロコの本
  • 読書を通して、視点力や仮説思考、抽象化スキルが身に付く良書
  • まさに「モノの見方を変える方程式」

など、ありがたい言葉を頂戴している。

数多くの視点を持っている人は、たとえ同じ状況を見ていても「気づくこと」や「気づきの量」が格段に違う。

数多くの法則を持っている人は「ああなれば→こうなりやすい」という「法則」に当てはめて考えることで、精度の高い未来を予測している。

もしあなたが「ロジカルシンキング本」では学べない「視点力」や「法則力」を身につけたいなら、ぜひ本書で紹介する読書法を実践して欲しい。

※無料のオーディオブック特典付

8ジャンル57個の仕事術で「実践力」を身につける

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どのようなビジネスも、実践が伴わなければ成果は出ない。しかし、いざ「実践力」を身につけようとしても、その分野は、

  1. 時間管理術
  2. 段取り術
  3. コミュニケーション術
  4. 資料作成術
  5. 会議術
  6. 学び術
  7. 思考術
  8. 発想術

など多分野に渡り、最低8冊分の読書時間と書籍代がかかってしまうのが難点だ。

しかし、本書「超効率ハック」は、8つの分野の仕事術の「重要ポイントだけ」を抜き出し、ギュッと1冊に凝縮した書籍だ。

さらに、本書は「訓練や習慣化が必要な作業テクニック」ではなく「行動を変えるための頭の使い方」の解説に力を入れているため「頭のスイッチを切り替える」だけですぐに実践できるのも特色だ。

おかげさまで、本書を題材にしたSchooのオンライン授業では「思考法ジャンル」で人気ランキング1位を頂いた(139講座中)。また、lifehackerやOggiなど数多くのメディアで取り上げていただき、Kindleでは「オペレーションズ部門」でベストセラー1位を獲得している。

Amazonレビューでも、

  • 「思考と行動の質を上げるヒントが盛りだくさん」
  • 「読んでみると、頑張りどころを間違えてたことに気付かされる」
  • 「仕事が速い人はこれをやってたんだな、ということがよくわかった」

など、ありがたい言葉を頂戴しており嬉しい限りだ。

もしあなたが「短時間で網羅的に仕事術を学びたい」「根本から仕事の生産性を高めたい」と感じているのなら、ぜひ手に取ってみて欲しい。

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終わりに

今後も、折に触れて「ロジカルで、かつ、直感的にわかる解説」を続けていくつもりだ。 

しかし多忙につき、このブログは不定期の更新となる。

それでも、このブログに主旨に共感し、何かしらのヒントを得たいと思ってもらえるなら、ぜひこのブログに読者登録Twitterfacebook登録をしてほしい。

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