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ブランドエクイティとは?ブランドエクイティの構成要素と事例を解説

ブランドエクイティとは?2つのフレームワークと構成要素を全て解説

このブログに辿り着いたあなたなら、どこかで「ブランドエクイティ」という言葉を耳にしたことがあるはずだ。

しかし一方で「ブランドエクイティは、なぜ重要なのか?」と問われると、明確な答えに辿り着けないマーケティング担当者も多いことだろう。

ブランドエクイティは目に見えない、極めて抽象的な概念だ。そうであるにも関わらず多くのマーケティング担当者にとって「重要な概念」という共通認識が持たれているのは、それだけの理由がある。

今回の記事では「ブランドエクイティ」について詳しく解説する。

この解説を最後までお読みいただければ「ブランドエクイティとは何か?」「ブランドエクイティは、なぜ重要なのか?」「ブランドエクイティを適切に管理する上で必要な視点とは何か?」が理解できるようになるはずだ。

また、以下の参考記事を合わせてご覧いただければ、抽象的でわかりずらい「ブランディング」に関して、より体系的な理解が深まるはずだ。

 

ブランドエクイティ(Brand Equity)とは?ブランドエクイティの意味と定義

ブランドエクイティ(Brand Equity)という考え方を整理して提唱したのは、ブランド論の大家と言われる、カリフォルニア大学バークレー校のデービッド・A・アーカー(David A. Aaker)教授だ。

デービッド・A・アーカーは1991年に著した「ブランド・エクイティ戦略-Managing Brand Equity」で、ブランドエクイティを以下のように定義している。

ブランドエクイティの定義

ブランドの名前やシンボルと結びついたブランドの資産(あるいは負債)の集合であり、製品やサービスの価値を増大させるもの。

相変わらず(?)D.A.アーカーの定義はわかりにくいが「ブランドエクイティ」とは無形で目に見えない「ブランド」を、不動産や有価証券といった他の資産と同じように「企業が保有する資産」として評価しようという考え方だ。

しかしここで重要になってくるのが「資産」に対する本質的な理解だ。果たしてあなたは「資産」に対して、どのような認識をお持ちだろうか?

資産(Equity)とは何か

「資産」に対する一般的な認識は、土地・家屋・金銭などの「財産」だろう。また、ビジネスの文脈で言えば、貸借対照表に記載させる不動産や建物、有価証券あたりが思い浮かぶのではないだろうか?

しかし、ビジネスにおける「資産」とは、以下のものを指す。

「資産」とは何か?

将来、利益を生み出すことが見込まれるが、まだ利益を生み出す前の状態のもの。

 この定義に従えば、例えば「経営者のリーダーシップ」や「革新的な組織カルチャー」あるいは「卓越したオペレーション能力」など「形がないもの」も「資産」に含まれる。

そして「ブランド」もまた「将来利益を生み出すことが見込まれるが、まだ利益を生み出す前の状態のもの」であるから、企業経営上の「資産」に当たる。

そして、ブランドは「資産」である以上、当然他の資産と同様に「資産価値」を高めていくための育成と投資が必要となる。

「フォーチュン誌」による世界ランキングトップ500社の市場価値の70%以上は、特許・知識・顧客関係・ブランドなどの「計上されない」資産が占めているといわれる。

ブランド力の優劣は、生活者が商品やサービスの購入を決める際に大きな影響を及ぼしている。その中核である「ブランドエクイティ」とは、ブランドが持つ知名度や信頼感といった無形の価値を、企業価値を左右する「資産」捉えて積極的に育成するべきという考え方だ。

D.A.アーカーの「ブランドエクイティ論」がもたらしたインパクトとは?

今では多くのマーケティング担当者が見聞きしたことがある「ブランドエクイティ」だが、D.A.アーカーによって「ブランドエクイティ論」が提唱された当時は、実務界のみならず、アカデミアの中でも大きなインパクトがもたらされたと言われる。その理由は以下の2点だ。

ブランドエクイティ論のインパクト-1:ブランド=「商品の添え物」から「マネジメントすべき資産」へ

それまでは「ブランド=名前/ロゴ」として「商品の添え物」としか見なされていなかった「ブランド」だが「ブランドエクイティ論」の登場によって「戦略的にマネジメントすべき資産」として位置づけられた。

その結果、海外ではCMOがボードミーティングに参加する機会が劇的に増えたといわれる。逆を言えば、それまでブランディングは「単なる戦術」としか捉えられていなかったとも言える。

ブランドエクイティ論のインパクト2-「短期的なシェア拡大」から「ブランド資産の構築」へ

「ブランドエクイティ」という概念の登場によって、ブランディングの目標設定は「短期的な売上と市場シェアの増加」から「ブランドエクイティの構築」にシフトする動きが生まれた。

k_birdはこれまで、外資系コンサルティングファームのコンサルタントとして、あるいは広告代理店のストラテジストとして数々のクライアントの現場を歩いてきた。

そして近年では多くの外資系グローバル企業が「マーケティング予算の15~20%はブランドエクイティのために使う」などのルールを本国から設定され、報告を求められるケースが多い。

また、ミーティングの最中に「担当ブランドのブランドエクイティとは何か?」について議論が巻き起こることもしょっちゅうだ。

さらに、年に数回はブランドエクイティについて語りつくす会や合宿が催され、マーケティングのみならず営業や研究開発といった他部署も参加必須としている企業もある。

「ブランドエクイティ」という考え方の登場によって「良い品質の製品を提供していれば、自然にブランドは育成される」という考え方は修正された。ブランドは自然に形成されるものではなく、企業の競争力を生み出す「資産」として、意図的に育てなければならない。時にブランディングのことを「ブランド構築」あるいは「ブランドビルディング」と呼ぶのはこのためだ。

 

ブランドエクイティの5つの構成要素

それだけ外資系グローバル企業で重要視されている「ブランドエクイティ」だが、D.A.アーカーによると、ブランドエクイティは大きくわけて5つの構成要素で成り立っていると解説している。その5つの構成要素とは以下の通りだ。

  1. ブランド認知(Brand Visibility)
  2. 知覚品質(Trust & Perceived Quality)
  3. ブランドロイヤリティ(Brand Loyalty)
  4. ブランド連想(Brand Associations)
  5. その他のブランド資産

以下、順番に解説していこう。

ブランドエクイティの5つの構成要素-1:ブランド認知(Brand Visibility)とは?

ブランドエクイティの構成要素-1:ブランド認知

 

ブランド認知とは、端的に言えば「ブランドが認識されている度合い」のことを指す。

しかしあまり知られていないことだが、D.A.アーカーが初期に提唱していたブランド認知(Brand Awareness)とは異なり、現在ではその概念に大きな変更が加わり、英語ではBrand Visibilityと呼ばれるようになってきている。

Brand Visibilityの「Visibility」とは「見通しがきく度合い」「視界がクリア度合い」といったニュアンスの英語だが、その真意は「単に生活者がブランド名を知っている」だけに留まらず「商品やサービスのカテゴリーが正しく認識されているかどうか」「生活者から見て自分との関わりが認識されているかどうか」といったニュアンスを含む。

例えば「スターバックス」の場合、そのブランド名を知っているだけでなく「カフェチェーンであること」「リラックスしたいときに訪れる場所」なども含み「認知」というよりは「認識」に近いニュアンスだ。

もしこの「認識度」が高ければ 生活者が「カフェでコーヒーを飲みたい」というカテゴリーニーズが生じた場合、検討する選択肢(専門用語では考慮集合)に入りやすくなる。

実務的には、ブランド認知は消費者調査によって、以下の尺度で測定することが多い。

ブランド認知の測定-1:ブランド助成想起率

「ブランド助成想起率」とは、競合ブランドを含め複数のブランド名をあらかじめ提示した上で、見聞きしたことがあるブランド名を答えた人の割合を指す。人によっては「ブランド再認知名率」と呼ぶこともある。

ブランド認知の「深さ」としては頼りないが、生活者は見聞きしたことがないブランドよりも知っているブランドを好みやすい(心理学でいうザイアンス効果)ことから、店頭消費財など「商品棚に置かれている数あるブランドの中から自社ブランドを選んでもらいやすくする」ためには重要な要素となる。

ブランド認知の測定-2:ブランド純粋想起率

「ブランド純粋想起率」とは、商品のカテゴリーを提示した上で、生活者に何も提示しないまま知っているブランドを次々に思い出してもらい、自社ブランドの名前が挙がった割合を指す。別名「ブランド再生認知率」だ。

「ブランド純粋想起率」が高いと、生活者のカテゴリーニーズが生じた瞬間に「その場で」思い出してもらいやすくなる。

特にインターネットサービスなど「自社ブランドの指名検索」によってホームページに誘導するタイプのビジネスモデルの場合「カテゴリーニーズが生じたときにその場で思い出してもらう」ことは、顧客獲得の生命線となる。

ブランド認知の測定-3:ブランド第一想起率

「ブランド第一想起率」とは、カテゴリーを提示した上で、生活者に何も提示しないまま知っているブランドを次々に思い出してもらった上で「一番最初に」自社ブランドの名前が挙がった割合を指す。

ブランド第一想起率は、別名「トップ・オブ・マインド」とも呼ばれ、カテゴリーニーズが生じたときに一番最初に思い浮かべるブランドであることから、市場シェアとの相関関係が高い指標とされる。

ブランド認知の測定-4:ブランド支配想起率

「ブランド支配想起率」とは、カテゴリーを提示した上で、生活者に何も提示しないまま知っているブランドを思い出してもらう。その際に「一番最初に」自社ブランドの名前が挙がるところまでは「ブランド第一想起率」と同じだが、さらに「自社ブランド以外は思い浮かべることができない」状態の人の割合を指す。

生活者から見れば、カテゴリーニーズが生じた際に「そのブランド以外は思い浮かばない」状態であり、ブランド認知において最も理想的な姿となる。

事例を挙げれば「カゴメのトマトケチャップ」「ミツカンのお酢」「オンライン書店のアマゾン」などがブランド支配想起率の高いブランドの典型だ。

ブランドエクイティの5つの構成要素-2:知覚品質(Trust & Perceived Quality)とは?

ブランドエクイティの構成要素-2:知覚品質

知覚品質とは、端的に言えば「そのブランドに対して、生活者側が認識している品質」のことを指す。

こちらも注意したいのは、D.A.アーカーが初期に提唱していた知覚品質(Perceived Quality)とは異なり「Trust & Perceived Quality」として、その概念が大きく広がっている点だ。

知覚品質は、企業側が設定した「事実としての品質」とは異なり「生活者側が認識している品質」のことを指す。そのため、単に製品の機能・性能だけでなく、信頼性やサービス、雰囲気など、その範囲は多岐に渡る。

経営学者のR・バゼルとB・ゲイルらによる研究によれば、知覚品質で下位20%に属するビジネスは平均して約17%のROIしかないのに比べて、知覚品質が上位20%に属するビジネスでは、ほぼ2倍のROIが得られているという。

知覚品質は事業収益への貢献度が高く、ブランドエクイティの中で特に重要な管理要素となる。

参考:【知覚品質とは】ブランディングで知覚品質を向上させる21の手法 - Mission Driven Brand

ブランドエクイティの5つの構成要素-3:ブランドロイヤリティ(Brand Loyalty)とは?

ブランドエクイティの構成要素-3:ブランドロイヤリティ(Brand Loyalty)とは?

ブランドロイヤリティとは、ブランドに対して感じる「愛着の度合い」であり、ブランドロイヤリティが向上すると、ブランドの継続購入率は高まる。

D.A.アーカーも、ブランドロイヤリティは「ブランドエクイティ要素の中でも特別なもの」として明確に位置づけており、ブランドエクイティの中でもとりわけ重要な要素となる。

実務的には「とても買ってみたい」「買ってみたい」「どちらでもない」「あまり買いたくない」「買いたくない」という5段階のDWB(Definitely Would Buy)指標やNPS指標で測定することが多い。

店頭消費財においては、適切なマーケティング投資を行えば、DMB(「とても買ってみたい」)のスコアは、初年度トライアル率あるいは1年購入経験値に近づくといわれている。

ブランドロイヤリティについては、詳しくは下記の記事をご参考いただきたい。より理解が深まるはずだ。

参考:ブランドロイヤリティとは【適切な指標と8つの向上手法】を徹底解説 - Mission Driven Brand

ブランドエクイティの5つの構成要素-4:ブランド連想(Brand Associations)とは?

ブランドエクイティの構成要素-4:ブランド連想(Brand Associations)とは?

ブランド連想とは「生活者がブランドについて解釈し、想起する一連の連想」のことを指す。

強いブランドは、そのブランドを思い浮かべた際に何かしらの連想が頭の中に思い浮かぶことが多い。

もし好ましいブランド連想が一つも思い浮かばなければ、生活者はそのブランドに価値を感じることはなく、感情移入されることもない。結果、指名で購入さることもない。

また、ブランド連想は感情移入や指名買いを形創るだけでなく、強く個性的なブランド連想を築くことによって、競合との差別化を行う上での重要な基盤にもなる。

更には、ブランド連想はその範囲を広げることで「ブランド拡張」という事業機会をもたらすことも特徴の1つだ。

ブランド連想は、実務的には消費者調査のプリコード(選択肢回答)と、自由回答のテキストマイニングの両面で見ていくことが多い。その際にチェックしておきたい視点は下記の通りだ。

  1. 競合ブランドと比べた、ブランド連想の独自性・オリジナリティ
  2. ブランド連想の豊かさ、広がりの度合い
  3. ブランド連想の質・好意さ
  4. ブランド連想の強さ
  5. ブランド連想の段階(名詞的・形容詞的・5W1H的など)

詳しくは下記で解説しているので、興味がある方は参考にして欲しい。

www.missiondrivenbrand.jp

ブランドエクイティの5つの構成要素-5:その他のブランド資産とは?

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その他のブランド資産とは、ブランド以外の知的所有権のある無形資産(特許、商標など)や取引先との強固な関係性などを指す。

 

ブランドエクイティピラミッド(ブランドピラミッド)とは?もう一つのブランドエクイティ論

ここまでは、主にD.Aアーカーが提唱している「ブランドエクイティの5つの構成要素」に沿った形で、実務的な視点を交えながら「ブランドエクイティ」を解説してきた。

しかし実はブランドエクイティには、アーカー以外のもう一つのフレームワークがあることを、あなたはご存じだっただろうか?

そのフレームワークとは、ダートマス大学のケビン.L.ケラー教授が開発した「顧客ベースのブランドエクイティピラミッド」だ。別名「ブランドレゾナンス・ピラミッド」とも呼ばれる。

ケラーは、ブランドエクイティをマーケティング活動によって高めるブランドマネジメントの全体プロセスをまとめている。D.A.アーカーのモデルと比べて知名度は劣るものの、実用性が高いのはむしろこちらのほうだろう。

以下、図解を交えながら簡単に解説しよう。

ブランドエクイティピラミッドの構成要素-1:ブランドのセイリエンス(Brand Salience)

ブランドエクイティピラミッド-1:ブランドのセイリエンス(Brand Salience)

まずは、ピラミッドの底辺に位置する「ブランドのセイリエンス」だ。

「sailience」とは聞きなれない英語だが、そのまま日本語に訳すと「突出性」となる。ブランドエクイティピラミッドの文脈でいえば「簡単にブランドを想起させる、ブランドの突出性」といった意味合いになる。いわば「知名度」と「ポジショニング」をあわせ持ったような概念だ。

実務的には「ブランドに対する認識の深さ度合い」と解釈すればOKだ。

ブランドエクイティ:「ブランドのセイリエンス」の調査測定例

「ブランドのセイリエンス」の調査測定例としては、ブランド助成想起率/ブランド純粋想起率/ブランド第一想起率…など、冒頭で挙げた要素が挙げられる。

ブランドエクイティピラミッドの構成要素-2:ブランドのパフォーマンス(Brand Performance)

ブランドエクイティピラミッド-2:ブランドのパフォーマンス(Brand Performance

 「ブランドのパフォーマンス」とは「どの程度ブランドが実用的な顧客ニーズを満たしているのか」という尺度を指す。

こちらも、実務的には「ブランドの実利価値が理解されている度合い」と考えておけばOKだ。

ブランドエクイティ:「ブランドのパフォーマンス」の調査測定例

「ブランドのパフォーマンス」の調査測定例としては、例えば「品質が高そうな」「多機能な」「頑丈そうな」「コンパクト」な…などが挙げられるだろう。

ブランドエクイティピラミッドの構成要素-3:ブランドのイメージ(Brand Imagery)

ブランドエクイティピラミッド-3:ブランドのイメージ(Brand Imagery)

 いわゆる、マーケティングの実務家の中で言われる「ブランドイメージ」のことを指す。こちらは多くのマーケティング担当者にとって馴染みやすいはずだ。

ブランドエクイティ:「ブランドのイメージ」の調査測定例

「ブランドのイメージ」の調査測定例としては「親しみやすい」「洗練された」「現代的な」「知的な」…などブランドを表現する際の形容詞的要素が挙げられる。

ブランドエクイティピラミッドの構成要素-4:生活者のジャッジメント(Judgments)

ブランドエクイティピラミッド-4:生活者のジャッジメント(Judgments)

 「生活者のジャッジメント」とは「ブランドの機能や品質に対する、生活者からの評価度合い」を指す。

先ほどの「ブランドのパフォーマンス」が、単に「実利価値が理解されている度合い」という「どこか他人事の印象」であったのに比べて「ブランドのジャッジメント」は実利価値に対して「理性的な評価・判断」という「態度」が伴っているのが特徴だ。

いわば「自分事として理性的な判断の遡上に乗せている」状態とも言える。

ブランドエクイティ:「生活者のジャッジメント」の調査測定例

「生活者のジャッジメント」の調査測定例としては「実用的な」「便利そうな」「役に立つ」「安全そうな」「実績のある」…などが挙げられる。

ブランドエクイティピラミッドの構成要素-5:生活者のフィーリング(Feelings)

ブランドエクイティピラミッド-5:生活者のフィーリング(Feelings)

 「生活者のフィーリング」とは「ブランドに対する生活者からの感情的な反応・評価」のことを指す。

「ブランドのイメージ」が単なる「印象」であったのに比べて「ブランドのフィーリング」は「感覚・感性面での評価・判断」という「態度」が伴うのが特徴だ。

ブランドエクイティ:「生活者のフィーリング」の調査測定例

「生活者のフィーリング」の調査測定例としては「誠実な」「信頼できる」「期待できる」「好感が持てる」…などが挙げられる。

ブランドエクイティピラミッドの構成要素-6:ブランドと生活者のレゾナンス(Resonance)

ブランドエクイティピラミッド-6:ブランドと生活者のレゾナンス(Resonance)

 「ブランドのレゾナンス」とは、ブランドと顧客の心理的な絆の強さや感情移入の度合いを指す。

ことブランディングにおいては、この「ブランドレゾナンス」を持つ顧客をいかに増やしていくかがブランドエクイティに直結していく。D.A.アーカーのいう「ブランドロイヤリティ」がこれにあたる。

ブランドエクイティ:「ブランドと生活者のレゾナンス」の調査測定例

「ブランドと生活者のレゾナンス」の調査測定例としては「自分の価値観と合う」「自分の好みに合う」「愛着を感じる」「家族や友人に薦めたい」「他に代えられない」…などが挙げられる。

ブランドエクイティピラミッドの構造は?

ブランドエクイティピラミッドの構造

 

ブランドエクイティピラミッドの構造に対する解釈は上図の通りだ。

ピラミッドの左側は、主に生活者が持つ「理性評価」となり、ピラミッドの右側は「感性・感情評価」となる。

この「左右の構造」からわかる通り、ブランディングには「品質・機能一辺倒」の理性評価ではなく「感性・感情的な価値(=喜び)の提供」も必須であることがわかる。

またピラミッドの下から上へ縦方向の構造を見ると、いわば「ブランド認知からロイヤリティへ」という流れとなり、多くのマーケティング担当者の実感と大きな齟齬はないはずだ。

そして「ブランドエクイティピラミッド」とD.A.アーカーの「ブランドエクイティ要素」との対応は、以下の図の通りとなる。

以下の図を御覧になれば、D.A.アーカーもケビン.L.ケラーも、言っていることは大きく違わないことがご理解いただけるはずだ。

そして2人の大御所が見出した要素の共通点こそが、多くの実務家にとって見逃してはならないブランディングの本質となる。

ブランドエクイティ

 

ブランドエクイティの事例:スターバックス

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締めくくりに、よりブランドエクイティの理解を深めるために、スターバックスを事例に、簡単にブランドエクイティ要素を当てはめてみよう。

ブランドエクイティの事例-1:ブランドのセイリエンス(Brand Salience)

ブランドセイリエンスは「簡単にブランドを想起させる、ブランドの突出性」といった、いわば「知名度」と「ポジショニング」をあわせ持ったような概念だ。

スターバックスに当てはめれば以下の通りとなる。

ブランドエクイティの事例
ブランドのセイリエンス×スターバックス

シアトルコーヒーを提供するカフェチェーン

ブランドエクイティの事例-2ブランドのパフォーマンス(Brand Performance)

「ブランドのパフォーマンス」とは「どの程度ブランドが実用的な顧客ニーズを満たしているのか」という意味合いを指す。いわば「ブランドの実利価値が理解されている度合い」だ。

スターバックスに当てはめると以下の通りとなる。

ブランドエクイティの事例
ブランドのパフォーマンス×スターバックス

スペシャリティコーヒー/ユーザーフレンドリー/クリーンネス

ブランドのジャッジメント(Brand Judgments)の例

「ブランドのジャッジメント」とは「機能や品質に対する、生活者からの評価度合い」のことだ。

スターバックスに当てはめると以下の通りとなる。

ブランドエクイティの事例
ブランドのジャッジメント×スターバックス

おいしい/誠実な/信頼できる/安心できる

ブランドエクイティの事例-3:ブランドのイメージ(Brand Imagery)

いわゆる、マーケティングの実務家の中で言われる「ブランドイメージ」のことを指す。

スターバックスに当てはめると以下の通りとなる。

ブランドエクイティの事例
ブランドのイメージ×スターバックス

お洒落な/洗練された/社交的な/都会的な

ブランドエクイティの事例-4ブランドのフィーリング(Brand Feelings)

「フィーリング」とは「ブランドに対する生活者からの感情的な反応・評価」のことをだ。いわば感覚・感性面での「評価・判断」が伴う。

スターバックスに当てはめると以下の通りとなる。

ブランドエクイティの事例
ブランドのフィーリング×スターバックス

心地よいコーヒー経験を体験できる
自宅や職場で味わえない解放感やくつろぎ感が得られる

ブランドエクイティの事例-5ブランドのレゾナンス(Brand Resonance)

「ブランドのレゾナンス」とは、ブランドと顧客の心理的な絆の強さや感情移入の度合いを指す。D.A.アーカーのいう「ブランドロイヤリティ」がこれにあたる。

スターバックスに当てはめると以下の通りとなる。

ブランドエクイティの事例
ブランドのレゾナンス×スターバックス

都会的で洗練された自分にふさわしいカフェチェーン

ブランドエクイティの事例まとめ

これまでのスターバックスの事例をまとめると、以下の図の通りとなる。

本来ブランディングの実務では、より詳細かつ精緻にブランドエクイティ項目を検討するが、上記のスターバックスの例を通して、感覚を掴んでいただければ幸いだ。

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最後に:ブランドエクイティとブランドマネジメントの必要性

ブランドは「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」とならぶ第5の経営資産と言われる通り、企業にとっては競争力の源泉となる重要な資産だ。その理由は、以下の4点に集約される。

ブランドエクイティは企業と顧客を直接つなぐ資産

企業は数々の資産を保有している。例えば、不動産や工場、有価証券、知的財産権などだ。そのような資産の中でも、企業の収益の源泉となる「顧客」と直接かかわる企業資産は「ブランド」のみとなる。

例え企業がどんなに多くの不動産を所有し、立派な工場を建てたとしても、顧客から選ばれ続けなければそれらは不良資産となる。

全ての企業にとって、成長に欠かせないのが顧客である以上「ブランド」は企業経営上、最優先でマネジメントされるべき資産だ。

ブランドエクイティは希少性の高い資産

独自のブランドアイデンティティやブランドパーソナリティを伴って個性化されたブランドは、企業側だけでなく、生活者にとっても唯一無二の希少な存在となる。これが他の資産との大きな違いだ。

さらに、生活者が同一カテゴリで想起することのできるブランド名は最大でも7つ前後といわれる。もしあなたのブランドがその7つの内側に入ることができれば、それだけで希少性の高い競合優位性を発揮することが可能になる。

ブランドエクイティは長期に渡る資産

ブランドを資産としてとらえた場合、その特徴は生活者の認識の内側で積み上げられていく資産であるという点だ。

形のある資産はいずれ老朽化していく。これだけインターネットが普及した現在においては、情報の優位性も驚くべき速度で陳腐化していく。しかし、ブランドという資産は、企業側ではなく消費者の認識の内側に存在しているため、企業側が適切なブランドマネジメントを行えば、長期にわたって競争力を発揮する資産であり続ける。

一度、生活者の認識に記憶されたブランドエクイティは、そう簡単に失われることはない。多くの企業がブランドエクイティの構築を目指す背景には、ブランドが長期に渡って競争力を発揮できる資産であるという特徴があるからだ。

ブランドエクイティは組織のコア・コンピタンスとなる資産

ブランドエクイティは、適切にマネジメントすれば、企業組織のコア・コンピタンスとなり得る。

例えば「スターバックス」や「ディズニーランド」を思い浮かべてほしい。

この2つのブランドの組織上の共通点は、2つのブランドともに、正社員ではないアルバイトスタッフが「そのブランドらしさ」を体現した働きを自発的にする点だ。

スターバックスやディズニーランドで働くアルバイトスタッフは、ブランドのファンであるがゆえに「そのブランドらしさ」を誰よりも深く理解している。

さらに、そのブランドが好きでアルバイトに応募し働いているため、アルバイトスタッフであるにもかかわらずブランドに対する帰属心や貢献意欲が高く「そのブランドの役に立ちたい」というモチベーションが高い。

結果、内側からブランドを強くしていく「組織文化」が形成・強化され、その組織文化がその企業のコア・コンピタンスとなっていく。

つまり、一度確立されたブランドエクイティは、組織の中に好循環を生み出ながらコア・コンピタンスという競争力を形創っていくのだ。

特に「人材」が競争力の源泉となる企業の場合、ブランドエクイティの確立は、極めて大きなメリットとなるはずだ。

www.missiondrivenbrand.jp

ブランドエクイティとは?ブランドエクイティ学ぶおすすめ書籍2冊

締めくくりに、マーケティング・ブランディング担当者へのお薦めのブランディング関連書籍を紹介しよう。選定した基準は下記の通りだ。以下に当てはまる2冊をピックアップした。

  1. k_birdが実際に読み、単純に「素晴らしかった」と思えるブランドエクイティ関連書籍。
  2. 実際に「ブランドエクイティ」に関して「初心者にもわかりやすく」しかし「必要な要素は網羅」しているブランドエクイティ関連書籍。
  3. 長年に渡って読み継がれており、時代を越えても変わらない「本質」や「原理」が見出せるブランドエクイティ関連書籍。

もちろん、すべて「なぜ読むべきなのか?」という解説付きだ。

ブランド論 無形の差別化を作る20の基本原則(D.A.アーカー)

ブランディングに携わる実務家にとって、デビッド・アーカーは避けて通れない。

いわゆる「アーカー本」には「ブランドエクイティ戦略」「ブランド優位の戦略」「ブランドポートフォリオ戦略」「ブランドリーダーシップ」の4冊が存在するが、その4冊のエッセンスを抜き出して、集大成として出版されたのが本書の「ブランド論」だ。

本書を読めば、ブランディング用語である「ブランドエクイティ」や「ブランドアイデンティティ」「ブランドパーソナリティ」など、ブランドに関わる理論やコンセプトが一通り理解できるはずだ。

更に、これまでのアーカー本は「翻訳がわかりにくい」「価格が高い」などの欠点があったが、本書は他のアーカー本と比べれば価格も手ごろで、訳も読みやすくなっている。

ブランドに関わる実務家が、一通りアカデミックなブランド論を学ぶには最適な一冊だ。

 

エッセンシャル戦略的ブランド・マネジメント第4版(ケビン.L.ケラー)

こちらは「もう一つのブランドエクイティ」である「ブランドエクイティピラミッド」を開発したケビン.L.ケラーによる書籍のエッセンシャル版だ。

正規版は8,000を越える高価で分厚い書籍だが、こちらは日本の読者にとってより重要度の高い内容が抜粋されており、価格も半分以下だ。さらに事例もアップデートされている。

アーカーが「経営」という観点からブランド戦略にアプローチしているのに対して、ケラーはより「マーケティング実務」の観点からブランド戦略にアプローチしてい。

もしあなたが「ブランドマーケティングの実務的な視点」を重視したいなら、こちらもお勧めだ。

 

終わりに

今回は「ブランドエクイティとは?ブランドエクイティの意味と構成要素を徹底解説」と題して、ブランドエクイティについて解説した。ぜひ、あなたのチームのブランドマーケティングにおいて、有益な示唆となれば幸いだ。

今後も、折に触れて「ロジカルで、かつ、直感的にわかるブランディングの解説」を続けていくつもりだ。(過去記事と今後の掲載予定はこちら

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