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ビジュアルアイデンティティとは|ブランドデザインが創る5つの効果と事例

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あなたがマーケティング担当者なら、デザインに対して以下のような感覚を持ってはいないだろうか?

  • 「デザインはデザイナーの仕事であって、自分は門外漢だからよくわからない。」

もしそう考えているのなら、その考えは改めていただきたい。なぜなら「デザイン」は、ブランディングを成果に導く上で欠くことのできない重要な「ビジネス戦略」の1つだからだ。

こと「ブランディング」に関して言えば、デザインには4つの視点が存在する。

  1. 「ブランド戦略」の視点から見たデザイン
  2. 「ブランドマネジメント」の視点から見たデザイン
  3. 「UX」の視点から見たデザイン
  4. 「装飾美」の視点から見たデザイン

上記のうち「1.ブランド戦略の視点から見たデザイン」及び「2.ブランドマネジメントの視点から見たデザイン」は、あなたのブランドの「ブランド提供価値」や「ブランドアイデンティティ」「ポジショニング」に関わる非常に重要な要素となる。

だとすれば「デザインは門外漢だから」と他人事ではいられない。

あなたが携わっているブランドには、いくつもの競合ブランドが存在する。それらの競合ブランドの中で、生活者があなたのブランドを知る際に一番初めに目にするのが「デザイン」だ。

そうである以上、ブランディングを成果に導く責任を担うあなたにとって「デザイン」に対する見識は避けて通れない。よって今回は非デザイナーであるあなたのために、以下の2点を中心に解説しよう。

  1. 「ブランド戦略」の視点から見たデザイン:ブランドデザインが創る5つのブランド効果とは何か?
  2. 「ブランドマネジメント」の視点から見たデザイン:ビジュアルアイデンティティの意味と方法は?

「ブランド戦略の視点から見たデザイン」を理解できれば、あなたはデザインを検討する際に理解しておくべき重要なポイントを見極められるようになる。

また「ブランドマネジメントの視点から見たデザイン」を理解できれば、ブランディングをより効率的かつ効果的に成果につなげる方法がわかるようになる。

重要なことなので繰り返すが「ブランドデザイン」は、デザイナーに丸投げできない重要な「ビジネス戦略」だ。今回の解説を最後までお読みいただければ、抽象的になりがちな「ブランドとデザイン」の関係について、その背景にあるロジックが理解できるはずだ。

 

ブランドデザインとは?デザインとブランディングの関係

どんなに優秀で勉強家なマーケティング担当者でも、こと「デザイン」となると「自分はセンスがないから…」あるいは「デザインの見識がないから…」と及び腰になる担当者は多い。

かくいうk_birdも非デザイナーであり、デザインの専門家ではない。

しかし長年の外資系コンサルティングファームでのコンサルティング経験、及び広告代理店での戦略プランナーの経験から「ブランドデザインを成果につなげるためのロジック」は理解しているつもりだ。

確かに「デザイン」は専門家であるデザイナーの領域だが、デザイナーが持ち込んだ提案を「戦略面」から評価するのはあなたの仕事だ。よってまずは、デザインを単なる「装飾美」で終わらせないための「5つのブランド効果」について解説しよう。

ブランドデザインが創る5つの効果-1:第1印象を形成する効果

生活者が初めてあなたのブランドと接するとき、1番初めに目にするのは「デザイン」だ。そしてブランドデザインは、そのブランドの第一印象を決定づける効果をもたらす。

まずは、以下の文章を読んでみてほしい。

  • Aさんの印象は:
    「知的」「勤勉」「おしゃれ」「批判的」「頑固」「嫉妬深い」
  • Bさんの印象は:
    「嫉妬深い」「頑固」「批判的」「勤勉」「知的」「おしゃれ」

AさんとBさんの文章をお読みになって、あなたはどのような印象を抱いただろうか?恐らくはBさんの方に悪い印象を持ったのではないだろうか?

しかし、もう一度AさんとBさんの文章をじっくり見比べてみてほしい。単に言葉の順番を入れ替えただけであることに気付くはずだ。

認知心理学に「初頭効果」という理論がある。

「人間は最初に与えられた情報に強く影響を受け、一度印象を持ってしまうと、そこからなかなか評価を変えない」とする理論だ。

上記のAさんとBさんの事例は、実際にユダヤ人の心理学者が実験を行っている。結果はあなたと同じように、多くの人がAさんには好感を抱き、Bさんには悪い印象を抱いたという。

もし仮に、あなたの職場に転職してきた人材が、初日にいきなりモヒカンヘアーで現れたらあなたはどう感じるだろうか?

例えその人が保守的で誠実で真面目な人だとしても、あなたもあなたの同僚も、その人を保守的で誠実で真面目な人とは判断せず、その評価は後々まで引きずるはずだ。

冒頭で解説したように、生活者が初めてあなたのブランドを認識するとき、一番初めに目にするのは「デザイン」だ。そしてその「デザイン」はあなたのブランドの第一印象を決めてしまい、その時の印象を後々まで引きずることになる。

もし、デザインがもたらす第一印象で悪い評価がなされてしまえば、あなたのブランドは過小評価され、トライアル購入の機会損失を生むこともあり得る。さらには、その評価を覆すために膨大な時間とコストもかかることにもなる。

逆を言えば、あなたがより一層「デザインの初頭効果の重要性」を認識し、デザイナーに「丸投げ」するのではなく「ビジネスパートナー」として膝詰めの議論ができるようになれば、協働により優れたブランドデザインを生み出すことが可能になる。その結果ブランドのトライアル購入率は飛躍的に向上するかもしれない。

これらのことを整理すると、以下の通りとなる。

  1. 生活者が初めてあなたのブランドを知るとき、一番初めに目にするのは「デザイン」だ。
  2. デザインは、良くも悪くもブランドに対する初頭効果(=第一印象)を創る。
  3. その初頭効果(=第一印象)は後々まで引きずり、ブランディングやトライアル購入に大きな影響を与える。
  4. デザイナーを単なる「外注業者」として扱うのではなく「パートナー」として扱ったほうがブランディングの成果につながる

人間は外界から受け取る様々な感覚情報のうち、視覚による情報が80%以上を占める。これらを踏まえれば「デザインはアートの世界のことだから」と他人事で済ませてはいけないことが理解できるはずだ。

デザイナーは職人気質が強いため「黙って任せてくれたほうがいいものができるのに…」という顔をされるかもしれない。

しかし、創造とは対立と調和から生まれる。ぜひビジネスパートナーとしてデザイナーと向き合い、互いの情報と知恵をぶつけ合いながら、より良いブランドデザインを目指そう。

ブランドデザインが創る5つの効果-2:ブランドを認識されやすくする効果

2番目は「ブランドを認識されやすくする効果」だ。

ブランドを市場投入すると、ブランドデザインは「パッケージデザイン」「コマーシャル」「グラフィックデザイン」「WEBデザイン」「店頭POPデザイン」など、様々な形に変えながら世の中に出ていくことになる。

それらを踏まえた上で、まずは以下の画像をご覧いただきたい。

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あなたは上記の画像をどのように認識しただろうか?恐らくは「記号の集まりだな」「■と▲の2種類の形があるな」と直感的に認識したことだろう。

人間は物事を視覚で捉えるとき、まずは全体をざっくり捉えた上で、規則性を見出しながら中身を認識しようとする心理メカニズムが働く。これを認知心理学的には「パターン認識」という。

先に述べたように、ブランドデザインは「パッケージデザイン」「コマーシャル」「グラフィックデザイン」「WEBデザイン」「店頭POPデザイン」など、形を変え分散しながら世の中に出ていくことになる。その過程でどうしても様々な部門が関わるため、ブランドデザインはバラバラになっていきがちだ。結果、生活者側から見ればパターン認識が働かなくなり、ブランドを認識しずらくなる。以下が、そのような状態だ。

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全く規則性がなく、1番目の画像と比べてはるかに認識しにくいことがご理解いただけたと思う。

まとめると、以下の通りだ。

  1. ブランドデザインは、工夫すれば分散しがちなブランドの見え方に統一感を創れる。
  2. ブランドデザインによって統一感が創れれば、そのブランドは認識されやすくなる。

ブランドデザインが創る5つの効果-3:ブランド連想を記憶に定着させる効果

続いては「ブランド連想を記憶に定着させる効果」について解説しよう。まずは、以下の画像をご覧頂きたい。

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この画像をご覧になって、あなたは直感的に「あ、スターバックスだ」と認識したはずだ。そして「高品質でこだわりのあるシアトルコーヒー」「落ち着きがありリラックスできる空間」あるいは「ユーザーフレンドリーで誠実なバリスタ」などのブランド連想が思い浮かんだに違いない。

しかし、もう一度よく上記の画像をご覧になってほしい。

この画像のどこにも「スターバックス」という文字は描かれていない。にもかかわらず、なぜあなたはこの画像を見て「スターバックスだ」と認識し、スターバックスに関する様々なブランド連想を思い浮かべたのだろうか?

さらに、次の画像もご覧頂こう。

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こちらの画像も、見た瞬間に「あ、コカ・コーラだ」と認識できたはずだ。

そしてやはり「炭酸」「スカッとさわやか」「アメリカの自由の象徴」などのブランド連想が思い浮かんだに違いない。

この画像が先ほどのスターバックスの画像と異なるのは「Coca-Cola」と白い文字が描かれていることだ。「白い文字を読めば、コカ・コーラだとわかる」。あなたはそう考えたかもしれない。

しかし、もう一度よくご覧になってほしい。白い文字で描かれているのは、実は「Coco-Cola(ココ・コーラ)」だ。非デザイナーであるk_birdが慣れない画像ソフトを使って加工したのだ。

ではなぜ、あなたは上記の画像を「コカ・コーラ」だと認識したのか?

ここから言えるのは、あなたは「Coco-Cola(ココ・コーラ)」を文字として読んで認識したわけではないということだ。わざわざ「Coco-Cola(ココ・コーラ)」という文字を読むことなく「文字=デザイン」として「直感的」に認識したために「Coco-Cola(ココ・コーラ)」と間違って描かれていることに気づけなかったのだ。

だまし討ちのようで恐縮だが、ここにブランドデザインにおける重要なロジックが隠されている。そのロジックとは、以下の通りだ。

  1. 人は見慣れたものに対しては、文章より先に「色」や「形」で物事を認識し、記憶に定着させる。
  2. そして、一度記憶に定着すると「色」や「形」をトリガーにブランドを想起し、そこから芋づる式にブランド連想を膨らませていく。

生理学には「パブロフの犬の理論」という理論がある。

パブロフの犬の理論とは「犬にエサを与えるときに必ずベルを鳴らすようにしたところ、エサが無くてもベルを鳴らすと犬がよだれをたらすようになる」とする理論だ。

上記のパブロフの犬の理論をブランディングに当てはめると「ベル=ブランドデザイン」「エサ=ブランド連想」となる。スターバックスやコカ・コーラのロゴを見ただけで様々なブランド連想が思い浮かんだのも「ブランドのロゴデザイン」がブランド連想のトリガーとして機能したためだ。

ブランディングの世界では「ブランドロゴマーク」は時に「神」のように扱われる。もちろんブランドロゴマークがブランディングの全てではないが、極めて重要な役割を果たしていることは、ご理解いただけたはずだ。

「色」や「形」は文章と異なり、人間の「感覚の内側」に入り込む。

そしていったん「人間の感覚の内側」に入り込めば、文字だけと比べて、はるかに記憶に定着しやすくなる。

あなたは学生時代に、英単語や歴史の年号を暗記するのに苦労した経験がおありのはずだ。しかし一方で、流行歌のサビ部分の歌詞は「一生懸命暗記しよう」と努力をしなくても、スラッと鼻歌を歌えた経験もあるはずだ。

こちらもデザイン同様に「音」を通して「人間の感覚の内側」に入り込んだために、大した努力を伴わず歌詞を記憶できた典型だ。

認知心理学を紐解くと、人は物事を捉えるとき、最初の0.2秒で「直感的な」取捨選択を行い、次の0.2秒以降で「合理的な」取捨選択をするといわれる。

そしてデザインは「人間の感覚の内側」に入り込んで記憶に定着させることで、ブランド選びの第一段階である「直感的な取捨選択」に強く関与していく。

そして冒頭で説明した「デザインによる初頭効果(第一印象効果)」による印象形成がよりポジティブであればあるほどパブロフの犬の効果が働き、劇的にブランディングの成果が出やすくなるのだ。

 

ブランドデザインが創る5つの効果-4:ブランドを探す際の手掛かりとなる効果

4つめは「ブランドを探す際の手掛かりとなる効果」だ。こちらもまずは画像をご覧頂こう。

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ここまで、様々な画像のトリック(?)を見せられてきたあなたなら、男女のピクトグラムとカラーがあべこべになっていることにお気づきいただけたと思う。

もし、トイレの前でこのような表示がされていたら、果たして人はどのような行動をとるだろうか?あるテレビ番組の実験では、8名中7名が間違った方を選んでしまったという。ここから言えるのは、以下の通りだ。

  1. 人間はデザイン要素の中でも「形」より「色」の方が強く記憶に残りやすい。
  2. 人間は、時に「色」を手掛かりに行動する。

 ブランドデザインの中でも「色」は、そのブランドを探す際の手掛かりとなるため極めて重要だ。多くの優れたブランドが「ブランドシンボルカラー」をルールとして決めているのはこのためだ。

人間は、時に「色」を手掛かりに物事を認識し、判断し、行動を移すことがある。

そうである以上、ブランドデザインを開発する上で、ブランドシンボルカラーは必ずといって良いほど設定しておきたいテーマだ。

それは、周囲の企業事例を見渡してみてもご理解いただけると思う。

例えば銀行業界のブランドデザインの事例では「三菱東京UFJ銀行=赤」「みずほ銀行=青」「三井住友銀行=緑」とブランドシンボルカラーですみ分けができている。

コンビニエンスストア業界のブランドデザインの事例でも「セブンイレブン=赤」「ローソン=青」「ファミリーマート=緑」「ミニストップ=黄色」というすみ分けができていることに気付く。

もし仮に、あなたがみずほ銀行のキャッシュカードをお持ちなら、街で現金を引き出す際には「みずほ銀行」の文字ではなく、無意識に「青の看板」を探していないだろうか?

また、あなたがコカ・コーラを飲みたいと思ったときは、コンビニに入った後、無意識に「赤のペットボトル」を手掛かりに探していることだろう。

上記から言えるのは、ブランドデザインは生活者がブランドを探す際の手掛かりとなる役割を果たすことだ。つまり、ビジネスの成果に直結していく重要な要素となりうるのだ。

ブランドデザインが創る5つの効果-5:ブランドに対する愛着を創り出す効果

最後は「ブランドに対する愛着を創り出す」効果だ。

当たり前のことだが、人間は生き物である以上「論理」だけでなく「センス」や「好み」も持ち合わせている。そして物事を選ぶとき「自分のセンスに合ったもの」「自分の好みに見合うもの」を選びたくなるものだ。

ブランドデザインは、生活者の「センス」や「好み」に関与していく。

そしてブランドデザインが生活者にとって「意味(=ブランド連想)」を持つようになればストーリーが生まれやすくなり、ブランドは生活者に近づいていく。自分のセンスに見合うデザインのブランドが日常生活に取り込まれ、自分の毎日の中で今までにない体験が増えていけば、それは生活者にとってそのブランドを象徴する体験となる。

もしあなたのブランドのデザインが狙った生活者の感性に見合うものであれば、生活者はあなたのブランドから「自分の感性にフィットする喜び」を感じ、長く愛用していただけるようになるはずだ。

 

ビジュアルアイデンティティ(VI)とは?:事例を交えて解説

どんなにあなたが「ブランドデザインがもたらす効果」を理解していたとしても、運用時に適切なマネジメントがなされなければ、その効果は霧消する。

これまで解説した通り、あなたがブランドを市場投入する際には、ブランドデザインは「パッケージデザイン」「コマーシャル」「グラフィックデザイン」「WEBデザイン」「店頭POPデザイン」などに形を変えていく。

ブランドデザインを扱う部門も、マーケティング部門だけでなく、デジタル部門・営業企画部門・本社営業・支社営業など多岐に渡るようになっていく。

せっかくあなたとデザイナーが丹精込めて創り上げたブランドデザインも、各部門ごとに微妙に改変されていけば、結局は「バラバラで散発的な見え方」となってしまい、ブランディングの成果はおぼつかなくなる。

デザインは、創ったその瞬間から壊れ始めると言われる。

ブランドデザインの統一感と一貫性を保ち、運用をマネジメントしていくためには、ビジュアルアイデンティティ(VI)の開発が必要不可欠となる。

ビジュアルアイデンティティ(VI)の事例

まずはビジュアルアイデンティティ(VI)の重要性を理解するために、様々な企業のブランドデザイン事例を画像で紹介しよう。一番左側がブランドロゴマーク、真ん中がTVCM、右側がGoogleの画像検索の結果だ。

ざっと目を通していただければ、直感的にご理解いただけるはずだ。

ポカリスエットのビジュアルアイデンティティ(VI)事例

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ダノン「BIO」のビジュアルアイデンティティ(VI)事例

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ハーゲンダッツのビジュアルアイデンティティ(VI)事例

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ブレンディのビジュアルアイデンティティ(VI)事例

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いかがだっただろうか?ブランドのロゴデザインはもちろん、TVCM、果てはタレントが着ている服や背景のカラーに至るまで、統一感や一貫性がこだわり抜かれていることに気が付けるはずだ。

一方で、こちらはいかがだろうか?

缶コーヒーメーカーのビジュアルアイデンティティ(VI)事例

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これまでのビジュアルアイデンティティの事例に比べると、統一感や一貫性の観点で「やや今一歩?」とお感じになったのではないだろうか?

冒頭で「ブランドデザイン」には4つの視点が存在することを解説したが、覚えておいでだろうか?

  1. 「ブランド戦略」の視点から見たデザイン
  2. 「ブランドマネジメント」の視点から見たデザイン
  3. 「UX」の視点から見たデザイン
  4. 「装飾美」の視点から見たデザイン

上記のうち「2.ブランドマネジメントの視点から見たデザイン」の巧拙でも、ブランディングの成果は大きく変わる。そのために重要となるのが「ビジュアルアイデンティティ(VI)」だ。

 

ビジュアルアイデンティティ(VI)とは何か?

ビジュアルアイデンティティ(VI)は、ブランドデザインの統一感や一貫性を守る上で、非常に重要な考え方だ。そしてビジュアルアイデンティティ(VI)を形創る上でまず重要となるのが「ブランドアイデンティティ(BI)」だ。

ブランドアイデンティティ(BI)の詳しい解説は上記の記事に譲るが「ブランドアイデンティティ」は、ブランディングを成果に導く上で「最も」重要な考え方と言ってもよい。k_birdはブランドアイデンティティ)BI)を以下のように定義している。

ブランドアイデンティティ(BI)とは?

「生活者とブランドの両方が望む
社会やライフスタイルの未来像の実現に向けて、
そのブランドが守るべき一貫した姿勢」

 人に例えるなら、ブランドアイデンティティ(BI)はその人の基本的な考え方や価値観にあたる。一方でビジュアルアイデンティティ(VI)は、その人の人格やパーソナリティを伝える外見だ。

ブランドアイデンティティ(BI)は、ブランディングの中核をなす最も重要な考え方だ。しかし形がないものだけに、そのままでは社会や生活者に伝わりにくい。よってブランドアイデンティティ(BI)を「デザイン」や「体験」によって「見える化」する必要が生じる。

上記のうち「デザイン」によってブランドアイデンティティ(BI)を「見える化」し、統一感や一貫性が守られるようにルール化したものがビジュアルアイデンティティ(VI)だ。

先ほど触れた通り、デザインは創った瞬間から壊れる。ブランドデザインを形創った当事者であれば、ブランドデザインを形創る過程の中で「理解」や「愛情」が育まれ、ビジュアルアイデンティティ(VI)をルール化しなくても暗黙知で一貫性を守ろうとするだろう。

しかし現実問題としてあなたの後任となる担当者が現れたり、様々な事情でデザイナーが交代した場合には、あなたと同じようにビジュアルアイデンティティ(VI)の一貫性を守ってくれるとは限らない。

むしろ新任の担当者となると、ブランドデザインの本質をよく理解しないまま「変わり映えしない」と勘違いして、悪意なく「新たな工夫」を施してしまうことが頻発する。

また、新任のデザイナーが担当した場合にも、例外なく今のブランドデザインを壊そうとする。なぜならデザイナーとは基本的に創造者であり、創造は破壊でもある以上、何もルールがなければ現状否定からスタートするからだ。

その結果、ブランドのデザインは壊れ、各方面に出ていくブランドデザインはバラバラとなり、冒頭で解説した「ブランドデザインの5つの効果」は力を失う。

しかし「ビジュアルアイデンティティ(VI)の有無」でどれくらい印象が変わるかは、先ほど紹介した企業事例で目の当たりにしたはずだ。ポカリスエットやダノンBIO、ハーゲンダッツやブレンディは「ビジュアルアイデンティティ(VI)のマネジメント」が「統一したブランド連想」を創り、様々なタッチポイントでの反復効果により「ブランドの個性」を定着させている。

もしあなたのブランドに「ビジュアルアイデンティティ(VI)」が存在しないのなら、ぜひこれを機に「ビジュアルアイデンティティ(VI)」を設定しよう。

ビジュアルアイデンティティ(VI)の構成要素

ここからは、ビジュアルアイデンティティの設定項目を紹介しよう。企業ブランディング(コーポレートブランディング)の場合、ビジュアルアイデンティティの設定項目は多岐にわたる。

しかし今回の解説は商品ブランディングを対象としているため、商品ブランドに必要最小限の構成要素を紹介して終わりにしよう。

ビジュアルアイデンティティ(VI)のブランドデザイン要素-1:ベーシックデザイン

ベーシックデザインとはブランドデザインの基本要素を指す。これらを構成し、デザインシステム(表示ルール)が創られることになる。

  1. ブランドシンボルマーク:
    ブランドの象徴となるロゴマーク
  2. ブランドロゴタイプ:
    ブランド名にデザインを施したもの
  3. ブランドシンボルカラー:
    そのブランドを象徴する色
  4. サブグラフィックエレメント:
    各種シンボルを補完するグラフィックパターン

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ビジュアルアイデンティティ(VI)のブランドデザイン要素-2:ビジュアルアイデンティティシステム

ビジュアルアイデンティティシステムとは、ベーシックデザインで創り上げた各種デザイン要素の「使い方の取り決め」のことを指す。何度も繰り返すが、一度創り上げたデザインは、その瞬間から「壊れる」。

ブランドのデザインはマーケティング部門はもちろん、地方の営業組織に至るまで広範に扱われるため、その過程で改変が繰り返され、バラバラになりやすい。それらを防ぐために「ブランドデザインの使い方」をルールとして取り決めておく必要があるのだ。

一般には、以下の取り決めをすることが多い。

  1. シグネチュアシステム:
    ベーシックデザインを組み合わせて使用するときのルール
  2. アイソレーション(独立性)規定:
    ブランドロゴを際立たせるための「周辺の余白」のルール。企業ブランドでは設けられることが多いが、商品ブランドでは店頭ツールなどの関係上、規定されないことも多い
  3. カラーコントロール:
    ブランドのサブカラーの設定とバリエーションのルール。表示色と背景色の関係もここで規定される。
  4. 専用書体:
    広告や商品パンフレット等で使われる専用書体のルール。ゴシック体と明朝体で与える印象が大きく異なるように、専用書体のルールは見逃しがちだが意外と重要
  5. 使用禁止例:
    ブランドデザインの使用者は必ずしもデザインの専門家だけではないため、使用禁止例を設けておくと非デザイナーにもわかりやすい。
ビジュアルアイデンティティ(VI)のブランドデザイン要素-3:アプリケーションデザイン

アプリケーションデザインとは、上記のデザイン要素を、実際に広告やWEBページ、あるいはパンフレットや店頭POPに反映した場合の使用例だ。

どんなに優れて見えるブランドロゴマークも、いざ広告やWEBページなどに反映してみると「あれ?印象が変わるな…」と感じることはよくあることだ。

よって、ブランドビジュアルアイデンティティを開発する際には、ベーシックデザインを開発して済ますのではなく「広告に反映した場合」「WEBページに反映した場合」「商品パンフレットに反映した場合」など、実際にデザインを組んでみて確認してみることが重要だ。

ビジュアルアイデンティティ(VI)のブランドデザイン要素-4:VIマニュアル

最後に、上記をマニュアル化した上で組織的にオーソライズしよう。組織の規模が大きくなればなるほど、ブランドのデザインは散逸する。しかし逆を言えば、いったんブランドデザインの一貫性・統一性を守るルール・文化を創り上げることができれば、それはあなたの企業にとって大きな競争力となる。

せひ、今付き合っている広告代理店や制作会社のデザイナーとともに、取り組んでみて欲しい。

 

ビジュアルアイデンティティマニュアル(VIマニュアル)の事例

最後に、ブランド力の高さに定評がある「アップル」「スターバックス」「レクサス」のビジュアルアイデンティティガイドラインへのリンクを紹介しよう。

アップルのビジュアルアイデンティティマニュアル(VIマニュアル)の事例-PDF

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https://www.apple.com/legal/sales-support/certification/docs/logo_guidelines.pdf

スターバックスのビジュアルアイデンティティマニュアル(VIマニュアル)の事例-PDF

f:id:missiondrivencom:20171017175523p:plain

https://solutions.starbucks.ca/media/100227321/wps_logo-guidelines_april-2014.pdf

レクサスのビジュアルアイデンティティマニュアル(VIマニュアル)の事例-PDF

f:id:missiondrivencom:20171017175519p:plain

http://livre-rose.hyper-media.eu/wp-content/uploads/2012/10/LexusBrandGuideline.pdf

ブランドデザイン・ビジュアルアイデンティティの知識を身に付ける本:3冊

締めくくりに、マーケティング・ブランディング担当者へのお薦めのブランドデザイン関連本を紹介しよう。選定した基準は下記の通りだ。以下のどれかに当てはまるものをピックアップした。

  1. k_birdが実際に読み、単純に「素晴らしかった」と思えるブランドデザイン関連本。
  2. 実際に非デザイナーであるk_bird自身が「ブランドデザインの要諦」を見出す上で役立っているブランドデザイン関連本。
  3. 長年に渡って読み継がれており、時代を越えても変わらない「本質」や「原理」が見出せるブランドデザイン関連本。

もちろん、すべて「なぜ読むべきなのか?」という解説付きだ。

ブランドデザインの知識を身に付ける本-1:センスは知識からはじまる

あなたは「自分はセンスがない」という気後れを感じてはいないだろうか?

特にブランディングの重要なパートナーとなるクリエイターと接するとき「自分のセンスのなさ」を気にするマーケティング担当者は多い。

本書は、その「センス」について気鋭のクリエイターが解説した本だ。

ブランディングはビジネスである以上「偶然たまたま」ではなく「再現性のあるロジック」でなければならない。そしてそれを裏付けるように、本書の筆者は「センスは知識の集積である」と説く。

優秀なクリエイターは、コンスタントに二塁打を放ちつつ、時たま場外ホームランを放つということを繰り返している。

その背景にはクリエイター本人の中に「コンスタントに二塁打を打つ」ための再現性を伴ったロジックが存在し、そのロジックの上に偶発的なひらめきやインスピレーションが降りてきた時、それがたまたま場外ホームランになる、という構図があるからだ。

本書の筆者はNTTドコモの「iD」や「くまもん」を生み出してきたグッドデザインカンパニーの代表であり、トップクリエイターだ。

そのトップクリエイターが解説する「センスを磨くための手法」は、センスに自信が持てない多くのマーケッターにとって、一読の価値があるはずだ。

ブランドデザインの知識を身に付ける本-2:生まれ変わるデザイン、持続と継続のためのブランド戦略ー老舗のデザイン・リニューアル事例から学ぶ、ビジネスのためのブランド・デザインマネジメント

多くのマーケティング担当者は、戦略とデザインを結び付けられずにいる。

しかし、デザインは顧客から見て真っ先に目に触れるものである以上、リターンを生む競争力の源泉だ。そして長期に渡ってそのブランドを象徴する資産にもなる。

本書は、ブランディングを行う上で必要となるブランドデザインマネジメントを体系的に解説してくれている書籍だ。本書を読めば、デザインが単なる「アート」や「センス」ではなく、問題解決の手段であることがわかる。

もしあなたがノンデザイナーだったとしても、本書を読めば「ブランドデザイン戦略」の思考プロセスと要諦が理解できるようになるはずだ。

ブランドデザインの知識を身に付ける本-3:すべての仕事はクリエイティブディレクションである

当たり前のことだが「解くべき課題」の設定を間違えば、出した答えも当然、間違ったものになる。

課題を解決するには、そもそも課題が特定できていなければならないが、社会情勢が大きく変化している現在においては、解決すべき課題を明確にすることすら困難だ。

本書は「クリエイティブ」という切り口で課題の発見から課題の解決までをわかりやすく、すべての仕事に応用できる技術としてまとめた書籍だ。

しかし本書の本当の価値は2つある。

1つは「クリエイティブワークに限らずあらゆる仕事に応用が利く」点だ。そして2つ目は、驚くほど「外資コンサル本との共通項が多い」点だ。

このことは、優れたクリエイターの「クリエイティビティ」と、外資コンサルの「ロジカルシンキング」は、使う武器が異なるだけで問題解決のアプローチは同じであることを示している。

本書は、広告代理店のクリエティブディレクターだけが読む本ではない。つい「ロジック一辺倒」に偏りがちな多くのマーケティング担当者が読むべき一冊だ。

 

終わりに

今回は「ブランドデザインとは|ブランドデザインが創る5つの効果とビジュアルアイデンティティ」と題して、ブランドのデザインが創る5つの効果とビジュアルアイデンティティについて解説した。

冒頭で説明した通り、ことブランディングにおいて、デザインは大きな役割を果たす。だからこそ「デザインはデザイナーの仕事であって、自分は門外漢だからよくわからない。」などとは言っていられない。

近年、ブランドデザインだけでなく「UXデザイン」や「デザイン思考」など、デザイナーの重要性はこれまでになく増してきている。ぜひ、デザイナーを「単なる外注業者」として扱わず「ビジネスパートナー」としてひざ詰めの議論をしてほしい。ブランディングを成功に導くための大きな力になってくれるはずだ。

また、もしあなたがデザイナーなら、デザインを単なる「四角い枠の中だけの装飾美」と捉えずに「ブランドやブランド経験、あるいは人の行動そのものをデザインすること」と捉えて欲しい。そうすれば、あなたの可能性は飛躍的に広がるはずだ。

今後も、折に触れて「ロジカルで、かつ、直感的にわかるブランディングの解説」を続けていくつもりだ。(過去記事と今後の掲載予定はこちら

しかし、多忙につき、このブログは不定期の更新となる。

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